愛する夫にもう一つの家庭があったことを知ったのは、結婚して10年目のことでした

ましゅぺちーの

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55 衝撃の事実 オリバー視点

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(クソ……私は一体どうすればいいんだ……)


私は公爵邸で一人、頭を悩ませていた。
悩みの種はもちろんローザだ。
彼女は何が何でも仕事はしないつもりなのだろう。
今も使用人たちと仲良く菓子を焼いている。


(そんなことをしている場合ではないというのに!)


ローザを説得するのは無理そうだ。
仕事をしなくてもいいと、過去にそう言ったのは間違いなく私だったから。


(ああ……何であんなこと言ってしまったんだろうな……)


彼女と話をしただけで酷く疲弊していた。
私は昔からローザに強く言うことは出来ないのだ。


(私だって、愛する女に辛い思いをさせたくはない……)


考えても仕方が無いと思った私は、とりあえず残っていた仕事を終わらせようと執務室へ戻った。
頭がズキズキと痛む。
ここ最近自分の思い通りにいかないことばかりだったからか、何だか体調が優れない。
もう何日もまともな睡眠がとれていない。


(後でメイドに茶でも持ってこさせるか……)


そう思い、曲がり角を曲がろうとしたそのときだった――


「――ローザ様は本当に愛らしいお方ですね!」


私は曲がり角の先から聞こえてきたその声でピタリと足を止めた。


「ローザ様ではなく奥様よ。もうすぐそうなるんだから、言葉には気を付けなさい」
「あ、はい!すみません!」


どうやら向こうで使用人たちが会話をしているようだ。


「……」


別に止まる理由は無かったが、何故だか今はこの先に行ってはいけないような気がした。
体が行くことを拒否しているかのように、動かなくなった。


(……何故だ?)


そんな自分を不思議に思いながらも、私は使用人たちの会話を聞いていた。
人の会話を盗み聞きしている自分に嫌気が差しながらも、じっと身を潜めていた。


「本当に、前の奥様が出て行ってくれて助かりました!」
「ええ、そうね。あの女は旦那様と奥様の仲を邪魔する悪役なのだから。ああいう最期がお似合いよ」


(何……?)


耳を疑った。
使用人たちが元妻――エミリアの悪口を言っていたのだ。


「あの女を追い出すためにも苦労したわ。旦那様に嘘の報告をしなければならなかったからね」
「え……それって大丈夫なんですか?あの方の実家って一応伯爵家ですよね?報復とか……」
「平気平気。こっちは公爵家なんだから。抗議してきたところで泣き寝入りするしかないはずよ」


(嘘の報告……だと……?)


使用人たちから元妻が公爵邸で悪事を働いているということはよく聞かされていた。
散財しているだの、男遊びをしているだの諸々だ。
しかし私は特に興味も無かったため、好きにさせておけと放っていた。


(もしかして……全部嘘だったのか……?)


茫然とする私に、さらなる衝撃の事実が耳に入った。


「あの女が妊娠しないようにするのも大変だったのよ」
「どうやったんですか?」
「お茶に避妊薬を混ぜておいたのよ。まぁ、最初の三年間だけだけれどね」


(な、何だと……!?)


元妻には子供が出来なかった。
私はそのことに関してずっとあの女に問題があるのだと思っていた。
しかし、彼らの話が事実なら――


(アイツには何の問題も無かった……?)


子供が作れない女を寄越すだなんて公爵家を舐めているのかとイラついて余計に元妻にキツく当たっていた。
顔を合わせるたびに頭ごなしに罵倒したりもした。


(ちょっと待て……冗談……だよな?)


衝撃の事実を知ってしまった私はしばらくの間、そこから動けずにいた。

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