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6話 魔族ラギレス
「あ、貴方は一体……!?」
私は驚いてその場から動けずにいた。
目の前にいる男は頭から二本のツノを生やし、尖った耳をしていた。
魔族の特徴そのものだった。
(猫が……とても素敵な男性になったわ……)
ハッキリ言って、彼の見た目はそこそこタイプだった。
程よく筋肉のついた体に、整った顔立ち。
魔族は様々な魔法を使えると聞いたが、ならさっき黒猫に姿を変えていたのも魔法だろうか。
「俺か?俺はラギレスだ」
「ラギレス様、よろしくお願いしま……ってそういうことではなく!どうして魔族様が王宮にいらっしゃるのですか!」
(魔族は普通魔界から出ることなんてほとんどないって聞いていたのに……)
魔族の姿を見たのは初めてだった。
王太子や王妃などの王族は魔界とも交流していると聞くが、私のようなただの貴族令嬢には縁のないことだった。
「ああ、それは色々とあってだな……」
「色々と……ですか?」
「事情を説明するわけにはいかない。人間に見つかったのは想定外のことだった。そうだ、いっそお前の記憶を今ここで消してしまおう」
「な、何するんですか!?」
そう言うと彼は、私の腕を掴んで魔法陣を展開させた。
「なぁに、心配するな。失敗しても死ぬことはないから。ただちょっと大事なことまで忘れちゃう可能性があるってだけで」
「ダ、ダメです!!!」
私は何とか逃れようと暴れた。
「ぜ、絶対に誰にも言わないからやめてください!」
「そういうわけにはいかない。俺の姿を見られたからには処理をしないと――」
「わ、私はこの国の王太子妃です!バレたらただでは済まされないですよ!」
「王太子妃……?何だ、お前王族だったのか」
私が王族だということに気付いたラギレスは、ようやく私を放した。
――「妃殿下、どちらへいるんですかー?」
「……!」
そのとき、遠くから私を探す声が聞こえた。
どうやらいつまでたっても部屋に戻らない私を、侍女が探しに来たようだ。
慌てた私は、ラギレスの服を掴んだ。
「こ、ここにいたらまずいですよ!私はともかく、あなたが――」
「シッ!」
彼は人差し指を唇に当てると、パチンッと指で音を鳴らした。
その瞬間、体が軽くなるような、妙な気分になった。
「静かにしろ」
「は、はい……」
侍女がだんだん近づいてくる音が聞こえる。
私は内心焦っていたが、彼はそうではないようで、ただじっと息を潜めているだけだった。
「妃殿下?一体どこほっつき歩いてんだか……」
「……」
(……私たちが見えていないの?)
驚くことに、侍女には私やラギレスの姿が見えていないようで、そのまま通り過ぎていった。
侍女がいなくなったのを確認すると、彼はふぅと安堵の息を吐いた。
「行ったみたいだな」
「今のは……魔法ですか?」
「ああ」
(やっぱり魔法を使えるのね!)
なら今のは姿を消す透明化の魔法だろう。
何だか自分が魔法使いになったようで興奮した。
「まだ大事なことを教えてもらっていません、魔族様がどうしてここにいるんですか?」
私が尋ねると、ラギレスは言いづらそうに目を逸らした。
「あーそれは……ちょっと人間界で調査しないといけないことがあってな……」
「調査しないといけないこと?」
「――それよりお前、行かなくていいのか?さっきのはお前を探していたんだろう?」
その言葉で、私は自分がこんなことをしている場合ではないということに気が付いた。
「あっ、そうでした!早く仕事に戻らないと、また殿下に叱られてしまう!」
素早くラギレスに挨拶をした私は、慌てて自室へと戻った。
***
アリサが去ったあと、一人になったラギレスに背後から近づく者がいた。
「……ラギレス様」
その正体は彼の従者だった。
ラギレスは彼を一瞥してすぐ、再び王宮に目を向けた。
「……お前も感じるか」
「はい、間違いありません」
「……」
ラギレスは異様な雰囲気を醸し出している王宮を見つめながらつぶやいた。
「――何故、あの女の魔力がこの国から感じられるんだ……」
私は驚いてその場から動けずにいた。
目の前にいる男は頭から二本のツノを生やし、尖った耳をしていた。
魔族の特徴そのものだった。
(猫が……とても素敵な男性になったわ……)
ハッキリ言って、彼の見た目はそこそこタイプだった。
程よく筋肉のついた体に、整った顔立ち。
魔族は様々な魔法を使えると聞いたが、ならさっき黒猫に姿を変えていたのも魔法だろうか。
「俺か?俺はラギレスだ」
「ラギレス様、よろしくお願いしま……ってそういうことではなく!どうして魔族様が王宮にいらっしゃるのですか!」
(魔族は普通魔界から出ることなんてほとんどないって聞いていたのに……)
魔族の姿を見たのは初めてだった。
王太子や王妃などの王族は魔界とも交流していると聞くが、私のようなただの貴族令嬢には縁のないことだった。
「ああ、それは色々とあってだな……」
「色々と……ですか?」
「事情を説明するわけにはいかない。人間に見つかったのは想定外のことだった。そうだ、いっそお前の記憶を今ここで消してしまおう」
「な、何するんですか!?」
そう言うと彼は、私の腕を掴んで魔法陣を展開させた。
「なぁに、心配するな。失敗しても死ぬことはないから。ただちょっと大事なことまで忘れちゃう可能性があるってだけで」
「ダ、ダメです!!!」
私は何とか逃れようと暴れた。
「ぜ、絶対に誰にも言わないからやめてください!」
「そういうわけにはいかない。俺の姿を見られたからには処理をしないと――」
「わ、私はこの国の王太子妃です!バレたらただでは済まされないですよ!」
「王太子妃……?何だ、お前王族だったのか」
私が王族だということに気付いたラギレスは、ようやく私を放した。
――「妃殿下、どちらへいるんですかー?」
「……!」
そのとき、遠くから私を探す声が聞こえた。
どうやらいつまでたっても部屋に戻らない私を、侍女が探しに来たようだ。
慌てた私は、ラギレスの服を掴んだ。
「こ、ここにいたらまずいですよ!私はともかく、あなたが――」
「シッ!」
彼は人差し指を唇に当てると、パチンッと指で音を鳴らした。
その瞬間、体が軽くなるような、妙な気分になった。
「静かにしろ」
「は、はい……」
侍女がだんだん近づいてくる音が聞こえる。
私は内心焦っていたが、彼はそうではないようで、ただじっと息を潜めているだけだった。
「妃殿下?一体どこほっつき歩いてんだか……」
「……」
(……私たちが見えていないの?)
驚くことに、侍女には私やラギレスの姿が見えていないようで、そのまま通り過ぎていった。
侍女がいなくなったのを確認すると、彼はふぅと安堵の息を吐いた。
「行ったみたいだな」
「今のは……魔法ですか?」
「ああ」
(やっぱり魔法を使えるのね!)
なら今のは姿を消す透明化の魔法だろう。
何だか自分が魔法使いになったようで興奮した。
「まだ大事なことを教えてもらっていません、魔族様がどうしてここにいるんですか?」
私が尋ねると、ラギレスは言いづらそうに目を逸らした。
「あーそれは……ちょっと人間界で調査しないといけないことがあってな……」
「調査しないといけないこと?」
「――それよりお前、行かなくていいのか?さっきのはお前を探していたんだろう?」
その言葉で、私は自分がこんなことをしている場合ではないということに気が付いた。
「あっ、そうでした!早く仕事に戻らないと、また殿下に叱られてしまう!」
素早くラギレスに挨拶をした私は、慌てて自室へと戻った。
***
アリサが去ったあと、一人になったラギレスに背後から近づく者がいた。
「……ラギレス様」
その正体は彼の従者だった。
ラギレスは彼を一瞥してすぐ、再び王宮に目を向けた。
「……お前も感じるか」
「はい、間違いありません」
「……」
ラギレスは異様な雰囲気を醸し出している王宮を見つめながらつぶやいた。
「――何故、あの女の魔力がこの国から感じられるんだ……」
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