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7話 王太子の恋人
一週間後。
王太子殿下と私の婚約を祝うパーティーの日がやってきた。
当然、王太子からドレスや装飾品の贈り物はなく、私は仕方なく実家から持ってきたドレスを着て行くことにした。
王宮の侍女たちは私の手伝いなどしたくないらしく、いつまで待っても部屋にはやってこなかった。
(全て自分でやるしかないようね)
私は仕方なく、自身の手で髪を結い上げた。
侯爵邸でも私には侍女というものがいなかった。
私に付いていた侍女は皆、シアが侯爵邸に来た途端、彼女の専属侍女となったからだ。
そのとき、ノックもせずに入ってきた侍女が淡々と告げた。
「妃殿下、本日王太子殿下はこちらへはいらっしゃらないそうです。ですから会場へは一人で行ってください」
「で、殿下がいらっしゃらないなんて……それは一体どういうことなの?」
私が慌てて尋ねると、侍女はイライラした様子で答えた。
「さぁ、それは私たちにもわかりません。無能な妃殿下に愛想を尽かしたのでは?」
「そんな……王太子妃が一人で会場入りするだなんて……」
普通に考えてありえないことだった。
殿下は一体何を考えているのだろうか。
(いくら私を嫌っているとはいえ、公衆の面前でそのような姿を見せたら貴族たちに何て言われるか……)
そう思うものの、来ない人をいつまでも待っていたところで仕方が無い。
私は仕方なく、一人で会場へ向かった。
(おかしいわね……いくら嫌われていようとここまでの仕打ちをされたことはなかったのに……)
どこか違和感を感じながらも、私は会場の扉の前に立った。
――「王太子妃殿下の入場です!」
会場へ足を踏み入れた途端、貴族たちの軽蔑に似た視線が私に向けられた。
「あら、王太子妃が一人で入場しているわ」
「殿下もとうとう彼女に愛想尽かしたのね」
「当然よ、殿下が愛しているのはシア嬢ただ一人だもの」
心無い言葉が嫌でも耳に入ってくる。
最初は耐えられなくて逃げ出していたが、今ではもう慣れた。
(殿下はまだ来ていないみたいね……)
入場を終え、王太子妃の椅子に座った私は会場を見渡した。
シアを慕っていた令嬢令息たちがあからさまに私に敵意を向けていた。
彼らが私に対して思っていることは皆同じ。
(何故お前が生きているんだ、とか、お前が死ねばよかったのに、なんて思っているんでしょうね……)
シアが亡くなったのは不慮の事故であり、私のせいではなかった。
理不尽にもほどがある。
じっと考え込んでいると、私が入場してきた扉のほうからひときわ大きな声が聞こえた。
――「王太子殿下とアビゲイル・オスカー嬢の入場です!」
「………………え!?」
驚いて入口に目をやると、私の夫である王太子殿下が見知らぬ令嬢をエスコートしていた。
(……彼女は一体?)
驚きを隠せないのは私だけではないようで、会場にざわめきが広がった。
「王太子殿下の隣にいるご令嬢は一体誰だ……?」
「さぁ、でも何だかシア嬢に雰囲気が似ているな……」
王太子が連れていたのはウェーブがかったシルバーブロンドに金色の瞳をした、どことなくシアの面影を感じさせる令嬢だった。
王太子はそのままホールの中央で立ち止まると、会場にいる貴族たちに堂々と宣言した。
――「皆様にご紹介いたします。こちらは私の愛する恋人であり、ゆくゆくは王太子妃となるアビゲイルです」
王太子殿下と私の婚約を祝うパーティーの日がやってきた。
当然、王太子からドレスや装飾品の贈り物はなく、私は仕方なく実家から持ってきたドレスを着て行くことにした。
王宮の侍女たちは私の手伝いなどしたくないらしく、いつまで待っても部屋にはやってこなかった。
(全て自分でやるしかないようね)
私は仕方なく、自身の手で髪を結い上げた。
侯爵邸でも私には侍女というものがいなかった。
私に付いていた侍女は皆、シアが侯爵邸に来た途端、彼女の専属侍女となったからだ。
そのとき、ノックもせずに入ってきた侍女が淡々と告げた。
「妃殿下、本日王太子殿下はこちらへはいらっしゃらないそうです。ですから会場へは一人で行ってください」
「で、殿下がいらっしゃらないなんて……それは一体どういうことなの?」
私が慌てて尋ねると、侍女はイライラした様子で答えた。
「さぁ、それは私たちにもわかりません。無能な妃殿下に愛想を尽かしたのでは?」
「そんな……王太子妃が一人で会場入りするだなんて……」
普通に考えてありえないことだった。
殿下は一体何を考えているのだろうか。
(いくら私を嫌っているとはいえ、公衆の面前でそのような姿を見せたら貴族たちに何て言われるか……)
そう思うものの、来ない人をいつまでも待っていたところで仕方が無い。
私は仕方なく、一人で会場へ向かった。
(おかしいわね……いくら嫌われていようとここまでの仕打ちをされたことはなかったのに……)
どこか違和感を感じながらも、私は会場の扉の前に立った。
――「王太子妃殿下の入場です!」
会場へ足を踏み入れた途端、貴族たちの軽蔑に似た視線が私に向けられた。
「あら、王太子妃が一人で入場しているわ」
「殿下もとうとう彼女に愛想尽かしたのね」
「当然よ、殿下が愛しているのはシア嬢ただ一人だもの」
心無い言葉が嫌でも耳に入ってくる。
最初は耐えられなくて逃げ出していたが、今ではもう慣れた。
(殿下はまだ来ていないみたいね……)
入場を終え、王太子妃の椅子に座った私は会場を見渡した。
シアを慕っていた令嬢令息たちがあからさまに私に敵意を向けていた。
彼らが私に対して思っていることは皆同じ。
(何故お前が生きているんだ、とか、お前が死ねばよかったのに、なんて思っているんでしょうね……)
シアが亡くなったのは不慮の事故であり、私のせいではなかった。
理不尽にもほどがある。
じっと考え込んでいると、私が入場してきた扉のほうからひときわ大きな声が聞こえた。
――「王太子殿下とアビゲイル・オスカー嬢の入場です!」
「………………え!?」
驚いて入口に目をやると、私の夫である王太子殿下が見知らぬ令嬢をエスコートしていた。
(……彼女は一体?)
驚きを隠せないのは私だけではないようで、会場にざわめきが広がった。
「王太子殿下の隣にいるご令嬢は一体誰だ……?」
「さぁ、でも何だかシア嬢に雰囲気が似ているな……」
王太子が連れていたのはウェーブがかったシルバーブロンドに金色の瞳をした、どことなくシアの面影を感じさせる令嬢だった。
王太子はそのままホールの中央で立ち止まると、会場にいる貴族たちに堂々と宣言した。
――「皆様にご紹介いたします。こちらは私の愛する恋人であり、ゆくゆくは王太子妃となるアビゲイルです」
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