結婚初夜、「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と夫に言われました

ましゅぺちーの

文字の大きさ
9 / 19

9話 アビゲイルの正体

「ありがとうございます、ラギレス様……」


私は状況が理解できないまま、ラギレスの手を取った。
彼が魔族の国の公爵閣下だということは今初めて知った。
当然、驚きを隠せない。


立ち上がると、彼は私を庇うようにして王太子との間に立った。


「リタ王国の王太子よ……自身の妻を公衆の面前で突き飛ばすとは正気か?」
「……!」


ラギレスの気迫に、非力な王太子がビクリと肩を上げた。
相手は魔族だった。
生身の人間が敵うはずのない相手。
私たちは魔法を扱えるわけでもなければ、彼らのように強靭な肉体を持ち合わせているわけでもない。


王太子はそれでもめげずに声を上げた。


「あなたは魔族の国の……何故公爵閣下がそんな女の肩を持っているんだ!」
「王太子、あなたは自分が何をしでかしたか理解していないようだな、何て愚かなんだ。こんなのが次期国王とは、世も末だな」
「な、何だと!?」


王太子は声を荒らげた。
ラギレスはそんな彼のことなど気にも留めず、隣にいたアビゲイルに目をやった。


「そして横にいる女……私の顔を忘れたとは言わないだろうな」
「……ッ!」


王太子の横にいたアビゲイル嬢は顔を真っ青にし、今にも倒れそうだった。


(ラギレス様とアビゲイル嬢は知り合いなのかしら……?)


彼女はラギレスと目を合わせることなく、身体をプルプルと震わせていた。


「アビゲイル!」


王太子が慌ててアビゲイルの身体を支えた。


「魔力のない人間たちは騙せても、私たち魔族の目は誤魔化せまい」


ラギレスはそう言うと、指をパチンと鳴らした。
その瞬間、アビゲイルが真っ黒な霧に包まれた。


「アビゲイル!?」
「キャアッ!」


彼女を守ろうと抱きしめた王太子は吹き飛ばされ、周囲にいた人々も咳き込んだ。
霧の中から姿を現したのは――


「………………シア?」


ついさっきまでそこにいたアビゲイルは一体どこにいったのか。
半年前に亡くなったはずのシアが座り込んで動けなくなっていた。


(どうしてシアが……彼女はたしかに事故で亡くなったはずなのに……)


会場にざわめきが広がった。


「あれって……シア嬢だよな?」
「事故で亡くなったはずでは?」
「偽物か?何故ここにいるんだ?アビゲイル嬢は一体どこに……」


驚いているのは皆同じだった。


「シ、シア!?生きていたのか!?」


王太子が慌てて彼女に駆け寄ろうとするが、彼女の周りに張り巡らされた結界が、彼を弾き飛ばした。


「うっ……!」


二度も吹き飛ばされ、彼は床に倒れこんだ。


「シ、シア……」


シアはラギレスの魔法によって身体を拘束されていた。
まるで罪人が受けるかのような扱いだった。


「アビゲイル・オスカー。名前と外見を変えればバレないとでも思ったか?」
「ラギレス……アンタこそ、ホンットしつこいわね」


ラギレスはシアを冷たい目で見下ろした。


(一体どういうこと?何が起きているの?)



あなたにおすすめの小説

もう演じなくて結構です

梨丸
恋愛
侯爵令嬢セリーヌは最愛の婚約者が自分のことを愛していないことに気づく。 愛しの婚約者様、もう婚約者を演じなくて結構です。 11/5HOTランキング入りしました。ありがとうございます。   感想などいただけると、嬉しいです。 11/14 完結いたしました。 11/16 完結小説ランキング総合8位、恋愛部門4位ありがとうございます。

初恋の人を思い出して辛いから、俺の前で声を出すなと言われました

柚木ゆず
恋愛
「俺の前で声を出すな!!」  マトート子爵令嬢シャルリーの婚約者であるレロッズ伯爵令息エタンには、隣国に嫁いでしまった初恋の人がいました。  シャルリーの声はその女性とそっくりで、聞いていると恋人になれなかったその人のことを思い出してしまう――。そんな理由でエタンは立場を利用してマトート家に圧力をかけ、自分の前はもちろんのこと不自然にならないよう人前で声を出すことさえも禁じてしまったのです。  自分の都合で好き放題するエタン、そんな彼はまだ知りません。  その傍若無人な振る舞いと自己中心的な性格が、あまりにも大きな災難をもたらしてしまうことを。  ※11月18日、本編完結。時期は未定ではありますが、シャルリーのその後などの番外編の投稿を予定しております。  ※体調の影響により一時的に、最新作以外の感想欄を閉じさせていただいております。

嘘つきな貴方を捨てさせていただきます

梨丸
恋愛
断頭台に上がった公爵令嬢フレイアが最期に聞いた言葉は最愛の婚約者の残忍な言葉だった。 「さっさと死んでくれ」 フレイアを断頭台へと導いたのは最愛の婚約者だった。 愛していると言ってくれたのは嘘だったのね。 嘘つきな貴方なんて、要らない。 ※投稿してから、誤字脱字などの修正やわかりにくい部分の補足をすることがあります。(話の筋は変わらないのでご安心ください。) 11/27HOTランキング5位ありがとうございます。 ※短編と長編の狭間のような長さになりそうなので、短編にするかもしれません。 1/2累計ポイント100万突破、ありがとうございます。 完結小説ランキング恋愛部門8位ありがとうございます。

決めるのはあなた方ではない

篠月珪霞
恋愛
王命で決まった婚約者に、暴言を吐かれ続けて10年。 逃れられずに結婚したカメリアに、実はずっと愛していたと言われ。

お望み通り、消えてさしあげますわ

梨丸
恋愛
一国の次期王妃と言われていた子爵令嬢アマリリス。 王太子との結婚前夜、彼女は自ら火を放ち、死んだ。 国民達は彼女の死を特に気にもしなかった。それどころか、彼女の死を喜ぶ者もいた。彼女の有していた聖女の力は大したものではなかったし、優れているのは外見だけの“役立たずの聖女”だと噂されるほどだったから。 彼女の死後、すぐさま後釜として皆に好かれていた聖女が次期王妃に召し上げられた。 この国はより豊かになる、皆はそう確信した。 だが、“役立たずの聖女”アマリリスの死後──着実に崩壊は始まっていた。 ※投稿してから、誤字脱字などの修正やわかりにくい部分の補足をすることがあります。(話の筋は変わらないのでご安心ください。) ※この調子だと短編になりそうです。

わたしがお屋敷を去った結果

柚木ゆず
恋愛
 両親、妹、婚約者、使用人。ロドレル子爵令嬢カプシーヌは周囲の人々から理不尽に疎まれ酷い扱いを受け続けており、これ以上はこの場所で生きていけないと感じ人知れずお屋敷を去りました。  ――カプシーヌさえいなくなれば、何もかもうまく行く――。  ――カプシーヌがいなくなったおかげで、嬉しいことが起きるようになった――。  関係者たちは大喜びしていましたが、誰もまだ知りません。今まで幸せな日常を過ごせていたのはカプシーヌのおかげで、そんな彼女が居なくなったことで自分達の人生は間もなく180度変わってしまうことを。  17日本編完結。4月1日より、それぞれのその後を描く番外編の投稿をさせていただきます。

【完結】私が貴方の元を去ったわけ

なか
恋愛
「貴方を……愛しておりました」  国の英雄であるレイクス。  彼の妻––リディアは、そんな言葉を残して去っていく。  離婚届けと、別れを告げる書置きを残された中。  妻であった彼女が突然去っていった理由を……   レイクスは、大きな後悔と、恥ずべき自らの行為を知っていく事となる。      ◇◇◇  プロローグ、エピローグを入れて全13話  完結まで執筆済みです。    久しぶりのショートショート。  懺悔をテーマに書いた作品です。  もしよろしければ、読んでくださると嬉しいです!

【完結】どうかその想いが実りますように

おもち。
恋愛
婚約者が私ではない別の女性を愛しているのは知っている。お互い恋愛感情はないけど信頼関係は築けていると思っていたのは私の独りよがりだったみたい。 学園では『愛し合う恋人の仲を引き裂くお飾りの婚約者』と陰で言われているのは分かってる。 いつまでも貴方を私に縛り付けていては可哀想だわ、だから私から貴方を解放します。 貴方のその想いが実りますように…… もう私には願う事しかできないから。 ※ざまぁは薄味となっております。(当社比)もしかしたらざまぁですらないかもしれません。汗 お読みいただく際ご注意くださいませ。 ※完結保証。全10話+番外編1話です。 ※番外編2話追加しました。 ※こちらの作品は「小説家になろう」、「カクヨム」にも掲載しています。