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第14話 シアの過去③
アイリーンが人間界へ下りてから八年の歳月が経過した。
彼女は相変わらずグランダール侯爵の庇護のもと、贅沢な暮らしを続けていた。
「一時はどうなることかと思ったけど……なぁんだ、案外どうにでもなるのね」
アイリーンはグランダール侯爵から王都に豪華な家を与えられていた。
使用人たちがアイリーン母娘に付き、毎日美味しいご飯を食べ、好きなことをして暮らす。
その生活はまるで貴族のようだった。
いや、貴族よりもよっぽどいい暮らしをしているかもしれない。
彼女はそんな生活に慣れ、警戒心を緩めていた。
それが仇となった――
「――やっと見つけたぞ、アイリーン」
「ア、アンタは……!」
ある日突然彼女の暮らす邸宅に現れ、喉元に剣先を突きつけたのは、ラギレス・フォルティナ公爵だった。
かつて魔国で彼女を追いかけ回した張本人。
「どうしてアンタがここにいるのよ!私のことなんかとっくに諦めたと思っていたのに!」
「諦める?そのような言葉は私の辞書には存在しない」
アイリーンは魔国では未だに指名手配犯として知られていた。
そしてラギレスには、絶対にアイリーンを捕まえなければならない理由があった。
「お前がかけた魅了魔法のせいで、私の部下は心を病んでしまい自ら命を絶った」
「な、何ですって?」
アイリーンが魔国で最後に魅了魔法をかけた相手は、ラギレスの直属の部下だった伯爵だった。
彼は八年前、正気に戻ってからずっと自身が魅了魔法をかけられたことを恥じていた。
愛する妻を裏切ったという自責の念もあったのだろう。
結局最後はそのことに耐えられずに自死を選んだ。
ラギレスは彼の死に、彼が遺していった家族と共に涙を流した。
「彼にはまだ幼い子供と妻がいた。それについて何か思うことはあるか」
「し、知らないわよそんなの!大体魔王軍の隊員ともあろう男が、私の魅了魔法で簡単に操られちゃうんだもの。魔王軍も大したことないのね!」
「……お前はどれだけ腐りきっているんだ」
ラギレスは八年前から全く変わっていないアイリーンの姿に、慈悲は必要ないと感じた。
より一層鋭さを増すラギレスの目に、アイリーンはビクリと肩を震わせた。
アイリーンは魅了魔法を使えるだけのただの魔族の女。
実力で魔王軍団長にまで上り詰めたラギレスにかなうはずがない。
「……私をどうするつもり?」
「それは魔王様が決めることだ」
ラギレスはアイリーンを魔法で拘束した。
「キャアッ!」
鎖でグルグル巻きになったアイリーンは、何とか逃げようと暴れるがビクともしない。
彼は拘束されたアイリーンの髪を引っ張り、強引に連行した。
「ちょっと痛いわよ!やめて!私に触らないでよ!」
アイリーンは暴れながらみっともなく泣き叫ぶも、彼が手を緩めることはなかった。
そんな母の姿を、当時八歳だった娘のシアは物陰に身を潜めてじっと見つめていた。
「ママが……魔王軍の男に連れていかれたわ……!」
母親のその姿は、彼女にとって消えない心の傷として永遠に残ることとなった。
彼女は相変わらずグランダール侯爵の庇護のもと、贅沢な暮らしを続けていた。
「一時はどうなることかと思ったけど……なぁんだ、案外どうにでもなるのね」
アイリーンはグランダール侯爵から王都に豪華な家を与えられていた。
使用人たちがアイリーン母娘に付き、毎日美味しいご飯を食べ、好きなことをして暮らす。
その生活はまるで貴族のようだった。
いや、貴族よりもよっぽどいい暮らしをしているかもしれない。
彼女はそんな生活に慣れ、警戒心を緩めていた。
それが仇となった――
「――やっと見つけたぞ、アイリーン」
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ある日突然彼女の暮らす邸宅に現れ、喉元に剣先を突きつけたのは、ラギレス・フォルティナ公爵だった。
かつて魔国で彼女を追いかけ回した張本人。
「どうしてアンタがここにいるのよ!私のことなんかとっくに諦めたと思っていたのに!」
「諦める?そのような言葉は私の辞書には存在しない」
アイリーンは魔国では未だに指名手配犯として知られていた。
そしてラギレスには、絶対にアイリーンを捕まえなければならない理由があった。
「お前がかけた魅了魔法のせいで、私の部下は心を病んでしまい自ら命を絶った」
「な、何ですって?」
アイリーンが魔国で最後に魅了魔法をかけた相手は、ラギレスの直属の部下だった伯爵だった。
彼は八年前、正気に戻ってからずっと自身が魅了魔法をかけられたことを恥じていた。
愛する妻を裏切ったという自責の念もあったのだろう。
結局最後はそのことに耐えられずに自死を選んだ。
ラギレスは彼の死に、彼が遺していった家族と共に涙を流した。
「彼にはまだ幼い子供と妻がいた。それについて何か思うことはあるか」
「し、知らないわよそんなの!大体魔王軍の隊員ともあろう男が、私の魅了魔法で簡単に操られちゃうんだもの。魔王軍も大したことないのね!」
「……お前はどれだけ腐りきっているんだ」
ラギレスは八年前から全く変わっていないアイリーンの姿に、慈悲は必要ないと感じた。
より一層鋭さを増すラギレスの目に、アイリーンはビクリと肩を震わせた。
アイリーンは魅了魔法を使えるだけのただの魔族の女。
実力で魔王軍団長にまで上り詰めたラギレスにかなうはずがない。
「……私をどうするつもり?」
「それは魔王様が決めることだ」
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「キャアッ!」
鎖でグルグル巻きになったアイリーンは、何とか逃げようと暴れるがビクともしない。
彼は拘束されたアイリーンの髪を引っ張り、強引に連行した。
「ちょっと痛いわよ!やめて!私に触らないでよ!」
アイリーンは暴れながらみっともなく泣き叫ぶも、彼が手を緩めることはなかった。
そんな母の姿を、当時八歳だった娘のシアは物陰に身を潜めてじっと見つめていた。
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