18 / 19
第18話 アリサの選択
会場が混乱に包まれている中、ラギレスは声を張り上げた。
「一連の騒動からわかるように、シア・グランダールはれっきとした魔族であり、人間ではない。彼女とグランダール侯爵の間に血の繋がりは一切ない!」
彼のその声に、場が静まり返った。
「魔族シアは魅了魔法を使い人間界を混乱させた大罪人として、魔国で裁きを与える!」
そこまで言うと、ラギレスはチラリと会場の端に目をやった。
「――よいな、グランダール侯爵?」
「グランダール侯爵……?」
私は驚いて彼の視線を追った。
「……はい、フォルティナ公爵閣下」
「……お父様」
彼の視線の先にいたのは私の父親だった。
父は最後に見たときと雰囲気がかなり変わり、やつれた顔をしていた。
(お父様は……あんなに老けていたかしら?)
驚いて声も出せない私に、ラギレスが耳元でそっと囁いた。
「魅了魔法の影響だ。侯爵は最も長くシアの近くにいたからな」
「副作用みたいなものでしょうか?」
「そうだな、体中を蝕んでいた魅了魔法が解けた今、その反動が一気に来ているんだろう」
父は他の貴族たちと違って、シアが侯爵家へ来る前から彼女の魅了魔法にかけられていた。
ある意味彼女の一番の被害者ともいえるだろう。
だが、しかし――
「……」
不思議と可哀想とは思わなかった。
たしかに彼は被害者だったかもしれないが、私にとってはそんなこと関係ない。
――父がこれから何をしようと、過去をなくすことはできない。
「アリサ……」
そんな私の考えなど気付いていないのか、父は薄っすらと涙が滲んだ瞳で私を見つめた。
散々虐げてきたくせに、今さらそんな目で見ないでほしいものだ。
父は私たちの元へゆっくりと歩み寄ると、ラギレスの前で膝をついた。
「シア・グランダール……いや、魔族シアは我がグランダール侯爵家の人間ではありません。彼女の沙汰は公爵閣下にお任せします」
「ああ、もちろんだ」
彼は当たり前だというようにうなずいた。
その間も、ラギレスの父を見る目は氷のように冷たかった。
そして父は、彼の隣にいた私に視線を移した。
虚ろな瞳が、私を捉えた。
「アリサ」
「お父様……?」
立ち上がった父が、おもむろに私に手を伸ばした。
そのとき、ちょうど父に手を上げられた昔の記憶が脳裏をよぎった。
叩かれた理由は、たしかシアのことを仲間外れにしたとかそんなことだった。
(な、何をするつもり……?)
あの日のように殴られるのではないか。
そう思うと、恐怖で身体が震えた。
パシンッ!
「……え」
「あ……」
私は無意識にその手を振り払っていた。
「アリサ……?」
「……」
ショックを受けたような目でこちらを見つめる父に、私は何も言えずにうつむいた。
「ごめんなさい、お父様」
その瞬間、私の目から涙が零れ落ちた。
「――私は、一生貴方を受け入れることはできません」
「一連の騒動からわかるように、シア・グランダールはれっきとした魔族であり、人間ではない。彼女とグランダール侯爵の間に血の繋がりは一切ない!」
彼のその声に、場が静まり返った。
「魔族シアは魅了魔法を使い人間界を混乱させた大罪人として、魔国で裁きを与える!」
そこまで言うと、ラギレスはチラリと会場の端に目をやった。
「――よいな、グランダール侯爵?」
「グランダール侯爵……?」
私は驚いて彼の視線を追った。
「……はい、フォルティナ公爵閣下」
「……お父様」
彼の視線の先にいたのは私の父親だった。
父は最後に見たときと雰囲気がかなり変わり、やつれた顔をしていた。
(お父様は……あんなに老けていたかしら?)
驚いて声も出せない私に、ラギレスが耳元でそっと囁いた。
「魅了魔法の影響だ。侯爵は最も長くシアの近くにいたからな」
「副作用みたいなものでしょうか?」
「そうだな、体中を蝕んでいた魅了魔法が解けた今、その反動が一気に来ているんだろう」
父は他の貴族たちと違って、シアが侯爵家へ来る前から彼女の魅了魔法にかけられていた。
ある意味彼女の一番の被害者ともいえるだろう。
だが、しかし――
「……」
不思議と可哀想とは思わなかった。
たしかに彼は被害者だったかもしれないが、私にとってはそんなこと関係ない。
――父がこれから何をしようと、過去をなくすことはできない。
「アリサ……」
そんな私の考えなど気付いていないのか、父は薄っすらと涙が滲んだ瞳で私を見つめた。
散々虐げてきたくせに、今さらそんな目で見ないでほしいものだ。
父は私たちの元へゆっくりと歩み寄ると、ラギレスの前で膝をついた。
「シア・グランダール……いや、魔族シアは我がグランダール侯爵家の人間ではありません。彼女の沙汰は公爵閣下にお任せします」
「ああ、もちろんだ」
彼は当たり前だというようにうなずいた。
その間も、ラギレスの父を見る目は氷のように冷たかった。
そして父は、彼の隣にいた私に視線を移した。
虚ろな瞳が、私を捉えた。
「アリサ」
「お父様……?」
立ち上がった父が、おもむろに私に手を伸ばした。
そのとき、ちょうど父に手を上げられた昔の記憶が脳裏をよぎった。
叩かれた理由は、たしかシアのことを仲間外れにしたとかそんなことだった。
(な、何をするつもり……?)
あの日のように殴られるのではないか。
そう思うと、恐怖で身体が震えた。
パシンッ!
「……え」
「あ……」
私は無意識にその手を振り払っていた。
「アリサ……?」
「……」
ショックを受けたような目でこちらを見つめる父に、私は何も言えずにうつむいた。
「ごめんなさい、お父様」
その瞬間、私の目から涙が零れ落ちた。
「――私は、一生貴方を受け入れることはできません」
あなたにおすすめの小説
もう演じなくて結構です
梨丸
恋愛
侯爵令嬢セリーヌは最愛の婚約者が自分のことを愛していないことに気づく。
愛しの婚約者様、もう婚約者を演じなくて結構です。
11/5HOTランキング入りしました。ありがとうございます。
感想などいただけると、嬉しいです。
11/14 完結いたしました。
11/16 完結小説ランキング総合8位、恋愛部門4位ありがとうございます。
初恋の人を思い出して辛いから、俺の前で声を出すなと言われました
柚木ゆず
恋愛
「俺の前で声を出すな!!」
マトート子爵令嬢シャルリーの婚約者であるレロッズ伯爵令息エタンには、隣国に嫁いでしまった初恋の人がいました。
シャルリーの声はその女性とそっくりで、聞いていると恋人になれなかったその人のことを思い出してしまう――。そんな理由でエタンは立場を利用してマトート家に圧力をかけ、自分の前はもちろんのこと不自然にならないよう人前で声を出すことさえも禁じてしまったのです。
自分の都合で好き放題するエタン、そんな彼はまだ知りません。
その傍若無人な振る舞いと自己中心的な性格が、あまりにも大きな災難をもたらしてしまうことを。
※11月18日、本編完結。時期は未定ではありますが、シャルリーのその後などの番外編の投稿を予定しております。
※体調の影響により一時的に、最新作以外の感想欄を閉じさせていただいております。
お望み通り、消えてさしあげますわ
梨丸
恋愛
一国の次期王妃と言われていた子爵令嬢アマリリス。
王太子との結婚前夜、彼女は自ら火を放ち、死んだ。
国民達は彼女の死を特に気にもしなかった。それどころか、彼女の死を喜ぶ者もいた。彼女の有していた聖女の力は大したものではなかったし、優れているのは外見だけの“役立たずの聖女”だと噂されるほどだったから。
彼女の死後、すぐさま後釜として皆に好かれていた聖女が次期王妃に召し上げられた。
この国はより豊かになる、皆はそう確信した。
だが、“役立たずの聖女”アマリリスの死後──着実に崩壊は始まっていた。
※投稿してから、誤字脱字などの修正やわかりにくい部分の補足をすることがあります。(話の筋は変わらないのでご安心ください。)
※この調子だと短編になりそうです。
わたしがお屋敷を去った結果
柚木ゆず
恋愛
両親、妹、婚約者、使用人。ロドレル子爵令嬢カプシーヌは周囲の人々から理不尽に疎まれ酷い扱いを受け続けており、これ以上はこの場所で生きていけないと感じ人知れずお屋敷を去りました。
――カプシーヌさえいなくなれば、何もかもうまく行く――。
――カプシーヌがいなくなったおかげで、嬉しいことが起きるようになった――。
関係者たちは大喜びしていましたが、誰もまだ知りません。今まで幸せな日常を過ごせていたのはカプシーヌのおかげで、そんな彼女が居なくなったことで自分達の人生は間もなく180度変わってしまうことを。
17日本編完結。4月1日より、それぞれのその後を描く番外編の投稿をさせていただきます。
【完結】私が貴方の元を去ったわけ
なか
恋愛
「貴方を……愛しておりました」
国の英雄であるレイクス。
彼の妻––リディアは、そんな言葉を残して去っていく。
離婚届けと、別れを告げる書置きを残された中。
妻であった彼女が突然去っていった理由を……
レイクスは、大きな後悔と、恥ずべき自らの行為を知っていく事となる。
◇◇◇
プロローグ、エピローグを入れて全13話
完結まで執筆済みです。
久しぶりのショートショート。
懺悔をテーマに書いた作品です。
もしよろしければ、読んでくださると嬉しいです!
【完結】どうかその想いが実りますように
おもち。
恋愛
婚約者が私ではない別の女性を愛しているのは知っている。お互い恋愛感情はないけど信頼関係は築けていると思っていたのは私の独りよがりだったみたい。
学園では『愛し合う恋人の仲を引き裂くお飾りの婚約者』と陰で言われているのは分かってる。
いつまでも貴方を私に縛り付けていては可哀想だわ、だから私から貴方を解放します。
貴方のその想いが実りますように……
もう私には願う事しかできないから。
※ざまぁは薄味となっております。(当社比)もしかしたらざまぁですらないかもしれません。汗
お読みいただく際ご注意くださいませ。
※完結保証。全10話+番外編1話です。
※番外編2話追加しました。
※こちらの作品は「小説家になろう」、「カクヨム」にも掲載しています。
嘘つきな貴方を捨てさせていただきます
梨丸
恋愛
断頭台に上がった公爵令嬢フレイアが最期に聞いた言葉は最愛の婚約者の残忍な言葉だった。
「さっさと死んでくれ」
フレイアを断頭台へと導いたのは最愛の婚約者だった。
愛していると言ってくれたのは嘘だったのね。
嘘つきな貴方なんて、要らない。
※投稿してから、誤字脱字などの修正やわかりにくい部分の補足をすることがあります。(話の筋は変わらないのでご安心ください。)
11/27HOTランキング5位ありがとうございます。
※短編と長編の狭間のような長さになりそうなので、短編にするかもしれません。
1/2累計ポイント100万突破、ありがとうございます。
完結小説ランキング恋愛部門8位ありがとうございます。