結婚初夜、「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と夫に言われました

ましゅぺちーの

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第18話 アリサの選択

会場が混乱に包まれている中、ラギレスは声を張り上げた。


「一連の騒動からわかるように、シア・グランダールはれっきとした魔族であり、人間ではない。彼女とグランダール侯爵の間に血の繋がりは一切ない!」


彼のその声に、場が静まり返った。


「魔族シアは魅了魔法を使い人間界を混乱させた大罪人として、魔国で裁きを与える!」


そこまで言うと、ラギレスはチラリと会場の端に目をやった。


「――よいな、グランダール侯爵?」
「グランダール侯爵……?」


私は驚いて彼の視線を追った。


「……はい、フォルティナ公爵閣下」
「……お父様」


彼の視線の先にいたのは私の父親だった。
父は最後に見たときと雰囲気がかなり変わり、やつれた顔をしていた。


(お父様は……あんなに老けていたかしら?)


驚いて声も出せない私に、ラギレスが耳元でそっと囁いた。


「魅了魔法の影響だ。侯爵は最も長くシアの近くにいたからな」
「副作用みたいなものでしょうか?」
「そうだな、体中を蝕んでいた魅了魔法が解けた今、その反動が一気に来ているんだろう」


父は他の貴族たちと違って、シアが侯爵家へ来る前から彼女の魅了魔法にかけられていた。
ある意味彼女の一番の被害者ともいえるだろう。
だが、しかし――


「……」


不思議と可哀想とは思わなかった。
たしかに彼は被害者だったかもしれないが、私にとってはそんなこと関係ない。


――父がこれから何をしようと、過去をなくすことはできない。


「アリサ……」


そんな私の考えなど気付いていないのか、父は薄っすらと涙が滲んだ瞳で私を見つめた。
散々虐げてきたくせに、今さらそんな目で見ないでほしいものだ。


父は私たちの元へゆっくりと歩み寄ると、ラギレスの前で膝をついた。


「シア・グランダール……いや、魔族シアは我がグランダール侯爵家の人間ではありません。彼女の沙汰は公爵閣下にお任せします」
「ああ、もちろんだ」


彼は当たり前だというようにうなずいた。
その間も、ラギレスの父を見る目は氷のように冷たかった。


そして父は、彼の隣にいた私に視線を移した。
虚ろな瞳が、私を捉えた。


「アリサ」
「お父様……?」


立ち上がった父が、おもむろに私に手を伸ばした。
そのとき、ちょうど父に手を上げられた昔の記憶が脳裏をよぎった。
叩かれた理由は、たしかシアのことを仲間外れにしたとかそんなことだった。


(な、何をするつもり……?)


あの日のように殴られるのではないか。
そう思うと、恐怖で身体が震えた。


パシンッ!


「……え」
「あ……」


私は無意識にその手を振り払っていた。


「アリサ……?」
「……」


ショックを受けたような目でこちらを見つめる父に、私は何も言えずにうつむいた。


「ごめんなさい、お父様」


その瞬間、私の目から涙が零れ落ちた。


「――私は、一生貴方を受け入れることはできません」




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