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第19話 彼と共に
その言葉に、父は絶望の表情を浮かべた。
「お父様、どうか最後の願いです。シアをグランダール侯爵家から除籍したと同時に、私の籍も侯爵家から抜いてほしいのです」
「な……何を言っているんだ……?」
父親は理解が追いつかないという顔で私を見た。
「――王太子殿下」
「……アリサ」
次に私は、王太子のほうに視線をやった。
「私と離婚してください」
「そんな……!」
王太子は離婚を突きつけられてひどく動揺しているようだった。
彼はもうダメなのかもしれないと心のどこかでわかっていながらも、みっともなく縋りついた。
「アリサ、待ってくれ……離婚だなんてそんな……」
「もう決めたことです」
今度は父親が声を上げた。
「侯爵家から籍を抜くだなんて……私の娘ではなくなるということになるんだぞ?」
「ええ、娘だったことなんてありませんから」
「……!」
キッパリ言い切ると、父はショックを受けたような顔で項垂れた。
「お父様、いえグランダール侯爵……」
「……」
”グランダール侯爵”
あからさまに他人行儀な呼び方をされた父は、肩を震わせながら顔を上げた。
「侯爵夫人に……さよならと伝えておいてください」
グランダール侯爵夫妻は、もはや私の両親ではなかった。
彼らの元へ戻る気などない。
これで、すべてが終わる。
(終わりよ……二人と私は何の関係もなくなる)
項垂れる父から背を向けて歩き出してしばらくすると、彼の嗚咽が耳に入った。
しかし私は振り返らなかった。
***
「これくらいでいいかな……」
王太子妃として与えられた部屋で荷物をまとめていると、突然扉をノックされた。
「はい、どちらさまでしょう……?って、ラギレス様……?」
扉を開けると、ラギレスが立っていた。
「どうしてこちらへ……?舞踏会は終わったはずでは……」
「ああ、会場が大混乱で舞踏会どころではなかったからな」
結婚祝いのために開かれた舞踏会は中止せざるを得なかった。
あんなことがあったあとだ、当然だろう。
「侯爵は……」
「邸に帰ったよ。王太子も放心状態だったが部屋へ戻った。君との約束については、私が圧をかけておいたからしっかりと遂行してくれるだろう」
「良かった……!」
今になって認めないと言われたらどうしようかと思ったが、ラギレスが一役買ってくれたようだ。
「ところで、君はこれからどうするつもりだ?」
「……侯爵家には帰れないので、平民になるでしょう」
その言葉に、何か思うところがあるかのようにラギレスは黙り込んだあと、ゆっくりと口を開いた。
「――行くところが無いなら、私と共に魔国へ来ないか?」
「…………魔国にですか?」
驚きの提案だった。
魔国に人間が移住するなど聞いたことがない。
大体人間である私が、魔族たちに受け入れられるだろうか。
そんな私の考えを読んだのか、彼が付け加えた。
「魔国は様々な種族が共に暮らす場所だ。きっと君も受け入れてくれるだろう。公爵である私の元で過ごせば……誰も君を無下にはできないはずだ」
「ラギレス様……!」
ラギレスは私に唯一優しくしてくれた人だった。
そんな彼と共に生きていきたい、そんな気持ちが沸き上がってくる。
「私、行きたいです!ラギレス様たちの住む魔国へ!」
「そうか」
ラギレスは小さく微笑み、私は差し出された彼の手を取った。
―――――――――――――――――――――――――――――
ここまで読んでくださり、ありがとうございました!
「お父様、どうか最後の願いです。シアをグランダール侯爵家から除籍したと同時に、私の籍も侯爵家から抜いてほしいのです」
「な……何を言っているんだ……?」
父親は理解が追いつかないという顔で私を見た。
「――王太子殿下」
「……アリサ」
次に私は、王太子のほうに視線をやった。
「私と離婚してください」
「そんな……!」
王太子は離婚を突きつけられてひどく動揺しているようだった。
彼はもうダメなのかもしれないと心のどこかでわかっていながらも、みっともなく縋りついた。
「アリサ、待ってくれ……離婚だなんてそんな……」
「もう決めたことです」
今度は父親が声を上げた。
「侯爵家から籍を抜くだなんて……私の娘ではなくなるということになるんだぞ?」
「ええ、娘だったことなんてありませんから」
「……!」
キッパリ言い切ると、父はショックを受けたような顔で項垂れた。
「お父様、いえグランダール侯爵……」
「……」
”グランダール侯爵”
あからさまに他人行儀な呼び方をされた父は、肩を震わせながら顔を上げた。
「侯爵夫人に……さよならと伝えておいてください」
グランダール侯爵夫妻は、もはや私の両親ではなかった。
彼らの元へ戻る気などない。
これで、すべてが終わる。
(終わりよ……二人と私は何の関係もなくなる)
項垂れる父から背を向けて歩き出してしばらくすると、彼の嗚咽が耳に入った。
しかし私は振り返らなかった。
***
「これくらいでいいかな……」
王太子妃として与えられた部屋で荷物をまとめていると、突然扉をノックされた。
「はい、どちらさまでしょう……?って、ラギレス様……?」
扉を開けると、ラギレスが立っていた。
「どうしてこちらへ……?舞踏会は終わったはずでは……」
「ああ、会場が大混乱で舞踏会どころではなかったからな」
結婚祝いのために開かれた舞踏会は中止せざるを得なかった。
あんなことがあったあとだ、当然だろう。
「侯爵は……」
「邸に帰ったよ。王太子も放心状態だったが部屋へ戻った。君との約束については、私が圧をかけておいたからしっかりと遂行してくれるだろう」
「良かった……!」
今になって認めないと言われたらどうしようかと思ったが、ラギレスが一役買ってくれたようだ。
「ところで、君はこれからどうするつもりだ?」
「……侯爵家には帰れないので、平民になるでしょう」
その言葉に、何か思うところがあるかのようにラギレスは黙り込んだあと、ゆっくりと口を開いた。
「――行くところが無いなら、私と共に魔国へ来ないか?」
「…………魔国にですか?」
驚きの提案だった。
魔国に人間が移住するなど聞いたことがない。
大体人間である私が、魔族たちに受け入れられるだろうか。
そんな私の考えを読んだのか、彼が付け加えた。
「魔国は様々な種族が共に暮らす場所だ。きっと君も受け入れてくれるだろう。公爵である私の元で過ごせば……誰も君を無下にはできないはずだ」
「ラギレス様……!」
ラギレスは私に唯一優しくしてくれた人だった。
そんな彼と共に生きていきたい、そんな気持ちが沸き上がってくる。
「私、行きたいです!ラギレス様たちの住む魔国へ!」
「そうか」
ラギレスは小さく微笑み、私は差し出された彼の手を取った。
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