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優柔不断な妹さん(女教皇の逆位置)
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「どうしましょう……主様!」
「……あの、このやり取り五回目くらいになるんだけど……」
どんなに些細な決め事であっても、彼女の前では大事になってしまう。それだけ重要視しなければならない事なのかと疑いたくもなるが、人によって重要の度合いも異なるのだからと言い聞かせ、話を聞くこと一時間。何一つ決まっていない事に呆れつつ、私は溜息をついた。
彼女は『女教皇』の逆位置、正位置さんとは姉妹である。タロットカードの正位置逆位置は、基本的には相対する存在が多いのだが、一部のカードには兄弟姉妹関係があるようだ。冷静沈着で賢い正位置さんと比べ、彼女の持つ主な意味は『優柔不断・迷路に迷い込む・後戻りできない』など。その意味が相俟って、何に対しても悩んでしまう性格らしい。
「嗚呼……どうしたら良いのでしょうか。とても決められることではありませんわ……」
「真剣に考えているところ悪いんだけど、どっちでもいいんじゃないかな?」
彼女が今判断に迷っていることは単純で、髪を梳かす櫛を木製にするかプラスチックにするか。どちらにするかの判断に一時間かけているが、一向に決まらない。何度かアドバイスを言ってみたものの、結果は変わらないので諦めて彼女の判断を待っていたのだが、これではキリがない。
「どちらでも良いだなんて、私には出来ませんわ。やはり真剣に考えなくては……!」
「いやいや、髪を梳かすっていう目的はどちらも満たしてくれるわけだし……後は品質とかの問題でしょう? 静電気とか気にするなら木製の方がいいだろうし、定期的に洗ったりしたいならプラスチック製がいいし……どっちが自分に合っているかの問題じゃない」
そうは言うものの、相変わらず彼女は悩んだまま。逆にここまで悩めるなんて関心ものだ。
「どちらも、それぞれの良さがあるからこそ悩むのでございます。選ばれなかった方にだって、良さもありますし、あの時あちらにしておけば良かったと後悔したくないのでございます……」
逆位置さんは、ものや人の長所を、素早く見抜くことが出来るのだが、見抜けるからこそ悩んでしまうのだという。それぞれの良さを知っているから、どちらが一番というようには決められないのだろう。
「ならさ、両方使うのはどう? 朝はプラスチック製、夜は木製って感じで両方使いすれば、どっちの良さも生かせるんじゃないかな?」
「まぁ……! それは名案ですわね、そうしましょう!」
私の提案に、彼女は嬉しそうに笑った。それでやっと解放される……と、思ったその矢先。
「では主様。どのプラスチック製、木製にすれば良いと思いますか? こちらは椿オイルが入ったプラスチック製の櫛で、こちらは桃の木から作られた木製の櫛で……」
これは一生決まる気がしないなと、観念した私だった。
「……あの、このやり取り五回目くらいになるんだけど……」
どんなに些細な決め事であっても、彼女の前では大事になってしまう。それだけ重要視しなければならない事なのかと疑いたくもなるが、人によって重要の度合いも異なるのだからと言い聞かせ、話を聞くこと一時間。何一つ決まっていない事に呆れつつ、私は溜息をついた。
彼女は『女教皇』の逆位置、正位置さんとは姉妹である。タロットカードの正位置逆位置は、基本的には相対する存在が多いのだが、一部のカードには兄弟姉妹関係があるようだ。冷静沈着で賢い正位置さんと比べ、彼女の持つ主な意味は『優柔不断・迷路に迷い込む・後戻りできない』など。その意味が相俟って、何に対しても悩んでしまう性格らしい。
「嗚呼……どうしたら良いのでしょうか。とても決められることではありませんわ……」
「真剣に考えているところ悪いんだけど、どっちでもいいんじゃないかな?」
彼女が今判断に迷っていることは単純で、髪を梳かす櫛を木製にするかプラスチックにするか。どちらにするかの判断に一時間かけているが、一向に決まらない。何度かアドバイスを言ってみたものの、結果は変わらないので諦めて彼女の判断を待っていたのだが、これではキリがない。
「どちらでも良いだなんて、私には出来ませんわ。やはり真剣に考えなくては……!」
「いやいや、髪を梳かすっていう目的はどちらも満たしてくれるわけだし……後は品質とかの問題でしょう? 静電気とか気にするなら木製の方がいいだろうし、定期的に洗ったりしたいならプラスチック製がいいし……どっちが自分に合っているかの問題じゃない」
そうは言うものの、相変わらず彼女は悩んだまま。逆にここまで悩めるなんて関心ものだ。
「どちらも、それぞれの良さがあるからこそ悩むのでございます。選ばれなかった方にだって、良さもありますし、あの時あちらにしておけば良かったと後悔したくないのでございます……」
逆位置さんは、ものや人の長所を、素早く見抜くことが出来るのだが、見抜けるからこそ悩んでしまうのだという。それぞれの良さを知っているから、どちらが一番というようには決められないのだろう。
「ならさ、両方使うのはどう? 朝はプラスチック製、夜は木製って感じで両方使いすれば、どっちの良さも生かせるんじゃないかな?」
「まぁ……! それは名案ですわね、そうしましょう!」
私の提案に、彼女は嬉しそうに笑った。それでやっと解放される……と、思ったその矢先。
「では主様。どのプラスチック製、木製にすれば良いと思いますか? こちらは椿オイルが入ったプラスチック製の櫛で、こちらは桃の木から作られた木製の櫛で……」
これは一生決まる気がしないなと、観念した私だった。
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