私と彼等の日常は、あまりにも非現実的すぎる(逆位置編)

死神の嫁

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大人の在り方(隠者の逆位置)

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「おやおや……誰かと思えば孫ではないか」
「あ……逆じいちゃん」
「ちょろちょろとどこに行くのかね……? 落とし穴にはまっては大変じゃよ……ひっひっひっ!」

 この如何にも怪しいご老人、私の二人目のおじいちゃんです。
 彼の名は『隠者』の逆位置、正位置のおじいちゃんとは相対する存在である。主な意味は『騙し合い・闇に引きずり込む・疑心暗鬼』など。正位置のおじいちゃんは優しいおじいちゃんという印象だが、逆位置のおじいちゃんは意地悪爺さんという印象だ。
 その印象もあながち間違いではないようで、何度か意地悪ないたずらに引っかかっている。

「ということは、何処かにトラップを仕掛けたということだね」
「さぁの~……それはどうじゃろうのぉ~……ひっひっひっ!」
「相変わらず意地悪だね、逆じいちゃんは。大人なんだからもう少しまともなことしたらいいのに……」
「おやおや、孫は大人を何だと思うておるのじゃろうねぇ……わしが本当の大人の在り方とやらを教えてやらんといかんようじゃ……」
「え……? 急に何?」
「まぁいいから、ここに座りなさい」

 どうやら何か余計なことを言ってしまったらしい。こうなると正位置のおじいちゃん同様、話が長いし気の済むまで話が続く。
 まぁ、お菓子とか食べながら聞けるし、何だかんだ楽しいからいいんだけど……なんて思いながら、言われた通りに座って話を聞くことにした。
 ここから、逆じいちゃんの話。

 よいか孫よ、孫が思うておる大人とやらは、実際の大人とは偉く違うものなんじゃ。
 お主が思う大人は、恐らく子供のように『我儘ばかりを言わず、人のことを考えて行動できる』者の事を指すのじゃろうが、それは大間違いじゃ。
 ここで考えてみるがいい、大人が言う『子供の我儘』とはどのようなものを指すのか。
 勿論おもちゃが欲しいとか、嫌いなものを食べたくないなどといったものもあるじゃろうが、すべてがそうというわけではない。
 子供ながらに思うことを言うておる場合もあるじゃろう、然し大人はそれでさえも『子供が勝手に言っている我儘である』と決めつけ、子供の意見を踏みにじっているのじゃ。
 そうして育てられた子供はどうじゃ、お主らがいう『大人』になった時、また同じことを繰り返すじゃろう。
 子供の方がの、建前や都合を無視して直球に意見を言えるのじゃ。勿論妥協も大事ではあるが、そればかりでは不満ばかりたまる。
 お主も経験があるじゃろう、妥協をした結果不満がたまり、妥協をさせられたとまるで自分が被害を被ったかのようにいい、その者を悪評してしまう。
 人によって合う合わないがあるのは仕方のないことじゃが、『大人』はそれを陰で拡散し、自分が原点である事を隠そうとする。
 それが、『大人』なのじゃよ。自身が今まで培ってきた浅はかな経験値を盾にして、ありとあらゆる方法で覆い隠し、他人を陰から襲い、時には牙をむき蹴落とそうともする……なんとも恐ろしいものじゃな。
 世の中には、『初心忘るべからず』という言葉があるが、それは子供の時に確かにあった純粋な気持ちを忘れてはならんということを示しているのではないかとわしは思うのじゃ。
 大人というのは本来、身体の成長を指すものじゃ。心の成長に関しては身体と相対することの方が多い。
 故に身体だけが大人といえど、中身までがそうであるとは限らないじゃろう。

 そこまで話し終え、お茶をすする逆じいちゃん。確かに一理ある、だからといって毎回のいたずらに納得はできないのだが。
 まぁ、矛盾もまた一興。そういう考えもあると、『大人』になっておこうと思ったのだった。
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