私と彼等の日常は、あまりにも非現実的すぎる(逆位置編)

死神の嫁

文字の大きさ
9 / 13

無邪気な抵抗(力の逆位置)

しおりを挟む
「あ、主!」
「こんにちは、今日も元気だね」
「ねぇ主、これ買って!」
「ちょっと待って何そのリスト……これ全部買ってくれって?」

 出会い頭に端から端までびっしり書き込まれた紙を渡され、さも当然のようにねだってくる彼女の名は『力』の逆位置。主な意味は『爆発・自己中心・駄々をこねる』などで、この通りかなりのわがままである。正位置さん同様に容姿は幼女そのものなので、子供の我儘だと思えばまだ納得がいくのだが、それにしてはかなりの我儘である。

「うん、これ全部欲しいの!」
「前に別のやつあげたばっかりじゃない、前のはどうしたの?」
「前のはもういいの、今は新しいやつがいいの! ねぇ買って買って!」

 彼女は新しい物好きなところがあり、流行物や新作を毎回チェックしている。その中で気に入ったものをこのようにリスト化し、私に渡してねだってくる。そのスピードは凄まじいもので、ほんの一日で新しいものを欲しがるのだ。その度に何とか断るのだが、諦めが悪い彼女はあの手この手でねだってくる。

「だから無理だってば……申し訳ないけど私にはとても」
「主にしか頼めないんだもん……あたしの性格とか、ちゃんと理解してくれてるし、主にだから話せるんだもん」
「力ちゃん……」
「あたしだってね、我慢しようと思ってるの。でも今まで我慢してきていいことなんてひとつもなかった。我慢する方が偉いとか言われ続けてきたけど、実際は失ってばかりだったもん……」

 力の逆位置さんは過去に嫌な経験をしたようで、繰り返したくないという想いから我慢をすることをやめたのだという。
 確かに彼女の言う通り、全てを我慢したからといっていいという訳では無い。自分の意思を持つこと、それに対して行動を起こすことも重要だ。現に彼女は自分の願望を私に吐き出し、全てではないものの望みが叶っている。
 然しながら、何事も加減が重要。節制の正位置さんの言葉を借りるならば、メリハリが大切なのだ。ここは我慢する、ここは貫くときちんと決めることで、周りとの関係を保ちつつ自分の願望を叶えられるのではないかと思う。

「そっか、あなたは今まで辛い思いをしてきたんだね。これはその裏返しだって事は理解してるし、責めたい訳では無い。その経験をしているからこそ、気持ちが分かるからこそ出来ることがあるんじゃないかな」
「あたしに、出来ること?」
「うん。どこまでなら自分が我慢出来るのかとか、ここだけは我慢してはいけないとか……人によって加減具合は様々だとは思うけど、少しずつでもいいから整理出来るんじゃないかな。
それにさ、今までのものだってまだ使い道があると思うし、そこから新しいものが見出せるかもしれないじゃない?」
「新しいものを……あたしが? それ凄くいいかも!誰も持っていないようなものを、あたしが作れるかもしれないってことでしょう? 分かった、やってみる!」

 少し趣旨が違う気もするが、彼女がやる気になったのならいいかと、今後の彼女の成長ぶりを楽しみにしておこうと思うのだった。
 後日、新しいものを作る為の材料として、別のものをねだられたのは言うまでもない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

ざまぁされるための努力とかしたくない

こうやさい
ファンタジー
 ある日あたしは自分が乙女ゲームの悪役令嬢に転生している事に気付いた。  けどなんか環境違いすぎるんだけど?  例のごとく深く考えないで下さい。ゲーム転生系で前世の記憶が戻った理由自体が強制力とかってあんまなくね? って思いつきから書いただけなので。けど知らないだけであるんだろうな。  作中で「身近な物で代用できますよってその身近がすでにないじゃん的な~」とありますが『俺の知識チートが始まらない』の方が書いたのは後です。これから連想して書きました。  ただいま諸事情で出すべきか否か微妙なので棚上げしてたのとか自サイトの方に上げるべきかどうか悩んでたのとか大昔のとかを放出中です。見直しもあまり出来ないのでいつも以上に誤字脱字等も多いです。ご了承下さい。  恐らく後で消す私信。電話機は通販なのでまだ来てないけどAndroidのBlackBerry買いました、中古の。  中古でもノーパソ買えるだけの値段するやんと思っただろうけど、ノーパソの場合は妥協しての機種だけど、BlackBerryは使ってみたかった機種なので(後で「こんなの使えない」とぶん投げる可能性はあるにしろ)。それに電話機は壊れなくても後二年も経たないうちに強制的に買い換え決まってたので、最低限の覚悟はしてたわけで……もうちょっと壊れるのが遅かったらそれに手をつけてた可能性はあるけど。それにタブレットの調子も最近悪いのでガラケー買ってそっちも別に買い換える可能性を考えると、妥協ノーパソより有意義かなと。妥協して惰性で使い続けるの苦痛だからね。  ……ちなみにパソの調子ですが……なんか無意識に「もう嫌だ」とエンドレスでつぶやいてたらしいくらいの速度です。これだって10動くっていわれてるの買ってハードディスクとか取り替えてもらったりしたんだけどなぁ。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

ちゃんと忠告をしましたよ?

柚木ゆず
ファンタジー
 ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私フィーナは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢アゼット様に呼び出されました。 「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」  アゼット様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は最愛の方に護っていただいているので、貴方様に悪意があると気付けるのですよ。  アゼット様。まだ間に合います。  今なら、引き返せますよ? ※現在体調の影響により、感想欄を一時的に閉じさせていただいております。

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

物語は始まりませんでした

王水
ファンタジー
カタカナ名を覚えるのが苦手な女性が異世界転生したら……

処理中です...