私と彼等の日常は、あまりにも非現実的すぎる(逆位置編)

死神の嫁

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罪を憎んで人を憎まず(戦車の逆位置)

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罪を憎んで人を憎まず(戦車の逆位置)

 生活をしていくうえで必要不可欠であるものはいくつかあるが、その中心にあるのはお金であるように思う。
 昔は物々交換が当たり前であったものの、交換する品に対して対等なものでなければ成り立たないことから、お金が生まれたとされていると、聞いたことがあった。
 そんなお金だが、時に人を狂わせる魔性の力を持つ。

「また強盗事件が起こったんだ」

 この頃頻繁に耳にするようになった、物騒な事件。殺人事件はもちろんだが、強盗事件も同じように増えている。
 そんな事件を耳にしたりするたびに、憤りを感じるものの、自分と同じ『人間』が行ったことだと思うと悲しい気持ちになる。
 人間である以上、一度は事件を起こした彼らと同じ思考を持ってしまう。それを実行するかしないかで変わるが、状況によっては実行してしまうことだってあるだろう。

『あんなことをする人には思えなかった!』
『いい人だったのにね』

 テレビでは、事件を起こした犯人をよく知る人物が、インタビューを受けている。みなが口を揃えていう言葉に、私は苛立ちを覚え複雑な気持ちになった。

「……反吐が出る、何も知らない癖に」
「ん~確かに君の言う事も一理あると思うよ~?」
「ちょっと、いきなり声かけないでよ、びっくりしたじゃん!」

 テレビを見ていた私のすぐ真横に顔を寄せて声をかけてきたのは、『戦車』の逆位置。正位置であるお兄さんとは、相対する存在である。主な意味は『無関心・計画性のない行動・責任転換』など。
 抑揚のない話し方が特徴で、どこかいつも上の空……かと思えば唐突に何かを始めたりして周りを平気で巻き込む忙しい人である。

「あはは~楽しそうな話が聞こえたから来たんだ~」
「これのどこが楽しそうなの……? 不謹慎すぎるでしょうが」
「でもさでもさ~そういう君だって何も知らないのに言ってるよねぇ? まぁ君の場合は誰だって犯罪を犯す力はあるっていう考えからきてるんだろうけどねぇ~」
「……そうだね、確かに私はどんな人に会っても、その人が今後何かしらの問題を引き起こす可能性があるってことを心得て話している。
表面上だけでその人を評価したくないし、いろんな可能性を秘めているのが人間だから……必ず決まった動きをするとは限らない」
「本当君って変わっているよねぇ~……見ていて飽きないから不思議だなぁ~」

 彼の指摘通り、私は今までであった人もこれから出会う人も、今後何かしらの問題を引き起こす可能性があると思いながら接するようにしている。
 そしてその予感が当たった時も、決して驚くことはない。嗚呼やっぱりそうだったか、と思うだけだ。
 人によってはそれを、人を信用していないだとか、貶している行為だとか言って批判される。
 然しそれ以上に、問題を起こした人に対して、こんな人に思えなかったなどと自分の価値観を通してみていた印象とで比較をする方が、貶しているのではないかと思う。
 その人が問題を起こしたら、それまでなのか。それ以降は寄り添いもしないのか。自分が思っていた人で無かったからという理由だけで、見捨ててしまっていいのだろうか。

「……心だけが、裕福であればそれでいいのよ」

 私の言葉に、相変わらずふわふわした様子の彼は、何処か悲しそうに頷いた。
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