守護者契約~自由な大賢者達

3・T・Orion

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15. 食えない獲物

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リーシェライルは、フレイリアルが体内に内包する大賢者の証たる賢者の石によって…自身が人形として繋いだグレイシャムを再び繋ぎなおし…その肉体に入る。

その時…リーシェライルが過去に所持した…かろうじて繋がり保ち生命維持していた人形達も、フレイリアルに繋ぎ直し…使えるようにした。

今は人形の命令系統をグレイシャムに入るリーシェライルへと移し、フレイリアルの世話や情報得る役をこなす5~6体を…人型の人形として周囲に置く。
フレイリアルの…エリミア王国内で婚約者役こなすブルグドレフも、リーシェライルに強要されて繋がされた1体を持つ。

以前何十体と王城内に人形潜ませていた頃に比べれば、見たまま聞いたままの情報得る役割担う人形は居ない。

そもそも、人型の人形得るためには…死体に限りなく近い者を探さねばならない。
しかも間接的にでも魔力扱うためには内包者である必要があり…更に条件付けるならば、賢者が望ましい。
其の条件に "死にかけの…" と言う条件を加えると、相応しき器は一気に消える。

グレイシャムと言う人形は全ての条件を満たすモノであり、簡単には捨てられない。

「好条件だし、僕の手で初めて人形にしてあげたモノだから、大切にしたいんだ」

リーシェライルがリーシェライルの身体を持っていた頃、最初…グレイシャムをフレイリアルに見せた時にした説明だ。
その時に見せた…リーシェライルの輝かしき美麗な笑みや言葉に、隠された思い…が有ることなど幼かったフレイリアルが気付くはずも無かった。


大賢者に内在するモノは…繋がりを強くして同調し…内包せし力を利用すればするほど、内在するモノは意識の同一化が早まる。
その事を恐れるリーシェライルにとっては、数多く存在する人形を処分する事など…取るに足らない些細な事だ。

リーシェライルが自身を魔石に還した日。
相当数の人形が入り込んでいた王城の結界内。
各所にて、事切れている屍が…多く見つかる。

リーシェライルは賢者の石に取り込まれているだけの内なる存在…になったとしても、人形との繋がり保持する…能力や手段を持っていた。
だがリーシェライルは、自ら望んで…引き剥がすように人形との繋がりを断ち切る。
既に其の時から…フレイリアルに内包され共に歩むことを想定し、極力同化するのを避けるため…賢者の石からの魔力の導き出しを排除した。
王城内では30程の数…だが、其の周辺…各都市…各国から同様の事例を探したのなら…街1つ分程に及んだかもしれない。

限られた情報の中、相手の動きを推測し…遣り過ごし…目的を達成するには…相手の思惑が必要だ。
今回は敵対する事が主ではなく、目的を完遂する事が主なのだ。

「王の考え方としては、目的である…塔と大賢者を…フレイを…繋げるために、懐柔する切っ掛けを作りをしている…って感じかな?」

リーシェライルは、過去に得た情報と…現在は数が減っってしまった城に潜む人形から得た情報や、ニュールがもたらしたプラーデラ王国が潜ませて居るモノからの情報合わせた、なけなしの乏しい情報から類推し…推測する。

リーシェライルの…状況をしっかりと鑑みた推測を聞き、フレイリアルも何となく思いつくまま…気軽な口調で…あまり考えずに口にしてみた。

「プラーデラに罪を擦り付けてニュールを呼び出してみようとか思ってたり? 私が新しい機構に組み換えたせいで壊れた事にするつもりだったり、それで私が動揺して国王に泣き付くとか? ニュールが私と繋がっている事で、プラーデラでのニュールの立場を悪くするとか? 全部の要素詰め込んで良いとこ取りしてみーようって魂胆でしたぁ…なぁーんて感じだったりしてね!」

「まさか、そんな安直な…」

ニュールが一刀両断するような感想を漏らし、チョット凹むフレイリアル。

だが…その言葉は決してフレイリアルに対しての否定的なものでは無く、王国が…国王が目論んだであろう事の安直さ…愚かさに対する言葉だったのだ。
ニュールとリーシェライルの表情が固くなる。

「…あぁ、其れが正解だな。愚劣な国王の心情として考えるなら合理的だ」

「そうだね…短絡的で考えなしの思考…」

「全く結果を考えない、その場限りの浅はかさ…」

最初フレイリアルは、国王の意図や計画に対する推理が当たってる…と判断された事を素直に喜んだ。
其れなのに、今は何だか嬉しくない。
ニュールやリーシェライルが罵倒する王への言葉が、そのままフレイリアルの心に突き刺さる。

「あのぉ…あんまりケチョンケチョンにけなされると、言い当てた私自身も馬鹿って言われてる気がしちゃうんですけどぉ…」

メチャメチャ恨みがましい目でフレイリアルは2人を見る。
一瞬示し合わせたかのように、ニュールとリーシェライルが顔を会わせた。

その瞬間2人に現れた困った様な顔と、その後フレイリアルに向けられた…チョット可哀想な子を見る目。
ニュールには背中をボスリと叩かれ、リーシェライルには無言で抱き締められる。
其の慰めの様な行動が、余計に心の傷に沁みる。
叫んで暴れだしたい気分になるフレイリアルだった。

フレイの適当な意見だったが、それが一番辻褄が合う答えだった。
その推論に従い検証してみる程に、ピタリと状況が嵌まる。

新機構の破壊で脆弱さを示し、新機構へと改修したフレイリアルの功績を貶める。
そしてプラーデラが仕掛けた事にして責任追及し、フレイリアルかニュールの双方を双方の人質とし…どちらかを賢者の塔との…機構との…接続へ導く。

"そんな辻褄さえ合わない安い策" …とは思う。

だが、純粋な力を行使し…敵対することは出来なくても、国と国の駆け引きとして使えば相手方を崩せる可能性のある…そんな遣り方。


エリミア王国は武力では劣るとも、胡散臭さとしては相当な強者集う…由緒正しき…伝統持つ国。
閉じられた国とは言え、エリミアは歴史ある国なのだ。

歴史ある所に、闇は巣食う。
何故ならば…歪み重ね積み上げられていく国の歴史は、崩れた時に残ったものが真実となる…正しい者が正しい訳ではないからだ。
少しずつ他国と共謀し周囲を固めていけば…まだまだ国として若く固まっていない、現プラーデラ王国。
如何様にも叩き潰せる…と判断したのかもしれない。

国王…と言う立場持つモノとして、 "望みを達成出来るならば手段を選ばぬ" と言う部分をニュールは十分に理解できる。
安直な計画を実行できる実力があるかどうかは甚だ疑わしいしが、戦う手段によって未来が変わるのも確か。攻める方向性を変えれば、相手方が勝利し自身が負ける可能性持つ…と言うことだ。

「だてに歴史を刻んできたわけではないんだな…」

ニュールは少し楽しそうに呟き、この先の展開を見据える。

「歯向かう者…敵対する者が居るから…叩き潰して良い相手がいるから…戦えるのが楽しくって昂っちゃうんでしょ?」

リーシェライルが同じ様な魔に傾くモノの心で楽しそうにニュールに問う。

「否定はしない…」

「善い人…とか周りから思われてそうだけど、ただ優柔不断なだけだよね。それに、この状況に昂って…戦い控えて気持ちよさ感じちゃうような? …逃げる癖に真剣に逃げないで、追われると嬉しくなって戦っちゃう所とか…会ったときから変わらないよね」

リーシェライルが悪い笑み浮かべニュールの内面見通し、痛い感じの突っ込み入れて…バサリと切り捨て…更に留目を刺す。

『その言い方だと全くの変態じゃないか!』

ニュールは声に出して大きく否定したいが、否定しきれないので声に出せない。
沈黙を是としたリーシェライルが追い打ちかけるように付け加える。

「ニュールってヤッパリ、僕と同じ場所に住む鬼畜な魔物だよね。だから最初から気に入っちゃったんだなぁ…」

その微妙に褒めているようにも思えるリーシェライルの好感っぽいものに、ニュールはたじろぎ…沈黙する。

「僕は…善い考え持ち人を巻き込み猛進する善い奴は反吐が出そうなぐらい大嫌いだけど、自分勝手だとわきまえて…言い訳せずに自分の為に動く良い奴は意外と好きなんだ…」

楽しそうにリーシェライルはニュールを見つめる。
何となく意図を察したニュールが予防線を張る。

「貴方の獲物になる気は無いぞ」

「獲物だなんて勿体ない! 君は噛みしめる程味が出るんだから、以前と変わらず…長ーく遊べる玩具では居てもらわないとね」

リーシェライルから予想外の荷物になるような、立場や気持ちを背負わされ…げんなりした気分になるニュール。
気が重い。
魔物な冷淡さ以てしても…同じ様に魔物な心持ちに傾くリーシェライルに対応するには、まだまだ経験の差が埋められないようだ。


結局…次の守護者候補を決める事も無く、何の事態の解決もなく進める事になった守護者解任の儀。

必要とするモノは守護者と守護されるモノ、契約時に使用した魔輝石。
そして大賢者と大地と契約した正統なる王。
天空の間にいるフレイリアルとリーシェライルが入るグレイシャムの器とニュール。
3人で執り行う。

かなり役目が被っていて人材不足が否めない感じだが、力だけで世界を揺るがし…国を何個か滅ぼせそうなぐらい持つ組み合わせ。

「まぁ、何とかなるだろ…」

意外と…皆して出たとこ勝負なモノ達だった。

「集中するため、一旦結界は解くよ。でも、感知された瞬間から干渉を受けると思う…。フレイも分かった?」

一応、敵に対する警戒が疎かになってしまう事は予想できていたので、ブルグドレフとモーイを21層…この部屋の真下に呼び出してあり、結界出力が落ちてきたら代わりに受け持つ様に指示は出してあった。
勿論、ピオとその周辺の者にも計画は綿密に伝えてある。

「可及的速やかに対処する…ってやつだよね!」

この微妙な緊張感をワクワクした事態として捉えるモノが此処にもいた。
フレイリアルは目を輝かせる。

「お前、いつからソンナ好戦的になったんだ?」

「えー、私の師匠であり保護者である2人がソンなんだから仕様がないよぉ」

フレイリアルも遣る気満々…ニュールの問いに、シレッと返す。
意外と好戦的なこの面々…少しずつ、皆して調子を上げていくのだった。
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