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18. 感慨深き巻き込まれ
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賢者の塔での解約の儀は滞っていた。
青の間の天輝石を通し回路繋いでから四半時。
「凄くこんがらがっっちゃってるよねぇ」
何の変化もない此の状況について、他人事のようにフレイリアルは軽く感想述べる。
一応3人で…あーでも無い…こーでも無い…と言いながら、絡まり伸びている魔力の繋がりを解し辿っていた。
だが…手に触れる天輝石の感覚には全くの変化なく、始めれば…あっと言う間に終わるはずだった契約の解除が長引く。
「何でこんなに絡んでるんだ? もういっその事、一度全部繋がりを引っこ抜いちまった方が良いんじゃないのか?」
ニュールが素直な感想を述べる。
「そうしたいのは山々だけど、其れ遣っちゃうと僕が入ってる体の…人形としての回路も切れちゃうから、大賢者役が出来なくなっちゃうかなぁ」
リーシェライルが平然と何食わぬ顔で答える。
「確か…最終確認の時に、聞いたよな? もう1人大賢者が居たほうが良いんじゃないか…って」
「その時は大丈夫だと思ったんだけどなぁ…」
少し含みある…責める様な恨みがましさ持つニュールの言葉に対し、リーシェライルの白々しい返事と…妖しい笑み…。
うそぶいているのが思いっきりバレバレだ。
手近な大賢者であるアルバシェルを関わらせない為の、我儘…だったのだろう。
基本…複雑怪奇であり…数多の裏の顔持つリーシェライルだが、ある意味分りやすいぐらい素直に心のまま表した…アルバシェルに対する牽制。
とても微笑ましく…もあるのだが、思ったままに揶揄ったりしたのなら…容赦なき報復を受けそうだ。
一先ず大人な対応で矛を収める。
「まぁ、何でも良いから手早く済むための手立てを考えてくれ」
「それなら、ニュールが正統なる王役と、大賢者役こなせば一気に済むよ!」
気軽に言ってのけるフレイリアル。
「はぁぁ? オレ…契約解除しようとしている守護者本人なんですけど、そのまま更に2役背負うってことでしょうか?」
おんぶに抱っこ…全て背負わせてしまう其の姿勢に、若干キレ気味のニュール。
だが、追い討ちをかける様に2人が言葉継ぐ。
「あぁ、ニュールなら大丈夫かもね。そうしたら僕は一旦フレイの中に戻って…終了したらグレイシャムの器を繋ぎなおすよ!」
「うんっ、それならきっと大丈夫だね!」
のほほんっと…他者には大変厳しいお気楽師弟が、餌を待つ子魔物が餌を強請るが如く…獰猛な口を開き…貪欲な笑顔を浮かべ…ジッと可愛らしく…脅して…見つめてくる。
期待を持ってニュールの最終的な決断を待つ…と言った様子ではあるのだが、2対1 明らかな圧力を感じ…一歩間違えれば親魔物でも餌食になる…と言った感じの場面。
ちょっとだけ寒気のするニュール。
久々の…この厄介な2人に巻き込まれ苦労を背負い込む体験、再度身をもって受け入れることになる。
其れは必定…だった。
『否応なく初心に返らされる…って感じだな…』
ニュールは守護者契約結んだあの日の自分に言いたかった。
『不用意な情けは身を亡ぼすぞ…危ういモノには関わるな!』
それでも…あの日に戻ったら同じ選択をしてしまうであろう…と、自分で確信が持てるニュール。
ある意味、悔いなき決断なのかもしれない。
基本的に厄介事に関わってしまう…放っておけない体質なのだから致し方ない。
ニュールの大きな溜息が青の間を満たす。
ピオとカームは、隠蔽魔力を身に纏いながら素早く移動する。
王城壁近くの惨憺たる現場は、ピオが言うように何もせず放置してきた。
「エリミアが国として関わる事件でない限り、現場が発見されても…今は其れ処では無いでしょう」
ピオは自身の頭の中を整理するように、カームに説明する。
「そして集まった情報の中で推測するのなら、此方へ向けての攻撃も…塔への攻撃も…関わっているのは国王とその周辺の大臣です。ふむっ、今更ですが国ぐるみ…と言った感じに近いですかねぇ」
先ほど自身を含めて襲撃されたと言うのに、全くの無関係であるかのように分析するピオ。今の時点では憶測でしかないのだが…関わる者を断定する。
そして、今後のエリミア国王側の行動を予測してみた。
「証拠を捏造し…プラーデラの使節団の仕業の様に見せかけ、プラーデラとエリミアの大賢者なお姫様のせいにするのが…順当な流れ…一番の得策ですかねぇ」
エリミア側の者になったかの如く述べ、悦に入ったかのように…微笑み昂ぶる。
「ふふふっ…あははっ、久々に楽しくなりそうですねぇ…。この絵を描いた者は一体何を夢見ちゃっているんでしょーか」
襲撃者に共感し…暗い思いに耽る。
そして次に、其の襲撃者が圧倒的な力で…無残に踏み潰される姿を夢想する。
「あぁ…先ずは我が君に立ち上がって頂き、舞台を整えるのが最上ですかね。其処へ物凄まじき御姿を顕現して頂き…敵意抱く者を震え上がっらせ…無慈悲に蹂躙しつくす…と言うのも、1つの選択枝として捨て難いですねぇ。あぁ、是非とも拝見したいお姿…考えただけでトキメキマス」
ピオにとっての夢のような素晴らしき光景、其れを思い描き…恍惚感に浸る。
横で共に移動しながら見聞きしている…無感情で無表情なカームの眉間に、一瞬皺が入る。その様子に気付いていても、気にもせずピオは続ける。
「だけど先ずは、僕の目の前で…烏滸がましくも我が君のいらっしゃる賢者の塔に魔力ブチ当てた愚か者…を、この手で捻り潰したいですねぇ…」
そして言葉通り、賢者の塔に魔力攻撃ブチ当てたと思われる方向に丁度いる者に…近づくべく進む。
ニュールがエリミアに入った時。
最初に青の塔に到着した時点で、絶え間なく複数の探索魔力が…賢者の塔…しかも中央塔のみを対象に探りを入れているのを…感じ取る事ができた。
詳細な部分まで調べられる程の強き魔力…ではなかったが、人の出入りは把握する…と言った感じのものだった。絡み付き…息苦しさを与えるような、嫌味で不快感ある継続的に繋げられた魔力。
取っ掛かりを探すように蠢き…隙を見つけようと粗探しをしているような…厭わしく…醜悪な探索魔力が、王宮から…常に伸びている。
ニュール達の来訪は "使節団の来訪を告げる使者" が先駆けて現れた…と、でっち上げる。
宰相であるピオを含む使節団をプラーデラから迎え入れる時、ミーティに一時的に人と同等の魔力発する様にした魔石を持たせ…幻影も映し出し…残るものの人数を偽装し…入れ替わりで賢者の塔の転移陣からプラーデラに帰した。
来訪していた先発隊が戻ったように見せかけたのだ。
ニュール達が訪れた時も、勿論…転移陣は国王直属の兵が管理中であった。
自前で築いた転移陣の終点を利用し18層に至ったニュール達は、辻褄が合うように調整する。
賢者の塔の転移陣の使用報告と、伸ばされ続ける探査魔力により確認するであろう人の動き…其れを連動させた。
こうして…賢者の塔に来訪する者の人数や目的をごまかした内容が、転移陣の使用に義務付けられている王宮への報告に記される事になったのだ。
賢者の塔の魔法陣には、常に厳重な監視の目が向けられている。
外部からの侵入に対応する…と言う建前だが、探索魔力同様…賢者の塔への…大賢者への…フレイリアルへの…監視の意味が強い。
端的に言えば、外部からの加勢の阻止と…逃亡の抑止。
大義名分得られる場所には、常に王宮から出向させられている兵士が配置される。
厳しい管理・監視下に置く。
だが完全な隠蔽魔力纏う前の…一応威圧しないよう魔力だけ丁寧に隠したニュールを見かけた塔の賢者達は、プラーデラの国王であるとは思いもしなかった様だ。
正式には公表されていない頃であり…厚遇するよう指示は受けていたが謎の来訪者、ミーティとモーイが主賓であり…ニュールは護衛だろうと判断され…来訪者の記録にもシッカリ記されてていた。
「隠蔽や偽装の必要が無いって凄いよな!」
ミーティがまだエリミアに滞在していたとき、いつものように不用意に…悪意なく…ただ空気読まずに発した…無邪気な言葉。
棘無き棘がニュールの胸にチクリと突き刺さる。
「あぁ、目立ってもしょうがないからな…」
私的な訪問でもあったため、国王と臣下である…と言う立場については多めにみる。
「ニュールって魔力が隠されてると、ただのオッサンにしか見えないもんなぁ…」
ミーティ的には…親しみやすさを褒めた気分だったのだが、言われた本人的には…穴を掘って埋められて…更に土を被せられたような気分になる言葉だった。
「……」
ぐうの音も出ないニュールだったが、ミーティは全く気付かない。
人の持つ内から溢れ出る雰囲気…と言うものは変えようもない。
中身の本来の年齢は別として…外身は完全にくたびれたオッサンな感じのニュール。本来の年齢以上に疲れきっているし、気の抜けた時はただのオッサンにしか見えない…のは確かな事実。
都合の良い誤解ではあった。
其れなのに記された文書をチラリ…と目にしたニュールは、何だか納得いかない気分になるのであった。
そして無謀な天真爛漫さを発揮するミーティに…権力者からの制裁が加わらなかったか…と言ったら、其の限りでは無い。
私的な訪問だったのに仕事の名目でプラーデラに戻されたのは…もしかしたらミーティの自業自得だったのかもしれない。
守護者解任の儀に対する新たなる選択。
「分かった…引き受けよう。この状態で時間を掛けるのが良くないのは理解している…」
ニュールが渋々…とは言え、大賢者と正当なる王の2役…いやっ…守護者でもあるので3役…担うことを承諾し、解任のための儀式を一気に片付ける方向に踏み出す。
「そうだね、さっさと片付けた方が良いかもね…。既に結界の出力が落ちているのは気付かれてるみたいだし、探るための魔力が強くなってる。放って置けば、王宮から直接…人を差し向けられそうだからね…」
そのリーシェライルの言葉に、ニュールが苦笑いをする。
「余程…賢者の塔には旨そうな匂いがするんだな。お零れにあずかろうと、満腹のくせに…涎垂らしてウロツク強欲な魔物の多いことに吃驚だ。少しでもいい目を見ようと必死だな」
利益求め群がる…呆れた状態に嫌気さし、ニュールは更なる苦言を呈す。
「それとも此処に居るとモテモテになっちまうって事なのか。此れだけ厳重に結界陣も結界も多重展開しているのに、ちょっと出力落ちただけで忍び寄ろうとするなんてドンだけ積極的なんだ?」
ニュールの唾棄する様な言葉に、リーシェライルではなくフレイリアルが同調し…此の国の在り方に憤りを示す。
「此の国の偉い人達は、普通に生活している人達の事なんて考えないし…どれだけ勝手気ままな欲張りなんだろう…って私も思ったよ…」
水の機構の修復を、私欲の為に方々から散々邪魔をされ…其の一番犠牲になってきた者達に思い馳せ怒る。
「昔から…此処はそんなもんだよ。中枢を占め…力を手に入れた者は、どの時代でも私欲に走るし…利益になるなら幼き者でさえ理由取り繕いながら巻き込み…差し出すんだ…」
リーシェライルが虚ろな…怨みとも達観とも嘆き…とも言えない表情浮かべながら遠い目をする。
「まぁ、本質は今も昔も人間は人間だからな! まぁ、細かい事は気にするな。お前の思いは届く範囲に届ければ十分だ、すべてを背負う必要はない。自己犠牲は気持ちを受け取ってもらえる範囲にしろ、犠牲…なんて言うものは本来無いに越した事はないんだからな! そうしないと本当に大切なものを悲しませちまうぞ」
ニュールが明るく気軽な感じで、フレイリアルを教え諭すように談義を纏める。
だが、世界が受ける理不尽な仕打ち…上位の存在からの気まぐれを是正すべく…何だかんだと全てを背負ってしまったモノ。
そんな存在であるニュールが何を言おうと、全く説得力を持たない…かもしれない。
青の間の天輝石を通し回路繋いでから四半時。
「凄くこんがらがっっちゃってるよねぇ」
何の変化もない此の状況について、他人事のようにフレイリアルは軽く感想述べる。
一応3人で…あーでも無い…こーでも無い…と言いながら、絡まり伸びている魔力の繋がりを解し辿っていた。
だが…手に触れる天輝石の感覚には全くの変化なく、始めれば…あっと言う間に終わるはずだった契約の解除が長引く。
「何でこんなに絡んでるんだ? もういっその事、一度全部繋がりを引っこ抜いちまった方が良いんじゃないのか?」
ニュールが素直な感想を述べる。
「そうしたいのは山々だけど、其れ遣っちゃうと僕が入ってる体の…人形としての回路も切れちゃうから、大賢者役が出来なくなっちゃうかなぁ」
リーシェライルが平然と何食わぬ顔で答える。
「確か…最終確認の時に、聞いたよな? もう1人大賢者が居たほうが良いんじゃないか…って」
「その時は大丈夫だと思ったんだけどなぁ…」
少し含みある…責める様な恨みがましさ持つニュールの言葉に対し、リーシェライルの白々しい返事と…妖しい笑み…。
うそぶいているのが思いっきりバレバレだ。
手近な大賢者であるアルバシェルを関わらせない為の、我儘…だったのだろう。
基本…複雑怪奇であり…数多の裏の顔持つリーシェライルだが、ある意味分りやすいぐらい素直に心のまま表した…アルバシェルに対する牽制。
とても微笑ましく…もあるのだが、思ったままに揶揄ったりしたのなら…容赦なき報復を受けそうだ。
一先ず大人な対応で矛を収める。
「まぁ、何でも良いから手早く済むための手立てを考えてくれ」
「それなら、ニュールが正統なる王役と、大賢者役こなせば一気に済むよ!」
気軽に言ってのけるフレイリアル。
「はぁぁ? オレ…契約解除しようとしている守護者本人なんですけど、そのまま更に2役背負うってことでしょうか?」
おんぶに抱っこ…全て背負わせてしまう其の姿勢に、若干キレ気味のニュール。
だが、追い討ちをかける様に2人が言葉継ぐ。
「あぁ、ニュールなら大丈夫かもね。そうしたら僕は一旦フレイの中に戻って…終了したらグレイシャムの器を繋ぎなおすよ!」
「うんっ、それならきっと大丈夫だね!」
のほほんっと…他者には大変厳しいお気楽師弟が、餌を待つ子魔物が餌を強請るが如く…獰猛な口を開き…貪欲な笑顔を浮かべ…ジッと可愛らしく…脅して…見つめてくる。
期待を持ってニュールの最終的な決断を待つ…と言った様子ではあるのだが、2対1 明らかな圧力を感じ…一歩間違えれば親魔物でも餌食になる…と言った感じの場面。
ちょっとだけ寒気のするニュール。
久々の…この厄介な2人に巻き込まれ苦労を背負い込む体験、再度身をもって受け入れることになる。
其れは必定…だった。
『否応なく初心に返らされる…って感じだな…』
ニュールは守護者契約結んだあの日の自分に言いたかった。
『不用意な情けは身を亡ぼすぞ…危ういモノには関わるな!』
それでも…あの日に戻ったら同じ選択をしてしまうであろう…と、自分で確信が持てるニュール。
ある意味、悔いなき決断なのかもしれない。
基本的に厄介事に関わってしまう…放っておけない体質なのだから致し方ない。
ニュールの大きな溜息が青の間を満たす。
ピオとカームは、隠蔽魔力を身に纏いながら素早く移動する。
王城壁近くの惨憺たる現場は、ピオが言うように何もせず放置してきた。
「エリミアが国として関わる事件でない限り、現場が発見されても…今は其れ処では無いでしょう」
ピオは自身の頭の中を整理するように、カームに説明する。
「そして集まった情報の中で推測するのなら、此方へ向けての攻撃も…塔への攻撃も…関わっているのは国王とその周辺の大臣です。ふむっ、今更ですが国ぐるみ…と言った感じに近いですかねぇ」
先ほど自身を含めて襲撃されたと言うのに、全くの無関係であるかのように分析するピオ。今の時点では憶測でしかないのだが…関わる者を断定する。
そして、今後のエリミア国王側の行動を予測してみた。
「証拠を捏造し…プラーデラの使節団の仕業の様に見せかけ、プラーデラとエリミアの大賢者なお姫様のせいにするのが…順当な流れ…一番の得策ですかねぇ」
エリミア側の者になったかの如く述べ、悦に入ったかのように…微笑み昂ぶる。
「ふふふっ…あははっ、久々に楽しくなりそうですねぇ…。この絵を描いた者は一体何を夢見ちゃっているんでしょーか」
襲撃者に共感し…暗い思いに耽る。
そして次に、其の襲撃者が圧倒的な力で…無残に踏み潰される姿を夢想する。
「あぁ…先ずは我が君に立ち上がって頂き、舞台を整えるのが最上ですかね。其処へ物凄まじき御姿を顕現して頂き…敵意抱く者を震え上がっらせ…無慈悲に蹂躙しつくす…と言うのも、1つの選択枝として捨て難いですねぇ。あぁ、是非とも拝見したいお姿…考えただけでトキメキマス」
ピオにとっての夢のような素晴らしき光景、其れを思い描き…恍惚感に浸る。
横で共に移動しながら見聞きしている…無感情で無表情なカームの眉間に、一瞬皺が入る。その様子に気付いていても、気にもせずピオは続ける。
「だけど先ずは、僕の目の前で…烏滸がましくも我が君のいらっしゃる賢者の塔に魔力ブチ当てた愚か者…を、この手で捻り潰したいですねぇ…」
そして言葉通り、賢者の塔に魔力攻撃ブチ当てたと思われる方向に丁度いる者に…近づくべく進む。
ニュールがエリミアに入った時。
最初に青の塔に到着した時点で、絶え間なく複数の探索魔力が…賢者の塔…しかも中央塔のみを対象に探りを入れているのを…感じ取る事ができた。
詳細な部分まで調べられる程の強き魔力…ではなかったが、人の出入りは把握する…と言った感じのものだった。絡み付き…息苦しさを与えるような、嫌味で不快感ある継続的に繋げられた魔力。
取っ掛かりを探すように蠢き…隙を見つけようと粗探しをしているような…厭わしく…醜悪な探索魔力が、王宮から…常に伸びている。
ニュール達の来訪は "使節団の来訪を告げる使者" が先駆けて現れた…と、でっち上げる。
宰相であるピオを含む使節団をプラーデラから迎え入れる時、ミーティに一時的に人と同等の魔力発する様にした魔石を持たせ…幻影も映し出し…残るものの人数を偽装し…入れ替わりで賢者の塔の転移陣からプラーデラに帰した。
来訪していた先発隊が戻ったように見せかけたのだ。
ニュール達が訪れた時も、勿論…転移陣は国王直属の兵が管理中であった。
自前で築いた転移陣の終点を利用し18層に至ったニュール達は、辻褄が合うように調整する。
賢者の塔の転移陣の使用報告と、伸ばされ続ける探査魔力により確認するであろう人の動き…其れを連動させた。
こうして…賢者の塔に来訪する者の人数や目的をごまかした内容が、転移陣の使用に義務付けられている王宮への報告に記される事になったのだ。
賢者の塔の魔法陣には、常に厳重な監視の目が向けられている。
外部からの侵入に対応する…と言う建前だが、探索魔力同様…賢者の塔への…大賢者への…フレイリアルへの…監視の意味が強い。
端的に言えば、外部からの加勢の阻止と…逃亡の抑止。
大義名分得られる場所には、常に王宮から出向させられている兵士が配置される。
厳しい管理・監視下に置く。
だが完全な隠蔽魔力纏う前の…一応威圧しないよう魔力だけ丁寧に隠したニュールを見かけた塔の賢者達は、プラーデラの国王であるとは思いもしなかった様だ。
正式には公表されていない頃であり…厚遇するよう指示は受けていたが謎の来訪者、ミーティとモーイが主賓であり…ニュールは護衛だろうと判断され…来訪者の記録にもシッカリ記されてていた。
「隠蔽や偽装の必要が無いって凄いよな!」
ミーティがまだエリミアに滞在していたとき、いつものように不用意に…悪意なく…ただ空気読まずに発した…無邪気な言葉。
棘無き棘がニュールの胸にチクリと突き刺さる。
「あぁ、目立ってもしょうがないからな…」
私的な訪問でもあったため、国王と臣下である…と言う立場については多めにみる。
「ニュールって魔力が隠されてると、ただのオッサンにしか見えないもんなぁ…」
ミーティ的には…親しみやすさを褒めた気分だったのだが、言われた本人的には…穴を掘って埋められて…更に土を被せられたような気分になる言葉だった。
「……」
ぐうの音も出ないニュールだったが、ミーティは全く気付かない。
人の持つ内から溢れ出る雰囲気…と言うものは変えようもない。
中身の本来の年齢は別として…外身は完全にくたびれたオッサンな感じのニュール。本来の年齢以上に疲れきっているし、気の抜けた時はただのオッサンにしか見えない…のは確かな事実。
都合の良い誤解ではあった。
其れなのに記された文書をチラリ…と目にしたニュールは、何だか納得いかない気分になるのであった。
そして無謀な天真爛漫さを発揮するミーティに…権力者からの制裁が加わらなかったか…と言ったら、其の限りでは無い。
私的な訪問だったのに仕事の名目でプラーデラに戻されたのは…もしかしたらミーティの自業自得だったのかもしれない。
守護者解任の儀に対する新たなる選択。
「分かった…引き受けよう。この状態で時間を掛けるのが良くないのは理解している…」
ニュールが渋々…とは言え、大賢者と正当なる王の2役…いやっ…守護者でもあるので3役…担うことを承諾し、解任のための儀式を一気に片付ける方向に踏み出す。
「そうだね、さっさと片付けた方が良いかもね…。既に結界の出力が落ちているのは気付かれてるみたいだし、探るための魔力が強くなってる。放って置けば、王宮から直接…人を差し向けられそうだからね…」
そのリーシェライルの言葉に、ニュールが苦笑いをする。
「余程…賢者の塔には旨そうな匂いがするんだな。お零れにあずかろうと、満腹のくせに…涎垂らしてウロツク強欲な魔物の多いことに吃驚だ。少しでもいい目を見ようと必死だな」
利益求め群がる…呆れた状態に嫌気さし、ニュールは更なる苦言を呈す。
「それとも此処に居るとモテモテになっちまうって事なのか。此れだけ厳重に結界陣も結界も多重展開しているのに、ちょっと出力落ちただけで忍び寄ろうとするなんてドンだけ積極的なんだ?」
ニュールの唾棄する様な言葉に、リーシェライルではなくフレイリアルが同調し…此の国の在り方に憤りを示す。
「此の国の偉い人達は、普通に生活している人達の事なんて考えないし…どれだけ勝手気ままな欲張りなんだろう…って私も思ったよ…」
水の機構の修復を、私欲の為に方々から散々邪魔をされ…其の一番犠牲になってきた者達に思い馳せ怒る。
「昔から…此処はそんなもんだよ。中枢を占め…力を手に入れた者は、どの時代でも私欲に走るし…利益になるなら幼き者でさえ理由取り繕いながら巻き込み…差し出すんだ…」
リーシェライルが虚ろな…怨みとも達観とも嘆き…とも言えない表情浮かべながら遠い目をする。
「まぁ、本質は今も昔も人間は人間だからな! まぁ、細かい事は気にするな。お前の思いは届く範囲に届ければ十分だ、すべてを背負う必要はない。自己犠牲は気持ちを受け取ってもらえる範囲にしろ、犠牲…なんて言うものは本来無いに越した事はないんだからな! そうしないと本当に大切なものを悲しませちまうぞ」
ニュールが明るく気軽な感じで、フレイリアルを教え諭すように談義を纏める。
だが、世界が受ける理不尽な仕打ち…上位の存在からの気まぐれを是正すべく…何だかんだと全てを背負ってしまったモノ。
そんな存在であるニュールが何を言おうと、全く説得力を持たない…かもしれない。
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激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
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もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
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