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第三章 インゼル共和国編
17.思い進み出会う
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「今度サルトゥスからの視察団が帰る時に転移陣が使われます。視察団を帰す前に陣の回路の組み替えを見せるため、先にインゼルへ向けて10名程文官が送られるそうです。」
エシェリキアが調べてきたことをモモハルムアに報告する。
「その人員に入ればインゼルへ行けるのね」
確実にモモハルムアは前を向きインゼルを目指す。
「但しインゼルの転移陣があるのは、塔のある都市から3日ほどの砂漠の小都市クシロスという街です。ここからは船を使っての移動であって、陸地を行くなら樹海を通るので1の月近くかかるそうです」
「ありがとう」
罪滅ぼしとばかりに熱心に調べてきたかの様に見えるエシェリキアをモモハルムアは労う。
「どうしても行かれるのなら、私も同行させて下さい!」
「それは出来ないわ…」
モモハルムアはエシェリキアが地位的にも立場的にも微妙であり、下手に巻き込んではいけないのを分かっているので頑なに拒む。
「あなたは継承権は消えても王家の上位の方です。それに貴方は一度処分を受けている身…この私自身の思いのための道行きに、巻き込むような形で連れて行くことはできません」
「でも!」
エシェリキアも気遣いによる拒否で有ることは分かって居るのだが悔しい。
「色々調べてくれて、とても助かったわ。貴方は此処で私の代わりにエリミアに有益なものを見定めて頂戴」
「……」
エシェリキアは思う。
『無益なモノの排除なら真っ先にやるのに…』
真っ直ぐにモモハルムアに仕えたいと思いつつも過去にネジくれたエシェリキアの思いは、消えること無く色濃く影を作る。
「研究所側の転移陣の管理をしているのは内包者だ。陣の回路の繋ぎかえに隠者が来るが、インゼルへ飛んだのを我々が見学した後に来る事になっている」
アルバシェルが状況を説明する。
「隠者?」
モーイの問いにアルバシェルが答える。
「ヴェステでは賢者の事をそう呼ぶらしい。あと、ヴェステやインゼルでは生活魔石を扱う程度の者しか街中には存在しないから、くれぐれも注意しておいて欲しい」
視線を外にやり素知らぬ振りをするのだが、ヤラカシ一番のフレイに皆からの痛い視線が集中する。
フレイだっては自覚はあるのだ…自分が迂闊であることを。
今だって、それ故アルバシェルの腕の中に抱えられている…。
昨夜のチョットした話合いの後、それぞれ部屋に戻った。
アルバシェルも視察団の方へ戻ったが、朝一番の鐘が鳴ると同時に来たそうだ。
モーイは別れ際にアルバシェルが来る時間を宣言していったのを聞いていたが、フレイは聞いていなかった。
知らぬうちにモーイに招き入れられてたアルバシェルが、まだ夢の中と言った状態のフレイを楽しそうにベッド横の椅子で見ていた。
夢の中のフレイはクリールの気配を感じた気がして声を掛けた。
「もう少し…一緒に…寝てようね…むぅ…」
クリールの頭を布団に引き込み抱き締め胸に埋めて撫で付ける。
勿論引き込まれていたのはアルバシェルであり、抱き締め頭を撫でられていたのも…そうである。
お互い様な人達の様である。
フレイの温かな双峰に包まれ至福の時を過ごしたアルバシェルは警戒する。
『ほかの人間で、この様に幸運なもらい事故が起きたら大変!!』
そしてアルバシェルはいつも以上の警戒体制に入ってしまったようだ。
モーイに状況を聞かされたフレイは、もれなく一言もらってしまった。
「まさしく自業自得だよな~」
出来上がったのは、人目も構わずフレイを抱き人形のように抱え連れ歩くアルバシェル。
もう諦めるしか無いと悟るフレイリアルだった。
だがアルバシェルが片時もフレイを抱えたまま離さない状態に、ミーティは納得いってなかった。
突然現れた優男に宝物をかっさらわれた上に、これ見よがしに自慢されている様な気分だった。
自業自得を悟ったフレイは引き寄せられ抱き締められるがままに傍らに居る。
モーイはいつもの事と静観しているし、タリクも納得のいかぬ顔をしているが今は放置している。
結局ミーティも自身の抱く不満に何か対応する訳でもなく、見せつけられるのを指を加えて眺めるだけであった。
この現状に降り積もるように鬱積する思いが溜まっていく。
「転移陣の管理者が魔力操作に劣るものならば此方に好機が訪れる」
「好機?」
アルバシェルが作戦の骨子を話し始める。
「あぁ、ここの陣は20名ほど送り出せる陣の様だが、実際にインゼルに行くのは10名程度だろう。ただの内包者なら感が鋭い者であっても、誤魔化しようがある。だから完全に隠蔽を掛けて陣に乗り込んでしまえば問題なく辿り着けるであろう。向こうに隠者はまだ居ないはずだ、こちら側から出立さえ出来れば問題は少ない」
「あんたは?」
ミーティがアルバシェルに不機嫌に問う。
「私は状況を整えてからしか行けない…」
アルバシェルは本気で悔しそうに不本意と言う感じでミーティに告げる。
「…だから宜しく頼む」
「頼まれる前から守る覚悟はできている」
ミーティは挑むような鋭い男の目をしてアルバシェルを見返し、自身の思いを示した。
何も分かってないコドコドの幼獣の様な何処かの姫は、自分を中心に繰り広げられている思いの交換を気にすることも無く、この先の道程を考えているのか…魔石のことでも考えてるのか…謎であった。
転移は夕時一つ、作戦はその半時ほど前から決行となる。
アルバシェルとともに王立魔石研究所へ赴き、転移陣を視察する背後に隠蔽をかけて潜む。そして、どさくさに紛れて転移陣に便乗してインゼルへ向かう予定…である。
かなり行き当たりばったりな計画であり、臨機応変な対応が求められそうだ。
話し合いのためにかなり早い時間から宿に集まっていたので、時間に少し余裕が出来た。
それぞれが必要な事を行っていたが…余計なことをしがちなフレイは部屋で謹慎状態だ。
アルバシェルとタリクは今後の話や自身の国の話をしているようだし、モーイはインゼルへ向けての買い出しや情報収集で居ない。
ミーティは酒場の主と興行についての話しをつけた後、フレイの部屋へ昼食を届けに行く。
扉を叩き声を掛けると返事が有った。
「ミーティ開いてるよ!」
フレイはベッドの上で魔石と戯れている状態に見える。
「食事だから机の上に置いとくぞ!」
取り敢えず用件をこなしミーティは立ち去ろうとした。
「あれっ?みんなは?」
「まだ忙しいらしい」
ちょっと寂しそうにした後、昼食の入った袋をもう一袋持っているミーティを見てフレイが言う。
「ミーティは食事まだなんだよね?だったら此処で一緒に食べよう!!」
自分の横の場所を叩きながら笑顔で言う。
朝の話し合いの時はアルバシェルとフレイの状態を目にして不満顔のミーティだったが、いきなりの此の状況にドキドキする。
昼間とはいえ2人きり…意中の子の隣である。
しかも食事を食べながらとは言えベッドの上。
今のフレイはインゼルへ行くのに備えた少年っぽい格好をしているが、ミーティの隣で新緑の瞳を輝かせクルクルと表情を変えながら魔石の話を楽しそうにしている姿は、眩しいぐらいに可愛かった。
『あぁ、やっぱり好きだ…誰にも渡したくない』
ミーティは自身の思いに確信を得た。
逆上せ高まる思いを押さえつけ、下を向いたまま押し殺すようにフレイに問う。
「…フレイはアルバシェルさんと結婚するの?」
急な質問にフレイは戸惑うがしっかりと答える。
「私はニュールを取り返したら、また元々の目的だった天空の天輝石を探しに行きたい!だから今は考えられない」
問いとは違う答えにミーティは更に問う。
「アルバシェルさんの事、好きじゃないのか?」
「好きだけど…結婚する好きかはわからない。それよりもリーシェを自由にするための魔輝石を手に入れたい…」
アルバシェルの事を考えると、自身の中に熱く繋がる思いが有ることがフレイにも分かる。だけど其れがどんな情によるものかは、フレイ自身にもまだ分からないのだ。
「じゃあ、そのリーシェの事が好きなの?」
「うん…リーシェが好き。リーシェは私が絶対に救いたい人で一緒にいたい人で無くせない人…。家族で先生で…私を救ってくれた大切な人…」
即答で返る鮮やかでハッキリとした思いを聞き、ミーティのモヤモヤが増す。
「じゃあ、リーシェと結婚したいの?」
フレイは聞かれて頭が真っ白になる。
「リーシェ…結婚??わっわっわからない…!?」
動揺のまま声に出していた。
そして最後に会った夜のリーシェの蕩けるように甘い笑みから降り注いだ艶麗な口付けと、全身を駆け巡るように伝わる魔石への口付けを思い出し真っ赤になってしまう。
その様子を目撃し…更に朝の光景を思い出し…ミーティの中にドクリと欲が芽生える。
枷が外れ、押さえつけていた思いが押し出される。
そしてミーティは顔を上げてフレイに向き合う。
熱の籠る瞳で見つめつつ、徐にフレイの両の手首を捕らえ…告白する。
「…オレ、フレイの事が好きだ…オレと一緒になって欲しい」
その言葉とともにベッドの上のフレイに覆い被さり押し倒し、手首を布団の上に縫い付ける。
そして目を丸くして固まっているフレイに顔を近づけ熱い思いで口付けようとした…が首根っこを捕まれていた。
「はいっ!良い思い出はここまでだ」
モーイが楽しげに注意する。
「無理矢理なお楽しみはご遠慮願いま~す。同意を得たなら邪魔はしないよ!」
ミーティは部屋から摘まみ出された。
モーイはフレイにも注意する。
「男はいつ何すっか分からんから自分でも注意しろ!」
「うん、分かった。ミーティの前では男の子っぽい格好は気を付けるよ!!」
「???」
トンチンカンな答えに固まるモーイ。
「ミーティ、タリクに振られちゃったのかな…」
「!!!」
どうやらミーティの嗜好を誤解し…男の子っぽかったから偶々言い寄られたと思ったフレイ。警戒する気があるなら別にどっちでも構わないので、モーイはその誤解を放置した。
時間が来たのでヴェステ王立魔石研究所へ向かう。比較的出入りに寛容であり、確認されることもなかった。
既に隠蔽を軽く掛けている状態なので周囲からはあまり認識されない。
強い隠蔽は賢者級だと察知される可能性が高いので必要な場所のみに留める。
サルトゥスの視察団に用意された部屋へ向かうとそこには神殿の装束を着た禰宜4人が既にいた。今一緒にいるアルバシェルも良くみると同じ格好だった。
全員賢者でありアルバシェルの背後に感じる隠蔽を纏うフレイ達の気配に警戒する。
「あぁ、こいつらは大丈夫だ」
アルバシェルが双方へ警戒の必要ないことを伝える。だが隠蔽を解いたこちら側の姿を確認すると、何らかの鋭さを含む視線を叩きつけて来る者が禰宜装束の中にいたようだった。
だが其をはっきり確認する間も無く、研究所の視察団に対応する者から準備が整ったと伝える知らせが届く。
案内の者に連れられて転移の間へ向かう。
そこにはヴェステ側の説明役の研究員とインゼルへの陣に乗る予定の者達が居た。
その中にモモハルムアとフィーデスの顔が有った。
「!!!」
フレイリアルは驚きで思わず声を出しそうになり自分の手で口を塞ぐ。
未だ一方的な予想外の邂逅となっているが、此の状況が吉と出るか凶と出るかは不明である。
エシェリキアが調べてきたことをモモハルムアに報告する。
「その人員に入ればインゼルへ行けるのね」
確実にモモハルムアは前を向きインゼルを目指す。
「但しインゼルの転移陣があるのは、塔のある都市から3日ほどの砂漠の小都市クシロスという街です。ここからは船を使っての移動であって、陸地を行くなら樹海を通るので1の月近くかかるそうです」
「ありがとう」
罪滅ぼしとばかりに熱心に調べてきたかの様に見えるエシェリキアをモモハルムアは労う。
「どうしても行かれるのなら、私も同行させて下さい!」
「それは出来ないわ…」
モモハルムアはエシェリキアが地位的にも立場的にも微妙であり、下手に巻き込んではいけないのを分かっているので頑なに拒む。
「あなたは継承権は消えても王家の上位の方です。それに貴方は一度処分を受けている身…この私自身の思いのための道行きに、巻き込むような形で連れて行くことはできません」
「でも!」
エシェリキアも気遣いによる拒否で有ることは分かって居るのだが悔しい。
「色々調べてくれて、とても助かったわ。貴方は此処で私の代わりにエリミアに有益なものを見定めて頂戴」
「……」
エシェリキアは思う。
『無益なモノの排除なら真っ先にやるのに…』
真っ直ぐにモモハルムアに仕えたいと思いつつも過去にネジくれたエシェリキアの思いは、消えること無く色濃く影を作る。
「研究所側の転移陣の管理をしているのは内包者だ。陣の回路の繋ぎかえに隠者が来るが、インゼルへ飛んだのを我々が見学した後に来る事になっている」
アルバシェルが状況を説明する。
「隠者?」
モーイの問いにアルバシェルが答える。
「ヴェステでは賢者の事をそう呼ぶらしい。あと、ヴェステやインゼルでは生活魔石を扱う程度の者しか街中には存在しないから、くれぐれも注意しておいて欲しい」
視線を外にやり素知らぬ振りをするのだが、ヤラカシ一番のフレイに皆からの痛い視線が集中する。
フレイだっては自覚はあるのだ…自分が迂闊であることを。
今だって、それ故アルバシェルの腕の中に抱えられている…。
昨夜のチョットした話合いの後、それぞれ部屋に戻った。
アルバシェルも視察団の方へ戻ったが、朝一番の鐘が鳴ると同時に来たそうだ。
モーイは別れ際にアルバシェルが来る時間を宣言していったのを聞いていたが、フレイは聞いていなかった。
知らぬうちにモーイに招き入れられてたアルバシェルが、まだ夢の中と言った状態のフレイを楽しそうにベッド横の椅子で見ていた。
夢の中のフレイはクリールの気配を感じた気がして声を掛けた。
「もう少し…一緒に…寝てようね…むぅ…」
クリールの頭を布団に引き込み抱き締め胸に埋めて撫で付ける。
勿論引き込まれていたのはアルバシェルであり、抱き締め頭を撫でられていたのも…そうである。
お互い様な人達の様である。
フレイの温かな双峰に包まれ至福の時を過ごしたアルバシェルは警戒する。
『ほかの人間で、この様に幸運なもらい事故が起きたら大変!!』
そしてアルバシェルはいつも以上の警戒体制に入ってしまったようだ。
モーイに状況を聞かされたフレイは、もれなく一言もらってしまった。
「まさしく自業自得だよな~」
出来上がったのは、人目も構わずフレイを抱き人形のように抱え連れ歩くアルバシェル。
もう諦めるしか無いと悟るフレイリアルだった。
だがアルバシェルが片時もフレイを抱えたまま離さない状態に、ミーティは納得いってなかった。
突然現れた優男に宝物をかっさらわれた上に、これ見よがしに自慢されている様な気分だった。
自業自得を悟ったフレイは引き寄せられ抱き締められるがままに傍らに居る。
モーイはいつもの事と静観しているし、タリクも納得のいかぬ顔をしているが今は放置している。
結局ミーティも自身の抱く不満に何か対応する訳でもなく、見せつけられるのを指を加えて眺めるだけであった。
この現状に降り積もるように鬱積する思いが溜まっていく。
「転移陣の管理者が魔力操作に劣るものならば此方に好機が訪れる」
「好機?」
アルバシェルが作戦の骨子を話し始める。
「あぁ、ここの陣は20名ほど送り出せる陣の様だが、実際にインゼルに行くのは10名程度だろう。ただの内包者なら感が鋭い者であっても、誤魔化しようがある。だから完全に隠蔽を掛けて陣に乗り込んでしまえば問題なく辿り着けるであろう。向こうに隠者はまだ居ないはずだ、こちら側から出立さえ出来れば問題は少ない」
「あんたは?」
ミーティがアルバシェルに不機嫌に問う。
「私は状況を整えてからしか行けない…」
アルバシェルは本気で悔しそうに不本意と言う感じでミーティに告げる。
「…だから宜しく頼む」
「頼まれる前から守る覚悟はできている」
ミーティは挑むような鋭い男の目をしてアルバシェルを見返し、自身の思いを示した。
何も分かってないコドコドの幼獣の様な何処かの姫は、自分を中心に繰り広げられている思いの交換を気にすることも無く、この先の道程を考えているのか…魔石のことでも考えてるのか…謎であった。
転移は夕時一つ、作戦はその半時ほど前から決行となる。
アルバシェルとともに王立魔石研究所へ赴き、転移陣を視察する背後に隠蔽をかけて潜む。そして、どさくさに紛れて転移陣に便乗してインゼルへ向かう予定…である。
かなり行き当たりばったりな計画であり、臨機応変な対応が求められそうだ。
話し合いのためにかなり早い時間から宿に集まっていたので、時間に少し余裕が出来た。
それぞれが必要な事を行っていたが…余計なことをしがちなフレイは部屋で謹慎状態だ。
アルバシェルとタリクは今後の話や自身の国の話をしているようだし、モーイはインゼルへ向けての買い出しや情報収集で居ない。
ミーティは酒場の主と興行についての話しをつけた後、フレイの部屋へ昼食を届けに行く。
扉を叩き声を掛けると返事が有った。
「ミーティ開いてるよ!」
フレイはベッドの上で魔石と戯れている状態に見える。
「食事だから机の上に置いとくぞ!」
取り敢えず用件をこなしミーティは立ち去ろうとした。
「あれっ?みんなは?」
「まだ忙しいらしい」
ちょっと寂しそうにした後、昼食の入った袋をもう一袋持っているミーティを見てフレイが言う。
「ミーティは食事まだなんだよね?だったら此処で一緒に食べよう!!」
自分の横の場所を叩きながら笑顔で言う。
朝の話し合いの時はアルバシェルとフレイの状態を目にして不満顔のミーティだったが、いきなりの此の状況にドキドキする。
昼間とはいえ2人きり…意中の子の隣である。
しかも食事を食べながらとは言えベッドの上。
今のフレイはインゼルへ行くのに備えた少年っぽい格好をしているが、ミーティの隣で新緑の瞳を輝かせクルクルと表情を変えながら魔石の話を楽しそうにしている姿は、眩しいぐらいに可愛かった。
『あぁ、やっぱり好きだ…誰にも渡したくない』
ミーティは自身の思いに確信を得た。
逆上せ高まる思いを押さえつけ、下を向いたまま押し殺すようにフレイに問う。
「…フレイはアルバシェルさんと結婚するの?」
急な質問にフレイは戸惑うがしっかりと答える。
「私はニュールを取り返したら、また元々の目的だった天空の天輝石を探しに行きたい!だから今は考えられない」
問いとは違う答えにミーティは更に問う。
「アルバシェルさんの事、好きじゃないのか?」
「好きだけど…結婚する好きかはわからない。それよりもリーシェを自由にするための魔輝石を手に入れたい…」
アルバシェルの事を考えると、自身の中に熱く繋がる思いが有ることがフレイにも分かる。だけど其れがどんな情によるものかは、フレイ自身にもまだ分からないのだ。
「じゃあ、そのリーシェの事が好きなの?」
「うん…リーシェが好き。リーシェは私が絶対に救いたい人で一緒にいたい人で無くせない人…。家族で先生で…私を救ってくれた大切な人…」
即答で返る鮮やかでハッキリとした思いを聞き、ミーティのモヤモヤが増す。
「じゃあ、リーシェと結婚したいの?」
フレイは聞かれて頭が真っ白になる。
「リーシェ…結婚??わっわっわからない…!?」
動揺のまま声に出していた。
そして最後に会った夜のリーシェの蕩けるように甘い笑みから降り注いだ艶麗な口付けと、全身を駆け巡るように伝わる魔石への口付けを思い出し真っ赤になってしまう。
その様子を目撃し…更に朝の光景を思い出し…ミーティの中にドクリと欲が芽生える。
枷が外れ、押さえつけていた思いが押し出される。
そしてミーティは顔を上げてフレイに向き合う。
熱の籠る瞳で見つめつつ、徐にフレイの両の手首を捕らえ…告白する。
「…オレ、フレイの事が好きだ…オレと一緒になって欲しい」
その言葉とともにベッドの上のフレイに覆い被さり押し倒し、手首を布団の上に縫い付ける。
そして目を丸くして固まっているフレイに顔を近づけ熱い思いで口付けようとした…が首根っこを捕まれていた。
「はいっ!良い思い出はここまでだ」
モーイが楽しげに注意する。
「無理矢理なお楽しみはご遠慮願いま~す。同意を得たなら邪魔はしないよ!」
ミーティは部屋から摘まみ出された。
モーイはフレイにも注意する。
「男はいつ何すっか分からんから自分でも注意しろ!」
「うん、分かった。ミーティの前では男の子っぽい格好は気を付けるよ!!」
「???」
トンチンカンな答えに固まるモーイ。
「ミーティ、タリクに振られちゃったのかな…」
「!!!」
どうやらミーティの嗜好を誤解し…男の子っぽかったから偶々言い寄られたと思ったフレイ。警戒する気があるなら別にどっちでも構わないので、モーイはその誤解を放置した。
時間が来たのでヴェステ王立魔石研究所へ向かう。比較的出入りに寛容であり、確認されることもなかった。
既に隠蔽を軽く掛けている状態なので周囲からはあまり認識されない。
強い隠蔽は賢者級だと察知される可能性が高いので必要な場所のみに留める。
サルトゥスの視察団に用意された部屋へ向かうとそこには神殿の装束を着た禰宜4人が既にいた。今一緒にいるアルバシェルも良くみると同じ格好だった。
全員賢者でありアルバシェルの背後に感じる隠蔽を纏うフレイ達の気配に警戒する。
「あぁ、こいつらは大丈夫だ」
アルバシェルが双方へ警戒の必要ないことを伝える。だが隠蔽を解いたこちら側の姿を確認すると、何らかの鋭さを含む視線を叩きつけて来る者が禰宜装束の中にいたようだった。
だが其をはっきり確認する間も無く、研究所の視察団に対応する者から準備が整ったと伝える知らせが届く。
案内の者に連れられて転移の間へ向かう。
そこにはヴェステ側の説明役の研究員とインゼルへの陣に乗る予定の者達が居た。
その中にモモハルムアとフィーデスの顔が有った。
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