魔輝石探索譚~大賢者を解放するため力ある魔石を探してぐるぐるしてみます~≪本編完結済み≫

3・T・Orion

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第三章 インゼル共和国編

18.目的地へと進む

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モモハルムアはインゼル行きの陣に乗るために努力した。
まず叔父を呼び出しそそのかし、バルニフィカ公爵との面会を整えた。

「この前お話が途中になってしまい大変残念でしたので…再度お時間を頂けて光栄です」

「いやぁ、こちらこそ美しいお嬢さんに華麗なる殲滅の話に興味を持って頂けて嬉しいですよ」

モモハルムアの挨拶に返事をし、優雅な佇まいの三日月目の笑顔を楽しそうに深める。

「今度インゼルへ、その噂の衰亡の賢者に迎えを出すことになったのだが貴方も行きますか?」

いきなりの話の振り、怪しさ満載だ。意外と大胆なモモハルムアであっても、流石に希望する内容だからと言って直ぐに話に乗るような事はできない。

「なぜ、そのようなお話を…」

「ふふっ、貴女が戦うお嬢さんだと聞き及んだものですのでご興味が有るかと思ったのですが…余計なお世話でしたか?」

三日月目の獰猛な魔物が、獲物の次の動きを探るように本心を見定め影に潜みじっと見つめている。
相手の情報網はモモハルムアの子供だましの情報収集とは違う。あのエリミアでの1日を把握した上で、手のひらの上を転がすようにして反応を楽しんでいるのだ。
誤魔化しでは乗り切れない。

「ええ、大変興味があります。是非行ってみたいと思ってました」

ここでは情報は与えず気持ちだけを伝える。

「何故に…と問うたら答えて下さいますか?」

「戦いそのものに興味があります。私はエリミアの選任の儀の夜の当事者ですから…」

自分からある程度の情報を開示し相手の納得を誘う。

「おぉ、そうでしたか。では衰亡の賢者とも面識が?」

「あの日に会っただけの方。避難などの情報を共有することは有りましたが、あの様な状況下でそれ以上は…」

モモハルムアは嘘は言ってない。
ただ、此処からは情報のみでそこに籠る思いは欠片も見せるつもりは無い。
年若いモモハルムアだが見た目や継承順位で群がる者も多く、人あしらいは鮮やかである。いかにも思いが入っている素振りで思いの無いことを述べる。

「あのような強き者の意志を薙ぎ払い連れ帰る様を、是非後学のため拝見させて頂きたいと思っておりました」

モモハルムアが陣に乗るため奔走していたのを察知していると想定して告げる。

「ほぅ、自身に役立てたいと…向上心溢れるお姿に感服致しました。是非近くでご覧ください。特等席をご用意致しますよ…」

一応、三日月目の強かな観察者からの合格は得たのか…罠なのか。
ここからも足を掴まれ引きずり回されないよう、慎重に進まねばならない。



転移の間は既に飛ぶ予定の者と見学者と管理する者、20名程が部屋に集まっている。

空間は空いているが少し圧迫感と違和感が有るのをモモハルムアは感じた。
フィーデスも同じ違和感を持つのか、辺りをしきりに警戒する。
他の転移陣に乗る予定の者や陣を管理する者は全く気づかないようであるが、サルトゥスからの視察団の周りを無意識に大きく迂回して行動している皆の姿に大きな引っかかりを感じるのだ。
お客様への気遣い…以上のものが確実にあるような気がした。

モモハルムアは後から入ってきたサルトゥスの視察団が部屋に入る時、驚き息を飲むような感覚が飛んでくるのを察知した。それに懐かしい様な思いの籠る感情が漂うのも感じた。
周りを見回したが該当するような、見知った雰囲気の者は居ない。

今回の転移の主目的は、転移陣の模擬運用への見学者の受け入れである。
そのため普段のように最大積載量で飛ぶような事はしないようであり、転移陣には余裕があった。

「では、インゼルに渡る方は転移陣にお乗りください」

研究所の担当者に声を掛けられ、モモハルムア達もいよいよ陣に乗り込む。
サルトゥスの者達の中に有った違和感が、何故か陣の方へと移動している様な気がした。そして陣内の圧迫感も増した気がする。
他の者は感じていないようだが、フィーデスもその違和感を感知し警戒感を強め剣から手を離さない。

その時、不意に足元に何かが倒れ込むような感覚があった。そして陳内から驚嘆するような感覚が入り口で感じた時の様に生じた。
だがそれを気にする以上に、モモハルムアも足元に触れる違和感を感じ吃驚し飛び退きそうだった。
その様子を察知したフィーデスが危機感を抱き、陣の起動を止めようとするが直後モモハルムアが制止する。

「問題は無いから大丈夫よ」

モモハルムアの顔に、明らかに嬉しそうに安堵する表情が広がっていた。フィーデスは疑問に思ったが、主の言葉に従い陣の起動を受け入れインゼルへ飛んだ。



フレイリアル達はサルトゥスの転移陣運用視察団の背後に隠蔽を施し付き従う。

転移の間に入った瞬間、モモハルムアが居ることに吃驚して声を出しそうになってしまった。
モモハルムアがその気配を察知し確認するように、此方がいる方向に目を止め確認する。

初っぱなからのヤラカシ一番のフレイの行動。
高出力の隠蔽施される空間の中でお互いさえも気を抜くと見失いそうなのに、モーイからフレイへと的確に拳固が飛んできた。

転移陣の中への移動が始まる。
今回ヴェステが送るのはモモハルムア達を含め9名の様だ。
その者達の後に続きフレイリアル達も陣へ移動するが、最後に陣に足を踏み入れたフレイが計画最大の危機を生む。
陣の中、ヴェステから送られる者達の前でこけた。
先に乗っていたミーティ始めモーイ、タリク、クリールさえフレイのヤラカシに仰天した。

強度の隠蔽魔力で覆っていても、流石に目の前で起きた事への違和感でヴェステ側の者を驚かせてしまった。
ただ、その人物はモモハルムアだった。
フレイはモモハルムアの足元に這いつくばった状態だが、吃驚しているモモハルムアに手を伸ばし手を掴み魔力の循環を起こす。
モモハルムアの口が小さく動く。

「フレイリアル様…」

そしてモモハルムアはフィーデスを制し、陣はそのまま起動に至る。


モモハルムアの見送りに来て転移の間の外で控えていたエシェリキアも、転移の間の違和感に気づいていた。
そして陣に乗った後のモモハルムアの行動も、何かが起きていた事も全てを感じ取っていた。
飛ぶ直前に動かした口の動きさえも見逃さなかった。

『あの《取り替え子》はここまで来ているのですね…やはり無益な者の排除の方が私には向いているのでしょうか…』

置いていかれた不満と共に、色濃い影が更にエシェリキアに広がるのだった。



フレイリアル達はインゼルに無事移動することは出来た。

だがヴェステ軍が築いている滞在施設から脱出出来ていない。
フレイリアルは陣の中からずっとモモハルムアに手を握られたまま離してもらえなかったのだ。
インゼル側に着いてからもモモハルムアは有無を言わさぬ笑顔にて、怪しい隠蔽組を半強制的に連行し用意された個室へ移動させる。
隠蔽を解いて対面した後も、モモハルムアのにっこりと笑む表情は怖いぐらいに崩れなかった。

「状況を全て教えて頂けるまでは手を離せませんわ!」

ニュールを手に入れようとする女達は、強い。
年齢問わず芯がしっかりした強気な自立した女ばかりの様であった。
目的を同じにするモーイとモモハルムアは対立するかと思ったが予想外に意気投合する。

「今は争う時ではありません。ニュール様を奪取する事が先決です」

「あぁ、本人が居ないことには落としようが無いからな」

「えぇ、負けるつもりも引くつもりもありませんが第一目標の為には協力が必須です」

「勝負は本人が現れてから正々堂々とな!」

正しく好敵手と言う感じで清々しく手を取り合い、お互いにニュールへの熱い想いをその場で語り出しそうであった。


まずモモハルムアが希望していた状況の説明をフレイリアルがする。
勿論、リオラリオに禁じられているような部分の説明は抜かしてだ。

「…ニュール様が大賢者に至っていると言うのは本当だったのですね」

話し終わった後に述べるモモハルムアの感想は、ある程度状況を把握し心の準備はしていたであろう言葉に思えた。此処で話された以上のニュールについて知っているモモハルムアには、既に覚悟が備わっていた。

「えぇ、リーシェもアルバシェルさんも…大賢者2人がそう言ってました…」

フレイがモモハルムアに対し丁寧に告げる。

「じゃあ白の巫女に略取された理由も…」

「塔に繋ぎ、塔の力を強化するための様です。そしてリーシェからも…最近更にサルトゥスの時の巫女からも忠告を受けました。急ぐように…と」

状況が刻々と進行している事を皆で再度共有した。
モモハルムアは今後の自身の予定を開示し提案してくれる。

「私は明後日、船にて首都ボハイラヘ向かいます。それまでに侍女を2名入れる予定だったので、そこにフレイリアル様とモーイが入りませんか?」

モーイとは既に戦友的関係であり休戦中は最高の友と言った感じである。

「他の方達はフィーデスに紹介させますので、船に関連する職を得るのはどうでしょうか…」

結局一番早く確実に首都へ行ける…と言う事でこの話に乗ることになった。
タリクは見た目が可憐すぎるので一般の職種に入れようもなく、フィーデス付きの小姓にした。ミーティは船の厩舎番の補助に入りクリールと共に居てくれる。
ちょっとミーティだけ気の毒な気もするが、取り敢えず白の塔までの道が整いつつあった。


インゼルにある転移陣は塔攻めの準備で昼夜分かたず稼働している。
インゼル側に隠者がいない状態での稼働であり、陣のつなぎ替えは行われずヴェステからの便だけだった。
片側からの強制的な切り替えは膨大な魔力を要し隠者や賢者では行えない。
サルトゥスの視察団が帰国後、本格的稼働を目指しインゼル側にも隠者が送られた。
そして転移陣のつなぎ替えの試用に潜り込み、ボハイラへの船が出立するのに間に合わせるようにリャーフより訪れる一団があった。

「青の将軍へお土産をお持ちしました。それと…紛れ込ませてしまった忘れ物を取りに参りました」

リャーフ王国のアスマクシル商会、商会長エルシニアがそこに居た。
管理者である隠者へ灰色入る碧い瞳を向けて優雅に説明する表情は、人々を虜にするような甘さのある毒を空気中に放っているように周囲を魅了していく。引き連れる物々しい面々の気配さえ消してしまう。

『まずは、忘れ物が何処にあるか確認しないといけませんね…』

遣るべき事を思い巡らし、甘く優しく笑みを浮かべる。その中に揺蕩う狂気のような執着を綺麗に隠し、獲物の居る船へ歩みを進める。

「船内での狩りは初めてですが、楽しい時間になりそうです」
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