魔輝石探索譚~大賢者を解放するため力ある魔石を探してぐるぐるしてみます~≪本編完結済み≫

3・T・Orion

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第三章 インゼル共和国編

21.沈み進めず

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「ここまで来て頂けるとは有難い」

青の将軍はにこやかにその者を迎え入れた。

「将軍自ら迎えていただけるなど恐悦至極の限りで御座います」

恭しく礼をし対応する。

「今回はどの様な商機があり赴かれたのか?」

「純粋に将軍の勇姿を拝見させて頂きたく…などと言う言葉は信じてもらえない程、気心知れた仲と思えば嬉しい限りで御座います」

「はははっ、戦場に入り込む商人が何も持たずに来るなどそれこそ怪しいぞ」

可笑しそうに笑う姿に先日見受けられた気負いはもう無い様だ

「今回は将軍への納品…が一件、私用が一件で御座います」

「納品とは?」

「闇石で御座います」

「おぉ…」

将軍の顔に喜びと嫌悪の2つの表情が浮かぶ。
忌むべきモノでもあるソレは大概の者に嫌悪されるが、強力な魔力の供給源となり戦場では有益な一品である。

「此方の物は草原の国プラーデラで彼の者が殲滅した街のモノだそうです。偶々存在した魔石が闇石に変化していた様です。それを持ち帰った者達もその中の一員となってしまうぐらい強力なようですので、取り扱いには十分御注意ください」

今現在も防御結界陣を全ての面に彫り込まれた分厚い魔石の箱に封印されるようにしまわれている。

「貴重なものを…役立てさせて頂こう」

側近が受け取る。

そして先程から気になっていた布の塊を指し示し言う。

「私用の方はそれか?」

「えぇ、私用が終了した…と言うべきでしょうか…」

布を剥ぎ取り蠢いていたその姿をさらす。

それは肉に食い込むほどキツく、足元から胴体、腕と胸の辺りまで縛り上げられ転がされ口に詰め物をされた状態のフレイリアルであった。
エルシニアは跪き近付き、転がるフレイリアルの肢体を撫で付ける。

「此れが先日お話ししていた、やっと捕らえましたコドコドの幼獣で御座います」

リーシェライルに似た面差しを愉悦に歪ませながら述べる。

「ほぅ、確かに捕らえた甲斐有りそうな…滑らかで随分と艶麗な肢体で…睨み付けるそのままに寝所に連れ帰りたい気分にさせるな…」

一見爽やかそうに見える青の将軍の瞳に嗜虐心溢れる暗い炎が宿る。

「まだ、狂暴な状態ですので従順になりましたら再度披露させて頂きます」

一応、もったい付けるように所有権を主張するための牽制をするエルシニア。

「服従させ恭順させるのが一興…と思われるが、捕獲した者の特権か…」

名残惜しそうに欲を秘めた目で見つめるが切り替える。

「…して、獲物を見せびらかしに来ただけか?」

「いえ、この者は愛でて可愛がる以外にも使いようが有りまして…」

荷物のように抱えあげ雑に座らせる。

「この者、陣を解けるのです」

「それは珍しき特技…王にでも進呈するか?」

「いえ、この様な些末な者、王のお眼鏡に叶うとは思えません。恭順を示すようになったら研究所にでも預けますので色々と確かめ煮るなり焼くなりお好みの味付けでお召し上がり下さい」

「楽しみにしていよう…」

フレイリアルは勝手な会話飛び交う下で驚愕していた。

『訳が分からないし、陣の解除…何処でその情報を手に入れたのか…』

その表情に気付いたエルシニアが述べる。

「観察する目は何処にでもあるのです。気付かない方が間抜けなのです」

そしてエルシニアが口に詰めたものを外そうとするので、外された瞬間に怒鳴りつけるように思いのまま叫び声をあげようと待ち構えていた。
口の詰め物を外された瞬間、再度口を塞がれ口の中に何か流し込まれ衝撃を受ける…口移しに行われた気持ち悪さに…。
そのリーシェライルに似た面差しではあるが天と地程の差のあるソイツは、フレイリアルに接吻をするように何かを飲ませたのだ。
しかもフレイリアルにとって屈辱的で不快でしかない感触だったソレを楽しそうに語る。

「ご満足頂けないようでしたら何度でも重ねてあげますよ…今度は薬無しで…」

酷薄で思いの欠片も無いソイツに否を突きつけようと叫ぼうとするが、塞ぐものが無いのに声が出ないし力も入らない。

「鎮静剤と金鉱魔石の入った混合酒です。まずは命令に従順になるよう、貴女に陣を刻みます。短時間の効果しか得られないようですが、意に沿わぬ事をするのは心の重石になりますからね…フフッ」

あらかじめ用意した陣を刻んだ水晶魔石の印章を使い、瑠璃魔石の粉入る染料で首に陣の印を刻みエルシニアが魔力を流す。
魔力が流れると軽く輝き、陣が定着し動き出すのが感じられた。
陣からの魔力が、飲まされた金鉱魔石を足掛かりにして全身を巡り支配していく。
フレイは自身と自身の何かが切り離された様な感じを知覚した。

「比較的新しい研究の成果を買わせていただきました。貴女の身体は此の陣の魔力が巡る間、貴女の心の支配から切り離されます。回路に働きかけるのだそうです…もっとも人で試すのは貴女が初めてですが…」

残忍で楽しげな微笑みを浮かべる。
そして上半身の束縛を解くと、首に刻まれた陣にてを当て魔力を動かし回路を連携し命令した。

「起き上がり私に口づけなさい」

心のなかで全身全霊をかけて拒否したが、フレイリアルの身体は上半身を起こし意思に反した屈辱的な行動をする。
屈んで様子をのぞき込むエルシニアに向かい…リーシェライルと似た面差しの唇へとフレイリアル自身で動き自身の唇を重ねる。
フレイリアルの中に燃えるような屈辱感が湧いてくる。

「良く出来ました…褒めてあげましょう。このままエリミアに連れ帰って大賢者様の前で披露したいぐらいですよ…ふふふっははははっあははははっ」

闇の底から這い出したような仄暗い愉悦を含む笑い声が高らかに広がった。

「失礼いたしました、つい実験の成功に気を良くしてしまい我を忘れました」

楽しさに我を忘れた非礼を青の将軍に詫びる。
全てを見定めていた青の将軍は、一連のエルシニアの酔狂を流す。
それよりも実験の成果に大変興味を示し、気になっていたフレイリアルを確認するために近付き…背中に触れ撫で付ける。

「なかなか良い成果が出ているようだが、ヴェステの魔石研究所では聞かなかった実験や成果のようだが…」

「タラッサにある研究所で行われている実験の成果です。将軍もお試しになってみますか?」

「いや、楽しくて止まらなくなりそうだから遠慮しておくよ…」

そして話を進める。

「まず目星をつけた場所にある結界を解除させます、その後はお任せする形で宜しいでしょうか?」

「あぁ、有難い。だが体の自由を奪っても魔力を行使するか疑わしいのでは?」

「えぇ、ですので心を縛るための者達を用意しました…そして切り札も…」

そこに引き連れて来られたのは後ろ手に縛られたモーイを始めとして共に行動していた仲間全てが捕まっていた。
モモハルムアとフィーデスのみそこに居ない。
フレイリアルの不安に反応するようにエルシニアが答えた。

「もう一方のエリミアのお嬢さんは、国賓でもあるのでヴェステに戻しましたのでご安心下さい」

そしてエルシニアは酷薄な笑みを浮かべ続ける。

「此処に残った方達の命運は貴女次第です、心してご判断下さい…」

並ばされているモーイ達の数以上の隠者が用意され、攻撃魔力を立ち上げた状態で狙い定めている。

「あなたは仲間が傷つけられるのと、見知らぬ誰かが傷つけれるの…どちらを選びますか?」

フレイリアルはそのエルシニアの卑怯なやり口に、心底からの嫌悪と怒りが沸き魔力が立ち上り揺らめく…。

「そうですね…確かに選択肢は他にも有るのでしょうが、貴女が選べるのは此だけです」

揺らめくフレイの怒りの魔力が呼び水となり、少しずつ周囲の魔力が集まってくるのを感じるエルシニア。
そしてフレイリアルに最後の切り札を指し示す。

「貴女の魔力が闇神殿の魔力暴走の原因である事は聞き及んでいます…ここへも魔力を集めますか?」

闇から心を絡めとるように囁く。

「そして此処に居る者達の中からお人形を作りますか?」

畳み掛けるようにエルシニアは続ける。

「そうして誰かの人生を叩き潰しますか?」

自由を奪われているフレイリアルの瞳が反応する。

「貴女は既に他人の人生を奪い…絶っている。…既に此方側の…踏み潰す側の汚く穢れた人間なのです」

フレイリアルの耳元で囁くように真実を叩きつける。

「!!!」

体の動きは封じられているが目線の先にあるモーイとタリクの表情が曇り、フレイから視線をはずす姿が目に写る。

『…真実…なんだ…』

今の今まで虚実取り混ぜた揺さぶりだと思っていたが、仲間の目の中に浮かぶ悲痛さがフレイリアルに真実であることを悟らせた…。
自分の存在する足元に踏み潰した人間の骸が転がっている様な気がした…自分が呑気に過ごしていた空間が崩れていくような感覚。
誰かの人生を…その周りの人間の思いを潰した存在であると自覚し、全ての資格を剥奪される様な気がした。
駄目押しのようにエルシニアが付け足す。

「貴女が直接人生を奪った者は4名ほどです。まぁ貴女の行動が引き起こした結果として周りの者が始末をつけた人数も含めれば、とてもとてもそれでは済まない骸が出来上がっていることでしょうね…」

フレイリアル目から輝きが失われた。
お人形そのもののようになっていた。

『他の選択肢を選べるのは全てを受け入れた強き者のみ…貴女は残念ながら強くありませんね…』

エルシニアの心の呟き通りフレイリアルは落ちた。そして魔力の拘束なくとも従うであろうエルシニアのお人形がつくられたのだった。
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