魔輝石探索譚~大賢者を解放するため力ある魔石を探してぐるぐるしてみます~≪本編完結済み≫

3・T・Orion

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第三章 インゼル共和国編

30.進む途中

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今までと変わらぬニュールを取り戻せたことに安堵する皆とフレイ。
共に進んできた者達の無事な顔を確認し喜ぶが、ミーティとクリールの顔が無いことに気づく。

「あぁ、頑張ってたよ!だけどチョット怪我しちまった様でさ…待機してるよ」

珍しく沈んだ雰囲気だったので心配になり、モーイの袖を掴むフレイ。

「ミーティは命に別状は無い傷だよ…ただ、ちょっと自分自身が情けなくってな…」

モーイは自分の不甲斐無さでミーティに要らぬ傷を負わせた事に責任を感じていた。
フレイは思わずモーイの表情に心動かされ、手を取り魔力循環を起こし癒す。
モーイは一瞬の驚きと、その循環の暖かさに微笑む。
そして、ミーティを迎えに行きながら、フレイ達と合流するまでの状況を話してくれた。


ミーティ達は常に隠者4名に囲まれていた。
そしてフレイヘの脅しとして使われる度に連れ歩かれた。
その度に皆で思うことは一緒だったと思う。

「「「何のために此処にいる!」」」

フレイリアルが湖で強制的に陣の解除をさせられてる時も、その元凶であるエルシニアを睨むことしか出来なかった。
そしてフレイリアルだけがエルシニアに連れて行かれ、皆は青の将軍の管理下で隠者によって見張られ厳重に逃走を防止されていた。

監禁されている場所は厩舎。
滅私奉公の手本の様な隠者達の監視から逃れるのは難しそうだった。

だが、フレイリアルの陣解除は状況を変えた。
隠者は塔攻撃へ動員され、新たに現れたのは一見従順に働く者達であった。
代わりに見張りをすることになったのは、実力に劣る内包者インクルージョンばかりである。

ヴェステでは内包者になったと言うだけで国に召し抱えられ、下にも置かぬ扱いをされ崇め奉られ傅かれる。
そのため実力が伴っていようがいまいが大きく勘違いした輩が出来上がる。

隠者4名の代わりに見張りに入ったのは10人の内包者。
程ほどの実力があるため青の将軍旗下に入り任務に従事しているのであろう。
その分鼻持ちならないような輩が多い。
しかも3人が明らかに年下であり、しかも女子2人を含むと勘違いしているため偉そうな感じが倍増している様だ。

「へぇ、人質は女子かぁ…へへっ良いですねぇ」

「なかなか見ない位の綺麗所だな…」

タリクやモーイの顔の確認をすると厭らしい下卑た笑いを浮かべる。
半数が外を見張り始め、ミーティは端に縛り付けられる。
悪いことを考える奴らであった。

だが、なぜ隠者が見張り役になっていたか理由を考える頭は持たなかった様だ。

早速楽しもうと勇みモーイとタリクに襲いかかるが、組伏せられたのは勿論そいつらであった。

2人とも後ろ手に縛り上げられていたが蹴りあげ組伏し、そいつらの持つ魔石袋に肘を当てると魔力を導き出し自身を縛り上げる縄を焼き切った。
これは捕縛された場合などを想定した攻撃訓練でやる事であり、モーイもサルトゥス王都神殿で賢者相当の者が受ける訓練で少し体験したものだった。
だから揃えた様に同様の動きをする。
攻撃も見事に息を合わせた様な展開で密やかに完全制圧となる。

「馬~鹿、ぶわぁ~かかぁ? 身の程知りやがれ!」

踏みつけ蹴りを入れつつなじるモーイ。

「役に立たない目は潰して差し上げましょう…でもその前に…」

タリクも女子扱いに静かに切れていた様で、激しくそいつらを蹴り上げる…客観的に見てなかなか気の毒になるぐらいの痛手を与える。
2人とも今までの憂さ晴らしも入っていたようだ。
その後ミーティとクリールは縄を解かれ助け出された。

捕縛した者達が知っている状況や行動計画を、強制的に洗い浚い話させ確認する。
塔の大賢者を誘きだし闇石の力で略取し、守りの薄くなった所を数で攻め落とす予定…とのことだった。フレイは軟禁状態でありエルシニアの管轄下にあるが、現在エルシニアは将軍と会合中の様だ。

「この後はフレイを助けてやらないと…」

ミーティの言葉にタリクとモーイが異を唱えた。

「闇石が使われるなら其を何とかした方が良いかもしれません」

「…あぁ、闇石って死んだ奴らの思い籠る魔力の集合体ってやつだろ…人形が出来ちまうやつ…ニュールがヤバいよな。それに大賢者様のお人形なんて出来上がったら…手に入れちまったら絶対使うよな…この場的にも世の中的にも不味いよな…」

「…」

闇石を奪取することが先決となった。



隠蔽を掛けて外に出ると丁度闇石の運び出しの10名程の一行が、まだ追いつける様な湖までの道程にいた。

ただ闇石の扱いは繊細であり、闇雲に襲撃して奪う訳にも行かない。
しかも運ぶ者全員が蒼玉魔石を使った防御結界を使い、外部から闇石を…闇石から自身と周囲を守っていた。
運んでいる途中での闇石への巻き込まれ事故を想定してか、運んでいるのは失っても惜しくなさそうな者とその予備といった感じであり実際戦えそうなのは2名程だった。

充分状況を観察して行動したつもりだった。
隠蔽を纏った3人は先頭を行く護衛を落とし一行の歩みを止めようと、背後3メルまで近づいた。
だが、いきなり声をかけられる。

「上手いこと抜けられたなら、お姫様でも助けて此処から脱出すれば良かったのに…」

高度な隠蔽魔力を纏い巧みに潜る者がそこに居た。

「ボク仕事熱心じゃ無いんで、余計なことしないで欲しいんですけど…」

3人は隠蔽をかけたまま構える。
その間にも闇石運搬の一行は先へ進んで行く。
だが、隠蔽をかけたままここに佇む者は今までで一番隙がない。

「もう行っちゃったから良いよね…」

隠蔽を解き現れたのは礼儀正しそうな青年であり、強そうな感じとはかけ離れた…寧ろ見た目の雰囲気はすぐやられてしまいそうな雑魚的存在に見える。
だが、中身は今まで見てきたどの隠者よりも強力で実践的な雰囲気を持っていた。

「皆さんも楽になさって下さい」

にこやかに声を掛けてくる。
隙が無いどころか、下手に動いたら殺られるだろう事が本能で感じられた。
3人が3人共に冷や汗を流し真剣な面持ちを崩さない。共に居るクリールさえも強者と判断して動きを止める。

「皆さん、そんなに緊張なさらなくても…」

残念そうな声で1人話を進めていく。
だが、隠蔽を解いていない3人の目線を確実に捕らえて話しかけてくる。

「まぁ、皆さんとは初めて…になりますが、お姫様とは面識がありますし塔に居る守護者殿は私の憧れの人なんですよ…」

そう言って微笑む笑顔は冷たく鋭く寒気を感じる。

「じゃあ、折角なので自己紹介から…」

恭しく礼をする。

「私はヴェステ王国の影に所属していた《五》です。今は王の下で隠者の末席に身を置かせて頂いてます。以前から悩んでたんですが、これって栄転と左遷…皆さんどっちだと思います?」

悩み顔で気軽に相談する姿にゲッソリした気分になる。

「《三》…守護者様とは元同僚だし、第六王女様とはエリミアの夜からの知り合いなんです…最も2人とも私の顔を見ると嫌な顔をしそうですが…」

楽しそうに男は笑むが、既に此処にいる3人と1頭もうんざりしてきた。

「サルトゥの夜にもお邪魔させていただいたので直接の面識は無くとも、お二方ほど此方から一方的に存じ上げております」

そしてやっと独壇場的挨拶が終了した様だ。

「さぁ、皆さんからもご挨拶頂いてもよろしいですか?」

「いい加減、五月蝿いんだよ!」

長々しい挨拶にぶちきれたモーイが力のままに踏み込み、魔力纏い体術であたる。
だが風を受けたかの如く、軽く受け流される。

「やはり皆さんの好みは、こう言う挨拶なんですねぇ。了解しました」

予想はしていたが、この者を何とかしないと闇石の処分どころか自分達の脱出さえ無かった事にされかねない。
3人とも隠蔽を解き、本気で仕掛ける事にした。
途中闇石の魔力が立ち上る気配があったが、もう其れ処の状況では無かった。

タリクとモーイ主体の攻撃が始まり、ミーティとクリールは補助役に回る。

ミーティは鉱山では一番の実力者であったが、この短期間に自分がお山の大将であったと言う事を嫌と言うほど実感させられる。
ニュールの別次元な戦い…一方的な殲滅を見たことがあったので、すんなり納得する事はできた。この中で一番実力が劣るのが自分で有ることを自身で受け入れる。
それ故、冷静に自分が遣るべき事を判断する。

『出来ないなら、出来ないなりに遣ることはある!』

補助しつつ隙を生むための罠を仕掛ける。

不便な鉱山での戦いは周囲のありとあらゆるものを利用する戦いでもあった。そこにある石ころや窪みさえも自分の武器にするような戦い。
そして樹海の民は自然界にある微細な魔力に敏感だ。
この湖畔も塔の近くと言う事で降り注ぐ魔力も多いのだろう、自然と魔力宿る物が多くなる。

ミーティは足元の魔石を使い、大きめの岩の上に防御結界陣を刻み立ち上げながら移動する。遮蔽物を用意しタリクとモーイの戦闘に貢献しつつ自身は攻撃を躱すだけに留める。
更に足場的防御結界陣を敷き不安定な足元を整備する。
そこに刺突陣を混ぜ込む。

樹海の民が河原などで仕掛ける狩猟用の陣であるが、角閃魔石と石英魔石が無いと成り立たない陣であるので使える場面が限られる。
此処には両方存在し、それを樹海の民の目で見定めていた。
魔力操作によって刺突陣は、刺し貫く攻撃力持つ陣となるのだ。
仕掛けた陣の近くに敵が来た時、機を見てミーティは発動魔力を流し入れる。
見事、刺突陣による足元からの攻撃で隙を生むことに成功する。

「ミーティ、助かる!」

モーイからの声掛けがちょっと嬉しいミーティだった。
モーイとタリクは、皆で作り上げた一瞬の隙を生かし攻撃に転じる。

だが、高度な魔力操作を伴い操り出す元影である隠者と名乗った男の高出力な魔力による攻撃は、簡単に状況を覆し優位を奪い返してしまった。
防御結界を破壊する程の攻撃魔力を叩き込まれた2人は地面に伏し動けなくなる。

魔力攻撃を仕掛けていた男はその手に剣を握ると、表情を変えることなく魔力を乗せる。
そして近くに居たモーイに近づき、刀の錆とすべく最小限の動作の中で切り付ける。

刹那、防御結界を築き立ち塞がるミーティがモーイを守るべく間に入り、魔力の乗った斬激を受け止める。
しかしモーイやタリクの結界を破壊したその力は、勿論ミーティの結界も破壊し刃が身体を切りつける。
結界による多少の軽減はあったが、肩に致命傷ではないが軽くはない傷を負ってしまう。じんわりと広がり、衣を鮮やかな茜色に染めていく。

その時、塔から爆発的な黄色く輝く魔力が立ち上がり塔より波紋を広げるように向かってきた。
向かい来る魔力を感じた時、本能が叫んだ…逃げろ…と。
ミーティはクリールを呼び寄せ、傷を負った体にムチ打ち腕と足に魔力を纏いタリクとモーイ抱え向かいくる魔力から必死に逃げた。
その迫り来る魔力が収束に転じた時に現れた、心凍る光景。

だが、その光景に恍惚として見入り、頬を上気させ感嘆のため息漏らす者が居た。
対戦していた影だったという隠者だった。

「あぁ、此のような光景に出会えるとは…此処に来たのはお仕置きだと思ってましたがご褒美だったのですねぇ…」

今までの戦いなど全て無かったかの様に、フラりと立ち上がり何処かへ行ってしまった。
あっけにとられるミーティだった。
その予想外の展開が過ぎ去りつつある頃、滲み出す鮮やかな色合いがミーティの上衣を染めつくす。
激しい痛みが思い出した様にミーティを襲う。
久々に受けてしまった傷だが、自分のなかでは賞賛に値する物だった。
魔力の影響で動けなくなっていたタリクとモーイが起き上がる。

そしてまだ終わってないことを3人とも理解していた。激しくやり取りする魔力が塔の方から感じられる。

「…アルバシェル様!!」

いつも冷静なタリクが、珍しく驚愕の表情浮かべ叫ぶ。

「…旦那、やっぱり来たんだ…」

モーイは面白げに呟く。
痛み増すなかミーティは2人に声をかける。

「まだ終わってないだろ! 進めるなら進め…オレはこの状態で足手まといにならないよう此処で待つ」

背中を押し送り出す…適切な判断ができたと思う。
半端ない痛みに包まれつつ、ミーティは残ってくれたクリールに話しかけた。

「強くなりたいな…」

クリールはその言葉に答えるように翼を広げ柔らかなかいなに包んでくれる。
そこでミーティは意識を失った。



意識が戻ると皆に囲まれていた
心配そうにするフレイが横で覗き込み声をかける。

「大丈夫ミーティ?」

頭の上からは凄く久しぶりに会うニュールが頭にポフッと手を乗せ声を掛ける。

「坊主、大丈夫か? 色々有り難うな!」

何だか父さんに言われたみたいでくすぐったい気分だ。
タリクも他所を向きながら言う。

「実力に見合った対応だけになさい。…でも助かりました」

そしてモーイがつかつかと近づいてきて、行き成りデコピンをかます。

「弱っちいのに無理スンナ! でも、ありがとうな…」

そして頬にお礼の接吻。

『コレ夢? 女子からの人生初の積極的展開!! やっぱり夢オチ? はたまた死亡間近的展開?』

呑気な視点で頭を悩ませるミーティであった。
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