魔輝石探索譚~大賢者を解放するため力ある魔石を探してぐるぐるしてみます~≪本編完結済み≫

3・T・Orion

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第三章 インゼル共和国編

31.進み進む

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怪我をしていたミーティを回収し、逃げてきたヴェステ軍から隠れるためにニュールの提案で取り敢えず白の塔へ行く事となった。

白の塔へはニュールが作る転移陣の起点から向かう。
魔石など一切使わず周囲の魔力を収束し、何の気負いもなく起点となる転移陣を形成する。その姿は大賢者と言うより、いにしえに存在したと言う伝説の大魔導師と言う風情だ。

「凄く便利だねぇ~」

皆がその魔力の扱いに畏怖を覚える中、無邪気に思ったままを口にするフレイ。

「お前は塔の中でも大丈夫そうだな…」

そんなフレイに呆れながらも感心するニュール。
そして皆に陣に乗ることを促すが、陣を起動させる前に注意する。

「一応言っとくけど、白の塔の中で言葉として考えたことは自分で勝手にしゃべってるから注意しろ~」

塔の至近にある登録地点を読み、その場へ移動する。

塔周囲に活動する者は無く、人形転がる光景もそこには無かった。
ほんの半時程前の事であったはずなのに戦い跡のみで傷負い倒れる者の姿は無く、人形さえも無かった。

驚くほどの静寂がそこにあった。

外周の防御陣は解除されたままであり、万全とは言えない。
そのためニュールは皆に先に塔内で待っていてもらい、陣の修復を出来る限り試みることにした。
今はヴェステ側も混乱している様であり、塔攻めも一旦中止となっているがこれで終わるとは限らない。塔を守るためには湖の陣の再構築は必須である。

重い決意を秘めた目でフレイリアルが申し出る。

「私が手伝う…」

この陣を解除したのがフレイリアルである事は、ニュールも途中で本人から聞いている。陣解除が、今回の様々な事態へ多大な影響を与えていることをフレイリアルは理解していた。
申し出通りフレイに手伝ってもらい、他の者はラビリチェルの案内で塔内へ入り待つ事となる。

ニュールとフレイリアルが湖の陣の再構築を始める。
陣の形成をニュールが行い、構築及び起動魔力をフレイが担う。

フレイはニュールの手を掴み、ニュールが魔物の目をしていたときに受けた攻撃を変換貯蔵した魔力の残りを循環させるように戻す。
そしてニュールはその力を起点に周囲に漂う微細な魔力含む魔石を凝集し、連面と続く大賢者が持つ知識の泉より必要な情報を汲み上げ陣を構築していく。

そして塔周囲と上空に無数の白く輝く防御結界陣が展開され、出来上がった陣を未だ残る支配による強制力で塔と連携させた。
それと共に再び霧立ち込める湖となる。

「ニュール、高度な陣組めるんだね!! リーシェがエリミアで展開した陣の次に複雑で凄いの出来てるよ」

何だか子供に尊敬されるお父さん気分を久々に味わう様な気がして、ニュールはこそばゆい気分になる。
久々の二人での行動と作業だった。

出来上がった濃い霧に覆われ自分自身が霞む様な中、ニュールの傍らで繋がる守護の魔力循環に後押しされフレイリアルは自身の心の闇をニュールの前で告解する。

「ニュール…私は…私を追い詰める様な人達と自分は違う種類の人間だと思っていた」

フレイリアルは自身が加害する側に立つとは思っても居なかった。

「だけど、今まで自分に向けられていたものよりズット俗悪で…非道で残忍な事を自分の手で行ったと知って、先へ進むことを自分自身では望んじゃいけないかな…って思っちゃったんだ」

無気力の中で自分が遣った事…気付かなかった事を思い返す。

「だけどモモハルムアに言われて、放置する事も悪だって気づいたの…でも、それでも本当に進んで良いのか今でも迷う…」

俯くフレイの瞳の中に迷いと後悔が生む濃い影が揺蕩う。
ニュールは静かにフレイの言葉を受け止める。

「そうだな…自分が考えた最善の答えが、最善じゃない時って有るからな…」

ニュールはフレイの頭にポンッと手を乗せる。

「起こった事を戻す事は出来ない…だけど後悔が有るなら取り戻すために進むのも有りなんじゃないか」

ニュールーは優しくフレイを見守る。

「勿論、本当に辛ければ逃げちまったって悪いことは無いさ! だけど自分で明確に選んだ事で起こる結果からは逃げるな…まぁ、なるべくだけどな」

そして頭に乗せた手でワシワシと力強く撫でる。

「まぁ、明確な答えになってなくて悪いな!! みんな同じ様なもんだからな…大人も子供も変わらない。平等に何もしなくても進んじまうんだから気軽に何か遣ってみるのもありなんじゃないか?」

ニシシッっと、にっこりオヤジ臭い笑みを浮かべながらフレイの背中をボスッと叩くニュール。
フレイの心が軽くなる。

そしてニュールもフレイに伝えることで、自分自身の心の重石を少しだけ横に置く。暫しそれぞれの抱えるモノを手放し、組み上がった陣の前で父娘の対話の様に見える様な?…ニュールが気付くと喪心しそうだが…作り上げられる魔力循環の中、気軽で気楽な癒される時間を持つのだった。



フレイが初めて訪れる白の塔は、エリミアの賢者の塔・中央塔の雰囲気とほぼ変わらなかった。
満たす魔力の質から考えると、エリミアよりサルトゥスが近い感じとは思われる。

ここも塔上層は賢者級でないと入れない様だが、サルトゥスよりも更に縛りが緩い様だ。次の攻撃を警戒し、念のため周囲の状況把握がしやすい上層に皆で集まる。

陣に乗るときにニュールから言われた注意を皆が理解するのは、塔に入って皆で話すことになってからだった。

最初の塔の魔力の犠牲者はミーティ。

ミーティが治療を終え、皆で集まる場で久々に正面から目にしたニュールは何だか腹の立つぐらい満たされた環境だった。

皆の下へ戻ってきたニュールが誘導され座る場所は、椅子の左右にモモハルムアとモーイが座る場所だった。

モーイはニュールにベッタリと腕を絡め密着し、モモハルムアは然り気無く…だが極近くに頬染めながら寄り添う。
そして頭上には白の巫女と言われている大人の姿の美しい人が背後から首に纏い付き、ニュールの頭に柔らかそうなモノを乗せている。

足下にも可愛らしい少女が足にすがり付くように抱きついている。
その少女はニュールの頭上に居る女性ととても似ていた。
ニュールの周囲で立ち働くのも妙齢の美女ばかり…。

「どんだけニュールってば王様?? ココはどこの城の後宮だよ!!」

ミーティの心の呟きが止まらない。

「強いとモテモテか? オレだって頭に乳乗せてもらいたいわ!」 

ニュールはミーティを止めようと、慌て顔で手を上げ制止する。だがミーティは自身の状況に思い至らない様だ。

「オレもチョットは頑張ったんだぞ~何かもっと柔らかくて、ふわっふわなご褒美を頭でも手でも顔でも乗っけてくれよ~オレもニュールが作った後宮に入れてくれ~!」

もう、思いが止まるのを待つよりなかった。

「ニュールってば帰れないんじゃなくて居心地よすぎて帰らなかったんじゃ無いのか?」

皆の注目がミーティに集まるが、ミーティだけが理解していない。
ミーティの頭の中の言葉は全て口から出ていた。

「あのな…スマン。もっとしっかり伝えるべきだったな…今、思った事みんな口から出てるから…ソレ以上の事は考えるな…。あと…オレは後宮作ってないし帰りたかったぞ…」

「えっ?」

唖然とするミーティ。

「えっ? ニュールの頭の上に乗ってる乳が羨ましいとか、どーせなら全員の乳集めて埋もれてみたいとか…?」

ニュールの親切はミーティの自滅を生む。

「ミーティ、男の子好きなのに、お乳も好き? …お母さんに甘えたいのかな?」

「乳狂いかよ! 薄っぺらい男だな」

「殿方はヤハリ好まれるものなのですね…勉強になります」

「乳…効果ある奴存在する」

「持たざるを望む…哀れです」

「厭らしい目でフレイを見るな!!!」

ソレハソレハ痛い心の言葉を皆から贈られ、受け取るミーティは撃沈するのであった。


皆の言葉で討ち死にしたミーティは置いといて話を進めることにした。
皆との話のすり合わせの前、ニュールはケリを付けるためラビリチェルに切り出す。

「すまん…塔とはやはり繋がれない」

一瞬目を大きく見開くラビリチェル。予想通りの返事が戻る。

「ニュールいい加減。ないって…酷い」

「すまない…」

端から見ているとまるで別れを切り出し問い詰められる男と女の会話…そう言った風情のやり取りが出来あがっていた。

「塔と大賢者の仕組みは不自然だ、オレは自分がこんなんなっちまってヤッパリ思ったんだ。たとえオレ自身が決断した事でも、一方的に強制されるように判断させられる状況は趣味じゃない…オレのやり方じゃないって気づいたんだ」

ニュールは誠心誠意、自身の決意を伝える。

「根本的な事を何とかしないと、また誰かが割りを食う構造が続いちまう。オレは塔とは繋がらないが決して塔を見捨てない!」

さらに言葉を続け目指す場所を指し示す。

「全てを司る理を正す方法を…そこへ繋がる方法を探してみる。誰か一部の者だけが背負わなくても保てるように変わっていけるように…」

何も述べずで無表情に聞いているラビリ。
塔の魔力で繋ぎ維持している中身の消失したディリが、無言で佇む状態から行き成り話し始める。

「ディリ、このニュールが好き」

器に適合する新たなる中身の人形が入ったようで急に活動を再開した。
そのディリチェルはニュールに伝える。

「思い。器にも少し残る」

前のディリの思い…ラビリが沈黙を破る。

「ニュール、私は諦めない。だから本物の大人の身体になって誘惑しに行く。其までの猶予」

ニュールの鼻先に指を突き付け宣言した。

「覚悟していて!」

そこには、長い道のりを見据えつつも不敵に微笑む覚悟を持つ顔があった。

ニュールは塔の状態をラビリに伝える。
無理やり至った支配の関係は切れたが、接続したのと同等の影響が今もまだ残る状態。ニュールが今一番正確に塔を把握している。

「ディリの還元した魔力とオレが放出した魔力を回収したもので現在の塔は満たされている。この状態なら余程の事無い限り、人の一生が2周する位の年数は問題なく過ごせるはずだ。ラビリ達は彼方から取り込まなくても大丈夫だぞ…」

塔と半接続状態で一度感じた、この土地の人々の煌めきを覚えている。
今のニュールでも、塔の中に居る人の状態なら克明に把握できる。

「ラビリ、賢者の石に皆を…人形も人間も関わらず、塔に入った者全てに近づけると良い。時が来れば塔自身が繋がる者を選ぶよ…兆しはちゃんとあるから」

そしてニュールは塔で得た情報と自身の深層で得た情報を皆の危険回避のため、知らせ共有する。
この世界を判断し何らかの刈り取りを行うものの存在や蠢く他の意思、そして現存する謎の推測出来得る回答を指し示す。
それに対する意見をもらい状況確認をし、今後の方針を…決める。

だが、ここでニュールは別の道を行くと伝えるつもりだった。

「多分ここから先もオレはヴェステに追われる…だから…」

「…で、どこの国へ行って、どう動く?」

全てを告げる前にモーイが遮り出鼻をくじく。

「私も今回途中で変なのに捕まっちゃったんだよ! ニュールは守護者なんだから今度こそ近くで完璧に守護してよね!」

フレイは当然の様にニュールに要求する。笑顔で大上段から述べる口振りはそれなりにお姫様の様だった…だが、それ以上にエリミアの大賢者様の弟子って感じだとニュールは思う。
そしてフレイリアルは力強く続けた。

「もちろんニュールが困ったときはいつでも助けるからね!」

「あぁ、アタシも護衛として協力するぞ! 捕まっちまわないよう、しっかり捕まえておかないとな」

モーイもそう言うと今まで以上に密着してニュールにしがみ付く。
知らないうちにモモハルムアまで密着し反対の腕に絡まっていた。

「どうやら此処から逃げるのは困難なようだな…」

呟くニュールの困り顔の中に嬉しさが混じる。
フレイは更なる駄目押しで導く。

「ニュールの目的は大賢者と塔の解放だよね! それは私が目指すものと一緒だよ。私もリーシェを…塔の大賢者の縛りから解放したい…そして皆が先を目指せたら良いと思う…」

「そうだな、目的を達成するなら色んなモノから逃げててもしょうがないよな…」

単独行動で無いなら更に色々考え、その上で行動しなければならない。
それでも気持ちを受け止め仲間と共に歩む決心をするニュール。

「無理やり目的を邪魔して違う方向に動かすモノが居るなら、差し向かいでやり合ってやるか。今まで遣られた分もキッチリお礼もつけて返さないとな!」

全員で前を向き進む決意をするのだった。
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