魔輝石探索譚~大賢者を解放するため力ある魔石を探してぐるぐるしてみます~≪本編完結済み≫

3・T・Orion

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第四章 タラッサ連合国編

31.思いを込めて先へ進む

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ニュールとフレイリアルは壊れた神殿前に立ち尽くしていた。

呆然と入り口から先、転移陣で皆が消えた場所を見つめ続けるフレイ。
崩れた壁を見つめながら連れ去られたモーイやミーティを思い、俯き頭搔きむしり自身に怒りを向けるニュール。

「…っクソッ!」

自身の境遇に捲き込んでしまう事も考えていた…なのに、油断をしていた。
皆と過ごす心地よい環境に甘え、見るべきモノを見なかったツケが此処で押し寄せたのだ。
今すぐ駆けつけても人質とされた2人に危険が及ぶだけであろう。不利になると認識していてもニュールは指定した日時に赴くことを受け入れるしかなかった。

その時背後から声を掛けてくる者があった。

「タラッサ連合国宗主国コンキーヤ王国近衛兵団兼務、首都カロッサ管理機構所属保安局警察だ。貴殿らの身柄を拘束させて頂く」

『何故此処でこの対応をされることになるのか…それに…長…』

思わず余計な事まで思ってしまった。
突然の不審者扱いに少し納得出来なかったので、ニュールは自身の苛立ちを抑えつつ不興を買わぬように丁重に質問した。

「逆らうつもりは無いが何故だ」

「貴殿らの素性がこの中で唯一不明なためだ」

真っ当な理由である。
ニュール達だけが経歴明らかでない人物…と言うならば事件現場の対応としては当然であろう。
寧ろこの状況での不審者への対応にしては紳士的であった。

「一応招待された方々…と言う証言もあるので、そのためだ」

念のための扱いでもあった様だ。そして無理な拘束をすれば容易に逃げ出すであろう事も見当がつくのだろう。

「キミア…リエ様からの招待で此方の神殿にお世話になっておりました」

フレイリアルが王宮対応な言動になる。
普段のポノポノっとした頭に花咲いたような魔石狂いの姿が脳裏にあると、落差で眩暈がする。

「おぉ、では貴女が噂…の???」

何の噂かは分からないが、その者が噂との食い違いに戸惑っているであろう事は理解できた。
取り敢えず認証魔石により素性確認をしてもらうことで、拘留される事態からは逃れられた様である。ニュールは若干安堵した。
これから非情なる場所へと赴かねばならないと思うと、フレイリアルの安全が確保できる場所を探さねばならない。時間が無い今、無意味に拘束される事は避けたかった。
だが、別の避けていた事態…王宮に滞在する事…を強要される。
安全に此の状況を潜り抜ける為にも、通り過ぎた他の国々でのアレヤコレヤがバレてない事をニュールは願うのであった。


素性を確認され王宮に赴くことになったら、ご挨拶…謁見が欠かせないのは理解はしていた。そして今後の滞在用に貴賓室が用意されるのも、謁見の為に身なり整えるように指示されるのも、当然の事でありニュールも納得してはいた。

『何故、オレにまで…』

ニュールにまで侍女が付いていた。
しかも召し替えに用意されていた服は従者服ではなく、明らかに偉そうな方々がお召しになるローブだった。

『あっ、エリミアの大賢者様とか先代様が来てた服だ…アルバシェルも…』

他人事の様にその大賢者の定番装束であるらしいものを眺めていたのだが、明らかにニュールが大賢者だとバレているようだった。
それでも悪足掻きの様に聞いてみる。

「あの~何故か私の所にこの様な豪華な服が…着なれないのでもう少し簡素な…従者服の様なモノは…」

こういう時のオドオドした、した手に出る感じは何処かの姫様と似ている感じだった。

「では何種類か用意させていただきますのでお選び下さい。勿論着付けは此方でさせていただきます」

王宮の侍女が笑顔で恭しく対応してくれる。
そして、更に豪華に…一層煌びやかな物が混ぜられ数種類用意されていた。
諦めて最初の一番地味で簡素な物を選ぶことにしたが、それでも着替えた姿を確認し思わず口にしていた。

「何処の詐欺師だ!」 

鏡を見て、ニュールは自分で自分の姿に吹き出してしまった。質が良く絢爛なため、プラーデラで来た大賢者風の服より胡散臭さが倍増するのであった。

『確実にフレイにも笑われそうだ…』

しかし笑ってしまうのはお互い様だった。

着飾ったフレイリアルはどこぞの深窓の姫様のようだ。
本当に姫様なのだが、ずたぼろマントの子供である印象の方が強いので改めて姫様していると笑ってしまう。
しかし、同時に衣装の露出状態を見てニュールは思う。

『うちの子に何てモノを着せるんだ!』

もう無意識に父親以外の何者でもなかった。破廉恥な服に本気で怒りたくなったニュールだが、フレイは平然としていた。

「コレはマシな方だよ! 程ほどの厚さがある布だし、ちょっと胸が溢れそうなぐらいだから! プラーデラのとあまり変わらないよ。サルトゥスのを見たらニュールは卒倒しちゃうかもね」

『確かに今着ている衣装も、少し…嫌大分…衣装から溢れそうだ』

フレイの言葉で確認し、しっかり見て動揺した。
もし、これを着ているのが妙齢の好みの女性ならニュールだって目のやり場に困っても浮き立つ気分になったかもしれない。
だが、娘同様の気分で接しているフレイが着るのは何だが抵抗がある。思わず、隠しておきなさい…と叱りつけたくなるような衣装であった。
プラーデラの衣装でも目のやり場に困ったが、こちらの方が装飾過多なためズリ落ちそうに見えてハラハラ度が高い。

お父さん気分のニュールは、過去に着たと言うケシカラン数々の衣装を思う。
そしてフレイにマントを被せ、箱に囲って仕舞い込みたい気分になるのだった。

だが、ニュールがそんなお姫様の添え物的…只の付き添い保護者の立場でいられたのはここまでだった。

「この度タラッサ連合国コンキーヤ王国国王陛下に拝謁賜り恐悦至極に存じます」

慇懃に挨拶するのはニュールである。
何故か前面に立たされた。
謁見時の挨拶の口上述べるのさえ、胃が痛くなる気分のニュール。

『オレは、こう言う対応は苦手なんだ!』

心の中の切なる叫びと何とも言えない表情で、ニュールの気持ち全てが表されているようであった。
慣例と思えるようなやり取りの後、更なる返答に困る話を国王に振られる。

「大賢者ニュール様がタラッサの大賢者後継キミアリエに妻合わせるために、わざわざエリミア辺境王国第6王女フレイリアル・レクス・リトス姫を連れてきて下さったと聞いております」

『いやっ、全く聞いておらんわ!』

心の中で突っ込む。
キミアは本当に自分に都合よく、王宮へ伝えていたようであった。さすがにどう切り抜けるか迷っているとフレイリアルが横から述べる。

「私の守護者である大賢者ニュール様は、私の我がままを聞き入れ見分を広める旅に連れ出してくださったのです。こちら…タラッサ連合国の大賢者キミアリエ様には、より高い見識持つため先代大賢者エレフセリエ様に内閲の手配して頂いたのです」

フレイは適切な支援をしてくれた。納得はしないが、王も一応引き下がってくれたようである。
それでも、王宮での下らない対応が続いていく。

気にかけなければならぬ大事なことがある時に、余計な対応をしていると精神が削られていく。
自分への苛立ちが、周囲への苛立ちへと変化していく。
ニュールの態度が冷えていき、魔物が表立っていた時の表情が再現されていきそうになる。

冷気籠る魔力が体内から立ち上りそうな気分になって来た時、やっと現れた。
レグルスリヤで大賢者エレフセリエ様に化けて国王の執務を行ってきたキミアが戻ってきたのだ。

「大体の事情は聴いた…済まない」

キミアにしては真面目な表情で一言手短にニュールの横で囁くと、国王に挨拶述べ華麗に退室への道のりを纏め上げていった。

「…では、御前下がらせて頂きます」

やっと苛立つ空間から下がることができてニュールの顔がホッとする。

貴賓室に付属した応接室へ辿り着く。
部屋に入ると再度キミアが謝ってきた。

「モーイとミーティの事…中途半端な預かり方をして済まなかった…」

恐縮し謝罪するキミア。

「いやっ、今回の事はオレが追われているせいだから…」

自嘲的に言うニュール。

「それを言うなら、そもそもヴェステに関わりたくなかったニュールを巻き込んだのは私だから…」

自責の念にとらわれるフレイ。

それぞれが起こってしまった事への不毛な後悔を掲げ、罪を申告し合う…その滑稽さに皆少しずつ笑みを取り戻していく。

「こんな事言ってたって仕様がないよね…」

「あぁ、そうだね」

「こんな事をしている場合ではないな」

そして建設的に遣らなければいけないこと、遣りたい事を決めることにする。
まず明後日にヴェステへニュールは赴く。

「転移陣で直接王宮へ赴くように言われている…1人で行く」

ニュールの決意に他の者は言葉を継ぐ事が出来なかった。

「だから出来たら、フレイをキミアに預かってほしい」

「承知した」

「すまん…」

だが、このやり取りにフレイは異議を唱える。

「私は、サルトゥスへ行くよ。ヤッパリ仲間だった人が捉えられているのは気持ち悪いし、私の気持ちを救ってくれたアルバシェルさんを助けたい」

「お前1人で行って余計な危機を生む可能性だってあるんだぞ!!」

ニュールは諭すがフレイの決意も揺らがなかった。

「僕がついて行くよ」

キミアが予想外の申し出をする。

「お前には執務があるだろう?」

「それぐらいの代理が出来る者は用意してあるし、いざとなったら戻ってくれば良いだけさ」

否と言えないニュールであった。
出来たら安全な場所で過ごして欲しいと言うニュールの親心的思いに反し、フレイリアルは自ら進む道を選ぶ。
それを妨げる気は無かった。

「わかった、無茶はするな」

「ニュールもだよ!」

苦境が待ち受けている覚悟はできている。

それでも自分がすべき…気持ちが向かう場所へ静かに固い決意を持ち進んで行く。
それは義務ではなく、其々の意志なのであった。

流れが動き出すときは色々な場所で切っ掛けが出来上がっていく。
選び取られる道は積み上げた事象の連続で方向づけられる。突然や偶然の思い付きさえも、何処かから繋がり現れる必然でないと誰が言えるのか。

此の者たちに来る運命が、過酷であるか安穏であるかは選ぶ前に決まっているのだろうか。
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