魔輝石探索譚~大賢者を解放するため力ある魔石を探してぐるぐるしてみます~≪本編完結済み≫

3・T・Orion

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第五章 ヴェステ王国編

2.動き始める

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やっと明日には出発すると言う夕時も終わる頃。

キミアは自室の窓の斜め向かいにある部屋で淡い輝きを目にする。
そこは、安全の為になるべくキミアの部屋の近くに…と無理を言って客間として用意させたフレイの部屋がある場所だった。
警戒し少し探索魔力を広げるが、特に異常は無いようだ。
だが窓越しに見えた影は1つの様に見えるが2人の様。

『侵入者の気配は無いのだが…一応確認すべき…か』

その時、風で大きく揺れたカーテンの隙間から見える銀の長い髪が月明かりを反射し輝く…。
その銀の雫の中に大地の色した髪が埋まるように包まれている。
寄り添い抱きしめているのであった。

『!!…遠見の鏡か』

目にした状況に、キミアの気持ちがササクレだつ。

「実体に近いものを表出させる仕様に変えたんだ…上手い工夫だな…」

鏡を加工し送った者への称賛の呟きと…羨望…それに苛立ちが混ざる。

「僕の領域に、堂々と他の男を呼び込むなんて悪い子だなぁ…」

そう呟くと賞賛や羨望が消え、2人への嫉妬と言う形の悪意に変わっていく。

「目の前で失ったら…お互いにどう思うのかな」

光り当たる表面の奥、本来の気質が顔を覗かせ想像の中に暗い悦び生み出す。



「こんなに時間なのにごめんよ…」

フレイリアルの滞在する客間の前に立ち魔鈴を鳴らすキミア。
少しの間の後、フレイが扉から出てくる。

「どうしたの?」

「窓越しに複数の人影が見えた気がしたので、気になって来てみたんだ」

一瞬目線逸らし動揺するフレイ。

「それは鏡の映像だよ…」

思い出すようにフレイは少し頬を上気させ、嬉しそうな表情浮かべる…表情には見せないがキミアの瞳の奥に悋気が見え隠れする。

「凄いね、本物の人影かと思って心配しちゃったよ!」

「リーシェの鏡凄いよね! 本当に会えたみたいな気持ちになれるんだよ…でもまた魔力溜まるまで会えないけどね。でも、驚かせちゃったんだね…ごめんなさい」

暫く実態の様な映像に会えない残念さを抱えつつ、嬉しそうに鏡への称賛にのってくるフレイリアル。
キミアの心配した気持ちは特別なモノとしては届かなかった様だ。
その姿を見て心の闇深まるキミアが、黒い気持ちを覆い隠すために話題を変える。

「そう言えば詳しい経路の説明はしてなかったよね、ちょうど良いから一応伝えておくよ…今でも良いかな?」

「うん、良いよ!」

応接室も付いた部屋であり、扉開き迎えるフレイリアル。
 

進路はニュールが出立する前に意見を聞きながら決めた。
だが、実質…選択肢は無かった。

「少し前にね…サルトゥスの陣をちょっとね…我が商会からサルトゥスへは、暫く転移陣による出入りは禁止なんだ…少し荷物をのせすぎちゃって積載量越えをしちゃったんだ…」

キミアの目が泳いでいる。
商会で陣を使う場合、特に積載量越えには注意が必要である。越えてしまうと転移が不安定になる上に、陣が文字通り壊れる事が多い。

魔物魔石での陣運用により少し値段が下がったものの、陣を気軽な運送方法として使うにはまだまだ莫大な費用が掛かる。
なので本来は見合うものの輸送だけに限られる。それ故に、使うときには1つ当たりの経費を下げるため大量に送りがちになるのだった。

キミアが子供姿で見習いを遣っていたのは嘘では無かったようだ。
長い間、商会に携わり運営方針を決めたりなどは遣ってきたが、詳細な実務を知らなかったので暇つぶしも兼ねて入り込んでいたのだ。

そしてサルトゥスの神殿の陣をちょこっと壊してしまい、1の月の間の使用停止処分と罰金が科されたのである。

ニュールは最初はキミアのヤラカシを然もありなん…と言った感じでシラッと見ていた。
フレイはヤラカシちゃった時の自分を見ているような感じで、ムズムズとハラハラ合わさった居たたまれない気分になった。

「サージャに凄~く静かに怒られたんだ…」

神妙に状況述べたキミア。

「サージャさんに静かに怒られる…って想像するだけでも怖そうだな」

想像したニュールが微妙な顔で呟く。

「うん、サージャは静かになればなる程怖いんだよ!」

心胆寒からしめるサージャの姿を思い起こし、最強と言っても良い大賢者であるにも関わらず怯えるような表情になるキミア。
その話とキミアの表情から怒られている場面を想像してしまい、ニュールも思わず笑ってしまった。
ちょっとした和みをもたらす会話の後、フレイが元の話を続ける。

「王宮へ転移陣を繋いでもらう事は出来ないの?」

「サルトゥスの陣の管理は、基本神殿が請け負っているんだ。だから同じ制限がかかってるんだ…それに、今王宮には直接近付かない方が良いよ」

さっきまでとは打って変わって真剣な面持ちになるキミア。

「皇太子による国王弑逆が起きたようだから…」

王位簒奪が起こったとは大賢者エルフセリエより聞いていた。
そうは言っても精々軟禁して実務を奪うぐらいだろうと思っていたので、弑逆と言う余りにも現実的で生々しい内容にフレイは愕然とする。
ニュールも事態の深刻さにキミアに問い質す。

「王位継承者達はどうなった?」

「20位までの者は協力者以外…処分されたようだ」

回答を予想しての質問ではあった…それでもニュールの表情に苦々しさが混じる。

お人形な皇太子が起こした謀反。
謀反を起こすほどの行動を制御するなら、繋がる者は1日中張り付いてないと難しいと思われる。お人形はある程度の決まった手順は踏めても、咄嗟の判断は不可能だ。
殺伐とした残虐さ持ち、冷徹に執り行われる謀反と言う行動…其処には意思も意志も必要である。

「アルバシェルは?」

「協力者の中に入っているようだ。時の巫女も協力者になっていて…アルバシェルを管理しているそうだ」

キミアが得ている情報は王宮の奥深くまで見えているが、そこに至る理由まではわからない。

「先代お爺ちゃんが、アルバシェルさんとしての意識は無いって行ってたよ」

「ふーん、そうなんだ…」

先代大賢者の話が出るとキミアの顔が若干曇り、返答がつっけんどんになる。
本来なら寄り添うように強まるだろう思い持つ関係の者達、双方の思いが絡まっているのが外からは見えるが当事者は気づかず更に複雑にしているようだ。

それ以上のサルトゥスの情報もなく、結局昨日はおおよその進みを決めるだけで終わった。
そして今日の昼時前、タラッサ連合国所属コンキーヤ王国王宮よりニュールはヴェステ王国へと向かった。


「この前以上の情報は特に手に入ってないのだけど、明日はリャーフまで商会の船で行くことになったよ」

フレイに与えられた客間の続きにある応接室でキミアがフレイに伝える。
元々、転移陣でなければ海路を予定していた。陣が込み合っていることもあり、順番ねじ込み陣で行くのも海路で行くのも差がないと言うことで結局海路を選択することになったのだ。

「何でこんな風になっているんだろうね…」

小さくつぶやくフレイリアル。
各地で何かが動き出し不安定になってきた理由を知りたくなった。

「大丈夫…ニュールが居ない分、フレイは僕が守るよ」

そう言ってキミアが近づき、気遣いつつフワリと抱き締めてくれた。
その腕の環の中は思いやり溢れる魔力が満ちていて優しい空間を作っていた。
其処には優しい思いだけで、欠片の悪意も含まれていなかった。



明日出立になると言う日の夜になって、やっとキミアの部屋に現れた陽炎。

「何でこんなに遅いの?」

のっけからキミアに責められる。

「すみません御屋方様…」

「それにサルトゥス…少し遣りすぎじゃない?」

「あれは違います…僕じゃありません…それにお人形…とられちゃいました」

しくじってしまいました感一杯に可愛らしく落ち込み謝る。そのあざとい姿が自身の幼体故に怒りにくい。

「お人形は、こちらとの接触を断つために結界の中に軟禁されていたのですが、気づいた時には既に書き換え済みであり、操れなくなってました」

「気配は?」

「少し普通の人形とは違っていて、外部との繋がり見えず…通常の人間と同様に身体の中のみで完結してました」

今まで出会ったことのない型の人形だったようだ。

「うん、注意してみるよ…明日から此方で頼むね!」

「了解しました」

「…カリマ…忙しすぎてごめんね…」

突然のキミアからの労いの言葉、しかも珍しく任務用の暗号名ではない名で呼ぶ。

「…どっ、どうしたんですか?? オレ始末されちゃいます?」

10年前に拾われてからキミアを支え暗躍する陽炎・カリマ…忍ぶ者を務める。
カリマは実際に自分の年などは分からないし、どうやって生きてきたかさえ分からない。
体内回路の不全による魔力過多症。拾われて任務与えられなければ…キミアと回路繋がねば…記憶無きまま彷徨い獣の如き生活を続けているか、暴走極まり絶命していたであろう身体…既に形さえ…人かどうかさえ漠然としていた。
そして、主人の形を模し各地に潜み裏で動く。
拾われた助けられた命であり、その場で主人に始末されたとて何の恨みも後悔もなく感謝しか残らないであろうと思っていた。

『殺されたとして唯一思い残すとすれば、もっと御屋形様にご奉仕出来たのでは…って思う所かも…』

心からキミアに尽くしたいと言う思いしか、カリマは持っていなかった。

「失礼だな! たまには優しくしたい気分の時だってあるんだよ」

「天変地異が起こりそうだから止めてください…」

「分かったよ! 失礼な君には馬車馬の如く働いてもらうこと決定だからよろしく頼むよ~」

「あ~その方が御屋形様らしいっす」

「本当に失礼だな!」

この流れるような会話の中、キミアの顔が緩む。
自身の助言者とは繋がり薄い…と感じていたキミアにとっての、気の置けない唯一の者だったのだ。
カリマが無事に帰ってきた事を安堵する自分にキミアは驚いた。

『余計なことは考えちゃいけない。沈んじゃうからね…』

一つの繋がりを実感すれば、自身の他の繋がりを意識してしまう。
そして他人の繋がりも自身の繋がりを意識させる。

『やっぱり、繋ぐより華麗に壊すのが楽しいよね…』

キミアの心に暗い炎が灯るのであった。
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