魔輝石探索譚~大賢者を解放するため力ある魔石を探してぐるぐるしてみます~≪本編完結済み≫

3・T・Orion

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第五章 ヴェステ王国編

25.巡り動く環

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空に陽光の様な魔力伴う光が集まって輝くようになってきたのは何日前からだったろうか…。
昼は太陽のように輝き夜になるといつの間にか闇を纏うように暗いものが張りつき、垂れ布で区切ったかのように消える。

「あの光っていつからだ?」

「4~5の日前からかな」

「何なんだろうなぁ…夜になると消えちまうしなぁ」

「少しずつ大きくなってきてるし、太陽がもう1個増えるんじゃないか…」

他国なら、たとえそれが自然現象であったとしても太陽が増えるかも…等と想像すれば、重大な事態に及ぶ懸念を持ったり、少なくとも熱くなりそう寒くなりそうなどの体感による変化や気候変動などが真っ先に気になると思われるのに、エリミアではその感覚がない。
都市内は全て温度や湿度が年間通して快適…と言える範囲内での変動である。荒れ地に至っても一定の温度から逸脱することがほぼ無い。水が枯れる経験も無ければ、気象現象に翻弄されることもなく日常が送れる…往古より存在する機構による完全管理の名残ある土地。
他国から見たら異常とも言える、まるで家の中にいるような環境。
その中に暮らす者達は、自分達の居る場所が特殊であることに気付いてさえいない。

今ではその魔力伴う光はエリミアの何処からでも見えるようになっていると言うのに、その人工とも自然とも言い難い現象に何の危機感を抱くこともなく警戒心すら持たずに受け入れるエリミアの民。


フレイリアルが飛び去り、地下にリーシェライルが降りた日。
エリミア辺境王国では、残された機構の本来の機能が動きだした。

転移した地下はとても明るい…温かい魔力渦巻く場所だった。

「22層と同じぐらい快適な空間だな…」

周りから押し寄せるような緑の魔力を掬い上げるように手をひろげ、思わず1人呟くリーシェライル。
その場所に満ちているのは、高層の突き刺し清めるような青い魔力ではなく、包み込み育むような緑色の魔力だった。
新しい場所を体感し、少しだけ浮き立つ様な新鮮な気分が湧く。
それにより動かなくなっていた心が若干動く。
緑の魔力に抱かれている様な環境は、ささくれだった気分を包み込んでいく。
悲壮感漂う激情に全てを押し流され虚無となってしまった心…それを少しだけ暖かくし、癒してくれた。

だがリーシェライルの心は、暫しの安寧ではもう戻れなくなっていた。
その分け隔てなく恵むような優しい魔力は、自分の中で作り出せないモノを実感させ一層渇きを深める。

『進まないと…』

自分の進み出した方向を思い出す。

快適な緑の魔力満ちる部屋の中心には、橄欖魔石で出来た台座のようなものがある。そこへ向かうべきであると、リーシェライルは自分の中から指示が出るのを感じた。
その前に立ち、当然であるかの様に台座に手を乗せる。
台座の魔石から勝手に伸びてくる魔力が、直接に体内へ入り込み…体内魔石である賢者の石と繋がり物理的に接続される。
機構の端末となったリーシェライルはエリミアに巡る機構全てを、今まで以上に鮮明に感じ取る。その魔力の巡りと共に、その場所に赴いたかのような感覚が手に入る。

暫し、今まで見えなかったエリミア全土を認識し体感する。
そして人々を…生活を感じ取ることができた…。
だが、リーシェライルには思い…と呼べる様なモノが無くなっていたので。戸惑いなく実行する。

塔を動かせる大賢者全員の認証が必要な大地創造魔法陣エザフォスマギエンは使えないので、エリミアの持つ往古よりの機構との接続を選択し本来の機能を使用する。

エリミアの各都市外の荒れ地が荒野とは呼ばれないのには訳がある。
それは明らかに自然物と異なる建物の残骸に見える様な巨大岩が点在し、夥しい数の崩れ散らばる岩場が見られるためだ。
プラーデラの様に自然の荒野ではなく、人工物含む荒れた砂漠化した野原…と言った方が正しい。
つまり…そこには、かつて都市が存在したと思われる痕跡が多数残っていたのだ。
ただし、その建物っぽい岩は見たことも無いような形状のものであり、現在のエリミアを占める建物とも他の国々のものとも違うのだった。

エリミア国内で、かつて存在したと思われる古代都市の名残…遺跡とも呼べそうなモノを研究する者は存在しない。
皆、自然物同様で、そこにある…としか認識しないのだ。
古代に学ぶより、排除し平安を維持する道を選ぶのだった。

「エリミアは王都…王城付近以外は必要ないかな…他の国は各王都…首都と、第15都市まで…各3発かなりサッパリするんじゃないかな」

接続したリーシェライルはためらいなく決定していく。

「…そうすると、魔力を必要量貯めるのに7~10日。天輝が降りれば5日で完了か…結構かかるかな…まぁ仕様がないか」

そして切っ掛けとなる言葉を並べる。

解除サイファ解放キアダーレ接続コンジャクション実行シルヘ

足下の遥か下方で魔力が蠢き魔法陣が動き出すのが感じられる。
それに呼応する様に見えないぐらい高い天空でも魔力が巡り魔法陣の環が動き始めるのが分かった。
リーシェライルは肩の荷が下りたような不思議な安堵感を得るのだった。



「…くっあぁ…」

時の神殿内。
時の巫女が私室にて本来の姿のまま苦悶の表情浮かべ呻きを押し殺し自身を抱き締める。
器が縮むたび、襲い来る痛み…大量の魔力導き入れ、無理矢理な時見を行使する毎に起こる若返り。最近は自然に起こる不意の時見でも若返りが進み、少しずつ少しずつ無への帰結へと誘う。
見て知るモノが過去であろうと未来であろうと…遠かろうと近かろうと…今起こっている事であろうとも…力は平等に対価を求める。
其所には5才位まで戻っている年若い巫女が居た。
苦しそうな表情は消えていたが苦痛の名残と思われる汗で、艶のある黒髪が顔に張り付いている。

「とうとう動かしてしまったのね…」

誰へともなく1人呟く。
その場には、古くから共に在るお人形…そのモノが唯一立ち働くのみ。
今の巫女の姿は、数の月前フレイリアルに最初会った頃のリオラリオと比べても若返りが進んでいるようだった。

「でも良かった…これで確実に選択の時へ進むはず…多分間に合う」

苦しさから救われた巫女が、人形へ話し続ける。

「これ以上の時は待てそうも無いからね…そうしたら貴女も戻してあげられるわ」

今ではすっかり見上げるような状態になってしまった侍女姿の人形の手を捕まえ、優しく撫でる。
そして魔力纏い変化し、皆が知る時の巫女の姿に戻る。

「どう結末をつけるにしても、此の国との契約責任は果たさないとね…その為には、もう少しあの子に頑張ってもらわないと…」

そう言って王宮に向かい、時を見て知った今起きている事、これから起こるであろう事を告げに行く。



『こんな時に何でこんな衣装、着させられるのだろう』

プラーデラの王宮、あてがわれた貴賓室で用意された衣装に何度も着替えさせられ、やっと人心地つきお茶を出されるフレイリアル。
一人でなら新たに得た転位にて簡単に脱出することはできるだろう。だが、防御結界や隠蔽魔力施された空間でモモハルムア達を見つけるのは難しい。
モモハルムア達も同じように貴賓として遇されている事はヴェステの侍女から確認出来たので機会を伺う。
それなのに何故かの此の事態。

「君は白が似合うかな。あぁ、先ほどの黄金もなかなかだったな…う~ん、やはり今回は先程の淡い黄金にして欲しい」

そして、どういう理由かこの部屋に監禁されてから、ヴェステ国王が度々訪ねてくる。捉えられてから既に3日ほど経過した。
王の要望による本日何度目かの衣装変えに苦言を呈す。

「無意味な遊びは止めてもらえませんか?」

「華やかなる衣装纏うことは無意味ではないぞ? 捕虜を動きにくくするための策略でもあるのだから、立派な仕事なのだよ」

そう言って薄水色の瞳を楽しそうに煌めかせ、薄色の金髪を浅黒い肌の上で揺らめかせながら周囲を魅惑するように明るく力強く笑む。
このヴェステ国王シュトラ・バタル・ドンジェも、どの王家にも有りがちな整った容貌をした王である。
選りすぐりの血統取り入れ成り立つのだから当たり前と言えば当たり前だが、その華やかさを熟知し武器としても使いこなし老若男女問わず籠絡する。
自身が普通であると思うフレイリアルにとっては、少しその点でも腹立たしい人だった。

どうみても遊びにしか見えない王の酔狂な行動に振り回され、事態の深刻さとは裏腹の状況に気が削がれる。
この王の考えていることがわからない。

「何も考えてないよ。時を待っているだけだ」

思いを感じ取ったかの様に答える王。

「それに国の頂点が右往左往し出したら、その国はお仕舞いだよ」

当然…と言う顔で述べ、余裕の笑みを浮かべる。

「君だって、こうした時の中で有用な情報を得ているだろ? ただ過ぎる時間も無駄じゃ無いときも有るんだよ」

確かに其によって、ニュール達がプラーデラの賢者の塔から王宮へ向かった事が分かった。

『確かに無益な時間とは言い切れなかったけれど…』

フレイリアルが考え込んでいると王が告げる。

「準備が出来たら、今日は皆で食事にしよう」

退室した王の指示通りに再度着替えさせられ、言われた食事の場へ案内される。
モモハルムア達との再開…そして潮合いが来るのを感じる。
兵を多く配置するために大広間での食事だった。
其所には同じように着飾らされたモモハルムアやフィーデスも案内され着席しようとしていた。
少し離れた場所で目にしたモモハルムアの淡い金色の髪は光によって銀にも感じ、漂わせる静謐な雰囲気も相まってフレイリアルの心を一瞬エリミアに居る思う者へと飛ばした。その直後、紫灰色した紫水晶魔石の如く輝く瞳と目が合う。
月からの使者かと思うぐらい豪奢に着飾らされたモモハルムアに、思わずフレイリアルは見とれてしまいそうになった。年齢よりも長ずる心を持つモモハルムアだが、着飾る事で凛とした佇まい引き立ち外見もかなり引き上げられて見える。
フィーデスはその対極にある陽光を司る者の様であり、力強き光で月の使者を守っていた。
其々が希望捨てずに前を向く目をし、お互いに先を見据えていることが確認できた。
その安堵感を力に変え決行する。
皆で小さくさり気無く頷き、其々監視する者を振り払い、合流するため駆け寄る。

「モモ、プラーデラの王宮へ行くよ! そこにニュールがいる」

フレイリアルもそう言いながら近付き空間隔てる新たなる結界立ち上げようとした瞬間…何者かに手首を捕まれる。
振り替えると王自身が愉しげに出てきていた。

「国王を振り回すなんて国の一大事だよ…」

そう言い興じる王に既視感のある寒気を覚えるフレイリアル。
モモハルムアとフィーデスが合流しているのを見て2人に再度声を掛ける。

「ニュール達の事は任せるから頼むね!」

そう言い、2人に空間遮る結界施し転位による転移を行わせた。
兵が捕らえようとした2人に近付いても触れられない上、奇妙な消えかた…転移陣とは明らかに違うモノを目にし一同動揺する。
王は1人愉しげに状況を分析する。

「君は行けなかったんだね…その新しい力は接触してると一緒に持っていってしまう感じかな? 無理矢理に実行すると接触部をもぎ取ってしまうとか? …そんな所かな」

そして引き寄せ、抱き締める様に捕まえると頭上で囁く。

「本当に君は常識を覆してくれて面白い。我のモノとすることに決定だ…」

また繋がりに囚われた人間が出来上がってしまったのかと思いフレイリアルは確認するように、見上げて王の瞳を確認する。その美しい瞳に狂気は無かったが、全てを手に入れるためには手段を選ばない王の傲慢な顔が其所に有った。
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