もふもふで始めるのんびり寄り道生活 便利なチートフル活用でVRMMOの世界を冒険します!

ゆるり

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12章 美味しいもの大好き!

536.罪な美味しさ

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 審議は紛糾している──らしい。
 僕はチョコレートの美味しさに集中してて、うっかり聞き流しちゃってたからよくわからないけど。

 いつの間にか近くにいたタマモが「モモさんの料理を失格にするなら、もふもふ教のみんなで徹底抗議しますよー!」と叫んだのが聞こえてハッとしたら、隣にいたマルが審議中の内容を教えてくれた。

 どうやら僕が作った料理のレア度とか品質がヤバすぎて、グルメ大会委員の想定を大きく上回ってしまったらしい。

 それの何が問題なの? 美味しいなら良くない?
 きょとんとした僕に、マルが苦笑しながらさらに説明を続ける。

「神級レベルの料理って、一般に提供されることがほぼないものらしいですよ。認定を受けたお店だけで食べられるものだそうです」
「……へぇ、そうなんだぁ」

 頷きながら、チラッと料理を見る。
 キラキラッと輝いてるのはまさしく神級の証。
 あれがダメだったのかー。まあ、ある意味劇物だもんな? 美味しすぎるって罪。

 かといって、せっかく作ったのに、質を落としたり、メニューを変えるのはなんか嫌だ。
 僕はみんなが美味しく食べてくれたらそれでいいんだよー。そのためにがんばったんだもん。

「凄いものを作り上げるのはモモさんらしいですが……さすがですねぇ」

 何か言いかけたマルは、言葉を選んだ結果、無難な表現で感想を終わらせた。
 その背後からナディアが近づいてきて、僕の前でしゃがみ視線を合わせてくる。

「モモさんが出店したら、完全に優勝決定ですね。最初からわかっていたことですけど……ちょっとだけ残念です」
「えー、そんなことは……あるかもしれない?」

 否定しようとしたけど、僕が作ったものの凄さを一番知っているのは僕だから、否定しきれなかった。

 うぅむ……調子に乗ってやり過ぎちゃった? どうせなら今までにないくらい美味しいものを作りたくなっちゃったんだもんなぁ。

「わかりました! 今、上に確認したところ、優勝賞品をさらに一セット用意できることになりましたので、特別賞を設けます!」

 グルメ大会委員のお姉さんが、押し寄せるもふもふ教徒のみんなの抗議を抑えるように、大声で叫んだ。

 騒ぎがピタリとおさまる。
 すぐに「特別賞?」「すでに優勝同等が確定ってこと?」というざわめきが聞こえたけど、さっきよりは静かだ。

「もふもふ神さまは、私たちの鑑定により特別賞の受賞が決定しました! 神級レベルの料理を他の料理と競わせるなんて、グルメを愛する者として言語道断ですからね! グルメ大会委員の全会一致での決定です!」

 僕が何も言ってない内に、特別賞の受賞が決まってた。きょとんとしちゃう。
 お姉さんの口ぶりだと、優勝賞品と同一のものが僕にも贈られるっぽいね。

 賞品をもらえるのは嬉しいけど、結局、僕はグルメ大会に出られないってこと? せっかく用意したのに?
 それは寂しいよぉ……。

 僕がしょんぼりとしながらお姉さんを見つめたら、「ウッ……」と声が聞こえた。
 すぐにお姉さんがブンブンと首を振る。

「もふもふ神さまも出店はできますからね! あまりにランクが他と違うので、投票対象ではないだけで。みんなに美味しい料理を食べてもらいましょう! 私たちは警備をめちゃくちゃがんばらないといけなさそうなので、食べることができないでしょうけど……無念……っ」

 なぜか最後は泣いてた。
 そんなに食べたかったのー? まあ、グルメを愛するものなら、当然かもね。

 僕はちゃんと出店できることが決まってテンションが復活したから、ルンルンと受付テーブルの上に飛び乗った。

「わかったよー。みんなに食べてもらえるだけで嬉しいし楽しみ! お姉さんたちは先に食べちゃって」

 もう受賞が決まってるなら賄賂にもならないでしょ、と判断して、料理を追加で出してプレゼントした。
 お姉さんがなぜか白目をむきながら受け取る。料理を掴む指の力が強い。ちょっとホラー。

「神の御業の塊が……大量に……」
「おーい、魂飛んでるぞー」
「グルメ大会本番までは生きろ。その後は屍になってもよし」
「ブラックな職場だ……俺も社畜……がんばろ」

 お姉さんの手から僕の料理を奪った委員さんたちが、にこやかな表情で僕を見下ろす。

「ありがとな! これ、代金!」
「本番での値付けの参考にしてください」
「給料一ヶ月分です!」

 チャリンとお金を渡された。
 一人につき十万リョウ……え、これ給料一ヶ月分なの!? それを料理に払っちゃって大丈夫!?

 ぎょっとして固まる僕に、委員さんたちは「美味いもののために働いてるようなものだから。有意義に金を使えて満足」となんでもないことのように言う。

 さすがグルメ大会の委員を務めるだけあって、みんな美味しいものが好きらしい。
 神級レベルの料理は食べる機会が本当に少ないようで、食べる前からすごく嬉しそうな表情だ。

 そんなに喜んでもらえたら僕も嬉しいよ。お金も遠慮なく受け取ろう。その方がみんな気持ちよく食べられるんだろうし。

「……我が生涯に一片の悔いなし……!」

 お姉さんがパクッと神級カスタード入りミニシュークリームを食べ、テーブルに突っ伏して停止した。
 その頭を委員さんがペシッと叩く。

「本番までは生きろって言っただろ。悔いをなくすな」
「仕事しろー」
「これ、今食ったらヤバイよな……」
「仕事終わりの楽しみにしよう」
「明日出勤してこないかも」
「這ってでも来い」

 委員さんたちが楽しそう。ちょっぴり社畜の闇を感じて苦笑しちゃうけど。
 美味しいものを食べて英気を養ってね!

「ランチセットとパフェの二つで十万リョウ。つまり一つ五万リョウ……金策せねば……!」
「五万リョウなんて安い安い。剣売ればすぐ」
「……ペロッ、もふもふ神さまの味だけで元気が出る……バトルして金策しよ」
「「「その前にお前をぶちのめす」」」

 何かを舐めた仕草をしたプレイヤーさんを、もふもふ教徒が囲んでる。何事?

 プレイヤーさんは「ひゃ、お許しをー!」と叫んでるけど、僕が見ていることに気づいたのか、ニッコニコと笑った。
 見た目は深々とフードを被った十歳くらいの少年なんだけど、絶対中身が違うよね。

 機会があれば話してみようかなー、と思いながら離れた。
 グルメ大会用に、もっと食材を集めなきゃ。今日はまだまだ忙しいぞ~。

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