もふもふで始めるのんびり寄り道生活 便利なチートフル活用でVRMMOの世界を冒険します!

ゆるり

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3章 商人への道?

85.もふもふセンサー!

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 シシリーと次の営業時は価格設定を下げてみようかー、なんて話しながら店じまいを始めたところで、すごい勢いで人影が近づいてくるのに気づいた。止まるまで、それが誰かわからないくらいの速度だった。

「っ、モモさん!」
「あー、タマモだー。こんにちはー」
「やっぱりモモさんの屋台だったんですね……! どうして事前に教えてくれなかったんですかぁ……。話を聞いた後、もふもふセンサーを最大限に活用しないと探し出せなかったんですよぉ……?」

 なぜか泣きそうな顔で、タマモがカウンターの端に項垂れる。

 よくわかんないけど、ごめんね? それと、もふもふセンサーってなに? タマモ、そんなスキルを持ってるの?

 ……あ、ピアと出遭ったときも、そんな感じのこと言ってたね。

「どこで僕の屋台の話を聞いたの?」
「果物屋さんのおばさんです。うさぎをモチーフにした屋台を見たって話してまして」
「おぉ! その調子で噂が広がれば、お客さんが来てくれるかも」

 屋台の人と関係を深めて、宣伝してもらうのは良い手じゃないかな。次に買い物しに行った時、お願いしてみよう。

「モモさんなら、そんなことをしなくても、情報が一気に出回って、お客さんいっぱいですよぉ。そうさせてくださいよぉ」

 恨めしげに言うタマモは、僕が屋台の話を伝えてなかったことがすっごく不満みたい。そんなに買い物したかったの?

「――モモさんに貢げる機会を逃すなんて、ファンとは言えないですっ!」
「ちょっと? 貢ぐんじゃなくて、必要なものを買ってね?」

 なんとなく不安になる発言だ。もともとタマモって貢ぎ癖があるっぽいから、注意しとかないと。

「モモさんが売るものに、不要のものなんてありませんよ?」
「純粋な眼差しですごいこと言うねぇ……」

 まっすぐ見つめられて、苦笑しちゃった。さすがもふもふ好き、いわゆるモフラーの第一人者。

「とりあえず、全商品一つずつください。買い占めたいくらいですが、それはかえってモモさんのご迷惑になりそうですし」
「自制心がきいてる……のかな? というか、そんなにお金持ってるの? 結構高い商品あるよ?」

 心配したら、タマモは改めて商品を見下ろした。うさぎモチーフのアイテムを見た途端、表情を輝かせるのは予想通りだ。

「モモさん貢ぎ予算がまだ満額あるので、問題ありません!」
「僕が知らない内に、予算編成がされてる……」

 タマモは戦闘面で優秀らしいし、ドロップアイテムを売って、お金をたくさん持ってても不思議じゃない。でも、所持金の一部を初めから僕に割り振ってるのは、大丈夫なの?

 シシリーが商品を一つずつ説明していくのを聞きながら、にこにこと笑ってるタマモを眺める。
 タマモって、美人で可愛いのに、時々――いや、割と頻繁に?――残念だよね。

「可愛くて、効果もすごいとか、神アイテム!」

 購入後、すぐに胸元につけたブローチを撫でながら、タマモが恍惚の表情を浮かべる。

 ピアスとブローチ、どっちかしかつけられないってわかって、すぐさまブローチを選んだのは、自分で見やすくて触りやすいかららしい。モフラーの真骨頂だ。

「――モモさん、この屋台のこと、掲示板でお知らせしていいですか?」

 真剣な眼差しだった。
 続けてタマモが言うには「知らせずに買い物だけしたとバレたら、袋叩きにあいそうだから」とのこと。……怖いね!?

「え、ファンのみんな、結構バイオレンス……?」
「あ、ただの比喩です! たぶん呪いの言葉を投げられるだけです!」

 慌てて言い訳するタマモを見つめる。呪いの言葉も結構怖いよ?

「まぁ、知らせてくれるのはありがたいけど。買い占めはダメって言っておいてね! 料理は各種三個まで、錬金術アイテムは各種一個までだよ」
「わかりました! それは厳守させます。あ、料理は三個までオッケーなのでしたら、各種追加でください」

 にこにこと笑うタマモは、最大限貢ぐつもりらしい。……空腹度回復アイテムは必需品だから、無駄にはならないだろうし、これくらいの思いは受け入れるべきかな。

「……シシリー、売ってあげて」
「はい」

 タマモの勢いに目を白黒させた後、ちょっと顔を引きつらせてるシシリーに、ちょっと申し訳ないなぁと思う。でも、タマモはきっと常連になるだろうし、すぐに慣れるだろうな。

「今後みなさんが殺到するでしょうけど、アイテム補充が間に合わないなんて、焦る必要はないですからね。なかったら、出直すだけですから」
「そう?」

 ふと微笑んで言ってくるタマモに首を傾げて見せる。
 そんなに甘えちゃっていいのかなぁ。在庫がないってなると、焦ってアイテム補充をするのが当然だと思うけど。

「モモさんが楽しんでる姿を見るのがみんな好きなんです。商売も、楽しんでしてほしいですし、義務的にするのはモモさんのポリシーにも反するんじゃないですか?」
「っ! ……うん、そうだね。そうだった! やっぱ楽しいのがいいよね~」

 タマモに言われて、僕らしさを思い出した気がする。
 商売だからって、がむしゃらになってする必要はないんだ。上手くいかなかったらそれまでで、それすらも楽しめばいい。
 気持ちが軽くなって自然と微笑む。

「モモさんはどれくらい屋台にいるんですか?」

 タマモはシシリーがバイトだってすぐに判断したのかな。

「時々だと思うよ。あんまり決めてないから。僕、屋台以外もしたいこといっぱいあるし。農作業とか釣りとか――」
「バトルとか?」

 珍しく悪戯っ子のような笑みを浮かべるタマモに、僕も、ふはっと笑いながら「うん、バトルとか!」と返す。

 僕がバトルにあまり興味がないことを知っていて、それをからかってくるんだから、面白い。バカにしてるわけじゃなくて、そういう僕のことが好きだと思ってるのが伝わってくるから、なおさら。

「それじゃあ、ここに買いに来てもモモさんと会えないかもしれないんですね。モモさんが作ったアイテムを買えるだけで十分幸せですけど――」

 ブローチを指先で撫でながら、タマモが呟く。その目が不意にキラリと輝いたのを見て、次に放たれる言葉の予想がついた。

「それでは、第二回写真撮影会なんてどうでしょう!?」
「やっぱりか~」

 言うと思った。タマモは「実はみなさんに頼まれてるんですよ」と微笑む。

「写真撮影会とはなんですか?」
「うん? 僕のファンの子たちと、写真撮影をする集まりだよ。前回は桃カフェ・ピーチーズで開催したんだ。美味しいスイーツを食べて、みんなで話して楽しかったねー」
「至福の時間でした」

 シシリーに説明した後、タマモに微笑みかけたら、真剣な表情で頷かれた。思いが強すぎる。

「……なるほど。その会は、希望者全員が参加可能なのですか?」
「前回は参加できない人が多かったですねぇ。会場が狭かったですし。でも、参加者を増やすと、その分モモさんの負担が大きくなりそうですし、前回同様の人数にするべきでしょうね」

 タマモがムムッと唇を尖らせて悩んでる。会のことについては、ほぼタマモに任せちゃってるけど、僕もなんか考えるべき? 参加者数を限定してくれるのは、正直ありがたいし。

「でしたら、その写真撮影会に参加するための抽選券を、この屋台で渡すのはどうでしょう? モモさんが屋台にいない時でも、皆様がいらっしゃる意欲をそそるのに良いのではないかと思うんですが」
「それ、いいですね!」

 僕が答えるより早く、タマモが同意してた。
 どうも、前回の参加者を抽選した時、不満をこぼす人がいたらしいんだ。それを申し訳なく思ってたけど、僕から提示した抽選なら、不満もないだろうって。

「――モモさんのご負担になるかもしれませんが……」
「ううん、全然! それくらい問題ないよ。抽選に参加する人が多いなら、第三回をするよって言えばいいし、その時は抽選から外れた人から優先的に参加してもらうようにすれば、問題ないでしょ」

 タマモばかりに負担をかけるのは嫌だしね。写真撮影会は僕も楽しかったし、またしたいと思ってたんだから、ちゃんと責任も持たなきゃ。

 その後も屋台を片付ける作業をしながらタマモと計画を煮詰めた。
 抽選券はシシリーが作っておいてくれるって。そういうキットがあるらしいよ。だから、経費としてお金を渡しておいた。

 次回からはお客さんが多くなりそうだし、売り子としても、シシリーにはがんばってもらわないとね!


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