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3章 商人への道?
86.商品開発だよー
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今日も楽しむぞー、と意気込んでログインした僕の視界の端で、ピコピコと通知マークが二つ光る。
「およ?」
なんだろう。
一つはフレンドとのチャットを示す黄色で、たぶんシシリーから。僕が来れない間に在庫切れする商品があったら連絡して、とお願いしておいたんだ。
でも、もう一つがわからない。青色ってなんだったっけなぁ?
「――あ、運営さんか」
送り主を確認して納得。でも、運営さんがわざわざ個人宛の連絡をするのが不思議。アップデート情報は赤色の通知マークだったはずだから。
ふと前にもこの青色のマークを見たことを思い出した。転移スキルに関する補填をお願いした時、このマークで返信の通知が来た気がする。
けど、僕、最近なにも要望出してなかったはずだけどなぁ。
とりあえず本文を開く。真っ先に飛び込んできたのは『CM協力へのお願い』というタイトルだった。
「……ふむふむ、つまりは僕が可愛いからマスコットキャラクターにしたいってことだね!」
小難しい感じで書いてある説明を要約すると、たぶんそういうこと。
第二陣のプレイヤーが参入するのにあわせてCMを打つ際に、これまでの僕のプレイ動画を使いたいらしいんだ。ゲームの魅力を伝えるプレイヤーの一人として、僕が選ばれたってことだね。
「ま、希少種っていう種族があることの説明も兼ねてるのかな」
いいですよー、という返事を一応丁寧な言葉に換えてから送る。もともと目立ってるから、その程度の露出は問題ないでしょ。むしろ、どんなCMが仕上がるのか楽しみ!
「おっと、在庫の確認しとかなきゃ」
返事が済んでホームを飛び出す前に、シシリーからの連絡を思い出す。
開いてみたら、結構売り切れてる商品があることがわかった。というか、残ってる商品の方が少ない?
「――商品作らなきゃ!」
料理は前回とは違うものにしよう。乳製品が少なくなってるし、それならたくさんある野菜を消費した方がいいからね。
「うぅん……野菜……」
サラダくらいしか思い浮かばないなぁ、と思いながら掲示板を開く。
僕が料理を作る際に頼りにしてるスレは、いつの間にか食材ごとに細分化されてた。思いの外、料理に熱中してる人が多いのかも。グルメ大会で魅力が広まったのかな。
野菜を使った料理レシピを教え合っているスレを見て、ふんふんと頷く。バトルフィールドでお手軽に空腹度を回復できる料理が人気みたいだ。
「パパッと作っちゃおう」
野菜ジュース、野菜のかき揚げ、とうもろこしの天ぷら、ハッシュドポテト、高菜おにぎりなど。甘いものは、ドライフルーツと砕いたナッツをキャラメリゼして固めたものだけ。ケーキやクッキーとかは手間がかかるんだよー。
今度時間がある時にレシピ登録しとこう、と思いながら料理は完成。
お次は錬金術アイテムだ。これは前回と同じ品揃えに――と思ったけど、素材が足りてない! 積極的にバトルしてない弊害が現れちゃった。
ストレージを確認して、余ってる素材を探す。
「粘海藻と痺海月だよねぇ……」
一つの棚を占めているアイテムを眺めて、う~んと唸る。
スラリンと海に行くと毎回大量に手に入るけど、使うことが釣り餌作りの時くらいしかないアイテムだ。他のアイテムに使えるのかなぁ。
一枠最大数までアイテムボックスに入れてから、工房に戻る。
錬金布に粘海藻を載せてレシピ検索だ。
「接着剤とかはいらないなぁ」
読み飛ばした先で、不意に『フェイスパック(海)』という文字が視界に飛び込んできた。
説明文には『海の美容液成分が含まれたフェイスパック。使用後四時間、美しい肌が手に入る』だって。
僕は使ったことないけど、お母さんがお風呂上がりにつけてるの見たことあるよ。美しさの秘訣なんだって。……つけてる間の姿はわりと笑える、と思ってるのは絶対に口に出せない。怒られちゃうもん。
「女性には人気出そうかな。でも、プレイヤーは既に理想の姿形なわけだし……いや、さらに上を目指すのはありえる」
僕だって、今でも十分可愛いけど、毛繕いをして可愛さアップに余念がないわけで。美しさを求める思いも果てはないはず!
というわけで、パパッとフェイスパックを作っちゃう。
五十個作ったところで、下の方にレシピが増えたことに気づいた。
「……フルーツの香り、だと……!?」
お好みの果物を一緒に錬金すると、香り付きのフェイスパックも作れるんだって。そもそも、たくさん作ったら類似――あるいは応用――レシピが増えるなんて知らなかったんだけど!
「香りは人それぞれ好みがあるよねぇ。とりあえず無香料を最大数作って、香りは桃とみかんにしておくか」
どっちも農地で採れるから、在庫がいっぱいなので問題なし。アイテムが売れないようなら、知り合いにプレゼントしちゃえばいいや。
フェイスパックを作った後は、痺海月の活用法を探る。
レシピを見ると、麻痺効果(小)付きのアイテムがずらり。
これ、便利だと思うじゃん? 実際にモンスターに使ってみると、ほとんど効かないんだよねー。魚釣りで魚系モンスターを痺れさせて釣りやすくなるのはありがたいんだけど。
「バトルに使うには心もとないんだよなぁ」
最後まで見終えても、ピンと来るものがなかった。痺海月は使えないかな。
そんなことを考えながら、錬金布に痺海月を追加してみる。デフォルメされたクラゲの姿が妙に可愛いんだよねぇ。
「――ん?」
なんか、レシピに変化があったような?
じっと眺めて違和感を探ると、一つのアイテム名に気づいた。『麻痺薬(中)』だって。説明には『三つ以上の痺海月から抽出された麻痺成分を濃縮した薬』と書かれてる。
同一素材の数を増やしたら、レシピ表示が増えるんだ?! これまで全然気づかなかったよー。
「麻痺効果が中になったってことは、バトルでも使えるかも?」
作ってみよう。どれくらいの効果があるかは、実際に使ってみないとわからないんだけど……めんどくさいから買った人に感想をお願いしようかな。安めで売ればいいでしょ。
足りない痺海月をストレージに取りに行って、最大数まで麻痺薬(中)を作った。
「なんか忘れてるような……?」
大体作ったし、屋台のところに行こうかなー、と思ったところで立ち止まる。
なんとなく落ち着かなくて、毛繕いをしながら考えた。なにか忘れ物があるわけじゃないし――とアイテムボックスを確認したところで思い出す。
「うさぎモチーフのアイテム、補充できてない!」
綿毛は現在三つ。でも、アイテムが売り切れてるみたいだし、三個だけでも作っておいた方がいいよね。
三つのブローチを錬金術で作れば、すっきり。心置きなくお出かけできる。
商品を屋台に補充したら、どこに行こうかな~。
「およ?」
なんだろう。
一つはフレンドとのチャットを示す黄色で、たぶんシシリーから。僕が来れない間に在庫切れする商品があったら連絡して、とお願いしておいたんだ。
でも、もう一つがわからない。青色ってなんだったっけなぁ?
「――あ、運営さんか」
送り主を確認して納得。でも、運営さんがわざわざ個人宛の連絡をするのが不思議。アップデート情報は赤色の通知マークだったはずだから。
ふと前にもこの青色のマークを見たことを思い出した。転移スキルに関する補填をお願いした時、このマークで返信の通知が来た気がする。
けど、僕、最近なにも要望出してなかったはずだけどなぁ。
とりあえず本文を開く。真っ先に飛び込んできたのは『CM協力へのお願い』というタイトルだった。
「……ふむふむ、つまりは僕が可愛いからマスコットキャラクターにしたいってことだね!」
小難しい感じで書いてある説明を要約すると、たぶんそういうこと。
第二陣のプレイヤーが参入するのにあわせてCMを打つ際に、これまでの僕のプレイ動画を使いたいらしいんだ。ゲームの魅力を伝えるプレイヤーの一人として、僕が選ばれたってことだね。
「ま、希少種っていう種族があることの説明も兼ねてるのかな」
いいですよー、という返事を一応丁寧な言葉に換えてから送る。もともと目立ってるから、その程度の露出は問題ないでしょ。むしろ、どんなCMが仕上がるのか楽しみ!
「おっと、在庫の確認しとかなきゃ」
返事が済んでホームを飛び出す前に、シシリーからの連絡を思い出す。
開いてみたら、結構売り切れてる商品があることがわかった。というか、残ってる商品の方が少ない?
「――商品作らなきゃ!」
料理は前回とは違うものにしよう。乳製品が少なくなってるし、それならたくさんある野菜を消費した方がいいからね。
「うぅん……野菜……」
サラダくらいしか思い浮かばないなぁ、と思いながら掲示板を開く。
僕が料理を作る際に頼りにしてるスレは、いつの間にか食材ごとに細分化されてた。思いの外、料理に熱中してる人が多いのかも。グルメ大会で魅力が広まったのかな。
野菜を使った料理レシピを教え合っているスレを見て、ふんふんと頷く。バトルフィールドでお手軽に空腹度を回復できる料理が人気みたいだ。
「パパッと作っちゃおう」
野菜ジュース、野菜のかき揚げ、とうもろこしの天ぷら、ハッシュドポテト、高菜おにぎりなど。甘いものは、ドライフルーツと砕いたナッツをキャラメリゼして固めたものだけ。ケーキやクッキーとかは手間がかかるんだよー。
今度時間がある時にレシピ登録しとこう、と思いながら料理は完成。
お次は錬金術アイテムだ。これは前回と同じ品揃えに――と思ったけど、素材が足りてない! 積極的にバトルしてない弊害が現れちゃった。
ストレージを確認して、余ってる素材を探す。
「粘海藻と痺海月だよねぇ……」
一つの棚を占めているアイテムを眺めて、う~んと唸る。
スラリンと海に行くと毎回大量に手に入るけど、使うことが釣り餌作りの時くらいしかないアイテムだ。他のアイテムに使えるのかなぁ。
一枠最大数までアイテムボックスに入れてから、工房に戻る。
錬金布に粘海藻を載せてレシピ検索だ。
「接着剤とかはいらないなぁ」
読み飛ばした先で、不意に『フェイスパック(海)』という文字が視界に飛び込んできた。
説明文には『海の美容液成分が含まれたフェイスパック。使用後四時間、美しい肌が手に入る』だって。
僕は使ったことないけど、お母さんがお風呂上がりにつけてるの見たことあるよ。美しさの秘訣なんだって。……つけてる間の姿はわりと笑える、と思ってるのは絶対に口に出せない。怒られちゃうもん。
「女性には人気出そうかな。でも、プレイヤーは既に理想の姿形なわけだし……いや、さらに上を目指すのはありえる」
僕だって、今でも十分可愛いけど、毛繕いをして可愛さアップに余念がないわけで。美しさを求める思いも果てはないはず!
というわけで、パパッとフェイスパックを作っちゃう。
五十個作ったところで、下の方にレシピが増えたことに気づいた。
「……フルーツの香り、だと……!?」
お好みの果物を一緒に錬金すると、香り付きのフェイスパックも作れるんだって。そもそも、たくさん作ったら類似――あるいは応用――レシピが増えるなんて知らなかったんだけど!
「香りは人それぞれ好みがあるよねぇ。とりあえず無香料を最大数作って、香りは桃とみかんにしておくか」
どっちも農地で採れるから、在庫がいっぱいなので問題なし。アイテムが売れないようなら、知り合いにプレゼントしちゃえばいいや。
フェイスパックを作った後は、痺海月の活用法を探る。
レシピを見ると、麻痺効果(小)付きのアイテムがずらり。
これ、便利だと思うじゃん? 実際にモンスターに使ってみると、ほとんど効かないんだよねー。魚釣りで魚系モンスターを痺れさせて釣りやすくなるのはありがたいんだけど。
「バトルに使うには心もとないんだよなぁ」
最後まで見終えても、ピンと来るものがなかった。痺海月は使えないかな。
そんなことを考えながら、錬金布に痺海月を追加してみる。デフォルメされたクラゲの姿が妙に可愛いんだよねぇ。
「――ん?」
なんか、レシピに変化があったような?
じっと眺めて違和感を探ると、一つのアイテム名に気づいた。『麻痺薬(中)』だって。説明には『三つ以上の痺海月から抽出された麻痺成分を濃縮した薬』と書かれてる。
同一素材の数を増やしたら、レシピ表示が増えるんだ?! これまで全然気づかなかったよー。
「麻痺効果が中になったってことは、バトルでも使えるかも?」
作ってみよう。どれくらいの効果があるかは、実際に使ってみないとわからないんだけど……めんどくさいから買った人に感想をお願いしようかな。安めで売ればいいでしょ。
足りない痺海月をストレージに取りに行って、最大数まで麻痺薬(中)を作った。
「なんか忘れてるような……?」
大体作ったし、屋台のところに行こうかなー、と思ったところで立ち止まる。
なんとなく落ち着かなくて、毛繕いをしながら考えた。なにか忘れ物があるわけじゃないし――とアイテムボックスを確認したところで思い出す。
「うさぎモチーフのアイテム、補充できてない!」
綿毛は現在三つ。でも、アイテムが売り切れてるみたいだし、三個だけでも作っておいた方がいいよね。
三つのブローチを錬金術で作れば、すっきり。心置きなくお出かけできる。
商品を屋台に補充したら、どこに行こうかな~。
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