もふもふで始めるのんびり寄り道生活 便利なチートフル活用でVRMMOの世界を冒険します!

ゆるり

文字の大きさ
65 / 555
3章 商人への道?

98.みんな幸せが一番

しおりを挟む
 建築ギルドでは手間取ることなく店舗への改装を相談できた。
 カウンターや壁床、外観の種類を選んだり、どこに何を置くか決めたりするだけで、あんまり考えることがなかったからね。

 工房に付属したストレージ機能は、店舗奥に小さな工房を作ることで、そのまま残すことができるみたい。
 詳しいことは完成してからのお楽しみに!

「掲示板にお知らせしないとな~」

 るんるん、とスキップするように歩きながら呟く。
 店舗開業許可が出たら、そのままオープンできそうだ。商品が揃えば、だけどね。

「――あ、写真撮影会の話もしとかないと」

 そろそろ日程と場所を決めるべきだよね。タマモに連絡を取るべきなんだけど……と考えながら歩いてたら、ナンバーワン・スイーツフルのお店の前を通りがかった。
 店の中はちらほらとプレイヤーがいる。でも、異世界の住人NPCはあまりいない。エリアマネージャーの悪評が広まってるのかも?

「レモンタルト、美味しそう」

 季節限定商品として掲示されているポスターを見て頷く。
 これはきっと僕が作ったレモンを使ってる。生産者として食べてみないとね!

 店内に入って注文すると、さほど待つこともなく届いた。

「うまっ。さっぱりレモンクリームとホワイトチョコが絶妙にマッチしてる~。――ん!? 待って……チョコってどこで手に入るの?」

 まじまじとレモンタルトを見つめる。
 この街でチョコを目にしたことはないはず。少なくとも、僕が知る形ではチョコは売ってない。

「あ、モモ、来てくれたんだな」

 ひょい、とライアンさんが厨房から顔を出した。そのまま近づいてくる。

「やっほー。レモンタルト美味しいよー」
「そりゃ、モモが作ったレモンが最高に美味しいからだな」
「神級栽培スキルがあるからね!」

 謙遜せずに胸を張って誇る。
 ライアンさんは「うん、そうだな」とにこやかに微笑んでいた。前に会った時より、ちょっと顔色が良くなってるかも?

「――それにしても、チョコがあるなんて知らなかったよ」
「お、チョコレートのこと知ってるのか。それは第三の街の特産だぞ。ただし、購入できる業者が限られてるから、交易品としてもあまり出回らないな」
「へー、それを手に入れられるのすごいね!」
「第三の街の店舗が努力した成果だな」

 笑うライアンさんを見ながら、ちょっと考える。
 チェーン店を救え、というミッションをクリアしたら交易品を入手できるんだよね。それはチョコもオッケーのはず。……欲しい!

「ライアンさん。桃カフェとコラボ商品作らない? 僕が仲介するからさ」
「は? 桃カフェさんとウチで、か?」

 目を丸くしてるライアンさんに、グッと拳を握って見せる。
 商業ギルドでふと思いついたアイディアだけど、すごく効果的だと思うんだ。

「ライアンさんは、地元のお店との関係改善をアピールできるでしょ? グルメ大会で優勝した店とのコラボは、全国での販促にも役立つだろうし」
「それは、まぁ、確かに」
「パティエンヌちゃんは、全国の人に美味しいものを届けられて、知名度も上がる。桃カフェってお店が小さいから、食べたいと思っても入れない人多いと思うんだよね」

 何度も訪れている桃カフェを思い出しながら呟く。
 グルメ大会後、あふれるほどにお客さんが押し寄せて、いつも大変そうだ。その状態はパティエンヌちゃんにとっても、お客さんにとっても快適とはいえない。

 ナンバーワン・スイーツフルでも桃カフェのメニューが食べられるってなったら、少しはその状況が緩和されると思うんだ。

 ライアンさんとパティエンヌちゃん、双方に利点があるよね。

「……なるほど。すごくいい考えだ。でも、大きな問題があるだろ? 桃カフェさんが、そんなこと許可するもんか」

 悔しそうな、それでいて寂しそうに呟くライアンさんを眺め、首を傾げる。

「僕が仲介するのに?」
「……すごい自信だなぁ」

 呆れた表情でため息まじりに言われた。
 でも、パティエンヌちゃんなら「いい考えですね!」ってすぐに言ってくれそうなんだよね。ライアンさんと同じで、たくさんの人に美味しいものを食べてもらいたいって考える人だから。

「とりあえず、ライアンさんがその気あるなら、パティエンヌちゃんに話してみるよ」
「そうだな……モモがやってくれるって言うなら、頼みたいけど。ほんとにいいのか?」
「うん。もちろん」

 交易品っていう報酬が欲しいからだよー、なんて言わない。それ抜きで、ライアンさんを助けてあげたいなって思ってるのも本心だし。

「――あ、そうだ。ここって貸し切りできる?」

 ぐるっと店内を見渡して首を傾げる。
 桃カフェよりも広いから、写真撮影会をするのに十分だと思うんだ。ついでに、その場でコラボ商品を紹介できたら、さらにお客さんを呼び込めそうな気がするし。

「貸し切りは可能だけど……」

 どういうことだ、と言いたげな表情のライアンさんに軽く説明したら、「俺、すごい人と知り合っちゃった……?」と呆然とされた。

 僕はすごくないんだよ。たぶん、このアバターが優れてるだけ。もふもふの魅力は絶大だぞ~。

「広いから、ちょっとした出し物とかもできるかな」

 ふと、スキル屋さんと披露した大道芸のことを思い出した。
 写真撮影会でもスキル屋さんと一緒に披露できたら盛り上がるかも。というか、絶対気に入ってもらえるはず。そうしたら、スキル屋さんも喜ぶかな。

「……声を掛けてみよう。バトル用のスキルも手に入れたいと思ってたんだよね」

 うんうん、と頷いてたら、不意に手を握られた。

「モモ」
「なに? すごい真剣な顔してる……」

 さっきまでの呆然とした雰囲気はなくなって、強い眼差しで見据えられてドキッとした。僕、変なこと言ってないよね?

「店の貸し切りは大歓迎だ。そこでイベントをしてくれるのも。なによりも、桃カフェとの関係改善方法を提案してもらえて、すごく嬉しい。心から感謝してる」
「おぉ……なんか、照れる……」

 こんなに真摯に感謝されることって、普段あんまりないもん。
 照れを紛らわせるために、頬をこすりながら、握られている手を揺らした。

「――喜んでもらえて嬉しいよ。一緒にがんばろうね」
「ああ、がんばるよ。お客様に素晴らしいものを提供できるように!」

 気合いに満ちた表情を見上げ、にこにこと笑う。

「じゃあ、レモンタルトを食べ終わったら、パティエンヌちゃんに話してくるね」
「よろしく頼むよ。あ、これ以上は邪魔になるな。なにかあったら声を掛けてくれ」

 スッとフレンドカードを差し出された。

〈【フレンドカード・『パティシエ』ライアン】が贈られました。フレンド欄が更新されます〉
異世界の住人NPCのフレンド数と親密度が基準に達しました。称号【友だちたくさん】とアイテム【銅のトロフィー】が贈られます〉

 ふぁ!?
 予想外なものをもらったぞ。

 称号【友だちたくさん】の効果は『異世界の住人NPCからフレンドカードをもらいやすくなる』だった。さらに友だちを増やせってことかな。

 アイテム【銅のトロフィー】は、設置した場所に異世界の住人NPCがやって来やすくなる効果があるらしい。

「――招き猫的な?」

 これから店舗で本格的に商売を始めようと思ってるから、ちょうど良かったかも。すごく効果がありそうだもん。ラッキー!

しおりを挟む
感想 2,532

あなたにおすすめの小説

番外編・もふもふで始めるのんびり寄り道生活

ゆるり
ファンタジー
『もふもふで始めるのんびり寄り道生活』の番外編です。 登場人物の説明などは本編をご覧くださいませ。 更新は不定期です。

もふもふと味わうVRグルメ冒険記 〜遅れて始めたけど、料理だけは最前線でした〜

きっこ
ファンタジー
五感完全再現のフルダイブVRMMO《リアルコード・アース》。 遅れてゲームを始めた童顔ちびっ子キャラの主人公・蓮は、戦うことより“料理”を選んだ。 作るたびに懐いてくるもふもふ、微笑むNPC、ほっこりする食卓―― 今日も炊事場でクッキーを焼けば、なぜか神様にまで目をつけられて!? ただ料理しているだけなのに、気づけば伝説級。 癒しと美味しさが詰まった、もふもふ×グルメなスローゲームライフ、ここに開幕!

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。 ──────── 自筆です。

【完結】小さな元大賢者の幸せ騎士団大作戦〜ひとりは寂しいからみんなで幸せ目指します〜

るあか
ファンタジー
 僕はフィル・ガーネット5歳。田舎のガーネット領の領主の息子だ。  でも、ただの5歳児ではない。前世は別の世界で“大賢者”という称号を持つ大魔道士。そのまた前世は日本という島国で“独身貴族”の称号を持つ者だった。  どちらも決して不自由な生活ではなかったのだが、特に大賢者はその力が強すぎたために側に寄る者は誰もおらず、寂しく孤独死をした。  そんな僕はメイドのレベッカと近所の森を散歩中に“根無し草の鬼族のおじさん”を拾う。彼との出会いをきっかけに、ガーネット領にはなかった“騎士団”の結成を目指す事に。  家族や領民のみんなで幸せになる事を夢見て、元大賢者の5歳の僕の幸せ騎士団大作戦が幕を開ける。

異世界に召喚されたけど、戦えないので牧場経営します~勝手に集まってくる動物達が、みんな普通じゃないんだけど!?~

黒蓬
ファンタジー
白石悠真は、ある日突然異世界へ召喚される。しかし、特別なスキルとして授かったのは「牧場経営」。戦えない彼は、与えられた土地で牧場を経営し、食料面での貢献を望まれる。ところが、彼の牧場には不思議な動物たちが次々と集まってきて――!? 異世界でのんびり牧場ライフ、始まります!

ねえ、今どんな気持ち?

かぜかおる
ファンタジー
アンナという1人の少女によって、私は第三王子の婚約者という地位も聖女の称号も奪われた 彼女はこの世界がゲームの世界と知っていて、裏ルートの攻略のために第三王子とその側近達を落としたみたい。 でも、あなたは真実を知らないみたいね ふんわり設定、口調迷子は許してください・・・

嘘つきと呼ばれた精霊使いの私

ゆるぽ
ファンタジー
私の村には精霊の愛し子がいた、私にも精霊使いとしての才能があったのに誰も信じてくれなかった。愛し子についている精霊王さえも。真実を述べたのに信じてもらえず嘘つきと呼ばれた少女が幸せになるまでの物語。

異世界で焼肉屋を始めたら、美食家エルフと凄腕冒険者が常連になりました ~定休日にはレア食材を求めてダンジョンへ~

金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
辺境の町バラムに暮らす青年マルク。 子どもの頃から繰り返し見る夢の影響で、自分が日本(地球)から転生したことを知る。 マルクは日本にいた時、カフェを経営していたが、同業者からの嫌がらせ、客からの理不尽なクレーム、従業員の裏切りで店は閉店に追い込まれた。 その後、悲嘆に暮れた彼は酒浸りになり、階段を踏み外して命を落とした。 当時の記憶が復活した結果、マルクは今度こそ店を経営して成功することを誓う。 そんな彼が思いついたのが焼肉屋だった。 マルクは冒険者をして資金を集めて、念願の店をオープンする。 焼肉をする文化がないため、その斬新さから店は繁盛していった。 やがて、物珍しさに惹かれた美食家エルフや凄腕冒険者が店を訪れる。 HOTランキング1位になることができました! 皆さま、ありがとうございます。 他社の投稿サイトにも掲載しています。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。