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4章 錬金術士だよ?
135.どこにいるかな~
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サクの川。
前回は人気がないところを求めて偶然迷い込んだけど、今回は地図を頼りに見つけ出した。
「ここ、下流域はモンスターが出ないみたいだけど、上流はいるのかー」
てくてくと歩く――のは時間がかかるから、飛翔スキルで飛んでいく。川の上は障害物がなくて飛びやすい。着地のタイミングを間違ったら、川に落ちちゃうけど。
「……いや、川の中にはモンスターがいるんだった」
魚がジャンプしてきて、慌てて高度を上げる。
いつも釣りやスラリンの漁で気軽に魚をゲットしてるから忘れてたけど、魚もモンスターの一種だし、僕に襲いかかってくるんだった。
ガバッと口を開けたまま川に落ちた魚は鮭かな? 結構大きかった。前回は釣れなかったけど、美味しそうだし獲りたいなぁ。今は僕が餌扱いされてるみたいだけど、ジャンプしたところで攻撃したら獲れるかな。
「あ、それだとドロップ扱いで、身が少なくなっちゃう。でも、食べる部分以外のドロップアイテムがもらえるかもしれない……?」
悩ましい。
うーん、と唸りながら飛んでたら、また鮭っぽいモンスターが僕を狙ってジャンプした。反射的に風魔術を放つ。
「風の玉!」
モンスターが河原へ弾かれた。上手い感じで魔術を当てられたみたいだ。
追いかけて、ビタビタと跳ねてるモンスターを鑑定する。
「【桜鮭】かぁ。やっぱり鮭だ」
僕より大きい魚で、得意攻撃は【体当たり】【水鉄砲】――あ!
鑑定結果を見て警戒を強めた瞬間、桜鮭から水が飛び出してきた。慌てて避ける。回避スキルのレベルを上げてたおかげか、近距離からの攻撃でもしっかりと躱せた。
「あっぶなーい! 倒しちゃわないと――【足蹴】!」
河原にいるからか、桜鮭は少しずつ体力が削られていたけど、ダメ押しに蹴りスキルで攻撃する。
水鉄砲を躱しながら何度か攻撃したら倒せた。結局、バトル扱いになったなぁ。
〈桜鮭を倒しました。経験値とアイテム【桜鮭の切り身】【桜鮭の鱗】を入手しました〉
ドロップアイテムは切り身と鱗かー。鱗はなんに使えるのかな。見た目は桜色をしてて綺麗だ。装飾品になりそう。
「……ペンキの素材になるかな。でも、桜色の塗料をバトルで使うのはなんか違う気がする」
桜色に染まる迷彩小竜って、可愛いよね。戦う気が削がれそう。
使い道は後から考えることにして、鱗と切り身をアイテムボックスに仕舞い、「よし」と気合いを入れ直す。
今日は琥珀探しに来たんだから、早く上流に向かわなくちゃ。レナードさんに、どれくらいの距離があるか聞いておけば良かったなぁ。
「――ずっと先まで続いてる気がする」
空があるように見えて、動かない絵であるここは大きな洞窟。近場の木は本物だけど、遠くにある木は絵だ。
それに気づいちゃうと、ちょっと狭苦しく感じちゃう。僕以外に動くのがいなくて、寂しいし。
「スラリン、呼んじゃう? でも、移動速度落ちちゃうしなぁ」
悩みながら飛翔スキルを発動。今度は川の上じゃなくて河原を飛ぶ。時々木があるけど、そこを着地点にすればいい。
川から攻撃してくるモンスターを警戒するのは面倒くさいし、いちいちバトルすると時間がかかっちゃうからね。
「んー、琥珀をくれるモンスターはどこー?」
◇◆◇
ひたすら飛んで移動してたら、川にある石がどんどん大きく角ばってきた。もはや岩だ。上流に着いたんだと思う。
「そういえば、琥珀をドロップするモンスターって、どういうタイプだろう?」
石の上で一休みしながら、ふと呟く。レナードさんに聞き忘れちゃった。
琥珀といえば、樹液が固まったものだし、作れるアイテムの効果を考えても、木属性のモンスターからドロップしそう。それなら、川より近くの木を探した方がいいんだろうな。
河原の近くには木々がポツポツと存在してる。森というほどの密度はないし、遠くの木が絵であることを考えると、あまり本数はない。
その木が動き出すような気配があればすぐ気づくだろうけど、今はそんな感じはしない。その近くにモンスターがいるようにも思えない。
「――むむ……」
ごろりと寝転がる。モンスターを探すの飽きちゃった。全然襲ってこないんだもん。気分転換に釣りでもしようかな。
というわけで――。
「【召喚】スラリン、ピア!」
もう一人なのは嫌だよー。
喚び出した途端、スラリンが心得た感じで頷く。今日も漁をがんばってください。
ピアは『また水場だー』という感じで、川を覗いてた。次はバトルで喚び出そうかな。ピアはあんまり役に立ってくれない気がするけど……。いや、ステータスアップの舞を踊ってくれたら助かるかも。
「なにが釣れるかな~」
川に飛び込むスラリンに続いて、釣り竿を取り出しながら呟く。すっかり目的から逸れちゃってるけど、時間はまだあるから問題はない、はず!
ぽちゃんと釣り針を垂らしてしばらく待つ。予想以上に獲物がかからない。もしかして、この辺にはあんまり魚介類のモンスターがいないのかな?
「――いや、でも、スラリンはなんか獲ってるみたいだし……」
川の水を含んで大きくなったスラリンの中で、魚っぽい姿が暴れてるのがぼんやりと見える。つまり、魚はいるはず。
それなのに釣れないということは、餌が合ってないのかな。今回も【えびえびすぺしゃる】を使ってみたんだけど。
「うーん、他の餌に変えてみよう」
全然釣れないから見切りをつけて、糸を巻き上げる。ちょっと重い気がするのはなんでだろう。実は魚が掛かってた?
「――……魚じゃないし!」
針の先に引っかかってたのは長靴みたいなもの。こんなものが釣れることあるの? 釣りゲームでたまにある、ハズレってことだよね。
「ひと気がないのに、完全に人工的なゴミが釣れるなんて……」
むぅ、と唸りながら長靴を針から外す。
ゴミだったとしても、何かに使えるかもしれないし、アイテムボックスに仕舞っておこう――と思っていたら、急にピアが近づいてきて、僕の手から長靴を叩き落した。
「もふっ」
「え、どうしたの?」
きょとんとしてたら、スラリンも近づいてくる。水でたぷたぷになった体は動きにくそうだけど。
「きゅい!」
スラリンが含んでいた水を長靴の方に吐き出した。一緒に魚やエビみたいなものも飛び出してきてるけど、今はそれは問題じゃない。
「えっ、長靴が溶けた!?」
黒い長靴がどろりと形を崩し、ぴょんと跳ねる。よく見たら、丸太に小さな手足がくっついた形になってる。これってモンスターなのかな?
全鑑定スキルを使ってみる。
結果、これが『疑似魚』というモンスターだということがわかった。
擬態能力がある木属性のモンスターで、魚に擬態して川の中にいることが多いんだって。餌だと思って食いついたモンスターを、内部から攻撃して倒すんだとか。怖い……。
釣り人も魚だと思って疑似魚を手にとって、油断したところを攻撃されることがあるらしい。
僕、完全にその罠にかかってたよ。全然魚の見た目じゃなかったけど! なんで長靴を真似てたんだろう?
「みんなで攻撃だー」
号令を出したら、スラリンが飛びかかった。いつもより重い体のせいで、逃げられてるけど。
ピアはのんきに眺めてるだけだし、僕が攻撃しないと。
とりあえず飛翔スキルから嵐蹴りを放つ。
——ドガッ!
「あれ?」
飛び散る河原の石。疑似魚の姿がない。
〈疑似魚を倒しました〉
一撃で倒せていたらしい。擬態能力があるだけで、強くないモンスターだったみたいだ。
考えてみたら、ここははじまりの街近くのフィールドなんだから、あんまり強いモンスターはいないはずなんだよね。
〈経験値とアイテム【木の欠片】【琥珀】を入手しました〉
「——って、琥珀をくれるモンスターってこいつだったの!?」
予想外だったんだけど!
前回は人気がないところを求めて偶然迷い込んだけど、今回は地図を頼りに見つけ出した。
「ここ、下流域はモンスターが出ないみたいだけど、上流はいるのかー」
てくてくと歩く――のは時間がかかるから、飛翔スキルで飛んでいく。川の上は障害物がなくて飛びやすい。着地のタイミングを間違ったら、川に落ちちゃうけど。
「……いや、川の中にはモンスターがいるんだった」
魚がジャンプしてきて、慌てて高度を上げる。
いつも釣りやスラリンの漁で気軽に魚をゲットしてるから忘れてたけど、魚もモンスターの一種だし、僕に襲いかかってくるんだった。
ガバッと口を開けたまま川に落ちた魚は鮭かな? 結構大きかった。前回は釣れなかったけど、美味しそうだし獲りたいなぁ。今は僕が餌扱いされてるみたいだけど、ジャンプしたところで攻撃したら獲れるかな。
「あ、それだとドロップ扱いで、身が少なくなっちゃう。でも、食べる部分以外のドロップアイテムがもらえるかもしれない……?」
悩ましい。
うーん、と唸りながら飛んでたら、また鮭っぽいモンスターが僕を狙ってジャンプした。反射的に風魔術を放つ。
「風の玉!」
モンスターが河原へ弾かれた。上手い感じで魔術を当てられたみたいだ。
追いかけて、ビタビタと跳ねてるモンスターを鑑定する。
「【桜鮭】かぁ。やっぱり鮭だ」
僕より大きい魚で、得意攻撃は【体当たり】【水鉄砲】――あ!
鑑定結果を見て警戒を強めた瞬間、桜鮭から水が飛び出してきた。慌てて避ける。回避スキルのレベルを上げてたおかげか、近距離からの攻撃でもしっかりと躱せた。
「あっぶなーい! 倒しちゃわないと――【足蹴】!」
河原にいるからか、桜鮭は少しずつ体力が削られていたけど、ダメ押しに蹴りスキルで攻撃する。
水鉄砲を躱しながら何度か攻撃したら倒せた。結局、バトル扱いになったなぁ。
〈桜鮭を倒しました。経験値とアイテム【桜鮭の切り身】【桜鮭の鱗】を入手しました〉
ドロップアイテムは切り身と鱗かー。鱗はなんに使えるのかな。見た目は桜色をしてて綺麗だ。装飾品になりそう。
「……ペンキの素材になるかな。でも、桜色の塗料をバトルで使うのはなんか違う気がする」
桜色に染まる迷彩小竜って、可愛いよね。戦う気が削がれそう。
使い道は後から考えることにして、鱗と切り身をアイテムボックスに仕舞い、「よし」と気合いを入れ直す。
今日は琥珀探しに来たんだから、早く上流に向かわなくちゃ。レナードさんに、どれくらいの距離があるか聞いておけば良かったなぁ。
「――ずっと先まで続いてる気がする」
空があるように見えて、動かない絵であるここは大きな洞窟。近場の木は本物だけど、遠くにある木は絵だ。
それに気づいちゃうと、ちょっと狭苦しく感じちゃう。僕以外に動くのがいなくて、寂しいし。
「スラリン、呼んじゃう? でも、移動速度落ちちゃうしなぁ」
悩みながら飛翔スキルを発動。今度は川の上じゃなくて河原を飛ぶ。時々木があるけど、そこを着地点にすればいい。
川から攻撃してくるモンスターを警戒するのは面倒くさいし、いちいちバトルすると時間がかかっちゃうからね。
「んー、琥珀をくれるモンスターはどこー?」
◇◆◇
ひたすら飛んで移動してたら、川にある石がどんどん大きく角ばってきた。もはや岩だ。上流に着いたんだと思う。
「そういえば、琥珀をドロップするモンスターって、どういうタイプだろう?」
石の上で一休みしながら、ふと呟く。レナードさんに聞き忘れちゃった。
琥珀といえば、樹液が固まったものだし、作れるアイテムの効果を考えても、木属性のモンスターからドロップしそう。それなら、川より近くの木を探した方がいいんだろうな。
河原の近くには木々がポツポツと存在してる。森というほどの密度はないし、遠くの木が絵であることを考えると、あまり本数はない。
その木が動き出すような気配があればすぐ気づくだろうけど、今はそんな感じはしない。その近くにモンスターがいるようにも思えない。
「――むむ……」
ごろりと寝転がる。モンスターを探すの飽きちゃった。全然襲ってこないんだもん。気分転換に釣りでもしようかな。
というわけで――。
「【召喚】スラリン、ピア!」
もう一人なのは嫌だよー。
喚び出した途端、スラリンが心得た感じで頷く。今日も漁をがんばってください。
ピアは『また水場だー』という感じで、川を覗いてた。次はバトルで喚び出そうかな。ピアはあんまり役に立ってくれない気がするけど……。いや、ステータスアップの舞を踊ってくれたら助かるかも。
「なにが釣れるかな~」
川に飛び込むスラリンに続いて、釣り竿を取り出しながら呟く。すっかり目的から逸れちゃってるけど、時間はまだあるから問題はない、はず!
ぽちゃんと釣り針を垂らしてしばらく待つ。予想以上に獲物がかからない。もしかして、この辺にはあんまり魚介類のモンスターがいないのかな?
「――いや、でも、スラリンはなんか獲ってるみたいだし……」
川の水を含んで大きくなったスラリンの中で、魚っぽい姿が暴れてるのがぼんやりと見える。つまり、魚はいるはず。
それなのに釣れないということは、餌が合ってないのかな。今回も【えびえびすぺしゃる】を使ってみたんだけど。
「うーん、他の餌に変えてみよう」
全然釣れないから見切りをつけて、糸を巻き上げる。ちょっと重い気がするのはなんでだろう。実は魚が掛かってた?
「――……魚じゃないし!」
針の先に引っかかってたのは長靴みたいなもの。こんなものが釣れることあるの? 釣りゲームでたまにある、ハズレってことだよね。
「ひと気がないのに、完全に人工的なゴミが釣れるなんて……」
むぅ、と唸りながら長靴を針から外す。
ゴミだったとしても、何かに使えるかもしれないし、アイテムボックスに仕舞っておこう――と思っていたら、急にピアが近づいてきて、僕の手から長靴を叩き落した。
「もふっ」
「え、どうしたの?」
きょとんとしてたら、スラリンも近づいてくる。水でたぷたぷになった体は動きにくそうだけど。
「きゅい!」
スラリンが含んでいた水を長靴の方に吐き出した。一緒に魚やエビみたいなものも飛び出してきてるけど、今はそれは問題じゃない。
「えっ、長靴が溶けた!?」
黒い長靴がどろりと形を崩し、ぴょんと跳ねる。よく見たら、丸太に小さな手足がくっついた形になってる。これってモンスターなのかな?
全鑑定スキルを使ってみる。
結果、これが『疑似魚』というモンスターだということがわかった。
擬態能力がある木属性のモンスターで、魚に擬態して川の中にいることが多いんだって。餌だと思って食いついたモンスターを、内部から攻撃して倒すんだとか。怖い……。
釣り人も魚だと思って疑似魚を手にとって、油断したところを攻撃されることがあるらしい。
僕、完全にその罠にかかってたよ。全然魚の見た目じゃなかったけど! なんで長靴を真似てたんだろう?
「みんなで攻撃だー」
号令を出したら、スラリンが飛びかかった。いつもより重い体のせいで、逃げられてるけど。
ピアはのんきに眺めてるだけだし、僕が攻撃しないと。
とりあえず飛翔スキルから嵐蹴りを放つ。
——ドガッ!
「あれ?」
飛び散る河原の石。疑似魚の姿がない。
〈疑似魚を倒しました〉
一撃で倒せていたらしい。擬態能力があるだけで、強くないモンスターだったみたいだ。
考えてみたら、ここははじまりの街近くのフィールドなんだから、あんまり強いモンスターはいないはずなんだよね。
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予想外だったんだけど!
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