もふもふで始めるのんびり寄り道生活 便利なチートフル活用でVRMMOの世界を冒険します!

ゆるり

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5章 もふもふいっぱい?

157.もふもふパラダイス

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 ロウさんの舟での観光を満喫して、温泉旅館の近くでおりた。
 マップによると、僕たちは南門から街の中央に歩いて向かって、その後、舟で東区域まで来た感じだ。

「東区域は温泉がいっぱいなのかも?」

 旅館らしい見た目の建物群と、建物の間にある湯気が立つ小さな池を眺める。温泉の温度を下げてからキーリ川に流れ込むようにしてるらしい。

「温泉街だな」
「硫黄系じゃなさそうだね」

 リリがにおいを嗅いでから、嬉しそうに微笑んだ。硫黄系の温泉が苦手なのかな? においにクセがあるもんね。

「それで、街一番って言ってた旅館に泊まんのか?」

 周囲を眺めながら歩く。ロウさんが教えてくれた旅館はすぐ近くだ。

「……宿泊料による?」
「意外と現実的だね~」

 悩ましげな表情で答えるリリを見て、思わず笑っちゃった。すっごく泊まりたいって顔してるのに、諦める可能性があるんだ?

「お金は大事だもの。でも、ボス素材を売れば、なんとかなる気もする!」
「ボス素材の使い道、それでいいのかよ」
「ふふ。まぁ、最終手段だよ」

 リリとルトの会話を聞きながら旅館に入ろうとしたところで、ピタッと足が止まった。
 なんか見逃せないものが道の先にあったぞ……?

「ふわー! もふもふー!」
「っ、急に語彙力なくすな。驚くだろ」

 ルトがビクッと体を震わせたのをスルーして、僕は道にいるもふもふを凝視する。

 ライオンに似たペールグリーン色のモンスターが、人と戯れるようにしながら歩いてた。その近くには、岩っぽいモンスターとか、水の塊みたいなモンスターもいる。

「あの人、絶対テイマー!」
「……マジだ。へぇ、普通に街中にいるんだな」
「あっちにもいるよ。狐っぽい子、かわいー」

 ルトが感心した様子で呟き、リリが違う方向を指す。

 舟に乗ってた時は出会わなかったけど、この街、テイマー率が高いみたい! 弟子入りしに来る人が多いって、ロウさんが言ってたもんね。

「すごーい! ああいうモンスターもテイムできるんだー」
「お前がテイムしたら、主従逆転されそうだな」

 ライオンっぽい子に惹かれてたら、ルトに揶揄われた。
 想像してみる。……確かに僕とライオンだと、被捕食者と捕食者だね!

「……僕が主人だもん! というか、友だちになるんだから、主従じゃないよ!」
「ほー……そうなるといいな?」
「もう! なんでルトはそんなに意地悪なのー!」

 ルトの足をポカポカと叩く。全然痛がってくれないけど。

 近くを通り過ぎたテイマーらしき人が「あ、天兎アンジュラパだー。でも、テイムモンスじゃない……?」と不思議そうに呟いていた。

 どうも。異世界からの旅人天兎アンジュラパです。よろしく~。

 ふりふり、と手を振ったら、人だけじゃなくて、テイムされてるモンスターもそれぞれ反応してくれた。

 ライオンっぽい子に頭スリスリしてもらったので満足です! ……一瞬、食べられるのかと思ったのは内緒。ルトに知られたら「ほら、お前もそう思うんだろ?」って言われるだろうから。

「モモはテイマーになるのか?」
「うーん、考え中。まだ転職システム見つかってないし、魔術士やめるのはもったいない気がするしー」
「そうだよなぁ。ま、ゆっくり考えたらいいんじゃね」
「とりあえず、国一番のテイマーさんと話をしに行くつもりだよー」

 ルトと話してたら、リリに耳をつつかれた。なになに~?

「ね、早く旅館に入ろうよ。宿泊料聞いてみないと」
「ふはっ、うん、そうだね」

 どんだけ温泉旅館に惹かれてるの。ワクワクした感じを隠しきれてないリリが可愛い。

 ルトが肩をすくめて一足先に旅館に入った。お手頃な値段だったらいいんだけど……。この旅館、品が良くてすごくお高そうなんだよなぁ。

 旅館の中は落ち着いた臙脂色の絨毯が敷かれてて、ロビーには深みのある色合いのアンティークっぽい家具が置かれてる。
 静かな雰囲気は落ち着けるけど、やっぱり高級旅館に見えるなぁ。

 受付のカウンターにいる女性は着物を着てた。やっぱり日本をモチーフにしてる街なんだろうね。

「いらっしゃいませ」
「こんにちは。ここって、宿泊できますよね?」
「もちろんですよ。……三名ですか?」

 一瞬、僕を人数に入れるか迷った顔をしてたのを見逃さない。まぁ、見た目モンスターだし、仕方ないよねぇ。
 笑いをこらえたルトが受付さんと会話を続ける。

「そうっす。ちょっと値段次第では泊まれないんですけど……」
「お部屋のタイプにもよりますが、お一人様一泊五万リョウからになります」

 おぉぅ……なかなかなお値段ですね?
 ルトたちと顔を見合わせて、小声で相談する。僕は普通に出せるお値段だけど、リリたちはどうなの?

「正直、泊まるだけで五万は厳しい」
「最低ランクがそれだもんね……。温泉は別の宿にもあるだろうし、ここはやめよっか」

 リリは残念そうだったけど、すぐに諦めたみたいだ。僕が全員分出してもいいんだけど、二人はそれを受け入れないだろうなぁ。

「もっとお金稼いでから来ようかな」
「だな。目標ができていいじゃん」

 ルトに言われて、リリの表情が少し明るくなった。

「というわけで、別の宿にするよー。安めで、温泉がついてる宿のおすすめある?」

 ぴょん、とカウンターのところまで飛んで尋ねてみる。受付さんが目を丸くして驚いてた。

「おい、モモ。旅館で他の宿を聞くやつがいるかよ」
「ここにいるよ~」
「そういう意味で言ってんじゃねぇんだけど」

 ルトに呆れられた。でも、ここには旅館の口コミサイトなんてないんだから、地元の人に聞いたおすすめ宿が一番頼りになると思わない?

「冒険者さんがお泊まりになるお手頃な温泉つき宿は『翡翠亭』ですよ。小さいですが、全ての部屋に半露天風呂がついていて、人気だそうです。お食事はついていませんが」

 僕とルトのやり取りに微笑んだ受付さんが教えてくれた。

「おお! なんか良さそう!」
「部屋風呂いいな」
「ご飯は自分たちで用意できるしね」

 これはもう決定では?
 受付さんに場所を教えてもらって「ありがと~」とお礼を告げて向かう。

 翡翠亭は東区域の中でも端の方にあるみたいだから、ちょっと歩かないとね。観光もできるしちょうどいいかも。どんな宿かな~。

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