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5章 もふもふいっぱい?
175.挑戦あるのみ!
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狂水獣が近づいてこないか警戒しつつ、項垂れてる熊耳お兄さんを観察する。
熊耳も可愛いよね。触っちゃ駄目かな?
近くで座り込んでるエルフのお兄さんに視線を向けて聞いてみたら、「今、そんなことしてる状況? とりあえず駄目だと思う」と返事があった。残念。
それはともかく。気になることは別にある。
「今第三の街まで辿り着いてるってことは、お兄さんたち強いんだよね? 自分たちだけで逃げることもできなかったの?」
僕の風の槍で倒せはしないにしても、スキルキャンセルはできたのに。
という疑問をぶつけてみたら、顔を上げた熊耳お兄さんが「あー……」と気まずそうな声を上げた。
「……うちのパーティには風魔術を使えるヤツがいねぇんだ」
「わぁお……なんで狂水獣狙ったの……」
思わず呆れちゃう。
討伐依頼のモンスター、他にもたくさんいるのに、なんで有利に戦える敵を選ばないのかな?
「あんなヤベーのじゃなくて、違うモンス狙いだったんだよ! 湖で漁獲量が減ってるから食べられるモンスを釣って納品してくれって! すっげぇ報酬良かったから舟まで買って依頼を受けたのに!」
くっそ、騙された! と叫んでる熊耳お兄さんをじっと見つめる。
「漁獲量が減ってるのは、あのモンスターがいて舟を出しての漁ができないからだよ? 報酬良いのも、危険度を考えたら妥当だよね。舟はたぶん、今売れないから、騙されたっていうのは合ってるかも」
舟売る人は事情知ってるはずだから。でも、売るために、わざと教えなかったんだろうなぁ。
「うわぁ……やっぱ、ヤバい依頼だったんじゃん。考えなしの脳筋、そろそろいい加減にしてよ、リーダー」
「パーティ抜けていい?」
「あんだけ情報収集大事って言っておいたのに、勝手に依頼受けやがって、コノヤロー」
「見損ないました。今回が初めてじゃないですけど」
「毎度これだから、ボスの初討伐未だにできないんじゃね?」
熊耳のお兄さんに冷たい視線が突き刺さる。
パーティ仲間のみなさん、辛辣だね……? 熊耳お兄さんがしょんぼりしてても誰も慰めないし、それでいいの?
「雑談はともかく、あのモンスター、まだこっちを狙ってるけど」
教えてあげたら、熊耳お兄さんたちが一斉に湖の方へ視線を向けた。
水面に顔を出して、狂水獣が近づいてきてる。
「うわっ!? マジじゃん、俺魔力すっからかんだぜ!?」
「魔力回復薬は?」
「使い切ったに決まってんだろ!」
バタバタしてたけど、結局撤退を決めたらしい。バトルメニューから逃亡を選択してる。まぁ、それ、一定確率で失敗するらしいけど。逃げ切れるといいね?
〈ヘルプ先が逃亡を選択しました。ヘルプを完了しますか?〉
「はーい!」
〈ヘルプ報酬【回復薬】を入手しました〉
しょぼい。でも、モンスターを倒しきらずに、途中でヘルプ終了だから仕方ないかぁ。
「んー……ビーバーって、普通に陸地を歩けるよね?」
狂水獣を観察する。さっき手があるの見えたし、このまま陸地に上がってくる可能性は高い。
でも、キーリ湖以外で戦ったっていう情報はなかったし、森の中まで追いかけてくることはないんだろうな。湖の上じゃなきゃ、渦にやられることもないし。
「おいっ、……ウサギ! ヘルプ助かった! 俺らは撤退するけど、お前はどうするっ?」
逃げる途中の熊耳お兄さんに声を掛けられる。僕を置いていきそうになって、慌てて聞いてくれたらしい。
でも、一瞬名前を考えて『ウサギ』って呼びかけるのひどくない? ちゃんと名前が表示されてるでしょー。
「モモって呼んでいいよ。――僕、一回狂水獣と戦ってみるから、先に逃げてて」
「そうか? まぁ、好きにしたらいいけど。――俺のことはユウシャって呼んでくれ。街で会ったら飯奢るぜ。んじゃ、モモ、気を付けてな!」
熊耳お兄さん――ユウシャが手を振ってから、パーティメンバーを追いかけて行った。逃亡が成功認定されたら、転移で街に飛ぶのかな。
どうでもいいんだけど、自分の名前を『ユウシャ』にするの、すごすぎない? 僕だったら恥ずかしくて無理だよ……。僕以上にネーミングセンスないと思う。
ちょっと生暖かい感じでユウシャたちを見送ってから、狂水獣に向き直る。
近づいてきてた狂水獣からの水噴射を避けつつ、少しずつ後退して、より陸地に近づいてもらった。
「あ、やっぱ、陸に上がれるんだ……」
ペタッと陸に上がった狂水獣が水を噴く――と同時に、湖から水が鞭のように飛んできた。水鞭っていうスキルだね。
「ひぇっ、鞭で叩くのはんたーい!」
動物愛護団体を敵に回す気かぁ!? なんて頭の中でふざけながら、風の玉と風の槍を中心に魔術を放って応戦する。
……狂水獣、体力多すぎるんだけど? 効きやすい属性のはずなのに、あんまり体力削れない。
ユウシャたちが逃げ一辺倒になってたのもしかたないかも。
「むぅ……」
狂水獣の攻撃を回避しながらアイテムボックスを探って、新作アイテムを取り出す。
空間草から作った【空間ボム】だよー。今日が初使用。どんな感じかな?
「――くらえー!」
狙って投げたら、着弾した瞬間に狂水獣の体が左右にズレた気がした。
びっくりして凝視してる間に、元通りになってたけど。あ、ダメージは結構入ってる! 風の槍と同じくらいのダメージ量かな。
「不思議なアイテムだ……」
ふむふむ、と頷きながら次のアイテムを取り出す。
試すの忘れてたやつ、この機会に使ってみようと思って。効果良さそうだったら、お店で売るぞ~。
「異花香水、いっけー!」
投げたら見事狂水獣にぶつかった。
途端に、ずっと続いていた攻撃が止まる。
「魅了デバフ、効いた?」
全鑑定スキルで効果を確認。……見事、魅了状態になってたよ!
――くるる……?
狂水獣はなんだか戸惑ってる。
僕を見て攻撃する素振りを見せたと思ったら中止して、『うーん?』という感じで首を傾げる。
やっぱり落ち着いてるとこ見ると可愛いなぁ。
「あれ? もしかしてこの子、テイムできたりする……?」
考えてなかったんだけど、試してみる価値はあるかも。
熊耳も可愛いよね。触っちゃ駄目かな?
近くで座り込んでるエルフのお兄さんに視線を向けて聞いてみたら、「今、そんなことしてる状況? とりあえず駄目だと思う」と返事があった。残念。
それはともかく。気になることは別にある。
「今第三の街まで辿り着いてるってことは、お兄さんたち強いんだよね? 自分たちだけで逃げることもできなかったの?」
僕の風の槍で倒せはしないにしても、スキルキャンセルはできたのに。
という疑問をぶつけてみたら、顔を上げた熊耳お兄さんが「あー……」と気まずそうな声を上げた。
「……うちのパーティには風魔術を使えるヤツがいねぇんだ」
「わぁお……なんで狂水獣狙ったの……」
思わず呆れちゃう。
討伐依頼のモンスター、他にもたくさんいるのに、なんで有利に戦える敵を選ばないのかな?
「あんなヤベーのじゃなくて、違うモンス狙いだったんだよ! 湖で漁獲量が減ってるから食べられるモンスを釣って納品してくれって! すっげぇ報酬良かったから舟まで買って依頼を受けたのに!」
くっそ、騙された! と叫んでる熊耳お兄さんをじっと見つめる。
「漁獲量が減ってるのは、あのモンスターがいて舟を出しての漁ができないからだよ? 報酬良いのも、危険度を考えたら妥当だよね。舟はたぶん、今売れないから、騙されたっていうのは合ってるかも」
舟売る人は事情知ってるはずだから。でも、売るために、わざと教えなかったんだろうなぁ。
「うわぁ……やっぱ、ヤバい依頼だったんじゃん。考えなしの脳筋、そろそろいい加減にしてよ、リーダー」
「パーティ抜けていい?」
「あんだけ情報収集大事って言っておいたのに、勝手に依頼受けやがって、コノヤロー」
「見損ないました。今回が初めてじゃないですけど」
「毎度これだから、ボスの初討伐未だにできないんじゃね?」
熊耳のお兄さんに冷たい視線が突き刺さる。
パーティ仲間のみなさん、辛辣だね……? 熊耳お兄さんがしょんぼりしてても誰も慰めないし、それでいいの?
「雑談はともかく、あのモンスター、まだこっちを狙ってるけど」
教えてあげたら、熊耳お兄さんたちが一斉に湖の方へ視線を向けた。
水面に顔を出して、狂水獣が近づいてきてる。
「うわっ!? マジじゃん、俺魔力すっからかんだぜ!?」
「魔力回復薬は?」
「使い切ったに決まってんだろ!」
バタバタしてたけど、結局撤退を決めたらしい。バトルメニューから逃亡を選択してる。まぁ、それ、一定確率で失敗するらしいけど。逃げ切れるといいね?
〈ヘルプ先が逃亡を選択しました。ヘルプを完了しますか?〉
「はーい!」
〈ヘルプ報酬【回復薬】を入手しました〉
しょぼい。でも、モンスターを倒しきらずに、途中でヘルプ終了だから仕方ないかぁ。
「んー……ビーバーって、普通に陸地を歩けるよね?」
狂水獣を観察する。さっき手があるの見えたし、このまま陸地に上がってくる可能性は高い。
でも、キーリ湖以外で戦ったっていう情報はなかったし、森の中まで追いかけてくることはないんだろうな。湖の上じゃなきゃ、渦にやられることもないし。
「おいっ、……ウサギ! ヘルプ助かった! 俺らは撤退するけど、お前はどうするっ?」
逃げる途中の熊耳お兄さんに声を掛けられる。僕を置いていきそうになって、慌てて聞いてくれたらしい。
でも、一瞬名前を考えて『ウサギ』って呼びかけるのひどくない? ちゃんと名前が表示されてるでしょー。
「モモって呼んでいいよ。――僕、一回狂水獣と戦ってみるから、先に逃げてて」
「そうか? まぁ、好きにしたらいいけど。――俺のことはユウシャって呼んでくれ。街で会ったら飯奢るぜ。んじゃ、モモ、気を付けてな!」
熊耳お兄さん――ユウシャが手を振ってから、パーティメンバーを追いかけて行った。逃亡が成功認定されたら、転移で街に飛ぶのかな。
どうでもいいんだけど、自分の名前を『ユウシャ』にするの、すごすぎない? 僕だったら恥ずかしくて無理だよ……。僕以上にネーミングセンスないと思う。
ちょっと生暖かい感じでユウシャたちを見送ってから、狂水獣に向き直る。
近づいてきてた狂水獣からの水噴射を避けつつ、少しずつ後退して、より陸地に近づいてもらった。
「あ、やっぱ、陸に上がれるんだ……」
ペタッと陸に上がった狂水獣が水を噴く――と同時に、湖から水が鞭のように飛んできた。水鞭っていうスキルだね。
「ひぇっ、鞭で叩くのはんたーい!」
動物愛護団体を敵に回す気かぁ!? なんて頭の中でふざけながら、風の玉と風の槍を中心に魔術を放って応戦する。
……狂水獣、体力多すぎるんだけど? 効きやすい属性のはずなのに、あんまり体力削れない。
ユウシャたちが逃げ一辺倒になってたのもしかたないかも。
「むぅ……」
狂水獣の攻撃を回避しながらアイテムボックスを探って、新作アイテムを取り出す。
空間草から作った【空間ボム】だよー。今日が初使用。どんな感じかな?
「――くらえー!」
狙って投げたら、着弾した瞬間に狂水獣の体が左右にズレた気がした。
びっくりして凝視してる間に、元通りになってたけど。あ、ダメージは結構入ってる! 風の槍と同じくらいのダメージ量かな。
「不思議なアイテムだ……」
ふむふむ、と頷きながら次のアイテムを取り出す。
試すの忘れてたやつ、この機会に使ってみようと思って。効果良さそうだったら、お店で売るぞ~。
「異花香水、いっけー!」
投げたら見事狂水獣にぶつかった。
途端に、ずっと続いていた攻撃が止まる。
「魅了デバフ、効いた?」
全鑑定スキルで効果を確認。……見事、魅了状態になってたよ!
――くるる……?
狂水獣はなんだか戸惑ってる。
僕を見て攻撃する素振りを見せたと思ったら中止して、『うーん?』という感じで首を傾げる。
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