もふもふで始めるのんびり寄り道生活 便利なチートフル活用でVRMMOの世界を冒険します!

ゆるり

文字の大きさ
194 / 555
6章 どたばた大騒動?

209.テイマーさん、こんにちは

しおりを挟む
 昨日は、温泉に入った後、ルトたちに屋敷内を案内してからログアウトした。
 ルト、呆れたような疲れたような、不思議な顔してたなぁ。なんでだろう? 時間がなかったから、今度会った時に聞いてみよう。

 そして、今日。
 僕が向かったのはモンちゃんの家。

「こんにちはー、師匠! 講習受けに来たよ」

 お弟子さんがいるはずだから、モンちゃん呼びは控えてみたよ。

「……いっつも元気いっぱいだな、お前」
「それが僕の長所!」

 呆れた顔をしながらも、モンちゃんは「こっちだ」と手招きして案内してくれる。その先からは、ザワザワと声が聞こえてきた。

 道場のような場所にたくさんの人がいる。でも、それ以上に目立つのは様々なモンスターの姿だ。

「もっふもふ~!」
「語彙力を捨てるな」

 入口近くでおすわりしていた柴犬みたいなモンスターに駆け寄る。これ、抱きついて良いかな? 見るからにもふもふなんだけど。
 タマモほどじゃないけど、僕も可愛くてもふもふしたもの好きなんだよ。

 僕より二回りほど大きなモンスターをじぃっと見つめたら、『えっ、えっ?』と戸惑われた。僕と傍に座ってるテイマーらしき人に視線を交互に向けてる。

「シバちゃん、この子抱きつきたいみたいよ。伏せてあげたら?」

 ふわふわのウェーブしたボブヘアを揺らしたテイマーさんが、雰囲気そのままに緩い笑みを浮かべて柴犬っぽいモンスターの頭を撫でた。

「こんにちはー。僕はモモ。テイマー初心者だよ!」

 ビシッと手を挙げて挨拶したらテイマーさんがクスクスと笑う。

「はじめまして。私はリカエラよ。テイマーレベルは21。あなたの先輩と言ってもいいかしらね。この子は地犬アースペロのシバというの。仲良くしてくれると嬉しいわ」
「リカちゃんとシバちゃんかー。よろしくね!」

 握手しよー、と手を差し出したら、リカちゃんの目が丸くなった。でもすぐに「……さすが師匠をモンちゃん呼びする子ね」と納得した感じで頷く。僕、結構知られてる?

 優しく握手してくれるリカちゃんとは、なんか仲良くなれそうな感じ。
 シバちゃんも伏せをして抱きつきやすくしてくれた。わーい、と首元に飛びつく。予想通りのもっふもふでむちむち。触り心地良すぎでは?

「シバちゃんの好きな食べ物はなに?」
「この子はビーフジャーキーが好きよ」
「なるほどー……じゃあ、お近づきの印にこれをどうぞ!」

 おやつ用に作っていたビーフジャーキーをプレゼント。ほんとはルトにあげようと思ってたんだけど、忘れてアイテムボックスで眠ってたんだ。
 シバちゃんはくるんと丸まった尻尾を嬉しそうに振りながら、リカちゃんを見上げた。

「ありがとう。シバちゃん、食べていいわよ」
「アンッ!」

 リカちゃんの合図の後すぐに、シバちゃんがビーフジャーキーを頬張る。幸せそうで、見てる僕もニコニコしちゃう。

「モモはリカエラと仲良くなったようだな。――リカエラ、こいつはだいぶ問題児だから、先輩として面倒見てやってくれ」
「問題児の面倒を見るのはイヤですけど?」
「お前が心底もふもふモンスター好きなこと、知らないと思ってんのか」
「……わかりました。進化石一つで手を打ちましょう」
「おい、勝手に決めてんじゃねーよ」

 半眼で呟くモンちゃんに、リカちゃんは綺麗な笑みを向けた。モンちゃんが目を逸らしたから、たぶん話はまとまったんだろう。

 でもさ、僕が問題児扱いされてるのは、文句言っていい? リカちゃんともっと仲良くなれるのは嬉しいけど、面倒かけたいわけじゃないんだよ。

 たくさんのテイマーとモンスターたちの間をスタスタと歩き、最前列に向かうモンちゃんを、ジトッとした目で見送った。

「今のは私と師匠のいつも通りのやり取りで、本気であなたの面倒を見るのがイヤだと言ったわけではないのよ?」
「それはなんとなく言い方でわかったから良いよー」

 リカちゃんが少し申し訳なさそうにしていたので、僕も気分を切り替えてにこやかに答える。

「それなら良かった。なにか困ったことがあったら相談してちょうだい」

 フレンドカードを差し出される。異世界の住人NPCとフレンドになるのは久々かも。

「ありがとー。早速だけど、今日の講習はなにするの?」

 シバちゃんを挟むように座りながら尋ねた。

「今日はモンスターの特殊スキル習得についての座学よ。実践じゃないのが残念ね」
「座学かぁ。でも、すごく興味のある内容だし、楽しみ!」
「そう? それなら良かったわね」

 講習が始まるまでリカちゃんと話をする。

 リカちゃんは王都出身で、モンちゃんに弟子入りするために第三の街まで来たんだって。元々魔術学院で魔術を学んでて、サブ職は魔術士なんだとか。

 これ、魔術に関しての相談にも乗ってくれるかな?
 たまにカミラ――はじまりの街で最初のバトルに付き合ってくれた友だち――から魔術について話を聞くことはあるんだけど、感覚派らしくて説明されても理解できないことが多いんだよねぇ。

「光と闇の魔術って、どうやって習得できるのかな?」
「魔術学院で学べばいいわよ。でも、今は王都との交通が制限されているから、難しいかしらね」
「制限?」

 そんな話は初耳だ。
 きょとんとしながらリカちゃんの顔を見上げたら、「あら?」と不思議そうな顔をされた。

「知らないの? 狂化モンスターたちの脅威度が上がったから、王都へ被害を出さないよう、王都は空間的封じがされたのよ。今は許可を得た人しか立ち入れないわ」
「空間的封じって、この街の結界みたいなもの?」
「そうね。人間も侵入できないほど強固な結界よ」

 びっくり。そこまで危険視される状況になってたんだ?
 固まってる僕を見て、リカちゃんが軽く肩をすくめる。そして、内緒話をするように僕の耳に顔を近づけた。

「――狂化モンスターを使ってなにか事件を起こそうと画策している人がいるらしいの。その犯人が見つかるまでは、王都の封じは解かれないと思うわよ」
「えー……それって、僕は王都に行けないってこと?」
「私でさえ帰れないのよ。あなたも無理ね」

 体勢を戻したリカちゃんが、ふふっと笑って僕の鼻を指でツンと軽くつつく。

〈ストーリーミッション『狂化モンスター事件の黒幕を追え』が開始しました〉

 突然のアナウンスだけど、正直驚きはなかった。だって、なんとなくこうなるってわかってたもん。
 前回一人でストーリーをクリアしちゃった時に拗ねられたから、今回は絶対ルトたちを巻き込んでやるー!

しおりを挟む
感想 2,532

あなたにおすすめの小説

番外編・もふもふで始めるのんびり寄り道生活

ゆるり
ファンタジー
『もふもふで始めるのんびり寄り道生活』の番外編です。 登場人物の説明などは本編をご覧くださいませ。 更新は不定期です。

もふもふと味わうVRグルメ冒険記 〜遅れて始めたけど、料理だけは最前線でした〜

きっこ
ファンタジー
五感完全再現のフルダイブVRMMO《リアルコード・アース》。 遅れてゲームを始めた童顔ちびっ子キャラの主人公・蓮は、戦うことより“料理”を選んだ。 作るたびに懐いてくるもふもふ、微笑むNPC、ほっこりする食卓―― 今日も炊事場でクッキーを焼けば、なぜか神様にまで目をつけられて!? ただ料理しているだけなのに、気づけば伝説級。 癒しと美味しさが詰まった、もふもふ×グルメなスローゲームライフ、ここに開幕!

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。 ──────── 自筆です。

【完結】小さな元大賢者の幸せ騎士団大作戦〜ひとりは寂しいからみんなで幸せ目指します〜

るあか
ファンタジー
 僕はフィル・ガーネット5歳。田舎のガーネット領の領主の息子だ。  でも、ただの5歳児ではない。前世は別の世界で“大賢者”という称号を持つ大魔道士。そのまた前世は日本という島国で“独身貴族”の称号を持つ者だった。  どちらも決して不自由な生活ではなかったのだが、特に大賢者はその力が強すぎたために側に寄る者は誰もおらず、寂しく孤独死をした。  そんな僕はメイドのレベッカと近所の森を散歩中に“根無し草の鬼族のおじさん”を拾う。彼との出会いをきっかけに、ガーネット領にはなかった“騎士団”の結成を目指す事に。  家族や領民のみんなで幸せになる事を夢見て、元大賢者の5歳の僕の幸せ騎士団大作戦が幕を開ける。

異世界に召喚されたけど、戦えないので牧場経営します~勝手に集まってくる動物達が、みんな普通じゃないんだけど!?~

黒蓬
ファンタジー
白石悠真は、ある日突然異世界へ召喚される。しかし、特別なスキルとして授かったのは「牧場経営」。戦えない彼は、与えられた土地で牧場を経営し、食料面での貢献を望まれる。ところが、彼の牧場には不思議な動物たちが次々と集まってきて――!? 異世界でのんびり牧場ライフ、始まります!

ねえ、今どんな気持ち?

かぜかおる
ファンタジー
アンナという1人の少女によって、私は第三王子の婚約者という地位も聖女の称号も奪われた 彼女はこの世界がゲームの世界と知っていて、裏ルートの攻略のために第三王子とその側近達を落としたみたい。 でも、あなたは真実を知らないみたいね ふんわり設定、口調迷子は許してください・・・

嘘つきと呼ばれた精霊使いの私

ゆるぽ
ファンタジー
私の村には精霊の愛し子がいた、私にも精霊使いとしての才能があったのに誰も信じてくれなかった。愛し子についている精霊王さえも。真実を述べたのに信じてもらえず嘘つきと呼ばれた少女が幸せになるまでの物語。

異世界で焼肉屋を始めたら、美食家エルフと凄腕冒険者が常連になりました ~定休日にはレア食材を求めてダンジョンへ~

金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
辺境の町バラムに暮らす青年マルク。 子どもの頃から繰り返し見る夢の影響で、自分が日本(地球)から転生したことを知る。 マルクは日本にいた時、カフェを経営していたが、同業者からの嫌がらせ、客からの理不尽なクレーム、従業員の裏切りで店は閉店に追い込まれた。 その後、悲嘆に暮れた彼は酒浸りになり、階段を踏み外して命を落とした。 当時の記憶が復活した結果、マルクは今度こそ店を経営して成功することを誓う。 そんな彼が思いついたのが焼肉屋だった。 マルクは冒険者をして資金を集めて、念願の店をオープンする。 焼肉をする文化がないため、その斬新さから店は繁盛していった。 やがて、物珍しさに惹かれた美食家エルフや凄腕冒険者が店を訪れる。 HOTランキング1位になることができました! 皆さま、ありがとうございます。 他社の投稿サイトにも掲載しています。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。