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6章 どたばた大騒動?
233.ボワッとパクッと
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第三の街の北区に転移してすぐに、バトルフィールドにいる巨大な凶獣の姿が見えた。もう現れてたんだね。
「……なんか、僕らが戦ったのより強い?」
ほぼ全プレイヤーが揃って、凶獣と戦っているにもかかわらず、体力の削れ方が遅い。
「東のより西の方が強かったらしいし、一体倒すごとに、次に現れる凶獣は強さが増す設定だったのかもね」
リリが掲示板を確認しながら教えてくれた。
いつもならルトがすぐに教えてくれるのに、今は遠くを見つめて立ち尽くしてる。
「どうせ、古竜が一掃するんだろ……」
「その期待、裏切らないようにがんばるよ!」
「期待じゃねぇけど……もう、モモの好きにしたらいいよ……」
頭を撫でるように叩かれた。
ルト、お疲れかな? なんだかんだ、ほとんど休む間なく動き回ってるもんね。
「みんなも疲れてるから、動きが精彩を欠いてる感じ?」
「寒いからっていうのもあるね。あと、死に戻りしちゃったり、回復アイテムが足りなくなったり?」
「なるほど」
天然の毛皮がある僕とは違い、リリたちは寒さに敏感らしい。
ツッキーたちも平気そうだから、寒さに強いのは希少種の利点なのかな。
「うぅ……寒いです……カタカタ……」
「あ、ヤナは寒さ感じるんだ?」
近くでガイコツ――ヤナがうずくまってた。ここにいたんだねー。全然バトルに参加できてないみたいだけど。ガイコツって、どこで温度を感じるんだろう?
「体力回復薬が余ってる人いないー?」
「私、魔力回復薬ほしい!」
「ステータスアップ薬ねぇの!?」
「回復アイテム使い尽くしちゃったー!」
「誰か、防寒具ちょうだい!」
繰り返す戦闘に、みんなお疲れみたいだ。
凶獣が街に到達する前に倒すのは間に合わなそうだし、イグニスさんを呼んじゃってもいいかな?
とりあえず、みんなに聞いてみるために、マイクを握る。
「こんにちはー、僕はモモです!」
「お? 誰?」
「噂のもふもふ!」
「東の奇跡の原因!」
「モモさん、街中防衛お疲れ様でーす!」
ざわざわと騒がしい中でも、僕に手を振ってアピールしてくる人が多数。もふもふ教の人が元気そうで良かった。
「これから古竜のイグニスさんを呼んじゃおうと思いまーす! 呼んでもいいかなー?」
言ってから、バトルフィールドのプレイヤーたちにマイクを向ける。
すると、一拍置いて返事があった。
「「「いいともー!」」」
結構いい笑顔の人がたくさんいる。もしかして、古竜登場を心待ちにしてた人もいるのかな?
周知を頼んでたし、初めて古竜を見る機会にワクワクする気持ちは僕もわからないでもない。まぁ、イグニスさんの攻撃のえげつなさを知ってると、純粋に楽しみにしてていいのかは謎だけどね。
イグニスさん、どうかフィールドの破壊だけはやめてくださいー。
この霊峰の上には天兎が住んでるはずなんだよ。僕が住処破壊のきっかけにはなりたくない!
「これで呼ぶよー」
アイテムバッグから竜笛を取り出して、吹き口に息を吹き込む。
どれくらいで来てくれるかな。
「ぷぴー♪ ……なんか、間抜けな音だ」
竜笛を吹いてから、思わずマジマジと見下ろした。もっとカッコいい音が良かったな。
ルトが「ぐふっ」と笑いをこらえるのに失敗してる。リリや希少種会は遠慮なく笑ってた。間抜けな音だったのは、僕のせいじゃないんだからね!?
ちょっぴり不満になりながら、空を見上げる。
イグニスさん、来るかなー。
「――あ」
空を巨大な影が横切った。その影はどんどん近づいてくる。
「きゃー!? やばい、やばい、降りてくる!」
「場所開けろー!」
「待って、どこに逃げたらいいの!?」
バトルフィールドが阿鼻叫喚だった。
凶獣と戦っていた人さえ、すぐさま退避行動をとってる。
なんとか人がいなくなった場所に、イグニスさんがドシンッと降り立った。相変わらず巨大な体だなー。カッコいい!
『ようやく我を呼んだな』
「お待たせしましたー」
手を振って挨拶する。
上手いこと結界を避けて登場してくれたことに感謝です。モンちゃんが頭抱える事態にならなくて良かった!
『この近くで飛んでいいのだな?』
「うん。でも、街の方には行かないでね。ついでに、あいつを倒してくれたら嬉しい。フィールドには影響を出さないようにお願いしたいけど――」
僕が話している途中で、イグニスさんが凶獣の方を見る。
凶獣がビクッと体を震わせた気がした。進むのをやめない体に、凶獣自身が嫌がってるように見える。
イグニスさん、すごい! さすが古竜!
思わず憧れる感じでイグニスさんを眺めた。僕も敵に畏怖を与えられるくらい強くなりたいなー。
『では、そなたも共に行くか』
「え?」
いつの間にか、僕はイグニスさんの頭に乗せられていた。
――既視感!
飛び立つイグニスさんの頭にしがみついて、バトルフィールドを確認する。
わぁ……もう凶獣があんなに小さく見えるよ……。この後、なにが起きるのかなぁ……?
現実逃避しちゃうけど、今の僕にできるのは、イグニスさんの行動を見守ることだけだ。
『フィールドに影響を出さぬようにと言っていたな』
「あ、ちゃんと聞いてくれてたんだ?」
『我は小さきものを慈しむ古竜ゆえ』
「それ、前の時にもお願いしたかったなぁ」
置き去りにされたこと、忘れてないぞ!
そんなことを思っていたら、凄まじい風圧を感じた。落とされないように必死にしがみつく。
『あれくらいなら、一呑みにできそうだな』
「……え?」
イグニスさんがボワッと火を吹いた。凶獣とその周囲にぶつかって、瞬く間に火だるまにする。雪が溶けてる~。
バトルフィールドにいる人が、悲鳴を上げて逃げたり、興奮した感じで叫んだり、なかなか騒がしい。イグニスさんは全然気にしてないみたいだけど。
前回と違って、フィールドを壊すほどじゃない威力だったからすごくホッとした。
ほどよく焼けると、イグニスさんは急下降する。そして、炎上してる凶獣をパクッと食べちゃった。
ビックリなんだけど! イグニスさんの口、凶獣より小さかったよね!?
「――た、食べた!? え、拾い食いはダメだよ、ばっちぃよ。ペッ、して!」
『なかなかの食べ応えだった』
僕の言葉を聞いてないのか、イグニスさんは満足げだ。本当に食べちゃったの……?
〈〈北の霊峰エリアのレイドボス凶獣が倒されました〉〉
食べて倒すって、ありなの??
「……なんか、僕らが戦ったのより強い?」
ほぼ全プレイヤーが揃って、凶獣と戦っているにもかかわらず、体力の削れ方が遅い。
「東のより西の方が強かったらしいし、一体倒すごとに、次に現れる凶獣は強さが増す設定だったのかもね」
リリが掲示板を確認しながら教えてくれた。
いつもならルトがすぐに教えてくれるのに、今は遠くを見つめて立ち尽くしてる。
「どうせ、古竜が一掃するんだろ……」
「その期待、裏切らないようにがんばるよ!」
「期待じゃねぇけど……もう、モモの好きにしたらいいよ……」
頭を撫でるように叩かれた。
ルト、お疲れかな? なんだかんだ、ほとんど休む間なく動き回ってるもんね。
「みんなも疲れてるから、動きが精彩を欠いてる感じ?」
「寒いからっていうのもあるね。あと、死に戻りしちゃったり、回復アイテムが足りなくなったり?」
「なるほど」
天然の毛皮がある僕とは違い、リリたちは寒さに敏感らしい。
ツッキーたちも平気そうだから、寒さに強いのは希少種の利点なのかな。
「うぅ……寒いです……カタカタ……」
「あ、ヤナは寒さ感じるんだ?」
近くでガイコツ――ヤナがうずくまってた。ここにいたんだねー。全然バトルに参加できてないみたいだけど。ガイコツって、どこで温度を感じるんだろう?
「体力回復薬が余ってる人いないー?」
「私、魔力回復薬ほしい!」
「ステータスアップ薬ねぇの!?」
「回復アイテム使い尽くしちゃったー!」
「誰か、防寒具ちょうだい!」
繰り返す戦闘に、みんなお疲れみたいだ。
凶獣が街に到達する前に倒すのは間に合わなそうだし、イグニスさんを呼んじゃってもいいかな?
とりあえず、みんなに聞いてみるために、マイクを握る。
「こんにちはー、僕はモモです!」
「お? 誰?」
「噂のもふもふ!」
「東の奇跡の原因!」
「モモさん、街中防衛お疲れ様でーす!」
ざわざわと騒がしい中でも、僕に手を振ってアピールしてくる人が多数。もふもふ教の人が元気そうで良かった。
「これから古竜のイグニスさんを呼んじゃおうと思いまーす! 呼んでもいいかなー?」
言ってから、バトルフィールドのプレイヤーたちにマイクを向ける。
すると、一拍置いて返事があった。
「「「いいともー!」」」
結構いい笑顔の人がたくさんいる。もしかして、古竜登場を心待ちにしてた人もいるのかな?
周知を頼んでたし、初めて古竜を見る機会にワクワクする気持ちは僕もわからないでもない。まぁ、イグニスさんの攻撃のえげつなさを知ってると、純粋に楽しみにしてていいのかは謎だけどね。
イグニスさん、どうかフィールドの破壊だけはやめてくださいー。
この霊峰の上には天兎が住んでるはずなんだよ。僕が住処破壊のきっかけにはなりたくない!
「これで呼ぶよー」
アイテムバッグから竜笛を取り出して、吹き口に息を吹き込む。
どれくらいで来てくれるかな。
「ぷぴー♪ ……なんか、間抜けな音だ」
竜笛を吹いてから、思わずマジマジと見下ろした。もっとカッコいい音が良かったな。
ルトが「ぐふっ」と笑いをこらえるのに失敗してる。リリや希少種会は遠慮なく笑ってた。間抜けな音だったのは、僕のせいじゃないんだからね!?
ちょっぴり不満になりながら、空を見上げる。
イグニスさん、来るかなー。
「――あ」
空を巨大な影が横切った。その影はどんどん近づいてくる。
「きゃー!? やばい、やばい、降りてくる!」
「場所開けろー!」
「待って、どこに逃げたらいいの!?」
バトルフィールドが阿鼻叫喚だった。
凶獣と戦っていた人さえ、すぐさま退避行動をとってる。
なんとか人がいなくなった場所に、イグニスさんがドシンッと降り立った。相変わらず巨大な体だなー。カッコいい!
『ようやく我を呼んだな』
「お待たせしましたー」
手を振って挨拶する。
上手いこと結界を避けて登場してくれたことに感謝です。モンちゃんが頭抱える事態にならなくて良かった!
『この近くで飛んでいいのだな?』
「うん。でも、街の方には行かないでね。ついでに、あいつを倒してくれたら嬉しい。フィールドには影響を出さないようにお願いしたいけど――」
僕が話している途中で、イグニスさんが凶獣の方を見る。
凶獣がビクッと体を震わせた気がした。進むのをやめない体に、凶獣自身が嫌がってるように見える。
イグニスさん、すごい! さすが古竜!
思わず憧れる感じでイグニスさんを眺めた。僕も敵に畏怖を与えられるくらい強くなりたいなー。
『では、そなたも共に行くか』
「え?」
いつの間にか、僕はイグニスさんの頭に乗せられていた。
――既視感!
飛び立つイグニスさんの頭にしがみついて、バトルフィールドを確認する。
わぁ……もう凶獣があんなに小さく見えるよ……。この後、なにが起きるのかなぁ……?
現実逃避しちゃうけど、今の僕にできるのは、イグニスさんの行動を見守ることだけだ。
『フィールドに影響を出さぬようにと言っていたな』
「あ、ちゃんと聞いてくれてたんだ?」
『我は小さきものを慈しむ古竜ゆえ』
「それ、前の時にもお願いしたかったなぁ」
置き去りにされたこと、忘れてないぞ!
そんなことを思っていたら、凄まじい風圧を感じた。落とされないように必死にしがみつく。
『あれくらいなら、一呑みにできそうだな』
「……え?」
イグニスさんがボワッと火を吹いた。凶獣とその周囲にぶつかって、瞬く間に火だるまにする。雪が溶けてる~。
バトルフィールドにいる人が、悲鳴を上げて逃げたり、興奮した感じで叫んだり、なかなか騒がしい。イグニスさんは全然気にしてないみたいだけど。
前回と違って、フィールドを壊すほどじゃない威力だったからすごくホッとした。
ほどよく焼けると、イグニスさんは急下降する。そして、炎上してる凶獣をパクッと食べちゃった。
ビックリなんだけど! イグニスさんの口、凶獣より小さかったよね!?
「――た、食べた!? え、拾い食いはダメだよ、ばっちぃよ。ペッ、して!」
『なかなかの食べ応えだった』
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