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8章 新たな地へ
286.海賊と対戦だー
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戸惑ってるマチルダさんをスルーして、海を凝視する。
黒い点だったものが、徐々に船の形に見えてきた。あれが海賊船かな?
今さらだけど、これって初めて人型の敵と戦うことになる? 第三の街のレイドイベントでは、犯人が人だったけど、捕まえただけだったもんなぁ。
「っ、協力してくださるのでしたら、これをお使いください!」
マチルダさんがキリッとした顔でゴーグルのようなものを六個差し出してきた。これ、スラリンたちの分もあるね。
「なぁに、これ」
「【海賊ゴーグル】です。これを使わないと、きちんとした姿を視認できないので」
「んん? 海賊、普通じゃ見えないの? どうして?」
「そういうモンスターなので」
モンスターなんかい。
つまり、相手は人型じゃないってことだね。ちょっとホッとした。
ゴーグルを受け取って装着。
スラリンたちも着けてるけど、なんか不思議な感じ。
そうこうしてる間にも、海賊船は近づいてきていた。
でも、なんかおかしいような?
「船が、船じゃない……」
海賊ゴーグルを使って見ると、海賊船は巨大なイカのようなモンスターが擬態してできていた。
なんでわざわざ船を装ってるんだろう? 僕らを油断させるため?
その上には、他にもモンスターがいるようだ。
——————
【海賊烏賊】
水属性モンスター。触腕を伸ばして船を絡めとる。奪った船に擬態できる。
【海賊蛸】
水属性モンスター。八本の腕で敵を絡めとり、締め上げる。物理攻撃への耐性が高い。
【海賊蟹】
水属性モンスター。強靭なハサミで敵を挟み攻撃する。硬い殻に包まれ、防御力が高い。
——————
こんな感じで、水属性のモンスターがいっぱい。基本的に、陸地で行動できるタイプの海の生き物がモデルのモンスターばかりかな。
〈海賊たちが海を泳ぎ、この船に乗り込んで来ようとしています。ボス海賊烏賊と船の距離が0になると、船に損傷が生じます。船の損傷がひどい場合、航海失敗となります〉
ヤダー!
あのイカ、超怖いじゃん。航海失敗は避けなきゃ。
〈海賊烏賊最接近まで十分です〉
タイムアタック的なイベントが始まった。
まずは全員に効くスキルを使おう。
「【天からの祝福】【天の祈り】!」
全員の体力・魔力の継続回復です。
続けて、歌唱スキルを使って、意気高揚と回復効果アップの歌を歌う。
海賊への対処のため、甲板に集まっていた騎士さんたちから、『なんで急に歌い始めた?』と言いたげな視線を向けられる。
ちゃんと効果があるんだよ。能天気じゃないんだよ。
ほら、騎士さんたちにも効果が出てるでしょ?
準備を整えたら、巨大イカを見据える。
とにかく、あのイカを止められるか試してみなくちゃ。
マチルダさんを含め、たくさんの騎士さんたちが遠距離攻撃を仕掛けているのを見ながら、僕はペタとオギンに指示を出した。
「ペタは水操作であのイカの動きを止められないか試してみて! それができなかったら、渦で攻撃!」
「くるる(がんばるよー)」
「オギンは吹雪で攻撃! 凍らせられたらいいんだけど」
「キュオ(できる限りやってみるわ)」
ペタとオギンが動き始める。
まずはペタの攻撃。
——水操作はイカを止める効果はなかったみたいだ。でも、ちょっと進行速度が緩んで、表示されていたタイムが延びた気がする。最接近されるまでの猶予ができたってこと。
続いてペタが繰り出した渦の攻撃も、タイムを延ばす効果があったらしい。さすがに渦でイカを沈めることはできなかったけど。
続いて、オギンの攻撃。
吹き出された吹雪で、ちょっと寒ーい。たくさんの騎士さんたちも「さっむ!?」と驚いてる。ご迷惑かけちゃってごめんね?
「さすがに海面を凍らせるのは無理かー」
イカの動きが遅くなった。寒さには弱いのかも。
「ユキマル、謎光線!」
「ぴぅ!」
ユキマルから放たれた光が、イカを捉える。
鑑定したら、睡眠の状態異常になってた。状態異常回復までのカウントダウンは五分。また猶予ができたね。
「ユキマル最高! 騎士さんたちを回復してあげてー」
「ぴぅ!」
海を泳いできた海賊たちからは、弾丸のような水が飛んできていて、避けられなかった騎士さんたちがダメージを負ってる。
だから、ユキマルにはその対応を頼んだ。
僕は風魔術で攻撃しよう。
「新しい魔術を使うぞー。【風の刃】!」
レベル3の魔術の効果はいかに? ……イカと掛けたギャグじゃないからね!
「おお! 結構効果あるね」
イカ全体を攻撃することはできなかったけど、その上に乗ってるモンスターたちを含めて、満遍なくダメージを与えられた。
弱点の属性だったこともあって、倒せたモンスターもいる。騎士さんたちの攻撃で、ダメージが蓄積されてたからっていうのも理由だろう。
「この調子でがんばるぞー!」
「きゅぃ(僕は? 流星使ってもいい?)」
「え」
スラリンに期待に満ちた目を向けられた。
流星かぁ、とちょっと考える。
雪山で使った時、雪崩が起きそうになったんだけど、海で使ったら高い波が起きて船に影響が出ちゃわないかな?
でも、そうなっても、フラグ折りスキルで対処できそうだし——
「スラリン、流星使ってみて」
「きゅぃ!」
スラリンが嬉しそうに跳ねた。活躍できるいい機会だもんね。
僕はすぐにフォローできるように、フラグ可視化スキルをオンにする。
……すでに、スラリンの頭上にフラグが見える気がするぞ?
飛翔で飛んで、コソッと足蹴スキルを使って折った。パキッとな。
「きゅぴっ(【流星】!)」
青空に白い光が走る。
次の瞬間には、ドンドンドンッと衝突音が聞こえてきた。
海に高い水飛沫が上がる。
この船への波の影響はあんまりなさそう。フラグ折り成功!
騎士さんたちが動揺してる声を聞きながら、海賊モンスターたちの方に目を凝らす。
一撃でいけたかな?
黒い点だったものが、徐々に船の形に見えてきた。あれが海賊船かな?
今さらだけど、これって初めて人型の敵と戦うことになる? 第三の街のレイドイベントでは、犯人が人だったけど、捕まえただけだったもんなぁ。
「っ、協力してくださるのでしたら、これをお使いください!」
マチルダさんがキリッとした顔でゴーグルのようなものを六個差し出してきた。これ、スラリンたちの分もあるね。
「なぁに、これ」
「【海賊ゴーグル】です。これを使わないと、きちんとした姿を視認できないので」
「んん? 海賊、普通じゃ見えないの? どうして?」
「そういうモンスターなので」
モンスターなんかい。
つまり、相手は人型じゃないってことだね。ちょっとホッとした。
ゴーグルを受け取って装着。
スラリンたちも着けてるけど、なんか不思議な感じ。
そうこうしてる間にも、海賊船は近づいてきていた。
でも、なんかおかしいような?
「船が、船じゃない……」
海賊ゴーグルを使って見ると、海賊船は巨大なイカのようなモンスターが擬態してできていた。
なんでわざわざ船を装ってるんだろう? 僕らを油断させるため?
その上には、他にもモンスターがいるようだ。
——————
【海賊烏賊】
水属性モンスター。触腕を伸ばして船を絡めとる。奪った船に擬態できる。
【海賊蛸】
水属性モンスター。八本の腕で敵を絡めとり、締め上げる。物理攻撃への耐性が高い。
【海賊蟹】
水属性モンスター。強靭なハサミで敵を挟み攻撃する。硬い殻に包まれ、防御力が高い。
——————
こんな感じで、水属性のモンスターがいっぱい。基本的に、陸地で行動できるタイプの海の生き物がモデルのモンスターばかりかな。
〈海賊たちが海を泳ぎ、この船に乗り込んで来ようとしています。ボス海賊烏賊と船の距離が0になると、船に損傷が生じます。船の損傷がひどい場合、航海失敗となります〉
ヤダー!
あのイカ、超怖いじゃん。航海失敗は避けなきゃ。
〈海賊烏賊最接近まで十分です〉
タイムアタック的なイベントが始まった。
まずは全員に効くスキルを使おう。
「【天からの祝福】【天の祈り】!」
全員の体力・魔力の継続回復です。
続けて、歌唱スキルを使って、意気高揚と回復効果アップの歌を歌う。
海賊への対処のため、甲板に集まっていた騎士さんたちから、『なんで急に歌い始めた?』と言いたげな視線を向けられる。
ちゃんと効果があるんだよ。能天気じゃないんだよ。
ほら、騎士さんたちにも効果が出てるでしょ?
準備を整えたら、巨大イカを見据える。
とにかく、あのイカを止められるか試してみなくちゃ。
マチルダさんを含め、たくさんの騎士さんたちが遠距離攻撃を仕掛けているのを見ながら、僕はペタとオギンに指示を出した。
「ペタは水操作であのイカの動きを止められないか試してみて! それができなかったら、渦で攻撃!」
「くるる(がんばるよー)」
「オギンは吹雪で攻撃! 凍らせられたらいいんだけど」
「キュオ(できる限りやってみるわ)」
ペタとオギンが動き始める。
まずはペタの攻撃。
——水操作はイカを止める効果はなかったみたいだ。でも、ちょっと進行速度が緩んで、表示されていたタイムが延びた気がする。最接近されるまでの猶予ができたってこと。
続いてペタが繰り出した渦の攻撃も、タイムを延ばす効果があったらしい。さすがに渦でイカを沈めることはできなかったけど。
続いて、オギンの攻撃。
吹き出された吹雪で、ちょっと寒ーい。たくさんの騎士さんたちも「さっむ!?」と驚いてる。ご迷惑かけちゃってごめんね?
「さすがに海面を凍らせるのは無理かー」
イカの動きが遅くなった。寒さには弱いのかも。
「ユキマル、謎光線!」
「ぴぅ!」
ユキマルから放たれた光が、イカを捉える。
鑑定したら、睡眠の状態異常になってた。状態異常回復までのカウントダウンは五分。また猶予ができたね。
「ユキマル最高! 騎士さんたちを回復してあげてー」
「ぴぅ!」
海を泳いできた海賊たちからは、弾丸のような水が飛んできていて、避けられなかった騎士さんたちがダメージを負ってる。
だから、ユキマルにはその対応を頼んだ。
僕は風魔術で攻撃しよう。
「新しい魔術を使うぞー。【風の刃】!」
レベル3の魔術の効果はいかに? ……イカと掛けたギャグじゃないからね!
「おお! 結構効果あるね」
イカ全体を攻撃することはできなかったけど、その上に乗ってるモンスターたちを含めて、満遍なくダメージを与えられた。
弱点の属性だったこともあって、倒せたモンスターもいる。騎士さんたちの攻撃で、ダメージが蓄積されてたからっていうのも理由だろう。
「この調子でがんばるぞー!」
「きゅぃ(僕は? 流星使ってもいい?)」
「え」
スラリンに期待に満ちた目を向けられた。
流星かぁ、とちょっと考える。
雪山で使った時、雪崩が起きそうになったんだけど、海で使ったら高い波が起きて船に影響が出ちゃわないかな?
でも、そうなっても、フラグ折りスキルで対処できそうだし——
「スラリン、流星使ってみて」
「きゅぃ!」
スラリンが嬉しそうに跳ねた。活躍できるいい機会だもんね。
僕はすぐにフォローできるように、フラグ可視化スキルをオンにする。
……すでに、スラリンの頭上にフラグが見える気がするぞ?
飛翔で飛んで、コソッと足蹴スキルを使って折った。パキッとな。
「きゅぴっ(【流星】!)」
青空に白い光が走る。
次の瞬間には、ドンドンドンッと衝突音が聞こえてきた。
海に高い水飛沫が上がる。
この船への波の影響はあんまりなさそう。フラグ折り成功!
騎士さんたちが動揺してる声を聞きながら、海賊モンスターたちの方に目を凝らす。
一撃でいけたかな?
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