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9章 もふうさフィーバー
346.仲良くなれたね
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お菓子を食べ尽くした頃になると、だいぶ天兎と仲良くなった気がする。ちょっぴり意思疎通ができるようになったし。
ただ、僕の歌への感想は『ふふっ、可愛かったよ』だったから、音痴疑惑が消えなかった。
タマモたちには音痴なんて言われたことないから、感性の問題かな。それとも天兎語が拙かったせい? 鳴き声の意味なんて、僕はわからないもんねー。
そんなことを悩みつつも、仲良くなれたことが嬉しくてずっとニコニコしちゃう。
もう少し一緒に過ごしたくて、仙桃ミルク以外のお菓子も出してみようかなー、と考えていると、薄黄色の天兎が近づいてきた。
『モモー。さっきはお祝いに参加してたよね?』
「え、うん。君もいたの?」
『いたよー。モモ、あんまり踊ってなかった』
「そうだね。どんな踊りをするのかとか、よく知らなかったから様子見してたんだよ。あのお祝いって、誰でも参加できるものなの?」
花月の祝いイベントに関する情報を全然入手してなかったな、と思い出して尋ねてみた。きっとタマモたちも参加したがるから、次回のイベントに参加できるように教えてあげたい。
『参加証があれば大丈夫だよ』
「あ、参加証って光花のことだよね。僕はモアにもらえたけど、普通はどこで入手するの?」
確か、光花の説明に、勝手に採集したら天兎に怒られる、みたいなことが書いてあった気がする。
たぶん天兎が保護してるものだと思うんだけど、どこにあるんだろう?
僕が首を傾げると、薄黄色の天兎は近くにいた天兎たちとコソコソと話し合っていた。
『……ボクたちが育ててるお花だよ。こっち』
天兎たちがぴょんと跳ねて、空に浮かび上がった。案内してくれるらしい。
僕も飛んで、スラリンたちは地上を進み、天兎の後を追った。
滝がある岩場の上までやってくる。ここはまさしく霊峰の頂上で、雪が積もった岩場しかなかった。
……仙桃ミルク、どこから発生してるんだろう? 岩の中から湧いて滝になっているようにしか見えない。
『ここだよ』
「え、なんもないよ?」
きょろきょろと周囲を見渡しても光花らしきものは何も見つからない。一体どこにあるの?
「きゅぃ(もしかして……?)」
オギンに乗って到着したスラリンが、ぴょんと雪の上におりた。そして、すぐさま雪を吸収し始める。
雪がなくなった岩場に、薄緑色の葉っぱが見えた。まるで苔みたいに岩に張り付いてる。
——————
【光花の葉】レア度☆☆☆☆☆
葉っぱ。現時点で使用用途はない
採集すると天兎に襲われる
——————
おお! 雪の下にあったのか。
光花は一ヶ月に一度花が咲くらしいし、使用するイベントがあったばかりだから、まだ採集可能な時期が来てないんだろうな。
『花が咲く日には、山の上に太陽が落ちてくるよ』
『夜の間だけ採集できるんだ』
『盗もうとしたら退治しちゃうよ』
天兎たちが口々に教えてくれた。
霊峰の夜に採集かー。この辺りまで昼の間に来て、転移ピンを用意してないと難しいかもね。
天兎と敵対するのが無謀だから、盗む人なんていないと思う。
だって、体当たりだけで僕の体力を三分の一も削ったんだよ? 本物の天兎、強すぎだよ!
僕もそれくらい強くなれるのかなー。
「どうやったら光花をもらえるの?」
『欲しいの? モモなら、たくさんあげるよ』
『たくさんお菓子もらったから』
『仙桃ミルクのお菓子、美味しかったー』
天兎たちがぴょんぴょんと跳ねながら、嬉しいことを言ってくれた。そんなに喜んでもらえてよかったよ。
「僕以外の人も、仙桃ミルクをみんなにあげたら、光花をもらえるかな?」
『えー……うーん、美味しいお菓子をくれるなら考えるよ』
『仙桃ミルクを使ったお菓子にしてね』
『ちゃんと自分で作ってよ』
『たっぷり気持ちを込めないとダメ』
『許可をあげるから自分で採集してね』
『採集できるのは一人一つだけだよ』
天兎たちはプレイヤーが思いを込めて自作したお菓子を捧げられたら、光花を採集する権利をくれるらしい。
『たくさん呼ばれたら疲れちゃうから、頻繁に来るのはイヤだよ』
「……わかったー」
天兎に注意されて、これはちゃんともふもふ教のみんなに伝えないとダメだな、と気づいた。
可愛い天兎目当てにもふもふ教が押しかけたら、天兎に嫌われちゃう!
『んー……もう眠くなっちゃった。ボク帰るー』
『ボクもー』
『ワタシもー』
天兎たちが目をこすり、くあっとあくびをした。
そろそろ日が落ちそう。夜が来る時間だ。天兎は普段昼行性なのかな。
「そっかぁ……残念だけど、今日はもうお別れだね」
『モモ、また来てね』
『美味しいお菓子待ってるよ』
天兎たちとお別れの言葉を言い合う。なんか、僕というより、お菓子を心待ちにされてる気がするのは気のせい?
ちょっぴり微妙な気分になったけど、最初に会った薄紫色の天兎がぎゅっと抱きついてきて『また遊ぼうねー』と言ってくれたから、すぐにテンションが回復した。
次は一緒に空を飛んだり、探検したりして遊びたいな。
「またねー」
『ばいばーい』
天兎たちが次々に穴に飛び込んでいく。やっぱりそこが天兎の住処に通じてる場所らしい。移動できる原理はわからないけど。
一体残らず姿が消えると、寂しさが押し寄せてくる。
共に旅できる友だちになれたら嬉しかったけど、天兎たちはそういう感じじゃなかったなぁ。もうちょっと交流を続けたら、いつかテイムして一緒に旅できるかも?
地道に交流をしていかないとね。こうして一緒に過ごすのも楽しかったから、これからもお菓子を持って来ようっと。
ただ、僕の歌への感想は『ふふっ、可愛かったよ』だったから、音痴疑惑が消えなかった。
タマモたちには音痴なんて言われたことないから、感性の問題かな。それとも天兎語が拙かったせい? 鳴き声の意味なんて、僕はわからないもんねー。
そんなことを悩みつつも、仲良くなれたことが嬉しくてずっとニコニコしちゃう。
もう少し一緒に過ごしたくて、仙桃ミルク以外のお菓子も出してみようかなー、と考えていると、薄黄色の天兎が近づいてきた。
『モモー。さっきはお祝いに参加してたよね?』
「え、うん。君もいたの?」
『いたよー。モモ、あんまり踊ってなかった』
「そうだね。どんな踊りをするのかとか、よく知らなかったから様子見してたんだよ。あのお祝いって、誰でも参加できるものなの?」
花月の祝いイベントに関する情報を全然入手してなかったな、と思い出して尋ねてみた。きっとタマモたちも参加したがるから、次回のイベントに参加できるように教えてあげたい。
『参加証があれば大丈夫だよ』
「あ、参加証って光花のことだよね。僕はモアにもらえたけど、普通はどこで入手するの?」
確か、光花の説明に、勝手に採集したら天兎に怒られる、みたいなことが書いてあった気がする。
たぶん天兎が保護してるものだと思うんだけど、どこにあるんだろう?
僕が首を傾げると、薄黄色の天兎は近くにいた天兎たちとコソコソと話し合っていた。
『……ボクたちが育ててるお花だよ。こっち』
天兎たちがぴょんと跳ねて、空に浮かび上がった。案内してくれるらしい。
僕も飛んで、スラリンたちは地上を進み、天兎の後を追った。
滝がある岩場の上までやってくる。ここはまさしく霊峰の頂上で、雪が積もった岩場しかなかった。
……仙桃ミルク、どこから発生してるんだろう? 岩の中から湧いて滝になっているようにしか見えない。
『ここだよ』
「え、なんもないよ?」
きょろきょろと周囲を見渡しても光花らしきものは何も見つからない。一体どこにあるの?
「きゅぃ(もしかして……?)」
オギンに乗って到着したスラリンが、ぴょんと雪の上におりた。そして、すぐさま雪を吸収し始める。
雪がなくなった岩場に、薄緑色の葉っぱが見えた。まるで苔みたいに岩に張り付いてる。
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【光花の葉】レア度☆☆☆☆☆
葉っぱ。現時点で使用用途はない
採集すると天兎に襲われる
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おお! 雪の下にあったのか。
光花は一ヶ月に一度花が咲くらしいし、使用するイベントがあったばかりだから、まだ採集可能な時期が来てないんだろうな。
『花が咲く日には、山の上に太陽が落ちてくるよ』
『夜の間だけ採集できるんだ』
『盗もうとしたら退治しちゃうよ』
天兎たちが口々に教えてくれた。
霊峰の夜に採集かー。この辺りまで昼の間に来て、転移ピンを用意してないと難しいかもね。
天兎と敵対するのが無謀だから、盗む人なんていないと思う。
だって、体当たりだけで僕の体力を三分の一も削ったんだよ? 本物の天兎、強すぎだよ!
僕もそれくらい強くなれるのかなー。
「どうやったら光花をもらえるの?」
『欲しいの? モモなら、たくさんあげるよ』
『たくさんお菓子もらったから』
『仙桃ミルクのお菓子、美味しかったー』
天兎たちがぴょんぴょんと跳ねながら、嬉しいことを言ってくれた。そんなに喜んでもらえてよかったよ。
「僕以外の人も、仙桃ミルクをみんなにあげたら、光花をもらえるかな?」
『えー……うーん、美味しいお菓子をくれるなら考えるよ』
『仙桃ミルクを使ったお菓子にしてね』
『ちゃんと自分で作ってよ』
『たっぷり気持ちを込めないとダメ』
『許可をあげるから自分で採集してね』
『採集できるのは一人一つだけだよ』
天兎たちはプレイヤーが思いを込めて自作したお菓子を捧げられたら、光花を採集する権利をくれるらしい。
『たくさん呼ばれたら疲れちゃうから、頻繁に来るのはイヤだよ』
「……わかったー」
天兎に注意されて、これはちゃんともふもふ教のみんなに伝えないとダメだな、と気づいた。
可愛い天兎目当てにもふもふ教が押しかけたら、天兎に嫌われちゃう!
『んー……もう眠くなっちゃった。ボク帰るー』
『ボクもー』
『ワタシもー』
天兎たちが目をこすり、くあっとあくびをした。
そろそろ日が落ちそう。夜が来る時間だ。天兎は普段昼行性なのかな。
「そっかぁ……残念だけど、今日はもうお別れだね」
『モモ、また来てね』
『美味しいお菓子待ってるよ』
天兎たちとお別れの言葉を言い合う。なんか、僕というより、お菓子を心待ちにされてる気がするのは気のせい?
ちょっぴり微妙な気分になったけど、最初に会った薄紫色の天兎がぎゅっと抱きついてきて『また遊ぼうねー』と言ってくれたから、すぐにテンションが回復した。
次は一緒に空を飛んだり、探検したりして遊びたいな。
「またねー」
『ばいばーい』
天兎たちが次々に穴に飛び込んでいく。やっぱりそこが天兎の住処に通じてる場所らしい。移動できる原理はわからないけど。
一体残らず姿が消えると、寂しさが押し寄せてくる。
共に旅できる友だちになれたら嬉しかったけど、天兎たちはそういう感じじゃなかったなぁ。もうちょっと交流を続けたら、いつかテイムして一緒に旅できるかも?
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