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4-3.再会のとき
171.会うまでもう少し
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最後の宝箱からインク落としが出てきた時が、ドロンとリーエンが一番喜んでいた瞬間な気がする。
装備の返却よりも、そっちの方が重要なのか?
……まあ、勇者の仲間としての体面を保つためには大切か。
ちなみに、歩夢は失ったバブルスーツを再度入手できたことを喜び、それ以上に魔女コスプレと武器:ほうきをそのまま持ち帰れることに大歓喜していた。
バブルスーツより魔女コスプレの方がいいの? 親友として、俺はすげぇ微妙な気分だぞ。
[……そんなに嬉しいなら、こっちもやるよ]
手元に残っていた魔法少女コスプレを、ドロンが歩夢に投げ渡す。
体格的に着れなくもないだろうけど、それを[え、いいの?]と嬉しそうに受け取る歩夢は絶対おかしい。
着るのか。マジで着るつもりなのか……。
[人目があるところでは着ないでね。みんなが抱いてる理想が崩壊するわ]
リーエンが遠い目をしながら釘を刺した。
確かリーエンは歩夢に思いを寄せていたはずだけど、今でもその気持ちに変わりないのかな。リーエンにちょっと聞いてみたい。
コイツ最近はっちゃけすぎだけど、幻滅してないか?
[わかってるよ。さすがに神殿の連中に見られたら怒られそうだからね]
[問題はそれだけじゃないんだよなぁ……]
ニコニコと微笑む歩夢に、ドロンとリーエンが疲れた表情でため息をついた。
まあ、それについては俺も歩夢に会った時に念押ししよう。
歩夢が変な格好──制限トラップから出た装備だけど──をして、このダンジョンの評判が歪んだら最悪だからな!
……え、すでに変な評判は立ってるって?
うん、現実って残酷だよな……。
──なんて考えて俺が黄昏れている間に、インクを落として身綺麗にした二人と歩夢は、施設の外に出てダンジョン攻略を再開していた。
いよいよ4階の屋敷、俺との会談場所に向かうようだ。
なんだかんだで、俺が歩夢と再会する日は明日に迫っている。
一度ダンジョン外に戻っちゃったら、歩夢たちがまたここに来るまで時間がかかるし、三人はダンジョン内で一夜を過ごす予定らしい。
[会談場所は屋敷の一室なのよね?]
[手紙にはそう書いてあったよ]
[それならそこで一夜過ごせばよさそうだな]
三人は話しながら4階の魔物たちをサクサクと倒して進む。
序盤の方にはあまり強い魔物を配置していないとはいえ、やっぱり三人とも強いよなぁ。制限トラップのようなクセのある仕掛けをしないと、足を止めさせるのは難しそうだ。
『うぅ、僕だったらきっと死に戻りさせられるのにぃ……』
リルが消えていく魔物を見て悔しそうに呟く。
これは魔物のことを考えて、というより、リルが単純に強者と戦ってみたいという思いが溢れただけだろう。
「いや、俺が会いたいって誘ってるんだから、死に戻りさせるなよ」
俺は苦笑しながらリルを撫でて宥めた。
それだけで『マスターがそう言うなら我慢するー』とすぐに納得してくれるんだから、リルはやっぱり可愛い!
『やしきのみんなはじゅんびオッケー?』
『ボクたちもいく~?』
『でも、すがたをみられないで、しにもどりもさせずにたいおうするなら、いまやしきにいるこだけでってきめたじゃん~』
『ボクたちはもうゆうしゃとたたかったしね~』
影兎たちが集ってコソコソと話してる。
4階の屋敷は影兎たちの本拠地だから、何かしら仕掛けるだろうとは俺も予想していた。
ちゃんと死に戻りはさせないよう配慮するみたいだから、好きにしたらいいよ。
きっと歩夢は何かしら仕掛けられた方が喜ぶ。ドロンとリーエンの反応はわからないけど。
「歩夢と会ったら、どんな話をしようかな……」
ふと、今更なことを考えてしまった。
これまで歩夢と会いたいという思いが先行し、そして歩夢のためにダンジョンに仕掛けを作らなきゃいけないと忙しくしていたから、本題がすっかり頭から抜け落ちていたのだ。
「──まあ、普通に思い出話をするだけでいいんだけど」
ポツリと呟いて微笑む。
きっと、それだけで俺たちは笑い合える。
お互いのこれまでのことを話して情報交換するのは大切だし、もちろんするつもりだけど、俺たちに今一番必要なのは、共に過ごした日本という国でのことを語り合い、懐かしむことだ。
故郷から遠く離れた俺たちだけが共有できる思いが、俺たちの心を軽くしてくれるはず。
その後、神(邪神?)にどう仕返しをするかを協議するかもしれないけど。
せめて一発は入れたいよな。勇者とダンジョンマスターの力を合わせたらいけるんじゃね?
『あ、屋敷を発見したみたいだねー』
リルが声を上げる。
モニターには、屋敷の入口の前に立ち、観察をしている三人の姿が映っていた。
『リーエンの精霊の力があるから、あっさりと辿り着いたにゃー』
ミーシャが目を細めて呟く。
さっきまでのリーエンは散々な感じだったけど、こういう場面では精霊使いって凄い能力を発揮するよな。
「リルが設置してくれた迷いのトラップには見事に引っ掛かってくれてるみたいだけどな」
『えっへん! 僕、いい仕事したねー』
俺が褒めると、リルが胸を張って誇らしげに言った。
4階は中盤以降に迷いのトラップが仕掛けられていて、意識を逸らされているから、自然と奥の方には進めないようになっているのだ。
リーエンの精霊も、しっかりと惑わされてくれたようで、ちょっと嬉しい。
「ありがとなー。この感じだと、4階が踏破されることは、そうそうなさそうだ」
勇者である歩夢も、この階層の奥へ進む素振りはないし、きっと攻略できる者は滅多に現れないはずだ。
迷いのトラップ最高! さすが設置する際に、えげつない量のDPを消費しただけあるな。
装備の返却よりも、そっちの方が重要なのか?
……まあ、勇者の仲間としての体面を保つためには大切か。
ちなみに、歩夢は失ったバブルスーツを再度入手できたことを喜び、それ以上に魔女コスプレと武器:ほうきをそのまま持ち帰れることに大歓喜していた。
バブルスーツより魔女コスプレの方がいいの? 親友として、俺はすげぇ微妙な気分だぞ。
[……そんなに嬉しいなら、こっちもやるよ]
手元に残っていた魔法少女コスプレを、ドロンが歩夢に投げ渡す。
体格的に着れなくもないだろうけど、それを[え、いいの?]と嬉しそうに受け取る歩夢は絶対おかしい。
着るのか。マジで着るつもりなのか……。
[人目があるところでは着ないでね。みんなが抱いてる理想が崩壊するわ]
リーエンが遠い目をしながら釘を刺した。
確かリーエンは歩夢に思いを寄せていたはずだけど、今でもその気持ちに変わりないのかな。リーエンにちょっと聞いてみたい。
コイツ最近はっちゃけすぎだけど、幻滅してないか?
[わかってるよ。さすがに神殿の連中に見られたら怒られそうだからね]
[問題はそれだけじゃないんだよなぁ……]
ニコニコと微笑む歩夢に、ドロンとリーエンが疲れた表情でため息をついた。
まあ、それについては俺も歩夢に会った時に念押ししよう。
歩夢が変な格好──制限トラップから出た装備だけど──をして、このダンジョンの評判が歪んだら最悪だからな!
……え、すでに変な評判は立ってるって?
うん、現実って残酷だよな……。
──なんて考えて俺が黄昏れている間に、インクを落として身綺麗にした二人と歩夢は、施設の外に出てダンジョン攻略を再開していた。
いよいよ4階の屋敷、俺との会談場所に向かうようだ。
なんだかんだで、俺が歩夢と再会する日は明日に迫っている。
一度ダンジョン外に戻っちゃったら、歩夢たちがまたここに来るまで時間がかかるし、三人はダンジョン内で一夜を過ごす予定らしい。
[会談場所は屋敷の一室なのよね?]
[手紙にはそう書いてあったよ]
[それならそこで一夜過ごせばよさそうだな]
三人は話しながら4階の魔物たちをサクサクと倒して進む。
序盤の方にはあまり強い魔物を配置していないとはいえ、やっぱり三人とも強いよなぁ。制限トラップのようなクセのある仕掛けをしないと、足を止めさせるのは難しそうだ。
『うぅ、僕だったらきっと死に戻りさせられるのにぃ……』
リルが消えていく魔物を見て悔しそうに呟く。
これは魔物のことを考えて、というより、リルが単純に強者と戦ってみたいという思いが溢れただけだろう。
「いや、俺が会いたいって誘ってるんだから、死に戻りさせるなよ」
俺は苦笑しながらリルを撫でて宥めた。
それだけで『マスターがそう言うなら我慢するー』とすぐに納得してくれるんだから、リルはやっぱり可愛い!
『やしきのみんなはじゅんびオッケー?』
『ボクたちもいく~?』
『でも、すがたをみられないで、しにもどりもさせずにたいおうするなら、いまやしきにいるこだけでってきめたじゃん~』
『ボクたちはもうゆうしゃとたたかったしね~』
影兎たちが集ってコソコソと話してる。
4階の屋敷は影兎たちの本拠地だから、何かしら仕掛けるだろうとは俺も予想していた。
ちゃんと死に戻りはさせないよう配慮するみたいだから、好きにしたらいいよ。
きっと歩夢は何かしら仕掛けられた方が喜ぶ。ドロンとリーエンの反応はわからないけど。
「歩夢と会ったら、どんな話をしようかな……」
ふと、今更なことを考えてしまった。
これまで歩夢と会いたいという思いが先行し、そして歩夢のためにダンジョンに仕掛けを作らなきゃいけないと忙しくしていたから、本題がすっかり頭から抜け落ちていたのだ。
「──まあ、普通に思い出話をするだけでいいんだけど」
ポツリと呟いて微笑む。
きっと、それだけで俺たちは笑い合える。
お互いのこれまでのことを話して情報交換するのは大切だし、もちろんするつもりだけど、俺たちに今一番必要なのは、共に過ごした日本という国でのことを語り合い、懐かしむことだ。
故郷から遠く離れた俺たちだけが共有できる思いが、俺たちの心を軽くしてくれるはず。
その後、神(邪神?)にどう仕返しをするかを協議するかもしれないけど。
せめて一発は入れたいよな。勇者とダンジョンマスターの力を合わせたらいけるんじゃね?
『あ、屋敷を発見したみたいだねー』
リルが声を上げる。
モニターには、屋敷の入口の前に立ち、観察をしている三人の姿が映っていた。
『リーエンの精霊の力があるから、あっさりと辿り着いたにゃー』
ミーシャが目を細めて呟く。
さっきまでのリーエンは散々な感じだったけど、こういう場面では精霊使いって凄い能力を発揮するよな。
「リルが設置してくれた迷いのトラップには見事に引っ掛かってくれてるみたいだけどな」
『えっへん! 僕、いい仕事したねー』
俺が褒めると、リルが胸を張って誇らしげに言った。
4階は中盤以降に迷いのトラップが仕掛けられていて、意識を逸らされているから、自然と奥の方には進めないようになっているのだ。
リーエンの精霊も、しっかりと惑わされてくれたようで、ちょっと嬉しい。
「ありがとなー。この感じだと、4階が踏破されることは、そうそうなさそうだ」
勇者である歩夢も、この階層の奥へ進む素振りはないし、きっと攻略できる者は滅多に現れないはずだ。
迷いのトラップ最高! さすが設置する際に、えげつない量のDPを消費しただけあるな。
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