ダンジョンマスターはフェンリルくんとのスローライフをご希望です

ゆるり

文字の大きさ
14 / 235
1-1.もふもふダンジョンの作り方〈公開前1日目〉

14.卵をどうするって?

しおりを挟む
 なんだか呆れた感じでリルが五階層リルの草原に戻っていった。早速ハニトラ(?)階層を作るんだって。

 なぜリルがハニトラにそれほどまでにこだわるのか、理解できない。リュウセイの記憶の中に、ハニトラの恐怖が刻み込まれるような経験はないはずだけど。

「まぁ、どう考えても、もふもふの楽園になる気しかしない……」

 俺にとってはその方がいい。ただ、もふもふの楽園にお色気お姉さんがマリアージュして、どんな空間が完成するのか楽しみなようなちょっと怖いような。
 リルのことだから、とても愉快な感じにしてくれるよな? というか、そうしてほしい。

「んー、俺は作業の続きを――って、アリー?」
『ただいま帰りましたわ』

 ふふ、と微笑みながらアリーがドレスの裾を軽くつまんで挨拶をした。良家のご令嬢感がすごい。思わず感心してしまう。

「おかえり。魔物は持って来たのか?」

 外部からの魔物侵入アラートはもう切ってある。
 一階層を映すモニターに視線を向けると、スライムが密集しているのが見えた。その周囲にゴブリンやオークたちもいる。
 これ、何が起きたんだ?

『一階層に置いてきたわ。弱らせているから、スライムやゴブリンたちでも倒せるでしょう。彼らの経験値とDPになって良いと思うの』

 つまり、アリーは魔物を運び入れて、倒す役目はスライムたちに譲ったということか。

 確かに多少レベルが高い魔物でも、弱らせてある上に、これだけの数で立ち向かえば倒せそうだ。最初にダンジョン挑戦者に立ち向かう立場の彼らが強くなるのは、俺にとって歓迎すべき状況だ。

「そっか。ありがとな」

 保有DP数が僅かに増加したのを確認して微笑んだ。土龍アースドラゴンほどじゃなくても、それなりにDPを稼げたのは嬉しい。

『どういたしまして。周辺地図も作成したのよ』

 アリーが俺のタブレットに触れると、パッと地図が表示される。
 ダンジョン出入り口を中心として、半径一キロほどを偵察してきたようだ。地形の高低差や障害物、魔物の種類とその分布まで記されている。

「うわ、アリーが優秀すぎてびっくり」
『褒め言葉と受け取っておくわね。それより、偵察して気になることがあったのだけれど』
古竜エンシェントドラゴンの卵のことか?」
『あら、見ていたのね。そうなの。あの卵、マスターはどうするつもりかしら?』

 キラキラと輝くような目を向けられた。アリーは古竜エンシェントドラゴンの卵に興味津々のようだ。持ち帰ろうとしてたもんな。

「どうするって……どうしようもなくないか?」
『ここに持ち帰れたら、すごいDPになりそうよ? 孵すことができたら、仲間にもなるかもしれないわよ?』
「仲間?」

 DPはともかく、仲間とは不思議なことを言うものだ――と思いながら、ダンジョンマスターとしての知識を探ったら、〈外部から持ち帰った魔物の卵をダンジョン内で孵すと、ダンジョンの魔物にできる〉という情報を見つけ出した。

 そんなん、ありかよ……?

 外部で魔物の卵を見つける機会なんてほぼない、と言っていいくらいのレアなことらしい。俺は初日に古竜エンシェントドラゴンの卵という伝説級のものに出会ったけど。

『あの卵、もうすぐ生まれると思うの』
「マジで?」

 アリーの言葉に目を見開く。
 もしその予想が正しいなら、早急に対処が必要だ。卵を味方にできればいいけど、敵になってしまったらこのダンジョンは敵わないはず。その場合、ダンジョンの仮出入り口を移動させるべきだろう。

「――うーん……卵をダンジョンに、なぁ。それより、次の場所を探した方がいい気もするけど……」
神狼フェンリルなら、ここに卵を持ち帰れないかしら?』
「たとえ運べたとしても、ダンジョンの出入り口に入らない気が――いや、土龍アースドラゴンはダンジョンが勝手に出入り口を広げて入れてくれたんだったな」

 原理は判明してないけど、似た状況になれば、また柔軟に対応してくれる気がする。このダンジョンって、なんか生き物みたいだよなぁ。

『次の場所探しと並行して、卵捕獲作戦を実行しましょ』
「随分と気に入ってるんだな、あの卵」
『あれがあると、良いことが起きる気がするの』

 ふふ、とミステリアスな笑みを浮かべるアリーに、ちょっと頬が引き攣った。
 アリーが言う良いことって、俺にとってもだよな? そうだと言ってくれ。

「……そんなに言うなら、リルに頼んでみるよ」
『ええ! 楽しみだわ』
「ん。すごい情報を持ち帰ってくれたから、ご褒美用意しようか」
『美味しいご飯ね』

 嬉しそうに顔を綻ばせるアリーに肩をすくめ、タブレットを操作する。何を食べさせようか。

 リルは犬っぽい見た目だったから自然と肉料理を選んだけど、アリーはもっと上品な料理が似合う気がする。
 でも、俺はそんな料理を作れない。やはり、完成品を出した方がいいか? 

「何を食べたいとか、希望はある?」
『卵かしらね』
「……え、卵?」

 一応、と尋ねてみたら、思いがけない返答だった。アリーはにこにこと微笑んでいる。
 まさか、さっきまで話していた古竜エンシェントドラゴンの卵から連想したんじゃないよな?

「――古竜エンシェントドラゴンの卵は出せないぞ?」
『わかっているわ。ただ、卵というのがどういう味なのか知りたいの』
「いつか古竜エンシェントドラゴンの卵を食う気に思えるのは、俺の気のせいだよな?」
『うふ』
「笑って誤魔化してるー!」

 怖。アリーもリルのようにとんでもないことを何気なくしでかすタイプか?
 しでかすことが楽しく思えることならいいけどさ。古竜エンシェントドラゴンの卵を食べるのは、なんか嫌な予感がするから絶対に阻止しよう。

「――あー……始鳥アーケオバードの卵ならあるな」

 確か元世界では、最も古い鳥類である始祖鳥は恐竜に近いと言われてたはず。始鳥アーケオバードも字面が似てるし、竜に近いかも?
 古竜エンシェントドラゴンの卵は出せないから、これで満足してくれたらいいな。

『では、それをいただくわ』
「この卵を使った完成品はないから、俺が作るしかないけど、いいか?」
『もちろんよ。マスターの手作りほど嬉しいものはないわ』

 絶対、DPで完成品を出す方が美味しいと思う。けど、高DPの素材を使えば、普通の料理の腕前の俺でも、美味しくできるかも? ステーキはとんでもなく美味かったもんなぁ。

「よっしゃ。それなら、いっちょ美味いもん作るか! ――卵焼きでいい?」

 おしゃれな卵料理なんて作り方知らないんだよ。炒り卵にしなかっただけ、褒められていいはず!
しおりを挟む
感想 105

あなたにおすすめの小説

精霊に愛された錬金術師、チートすぎてもはや無敵!?

あーもんど
ファンタジー
精霊の愛し子で、帝国唯一の錬金術師である公爵令嬢プリシラ。 彼女は今日もマイペースに、精霊達と楽しくモノ作りに励む。 ときどき、悪人を断罪したり人々を救ったりしながら。 ◆小説家になろう様にて、先行公開中◆ ◆三人称視点で本格的に書くのは初めてなので、温かい目で見守っていただけますと幸いです◆

転生幼子は生きのびたい

えぞぎんぎつね
ファンタジー
 大貴族の次男として生まれたノエルは、生後八か月で誘拐されて、凶悪な魔物が跋扈する死の山に捨てられてしまった。  だが、ノエルには前世の記憶がある。それに優れた魔法の才能も。  神獣の猫シルヴァに拾われたノエルは、親を亡くした赤ちゃんの聖獣犬と一緒に、神獣のお乳を飲んで大きくなる。  たくましく育ったノエルはでかい赤ちゃん犬と一緒に、元気に楽しく暮らしていくのだった。  一方、ノエルの生存を信じている両親はノエルを救出するために様々な手段を講じていくのだった。 ※ネオページ、カクヨムにも掲載しています

ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします

ランド犬
ファンタジー
 異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは ――〈ホームセンター〉 壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。 気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。 拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?

転生ちびっ子の魔物研究所〜ほのぼの家族に溢れんばかりの愛情を受けスローライフを送っていたら規格外の子どもに育っていました〜

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
高校生の涼太は交通事故で死んでしまったところを優しい神様達に助けられて、異世界に転生させて貰える事になった。 辺境伯家の末っ子のアクシアに転生した彼は色々な人に愛されながら、そこに住む色々な魔物や植物に興味を抱き、研究する気ままな生活を送る事になる。

【完結】スキルを作って習得!僕の趣味になりました

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》 どんなスキル持ちかによって、人生が決まる。生まれ持ったスキルは、12歳過ぎから鑑定で見えるようになる。ロマドは、4度目の15歳の歳の鑑定で、『スキル錬金』という優秀なスキルだと鑑定され……たと思ったが、錬金とつくが熟練度が上がらない!結局、使えないスキルとして一般スキル扱いとなってしまった。  どうやったら熟練度が上がるんだと思っていたところで、熟練度の上げ方を発見!  スキルの扱いを錬金にしてもらおうとするも却下された為、仕方なくあきらめた。だが、ふと「作成条件」という文字が目の前に見えて、その条件を達してみると、新しいスキルをゲットした!  天然ロマドと、タメで先輩のユイジュの突っ込みと、チェトの可愛さ(ロマドの主観)で織りなす、スキルと笑いのアドベンチャー。

聖女として召還されたのにフェンリルをテイムしたら追放されましたー腹いせに快適すぎる森に引きこもって我慢していた事色々好き放題してやります!

ふぃえま
ファンタジー
「勝手に呼び出して無茶振りしたくせに自分達に都合の悪い聖獣がでたら責任追及とか狡すぎません? せめて裏で良いから謝罪の一言くらいあるはずですよね?」 不況の中、なんとか内定をもぎ取った会社にやっと慣れたと思ったら異世界召還されて勝手に聖女にされました、佐藤です。いや、元佐藤か。 実は今日、なんか国を守る聖獣を召還せよって言われたからやったらフェンリルが出ました。 あんまりこういうの詳しくないけど確か超強いやつですよね? なのに周りの反応は正反対! なんかめっちゃ裏切り者とか怒鳴られてロープグルグル巻きにされました。 勝手にこっちに連れて来たりただでさえ難しい聖獣召喚にケチつけたり……なんかもうこの人たち助けなくてもバチ当たりませんよね?

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

才がないと伯爵家を追放された僕は、神様からのお詫びチートで、異世界のんびりスローライフ!!

にのまえ
ファンタジー
剣や魔法に才能がないカストール伯爵家の次男、ノエール・カストールは家族から追放され、辺境の別荘へ送られることになる。しかしノエールは追放を喜ぶ、それは彼に異世界の神様から、お詫びにとして貰ったチートスキルがあるから。 そう、ノエールは転生者だったのだ。 そのスキルを駆使して、彼の異世界のんびりスローライフが始まる。

処理中です...