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1-1.もふもふダンジョンの作り方〈公開前1日目〉
14.卵をどうするって?
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なんだか呆れた感じでリルが五階層に戻っていった。早速ハニトラ(?)階層を作るんだって。
なぜリルがハニトラにそれほどまでにこだわるのか、理解できない。俺の記憶の中に、ハニトラの恐怖が刻み込まれるような経験はないはずだけど。
「まぁ、どう考えても、もふもふの楽園になる気しかしない……」
俺にとってはその方がいい。ただ、もふもふの楽園にお色気お姉さんがマリアージュして、どんな空間が完成するのか楽しみなようなちょっと怖いような。
リルのことだから、とても愉快な感じにしてくれるよな? というか、そうしてほしい。
「んー、俺は作業の続きを――って、アリー?」
『ただいま帰りましたわ』
ふふ、と微笑みながらアリーがドレスの裾を軽くつまんで挨拶をした。良家のご令嬢感がすごい。思わず感心してしまう。
「おかえり。魔物は持って来たのか?」
外部からの魔物侵入アラートはもう切ってある。
一階層を映すモニターに視線を向けると、スライムが密集しているのが見えた。その周囲にゴブリンやオークたちもいる。
これ、何が起きたんだ?
『一階層に置いてきたわ。弱らせているから、スライムやゴブリンたちでも倒せるでしょう。彼らの経験値とDPになって良いと思うの』
つまり、アリーは魔物を運び入れて、倒す役目はスライムたちに譲ったということか。
確かに多少レベルが高い魔物でも、弱らせてある上に、これだけの数で立ち向かえば倒せそうだ。最初にダンジョン挑戦者に立ち向かう立場の彼らが強くなるのは、俺にとって歓迎すべき状況だ。
「そっか。ありがとな」
保有DP数が僅かに増加したのを確認して微笑んだ。土龍ほどじゃなくても、それなりにDPを稼げたのは嬉しい。
『どういたしまして。周辺地図も作成したのよ』
アリーが俺のタブレットに触れると、パッと地図が表示される。
ダンジョン出入り口を中心として、半径一キロほどを偵察してきたようだ。地形の高低差や障害物、魔物の種類とその分布まで記されている。
「うわ、アリーが優秀すぎてびっくり」
『褒め言葉と受け取っておくわね。それより、偵察して気になることがあったのだけれど』
「古竜の卵のことか?」
『あら、見ていたのね。そうなの。あの卵、マスターはどうするつもりかしら?』
キラキラと輝くような目を向けられた。アリーは古竜の卵に興味津々のようだ。持ち帰ろうとしてたもんな。
「どうするって……どうしようもなくないか?」
『ここに持ち帰れたら、すごいDPになりそうよ? 孵すことができたら、仲間にもなるかもしれないわよ?』
「仲間?」
DPはともかく、仲間とは不思議なことを言うものだ――と思いながら、ダンジョンマスターとしての知識を探ったら、〈外部から持ち帰った魔物の卵をダンジョン内で孵すと、ダンジョンの魔物にできる〉という情報を見つけ出した。
そんなん、ありかよ……?
外部で魔物の卵を見つける機会なんてほぼない、と言っていいくらいのレアなことらしい。俺は初日に古竜の卵という伝説級のものに出会ったけど。
『あの卵、もうすぐ生まれると思うの』
「マジで?」
アリーの言葉に目を見開く。
もしその予想が正しいなら、早急に対処が必要だ。卵を味方にできればいいけど、敵になってしまったらこのダンジョンは敵わないはず。その場合、ダンジョンの仮出入り口を移動させるべきだろう。
「――うーん……卵をダンジョンに、なぁ。それより、次の場所を探した方がいい気もするけど……」
『神狼なら、ここに卵を持ち帰れないかしら?』
「たとえ運べたとしても、ダンジョンの出入り口に入らない気が――いや、土龍はダンジョンが勝手に出入り口を広げて入れてくれたんだったな」
原理は判明してないけど、似た状況になれば、また柔軟に対応してくれる気がする。このダンジョンって、なんか生き物みたいだよなぁ。
『次の場所探しと並行して、卵捕獲作戦を実行しましょ』
「随分と気に入ってるんだな、あの卵」
『あれがあると、良いことが起きる気がするの』
ふふ、とミステリアスな笑みを浮かべるアリーに、ちょっと頬が引き攣った。
アリーが言う良いことって、俺にとってもだよな? そうだと言ってくれ。
「……そんなに言うなら、リルに頼んでみるよ」
『ええ! 楽しみだわ』
「ん。すごい情報を持ち帰ってくれたから、ご褒美用意しようか」
『美味しいご飯ね』
嬉しそうに顔を綻ばせるアリーに肩をすくめ、タブレットを操作する。何を食べさせようか。
リルは犬っぽい見た目だったから自然と肉料理を選んだけど、アリーはもっと上品な料理が似合う気がする。
でも、俺はそんな料理を作れない。やはり、完成品を出した方がいいか?
「何を食べたいとか、希望はある?」
『卵かしらね』
「……え、卵?」
一応、と尋ねてみたら、思いがけない返答だった。アリーはにこにこと微笑んでいる。
まさか、さっきまで話していた古竜の卵から連想したんじゃないよな?
「――古竜の卵は出せないぞ?」
『わかっているわ。ただ、卵というのがどういう味なのか知りたいの』
「いつか古竜の卵を食う気に思えるのは、俺の気のせいだよな?」
『うふ』
「笑って誤魔化してるー!」
怖。アリーもリルのようにとんでもないことを何気なくしでかすタイプか?
しでかすことが楽しく思えることならいいけどさ。古竜の卵を食べるのは、なんか嫌な予感がするから絶対に阻止しよう。
「――あー……始鳥の卵ならあるな」
確か元世界では、最も古い鳥類である始祖鳥は恐竜に近いと言われてたはず。始鳥も字面が似てるし、竜に近いかも?
古竜の卵は出せないから、これで満足してくれたらいいな。
『では、それをいただくわ』
「この卵を使った完成品はないから、俺が作るしかないけど、いいか?」
『もちろんよ。マスターの手作りほど嬉しいものはないわ』
絶対、DPで完成品を出す方が美味しいと思う。けど、高DPの素材を使えば、普通の料理の腕前の俺でも、美味しくできるかも? ステーキはとんでもなく美味かったもんなぁ。
「よっしゃ。それなら、いっちょ美味いもん作るか! ――卵焼きでいい?」
おしゃれな卵料理なんて作り方知らないんだよ。炒り卵にしなかっただけ、褒められていいはず!
なぜリルがハニトラにそれほどまでにこだわるのか、理解できない。俺の記憶の中に、ハニトラの恐怖が刻み込まれるような経験はないはずだけど。
「まぁ、どう考えても、もふもふの楽園になる気しかしない……」
俺にとってはその方がいい。ただ、もふもふの楽園にお色気お姉さんがマリアージュして、どんな空間が完成するのか楽しみなようなちょっと怖いような。
リルのことだから、とても愉快な感じにしてくれるよな? というか、そうしてほしい。
「んー、俺は作業の続きを――って、アリー?」
『ただいま帰りましたわ』
ふふ、と微笑みながらアリーがドレスの裾を軽くつまんで挨拶をした。良家のご令嬢感がすごい。思わず感心してしまう。
「おかえり。魔物は持って来たのか?」
外部からの魔物侵入アラートはもう切ってある。
一階層を映すモニターに視線を向けると、スライムが密集しているのが見えた。その周囲にゴブリンやオークたちもいる。
これ、何が起きたんだ?
『一階層に置いてきたわ。弱らせているから、スライムやゴブリンたちでも倒せるでしょう。彼らの経験値とDPになって良いと思うの』
つまり、アリーは魔物を運び入れて、倒す役目はスライムたちに譲ったということか。
確かに多少レベルが高い魔物でも、弱らせてある上に、これだけの数で立ち向かえば倒せそうだ。最初にダンジョン挑戦者に立ち向かう立場の彼らが強くなるのは、俺にとって歓迎すべき状況だ。
「そっか。ありがとな」
保有DP数が僅かに増加したのを確認して微笑んだ。土龍ほどじゃなくても、それなりにDPを稼げたのは嬉しい。
『どういたしまして。周辺地図も作成したのよ』
アリーが俺のタブレットに触れると、パッと地図が表示される。
ダンジョン出入り口を中心として、半径一キロほどを偵察してきたようだ。地形の高低差や障害物、魔物の種類とその分布まで記されている。
「うわ、アリーが優秀すぎてびっくり」
『褒め言葉と受け取っておくわね。それより、偵察して気になることがあったのだけれど』
「古竜の卵のことか?」
『あら、見ていたのね。そうなの。あの卵、マスターはどうするつもりかしら?』
キラキラと輝くような目を向けられた。アリーは古竜の卵に興味津々のようだ。持ち帰ろうとしてたもんな。
「どうするって……どうしようもなくないか?」
『ここに持ち帰れたら、すごいDPになりそうよ? 孵すことができたら、仲間にもなるかもしれないわよ?』
「仲間?」
DPはともかく、仲間とは不思議なことを言うものだ――と思いながら、ダンジョンマスターとしての知識を探ったら、〈外部から持ち帰った魔物の卵をダンジョン内で孵すと、ダンジョンの魔物にできる〉という情報を見つけ出した。
そんなん、ありかよ……?
外部で魔物の卵を見つける機会なんてほぼない、と言っていいくらいのレアなことらしい。俺は初日に古竜の卵という伝説級のものに出会ったけど。
『あの卵、もうすぐ生まれると思うの』
「マジで?」
アリーの言葉に目を見開く。
もしその予想が正しいなら、早急に対処が必要だ。卵を味方にできればいいけど、敵になってしまったらこのダンジョンは敵わないはず。その場合、ダンジョンの仮出入り口を移動させるべきだろう。
「――うーん……卵をダンジョンに、なぁ。それより、次の場所を探した方がいい気もするけど……」
『神狼なら、ここに卵を持ち帰れないかしら?』
「たとえ運べたとしても、ダンジョンの出入り口に入らない気が――いや、土龍はダンジョンが勝手に出入り口を広げて入れてくれたんだったな」
原理は判明してないけど、似た状況になれば、また柔軟に対応してくれる気がする。このダンジョンって、なんか生き物みたいだよなぁ。
『次の場所探しと並行して、卵捕獲作戦を実行しましょ』
「随分と気に入ってるんだな、あの卵」
『あれがあると、良いことが起きる気がするの』
ふふ、とミステリアスな笑みを浮かべるアリーに、ちょっと頬が引き攣った。
アリーが言う良いことって、俺にとってもだよな? そうだと言ってくれ。
「……そんなに言うなら、リルに頼んでみるよ」
『ええ! 楽しみだわ』
「ん。すごい情報を持ち帰ってくれたから、ご褒美用意しようか」
『美味しいご飯ね』
嬉しそうに顔を綻ばせるアリーに肩をすくめ、タブレットを操作する。何を食べさせようか。
リルは犬っぽい見た目だったから自然と肉料理を選んだけど、アリーはもっと上品な料理が似合う気がする。
でも、俺はそんな料理を作れない。やはり、完成品を出した方がいいか?
「何を食べたいとか、希望はある?」
『卵かしらね』
「……え、卵?」
一応、と尋ねてみたら、思いがけない返答だった。アリーはにこにこと微笑んでいる。
まさか、さっきまで話していた古竜の卵から連想したんじゃないよな?
「――古竜の卵は出せないぞ?」
『わかっているわ。ただ、卵というのがどういう味なのか知りたいの』
「いつか古竜の卵を食う気に思えるのは、俺の気のせいだよな?」
『うふ』
「笑って誤魔化してるー!」
怖。アリーもリルのようにとんでもないことを何気なくしでかすタイプか?
しでかすことが楽しく思えることならいいけどさ。古竜の卵を食べるのは、なんか嫌な予感がするから絶対に阻止しよう。
「――あー……始鳥の卵ならあるな」
確か元世界では、最も古い鳥類である始祖鳥は恐竜に近いと言われてたはず。始鳥も字面が似てるし、竜に近いかも?
古竜の卵は出せないから、これで満足してくれたらいいな。
『では、それをいただくわ』
「この卵を使った完成品はないから、俺が作るしかないけど、いいか?」
『もちろんよ。マスターの手作りほど嬉しいものはないわ』
絶対、DPで完成品を出す方が美味しいと思う。けど、高DPの素材を使えば、普通の料理の腕前の俺でも、美味しくできるかも? ステーキはとんでもなく美味かったもんなぁ。
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