ダンジョンマスターはフェンリルくんとのスローライフをご希望です

ゆるり

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1-3.もふもふダンジョンの作り方〈公開前3日目〉

31.最終的にこうなった

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 最終的に、狼族獣人たちには、現在いる七階層——ダンジョンゲート・農村——で、農作業をしてもらうことに決まった。

 狼族獣人たちがダンジョン内にいることで定期的にDPが入ってくるし、農作物を作ってもらえば食料も増えるし、良いことばかりだ。

 俺の安全面も、七階層にエンドかリルが常駐するようにすれば問題ない。

「——これでよし、と」

 新たに、ダンジョンゲートを〈ピエモ内狼族獣人の街ロウ〉近くに設定した。

 さすがに毎回山奥まで来てもらうのは申し訳ないし。
 それに、狼族獣人が普段と違って頻繁に山奥に来るようになれば、不審感を持つ者も現れかねないから。

「よろしければ、この村内に私たちが過ごす家を作ってもよろしいですか?」

 ロアンナが畑や家を見て回った後、期待に満ちた眼差しで問いかけてくる。

「いいよ。というか、もっと軽い感じで話してほしいんだけど」

 苦笑いをしながら頼んでみる。
 実は同じことをこれまでに何度もお願いしていた。堅苦しい敬語を使われると、肩が凝る気がするからなぁ。

 俺は率先して言葉を崩したんだけど、ロアンナはなかなか変えられないみたいだ。

「……気をつけます」
「マスターさん、家用の建材、山から伐ってきていいかー?」

 ダンクが言う。ロアンナとは違い、俺がお願いした途端、一気に友だちのような話し方に変わった。
 こういう切り替えが上手いのは、根が楽観的であることのおかげな気がする。

 エンドのことを含めて、必要以上に恐れられるのは疲れるから、結構ありがたい。

「伐ったばっかりの木って、使えないんじゃ? 建材というか、家そのものをDPで出せるけど」

 俺が言うと、ダンクは「いやいや」と手を振った。

「こんなことで俺たちにDPを使うなんてもったいない。木を加工したり、家を作ったりする技術は持ってるから、甘やかさないでくれ」
「なるほど。そう言うなら、お好きにどうぞ」

 意外と自立心が高い。
 感心しながら許可を出す。同時に、早くもダンジョン能力に甘えている自分を、ちょっと情けなく感じた。
 ……まあ、これからも遠慮なく活用するけど。

「みんなー、木ぃ伐って来るぞー。魔物対処と伐採担当でグループ作って出発してくれ!」
「「「おう!」」」

 ダンクの号令に、狼族獣人たちが一斉に動き始める。
 みんな元気だなー。

 リルはそんな狼族獣人たちを物珍しそうに観察していた。エンドはお昼寝中だ。

 当面の問題がなさそうなのを確認して、俺はふとロアンナを振り返る。

「そういえば、これほどの数の獣人たちをここにおいて、ロウの街では問題ないのか?」

 ロアンナはダンジョンゲートを設定する前に、一度族長たちへ報告しに行っている。
 話し合った通りに族長たちとも合意が取れたし、早速ロウ以外のピエモ内の街に話を通してくれているそうだ。

 だから、たくさんの獣人たちがここにいるのはいい。でも、突然働き手がいなくなって、ロウ内で問題が起きないのかは気になる。

「大丈夫です。元々、今の時期は仕事が少なくて、人手が余っていましたから」

 ロアンナが微笑む。
 どうやら、ピエモの特産である木工細工は各種族の街ごとの分業で行っており、繁忙期と閑散期がはっきりと分かれているらしい。
 閑散期には自分たちの食い扶持となる農作物を育てていたそうだ。

 でも、今回俺のダンジョンと関係を結ぶに当たって〈生産された農作物を狼族獣人側へも利益として渡す〉という約束をした結果、ダンジョン外で農作業をする優先度が下がったのだと言う。

「——むしろ、ここでは作物が早く育ちますから、外での農作業をやめてもいいくらい、食料を作れそうです」

 嬉しそうに微笑むロアンナに、俺は肩をすくめて見せる。

「外での農作業は続けてもらわないと。事情を知らない人に不審に思われるし、いつかダンジョンがなくなる可能性だってあるんだから」
「わかってます——ですが、できる限りリル様がおられるダンジョンが存続できるよう、私たちも努めますので、よろしくお願いいたします!」

 決意に満ちた眼差しのロアンナに、俺は苦笑しながら頷く。
 協力的なのはありがたいけど、神狼フェンリルの影響力の大きさにちょっと困惑する。
 リルの実像との不一致感がハンパない。

『マスター、影兎シャドウラビたちがここに遊びに来たいって~』

 唐突にリルがそんなことを言った。
 影兎シャドウラビ? 今、四階層で男夢魔インキュバスを振り回して遊んでるんじゃないのか?

 実はこれまでに何度もコネクトを通して男夢魔インキュバスから救助願いの連絡が来ていたのだが、もふもふと戯れられて楽しいだろ、と思ってスルーしていたのだ。

男夢魔インキュバスは?」
『引率役として連れてくるって~』
「それ、ちゃんと引率できるのか?」

 男夢魔インキュバス影兎シャドウラビたちに引きずられているところしか想像できないんだけど。

 頬を引き攣らせる俺の横で、ロアンナが「男夢魔インキュバス……?」と不思議そうにしている。

 男夢魔インキュバスたちにも、狼族獣人たちが俺たちの仲間なのだと紹介した方がいいかもしれない。
 ロミトラやらハニトラやら仕掛けられたら困るし。もふもふトラップはお好きにどうぞ、だけど。

『どうする~?』

 首を傾げるリルに、俺は「女夢魔サキュバスも一緒に頼む。他にも来たい子がいたら、連れてきていいぞ」と答えた。

 狼族獣人たちも耳や尻尾がもふもふだし、この階層が一時的にもふもふだらけになりそうだ。
 俺はもふもふ好きなので、それで問題なし!

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