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2-3.嵐襲来?
61.フラグ回収?
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ダン街の最初の宿泊客は〈栄光のファイター〉じゃなかった。
つまりは、まぁ……彼らは見事に(?)フラグを回収したってことだ。
影兎たち容赦ないな……。俺が見てるだけでも、これで二度目だぞ。
栄光のファイターが死に戻りしちゃっても、他の冒険者たちがダン街を楽しんでくれたので、俺としてはまったく問題ないけど。
公開して一週間が経った頃には、ダン街はたくさんの人が過ごす賑やかな場所になっていた。
[酒がねえーっ!]
[ちょっくら出て行って酒取ってくらぁ!]
飯処で料理を食べ、酒を飲んでいた男たちが酔いが回った足取りで外に向かう。
その姿を、多くの冒険者たちがやんやと囃し立て、笑い、呆れながら見送っていた。
止める者は一人もいない。これがすでにこの街での日常になっているからだ。
多くの者は知っている。
酔った状態でセーフティエリアから出てしまえば、死に戻りするだけなのだと。
でも、冒険者は自由である代わりに、すべての行動は自己責任だから何も言わない。
酔って出歩いて死に戻ろうと、それは彼らの選択の結果なのだ。
「楽しそうだなぁ……」
手酌で清酒を飲みながら、俺はダン街を映すモニターを眺めた。
日本の居酒屋の騒がしさに似た光景に、少し郷愁を感じる。
『人ってなんで頭ふらふらになるようなものを飲みたがるの?』
リルが心底不思議そうに呟いた。それ、俺にも言ってる?
手に持ったお猪口を見下ろし、俺は首を傾げた。確かに、なんでこんなに酒を飲みたがるんだろうな?
「……頭空っぽになって、楽しい気分になるからじゃないか?」
酔うと泣く人もいるけど、それはそれでストレス解消になってるんだと思う。
俺の場合、あまり酔うことはないから、飲酒っていう雰囲気を楽しんでるんだけど。あと酒の味が好き。酒の肴も大好物。
『へぇ。マスターも楽しい? 僕も飲んでみようかなー』
キラキラとしたリルの目を見つめ返し、「えー……それはなんかヤダな」と俺は苦笑した。
リルのイメージに酒は合わないと思う。それに、万が一リルが酔っ払っちゃったら、ヤバいことが起きそう。
『ミーシャは〈マタタービ〉があれば幸せな気分になれるにゃ』
「何それ……って、もしかしてマタタビ?」
この世界にもマタタビあるのか?
タブレットで検索……おお、あるわ、マタタービっていう名のマタタビ。
ミーシャがどんな反応を示すか気になって、マタタービをDPで出してみる。
見て目は普通の枝付きの葉っぱ。でも、ミーシャに近づけた途端——
『にゃーっ!』
「うおっ……すげー効果……」
マタタービにすりついて、ミーシャがゴロンゴロンと体をくねらせる。幸せそうな顔だ。可愛いなー。
『ミーシャの弱点? マタタービを敵に用意されたらすぐに負けちゃうねぇ』
リルがちょっと困った顔をしてる。
言われてみれば確かにそうだ。マタタービのせいで倒されるミーシャは見たくないな。
「今のミーシャの状態は〈酩酊〉ってなってるから、これを解除できるようになればいいんじゃないか?」
考えた末に、ミーシャに〈酩酊耐性〉の効果がある首輪を付けることにした。赤いリボンでできてる。
『……にゃ?』
首にリボンを結んだ途端、ミーシャがパチッと目を瞬く。酩酊状態が解除されたようだ。
でも、ちょっと残念そう。
「あー……マタタービを楽しみたい時は言ってくれ。リボンを取ってやるから」
『わかったにゃー』
ミーシャの喉のあたりを撫でる。ゴロゴロと鳴っているから、機嫌は悪くなさそうだ。
猫って気分屋さんだから、ちょっと気を遣う。まぁ、そういうところも可愛いんだけど。
ミーシャを愛でていたら、いつものようにリルが『僕もー』とじゃれてくるから、こちらもワシャワシャと撫でる。
もふもふに囲まれる生活って、なんて幸せ……!
顔が笑み崩れて戻らなくなるなぁ。
俺がそう思いながら幸せを噛み締めていると、コネクトを通してアリーの声が聞こえてきた。
『マスター、ダンジョン休憩所の冒険者ギルド支所に不思議な人が来ているんだけれど……』
要領を得ない報告だった。
現在アリーにはダンジョンの外にある街の監視を頼んでいる。闇に紛れ、偵察をしてくれているのだ。操人形ばかりに任せるわけにはいかないからな。
今日は、最近できた冒険者ギルドの派出所で情報収集をしてくれていたようだけど、やって来た不思議な人ってなんだ?
「詳細を頼む」
モニターの映像をアリーの視界に切り替えながら指示する。
パッと室内が映った。真新しい木造の部屋にはカウンターが二つ。そこでは二人の冒険者ギルド職員が、一人の男に対応しながら眉を顰めていた。
『どうやら自称〈勇者〉らしいの』
「え?」
思いがけない返事に、思わず困惑に満ちた声が漏れた。
勇者って、あの勇者? 人間側の正義の味方みたいな扱いをされてる最強の人?
男の姿をマジマジと観察する。
後ろ姿だから顔は見えないんだけど、随分とボロな装備だ。栄光のファイターの方が綺麗でまともな服装だぞ。
これが本当に神殿に所属している勇者?
[だぁかぁらぁ!]
不意に聞き覚えのない男の声が響いた。
アリーが持つコネクトが、自称勇者の声を拾ったようだ。アリーは用心深く距離をとって観察しているようだから、自称勇者は相当大きな声で話していることになる。
冒険者ギルドの職員たちが、迷惑そうな顔をしている理由がちょっとわかったぞ。
[——俺がここのダンジョンマスターを倒してやるから、その報酬を用意しとけって言ってんの!]
「は?」
耳を疑った。
この自称勇者、俺を倒して冒険者ギルドから報酬をもらおうとしてる……?
すげー嫌なやつなんだけど!
ムカッとしながら、リルと対応を話し合おうと横を向いたところで、体がビクッと震えた。
『こいつに罰をくらわせてやるぅ!』
めちゃくちゃお怒りな神狼様が降臨していた。
うっわぁ、俺の方がビビッてるんですが? え、リル、こんな怖い顔もできたんだな?
……自称勇者、死んだな……。
見る前から結果がわかった気がして、哀れみを感じちゃったよ。
つまりは、まぁ……彼らは見事に(?)フラグを回収したってことだ。
影兎たち容赦ないな……。俺が見てるだけでも、これで二度目だぞ。
栄光のファイターが死に戻りしちゃっても、他の冒険者たちがダン街を楽しんでくれたので、俺としてはまったく問題ないけど。
公開して一週間が経った頃には、ダン街はたくさんの人が過ごす賑やかな場所になっていた。
[酒がねえーっ!]
[ちょっくら出て行って酒取ってくらぁ!]
飯処で料理を食べ、酒を飲んでいた男たちが酔いが回った足取りで外に向かう。
その姿を、多くの冒険者たちがやんやと囃し立て、笑い、呆れながら見送っていた。
止める者は一人もいない。これがすでにこの街での日常になっているからだ。
多くの者は知っている。
酔った状態でセーフティエリアから出てしまえば、死に戻りするだけなのだと。
でも、冒険者は自由である代わりに、すべての行動は自己責任だから何も言わない。
酔って出歩いて死に戻ろうと、それは彼らの選択の結果なのだ。
「楽しそうだなぁ……」
手酌で清酒を飲みながら、俺はダン街を映すモニターを眺めた。
日本の居酒屋の騒がしさに似た光景に、少し郷愁を感じる。
『人ってなんで頭ふらふらになるようなものを飲みたがるの?』
リルが心底不思議そうに呟いた。それ、俺にも言ってる?
手に持ったお猪口を見下ろし、俺は首を傾げた。確かに、なんでこんなに酒を飲みたがるんだろうな?
「……頭空っぽになって、楽しい気分になるからじゃないか?」
酔うと泣く人もいるけど、それはそれでストレス解消になってるんだと思う。
俺の場合、あまり酔うことはないから、飲酒っていう雰囲気を楽しんでるんだけど。あと酒の味が好き。酒の肴も大好物。
『へぇ。マスターも楽しい? 僕も飲んでみようかなー』
キラキラとしたリルの目を見つめ返し、「えー……それはなんかヤダな」と俺は苦笑した。
リルのイメージに酒は合わないと思う。それに、万が一リルが酔っ払っちゃったら、ヤバいことが起きそう。
『ミーシャは〈マタタービ〉があれば幸せな気分になれるにゃ』
「何それ……って、もしかしてマタタビ?」
この世界にもマタタビあるのか?
タブレットで検索……おお、あるわ、マタタービっていう名のマタタビ。
ミーシャがどんな反応を示すか気になって、マタタービをDPで出してみる。
見て目は普通の枝付きの葉っぱ。でも、ミーシャに近づけた途端——
『にゃーっ!』
「うおっ……すげー効果……」
マタタービにすりついて、ミーシャがゴロンゴロンと体をくねらせる。幸せそうな顔だ。可愛いなー。
『ミーシャの弱点? マタタービを敵に用意されたらすぐに負けちゃうねぇ』
リルがちょっと困った顔をしてる。
言われてみれば確かにそうだ。マタタービのせいで倒されるミーシャは見たくないな。
「今のミーシャの状態は〈酩酊〉ってなってるから、これを解除できるようになればいいんじゃないか?」
考えた末に、ミーシャに〈酩酊耐性〉の効果がある首輪を付けることにした。赤いリボンでできてる。
『……にゃ?』
首にリボンを結んだ途端、ミーシャがパチッと目を瞬く。酩酊状態が解除されたようだ。
でも、ちょっと残念そう。
「あー……マタタービを楽しみたい時は言ってくれ。リボンを取ってやるから」
『わかったにゃー』
ミーシャの喉のあたりを撫でる。ゴロゴロと鳴っているから、機嫌は悪くなさそうだ。
猫って気分屋さんだから、ちょっと気を遣う。まぁ、そういうところも可愛いんだけど。
ミーシャを愛でていたら、いつものようにリルが『僕もー』とじゃれてくるから、こちらもワシャワシャと撫でる。
もふもふに囲まれる生活って、なんて幸せ……!
顔が笑み崩れて戻らなくなるなぁ。
俺がそう思いながら幸せを噛み締めていると、コネクトを通してアリーの声が聞こえてきた。
『マスター、ダンジョン休憩所の冒険者ギルド支所に不思議な人が来ているんだけれど……』
要領を得ない報告だった。
現在アリーにはダンジョンの外にある街の監視を頼んでいる。闇に紛れ、偵察をしてくれているのだ。操人形ばかりに任せるわけにはいかないからな。
今日は、最近できた冒険者ギルドの派出所で情報収集をしてくれていたようだけど、やって来た不思議な人ってなんだ?
「詳細を頼む」
モニターの映像をアリーの視界に切り替えながら指示する。
パッと室内が映った。真新しい木造の部屋にはカウンターが二つ。そこでは二人の冒険者ギルド職員が、一人の男に対応しながら眉を顰めていた。
『どうやら自称〈勇者〉らしいの』
「え?」
思いがけない返事に、思わず困惑に満ちた声が漏れた。
勇者って、あの勇者? 人間側の正義の味方みたいな扱いをされてる最強の人?
男の姿をマジマジと観察する。
後ろ姿だから顔は見えないんだけど、随分とボロな装備だ。栄光のファイターの方が綺麗でまともな服装だぞ。
これが本当に神殿に所属している勇者?
[だぁかぁらぁ!]
不意に聞き覚えのない男の声が響いた。
アリーが持つコネクトが、自称勇者の声を拾ったようだ。アリーは用心深く距離をとって観察しているようだから、自称勇者は相当大きな声で話していることになる。
冒険者ギルドの職員たちが、迷惑そうな顔をしている理由がちょっとわかったぞ。
[——俺がここのダンジョンマスターを倒してやるから、その報酬を用意しとけって言ってんの!]
「は?」
耳を疑った。
この自称勇者、俺を倒して冒険者ギルドから報酬をもらおうとしてる……?
すげー嫌なやつなんだけど!
ムカッとしながら、リルと対応を話し合おうと横を向いたところで、体がビクッと震えた。
『こいつに罰をくらわせてやるぅ!』
めちゃくちゃお怒りな神狼様が降臨していた。
うっわぁ、俺の方がビビッてるんですが? え、リル、こんな怖い顔もできたんだな?
……自称勇者、死んだな……。
見る前から結果がわかった気がして、哀れみを感じちゃったよ。
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