ダンジョンマスターはフェンリルくんとのスローライフをご希望です

ゆるり

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2-4.ダンジョンの発展

86.すべて世はこともなし

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 冒険者たちの希望を参考に、ドロップアイテムの調整をしたり、宝箱アイテムの確率を変更したり、細々とした作業をしてみた。
 多少は希望通りになってるはず。

 一階層で野菜や果物を採れるようにするかどうかについては、リルから思いがけない提案があった。

『エクストラダンジョンを用意したらいいんじゃないかな?』
「エクストラ?」
『うん。狼族獣人が七階層で野菜や果物を育ててるみたいに、冒険者たちに世話させる畑とかを用意したらいいと思うんだ。その管理を冒険者ギルドに任せたら、採り放題で荒らされるなんてこともないんじゃない?』

 リルが尻尾を揺らしながら、のほほんと言う。
 めちゃくちゃ理にかなってる気がする? リル、頭いいな!

「じゃあ、一階層から繋がるエクストラダンジョンを作ってみるか」

 一定時間そこに滞在しなきゃいけないようにしたら、DPの収益も出そうだ。魔物を設置しないから、DP消費が少ないし。

 リルと話し合って、エクストラダンジョンを仮設してみる。
 大きさは七階層くらいでいいかな? 全体を畑と果樹園にして、管理人詰所と作業者休憩所となる建物を用意する。

 最初の種や苗はサービスして、後は自力で種を入手してもらおう。植物の生長は早めてあげるから、ダンジョン外で栽培をするよりは収穫量が増えるし楽だろう。

 このエクストラダンジョンに出入りできるのは、朝と夕の十分間だけ。
 これなら、朝に入った人が中で作業して、夕方出ていく感じにできるはず。滞在時間が確保できて、DP収入になる。

 設定を完了し、仮設状態のものを公開した。
 エクストラダンジョンに繋がる転移魔法陣は、一階層入り口近くに設定。
 入り口近くから行けるようにしたのは、畑での作業員に戦闘能力がなくても来れるようにするためだ。

 偏見かもしれないけど、普通の冒険者は農作業をあまりしたがらない気がするし、農作業が得意な人を集めて作業に従事させるといいと思う。

「――よし、こんな感じでいいな」
『マスターは優しいねー。人間たちのためにここまでするなんて』
「俺の利益にもなるから、Win-Winだろ」

 リルに不思議そうにされたけど、俺は肩をすくめてそう返した。
 元日本人だから、どうしても人間には親近感があるし、敵対されない限りは配慮したいと思う。もちろん、俺にとって利益があること前提で、な。

 ダンジョンはだいぶ体制が整ったし、これで上手く運用していけるといいなぁ。
 できれば、俺がほとんど手を加えずに、リルたちとのんびり過ごしてダンジョン内を鑑賞して遊ぶくらいの日常を過ごせると嬉しい。

「目指せ、リルたちとスローライフ!」

 拳を突き上げて気合いを入れたら、ミーシャがコテンと首を傾げた。

『今でも十分スローライフな気がするにゃー』

 それはそう。
 この状態を維持しようね、ってことだよ。


◇◆◇ 


 冒険者ギルドにエクストラダンジョンについてお知らせした結果、村から働き手がやって来た。ほぼ住み込みで農作業をしてる人もいる。
 エクストラダンジョンは設置した後にほとんどDP消費がないから、今後いいDP収益源になりそうだ。

 町長への贈り物も実行したよ。
 冒険者ギルドを介して〈ドラゴン肉・果物・お酒セット〉を贈ったら、町長にすごく喜ばれたようで、特別爵位授与後に事前に知らされていた契約以上の報酬を渡された。
 金貨とか使い道ないんだけど……狼族獣人への給料とかにしようかな。

 報酬を受け取った際に、冒険者ギルドから〈自称勇者イサムについて、こちらで排除しましょうか?〉というお伺いがあったけど、これは丁重に断った。

 イサムが来た当初ならともかく、今はいいDP源なので。あと、最近八階層密林遺跡まで来れるようになって、頻繁にトラップに嵌って俺たちを楽しませてくれるので。

 ……勇者未満なだけあって、イサムの成長率が高い気がするのがちょっと不安だけど、ヤバそうになったら、冒険者ギルドに排除をお願いしよう。
 俺たちのスローライフを守るために、幾重にも安全策を講じておくのは大切です。

「うーん、今日ものんびりできて嬉しいなぁ」

 五階層リルの草原で寝転がり、全身で穏やかな日差しを浴びる。
 ダンジョン運営は順調に進んでいるので、監視する時間が短くなった。たまにイサムの攻略風景をみんなで鑑賞して楽しむけど。

 空いた時間はリルやミーシャ、影兎シャドウラビたちとのんびりと過ごす。
 そして、七階層で採れた新鮮な野菜や果物、DPで変換した肉や魚などを使って料理をして、みんなで美味しく食べてワイワイ騒ぐのだ。
 ほんと楽しい毎日です。

『あ、マスター、定期報告に来ましたよー』
操人形マリオネおかえり」
『ただいまですー』

 嬉しそうに笑った操人形マリオネとビールで乾杯。
 日差しの下で飲むビールは格別な美味さだな!

『ねぇねぇ、なんか面白いことあった?』

 俺の傍で寝転んでいたリルが操人形マリオネに尋ねる。
 操人形マリオネは『面白いこと?』と復唱した後で、ポンと手を叩いた。

『ありましたよ。このダンジョンに新たな呼び名ができました』
「呼び名?」

 思いがけない言葉に、俺はきょとんとして首を傾げる。
 俺を眺めて操人形マリオネが笑った。なんか嫌な予感がする……。

『ええ。その名も――〈風変わりな美食ダンジョン〉です!』
「は?」
『ちゃんと正式に登記されたので、国内・国外すべてにこの名前で通じますよ』
「……は!?」

 そういう大事なことは、俺に事前に相談してほしいなっ!

 ――こんな感じで、町長や冒険者ギルドにちょっぴり不満を感じることもあるけど、まぁ、そういうのも楽しい、かな?
 平穏な毎日ばかりじゃ、退屈になるしな。

 さて、次は何が起きるか。何をしようか。
 リルたちと一緒だとなんでも楽しめそうだ。

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