ダンジョンマスターはフェンリルくんとのスローライフをご希望です

ゆるり

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4-1.のんびりスローライフ?

149.おじゃまします!

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 操人形マリオネには【ダンジョンよりお手紙があります】という襷を掛け、手紙を持たせた。
 ダンジョンからの使者であることを明確にしたら、勇者たちはダンジョンと友好的に接しようとしてるんだから、いきなり襲われることはないだろう。

 操人形マリオネを運ぶ影兎シャドウラビは熾烈なバトルにより勝ち残った桃色の個体──名前をねだられたので『ピーチ』と名付けた──だ。
 ピーチは『いってきま~す♪』とのほほんとした感じで、恨めしげな影兎シャドウラビ仲間たちの視線も意に介さない様子だった。強い。

 操人形マリオネは、死んだ目で俺を見て『俺が殺られたら、新たな操人形マリオネを可愛がってくださいね……』と行って出発した。ちょっぴり憐れ。
 だから、『お前が死んだ後に、また操人形マリオネを召喚するとは限らないぞ?』という冗談は言わなかった。傷心してる相手を追撃するのはよくない。

『マスター、お手紙には何を書いたんだにゃ?』

 くわり、とあくびをした後に、ミーシャが首を傾げながら尋ねてくる。
 俺は仕事が一段落した気分で、草原にあぐらをかいて座りながら、「そうだなー」と手紙の内容を思い返した。

「まず、この手紙はダンジョンマスターからのものだ、というのを、俺のを添えて書いた」

 勇者が俺の親友の歩夢だったなら、きっとこれで警戒心を緩めてくれるはず。それだけじゃなく、より前向きに俺と会うことを考えてくれるだろう。
 ……衝撃を与えちゃうかもしれないけどな。

『にゃるほどにゃー』
「あとは、必要な事項だけな。勇者一行が友好的なことを鑑みて、装備は返却することと、対面して話をしたいこと、だ」
『会う予定はどうやって決めるんだにゃ?』
「それは、向こうも都合があるだろうし、いくつか候補を出しておいたから、その中から決めてもらうことにした。すぐに決められるようなら、操人形マリオネが返事を受け取る。時間が必要な時は、寝る時に窓を薄く開けておいてくれたら返事の手紙を勝手に取っていくってことにしてある」

 俺がそう言った途端、ミーシャが『にゃ?』と顔を上げた。

『誰が行くにゃ? 操人形マリオネかにゃ?』
「いや、さすがにそれは、あいつには任せていることが他にあるし。アリーに行かせるつもりだよ。来るってわかってりゃ、こっそり忍び寄っても攻撃はされないだろ」

 ミーシャは俺の答えに納得したようで、ふんふんと頷く。
 それを見ながら、そろそろ操人形マリオネの様子を見るか、とモニターの映像を変えた。
 操人形マリオネの視界を共有すれば、勇者たちの様子をリアルタイムで見られるはずだ。

 モニターに闇が映る。
 もしかして、まだピーチと一緒に影の中か?

『あ、マスター見てます?』
「見てるぞー」

 俺と繋がっていることに気づいたのか、操人形マリオネがすぐさま声をかけてきた。
 出発の時の情けない様子とはまったく違い、平常心そのものだ。あれは、憐れみを誘いたくて演技してたのかも?

『マスター、もうすぐまちにでるからね~』
『一旦ダンジョンの外に出てから、また影に潜って移動中なんです。もうすぐ勇者がいる宿に着くはずですよ』

 ピーチと操人形マリオネの報告に頷き、こちらもつい先程来た連絡を伝える。

「アリーが勇者の宿の部屋付近にいる。何かあったら頼っていいぞ。今んとこ、監視は近くにいないみたいだから、ラッキーだな」

 念の為、周囲の警戒を兼ねてアリーを仕込んでおいたのだ。
 やっぱり、操人形マリオネとピーチだけだと、何かあった時が可哀想かな、と思って。主に、ピーチの暴走を抑えなければいけない操人形マリオネが。

『マスター! ちゃんと俺のこと考えてくれてたんですね……!』

 感激している操人形マリオネの声が聞こえたすぐ後に、ピーチに『あ、ゆうしゃみつけた! いきなりへやのなかはまずい?』と問われた。

 思わず俺は真顔になる。
 さすがに不法侵入は攻撃されても文句を言えないぞ?
 俺が止めるより先に、操人形マリオネが慌てて止めてたから問題はなさそうだ。

「勇者の宿は角部屋らしいし、同じ階にドロンとリーエンがいる他は、大して実力がないやつらばかりみたいだから、廊下に現れたらいいと思うぞ」
『りょうかい~』

 ピーチが答えた次の瞬間には、モニターに映る景色が一変していた。
 木造の建物の廊下だ。すぐさま宿の廊下に現れたらしい。
 ピーチの行動が迅速すぎて、操人形マリオネが慌ててる。ピーチは気にせず再度影に隠れたけど。

『あ、ヤバい。なんか警戒されてる気配を感じるぅー。これ絶対、勇者御一行……』

 ボソッと呟く操人形マリオネの言葉が消える前に、目の前にある扉がスッと開かれた。

[そうだね。それで、君は何者? 魔物だよ、ね……って、その襷……]

 現れたのはアレックスで、続いて隣と向かいの部屋からドロンとリーエンが現れる。
 操人形マリオネが『完全包囲されてますやん……』と疲労困憊した声でこぼした。

[あ? ダンジョンよりお手紙……?]

 襷に書かれている文字を読んだのはドロンだ。
 警戒心はなくなっていないものの、少し気配が和らいだ気がする。
 ドロンの横に並んだリーエンは、油断なく操人形マリオネの姿を注視しながらも、不思議そうに首を傾げた。

[それって、あれじゃない? 冒険者ギルドとやり取りしてるっていう]
[ありゃダン街近くの立て看板って話じゃなかったか? こんな人間と見間違えそうな魔物が運んでくるなんて聞いたことねぇぞ]

 リーエンとドロンが話すのを聞きながら、アレックスがフッと笑った。

[少なくとも、魔物が使者って時点で、ダンジョンからの接触である可能性は高いよね]

 そう告げた後すぐに、視線を廊下の先に走らせ、スッと大きく扉を開く。

[──余計な客が戻ってきそうだし、とりあえず中にどうぞ]
『あ、ご親切にどうもですー』

 ひょこっ、と頭を下げて入っていく操人形マリオネに、ドロンが何か言いたげな視線を向けていた。

[……こいつ、マジで魔物か?]

 その気持ちは俺もよくわかるぞ。
 操人形マリオネって、ちょっと人間っぽすぎるよな!

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