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【自宅編】

8・首がとれる

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 姉が人形嫌いな私に見せた、ある人形がある。そのお陰で、私は更に人形が怖くなった。

 その人形は首のとれる人形だった。姉が私の名前を呼んだので、振り返ったら──というひどい話である。
 まぁ、それはトラウマになるよね、というようなことをされたわけだ。あれは、いつだっただろうな……。
 姉がどうして私にそんないたずら紛いのことをしたのかは、わからないが。とにかく、それ以来、私はその人形ばかりに視線が行くようになった。
 だから、嫌な視線を感じると、よくその人形のせいにしたものだ。──私も、ひどいか。

 さて、姉はその人形を大事にしていた。だから、机の上に置いていた。
 私と姉の机は、斜め向かいに置かれていた。姉の机が部屋の右端だとすれば、私の机はその左斜めうしろだ。そう、私が机に向かうと、姉の机に背を向けることになる。つまり、私は背後で人形に見られているような感覚になるという状態だ。

 姉が私にいたずらをした数日後。その日は、夢にその人形が出てきて、私が机に向かっていても集中できずに嫌だなと思っていた。
 そして、突如──。
「ふふふ」
 聞いたことのない声が背後から聞こえた。私は体が一瞬固まる。──私の他には誰もいない、と。
 恐る恐る振り返ると、人形が目についた。それだけではなく、人形も私を見ていた。

 実は、この日だけではない。人形はなぜか、いつも私のいる方を向いていた。いや、そう思っただけかもしれないと思い、姉に言ってみた。すると、
「確かに向きがおかしいね」
 と、言われることが多々あった。

 まぁ、『なにかで動いただけ』ということで済ましていたが。

 ちなみに、私は何度も姉に自身が人形嫌いであり、怖いと告げていたが、頑なに机の上から移動してはくれなかった。
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