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小学校
別れ
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あれから4カ月ほど経ち、あのうるさいセミの声は消え、公園のブランコも例年よりも早くから乗れなくなり、子どもたちが明日か、明明後日か、雪が降るのを心待ちしては大人たちは車のタイヤを冬タイヤにしていた。
毎日のように公園で1on1をしていたふたりもチームの一員になり、時間の都合上でする回数が減っていたが今になっては姿すら無い。
「冬休みに彰の家でクリスマスパーティーしね?」
「勝手に決めんなよ!家の都合もあるんだ。まぁいいけど」
「秋は?」
「んーどうしよう」
サッカーチーム引退後も一緒だった。太一と彰と引退後に仲良くなった魁聖が冬休みの予定を決めている。まだ学校は3週間ほどあるというのに。
「家の場所を知らないしな」
家が遠いため遊ぶこともなかったので場所なんて知るよしもない。
「じゃあ、この学校で待ち合わせしてそこから行こうか!」
「それいいな!なら、良いだろ!秋」
るりとしか放課後遊ぶことは無かったから良いかなと思えた。少しクールぶっていたが本当はすごく楽しみだった。
「よし、決まり!」
帰り道だった。いつも通り友達とバイバイして自宅に帰ろうとした。サッカーをしていた頃は体力があったのか家までの帰り道ぐらい走って帰っていたがそれも出来なくなっていた。だからか、小学校低学年ぐらいの子が帰って行くのを見守りながら帰っていた。
しかし、今日は目のいくところが違っていた。るりだ。引退してから一度もまともに話していない。珍しく帰りが彼女も早かった。
話はしていないが元気が無いのは目に見えて分かる。
しばらく微妙な距離感を保ちながら歩いていた。すると、彼女は急に後ろを向いた。
「何こそこそついてきてんのよ」
「はぁ?ただ歩いてただけだよ」
「ストーカーならもっと目立たないようにしてよ」
「だから、違うって!」
久しぶりの会話だった。あまりに急だったので口調が強くなってしまった。そう考えているうちに彼女は公園に入っていた。僕も磁石のような磁力で引き寄せられた。
「やっぱ、ついてきてるじゃん」
「急に公園にはいっていったんだ。そりゃ気になるさ」
「あら?そう?」
と言って彼女は僕に背中を向け、しゃがみこんだ。女の子には女の子にしかわからないこともある。月経とかなんかは男が知るよしもないし、できれば僕は知りたくない。
そう思い、僕は家に帰ろうとした。そのときだった。
顔に何か冷たいものが付いた。パッと上を向いた。
「雪だ...」
るりもこの言葉で上を向いた。子どもたちがいつ降るか楽しみにしていた初雪。街灯のぼわっとおぼつかない光に照らされ、雪が舞っている。
「...きれい」
るりの表情が晴れた。あの曇り無き快晴の笑顔だ。少しだけ低学年時代を思い出した。
それからしばらく僕とるりは黙り込んだまま、じっと、空から舞ってくる雪を何も考えずにただひたすら眺めていた。
初雪が降り、それから3週間、長い長い校長の話で始まり、担任とのさよならで終わる長い二学期が終わった。冬休みだ。
24日。待ちに待った彰の家でのクリスマスパーティーの日だった。気持ちが高ぶった僕は30分も早くに家を出た。行き道の途中の公園、子どもたちが作った雪だるまがあり、それを眺めていたるりの姿があった。しかし、僕はそれどころじゃなかった。
予定よりも早く着き、長時間、寒い銀世界の中をひとりで待つのは辛いはずだったが自然と高ぶった心が寒さを忘れていた。
「おーい!秋!」
3人の声だ。僕は走って彼らの方に向かっていく途中、氷に足を滑らせ転んでしまい、4人に笑いが生まれた。
「お邪魔しまーす」
学校から15分ほど、自宅の半分ぐらいの距離しかなかった。にしても彰の家は広いのに暖かい。この日、彰が金持ちだってことを僕は初めて知った。
ゲームだの馬鹿話、外で雪合戦もした。みんな、彰の家に泊まるそうなので僕も彰の服を借りて泊まることにした。
「うわっ!また敗けた‼」
「ハハハ、秋はサッカー上手いのにゲームは下手くそだな」
「てか、彰が強すぎなんだよ!太一も敗けすぎて、絵本も読まないのに攻略本読んでっぞ」
「俺も本ぐらい読むわ」
「何を何分?」
「教科書を授業中に...」
「ギャハハ!それはカウントしねーよ。俺もそれだけだけど」
北海道は学力が日本で下から数えた方が速いがこんなのばっかだからだろう。時計を見ると12時を過ぎている。僕にとってこの針の位置は昼と正月にしか見ないので新鮮だった。
「そろそろ、布団に就きなさいよ」
彰の母親の声だ。僕らはゲームをやめ、歯磨きをし、布団に就いた。
ここからの夜は長そうだ。みんなが布団に入り、電気が消える。修学旅行も部屋で友達と夜遅くまで馬鹿話をする。恋ばなもいずれそうなってしまうのが男子という者。この頃なんて美人かブスかはあまりはっきりできない。
「秋 起きとるか?」
太一が邪魔者が行ったのを確認し、みんなに話題をひとつ提示した。
「みんなはどこ中に通うの?」
「俺、とある中だよ。」
「俺も俺も」
みんな、とある中らしい。まぁこの近辺ならそこしか無い。
「みんなはサッカー部だよな?」
「もちろん!まだ、秋と彰とサッカーしたいし、次こそ全道...いや、全日本だ!」
「そうだな!魁聖も一緒にやらないか?」
「すまない。でも、俺は本気で野球が好きなんだよ」
魁聖は多分、日本中探しても片手ほどしかいないほど野球好きだ。
「秋こそ、お前が言ったんだし入るよな」
「あっそれともるりが入らなかったら...」
「るりって誰だよ」
彰が冷やかしてきた。サッカーチーム内では僕とるりがとても仲が良いと見えているらしい。それだけで...僕は少し彼らに子どもっぽさを覚えた。
「んなわけねぇだろ?入るよ!」
少しだけ腹が立った。こんなことに腹を立てるとは自分もまだまだ子どもだとも脳の片隅ぐらいで思った。
「るりとはどうなのよ?」太一が責めてくる。
「どうなのよって、ただの友達だよ」
「そっかー。意外に可愛いよなあいつ」
「胸はあるやつか?」
彰が彼女を誉めると魁聖が会ったこと無いからか真面目な顔でふざけたことを聞いてきた。彼は少し見る場所が少し大人になった子ども中学生のようだ。
「なんだよ!それ、愛にボディなんていらない。中身だよ中身」
「良いこと言うな!太一!でも、お前、クラス1優しいけどブスな高橋さん...断ったよな」
太一の格好つけは失敗に終わったようだ。口と脳でやりたいことと言いたいことは別のようだ。その減らず口が黙り込んだのは久しぶりだ。
「中身ってしめ...」「黙れよ...魁聖」
さすがにこいつは黙ってほしい。この爆弾発言だけは。
「ごめん 秋。でその子のこと好きなの?」
答えにくい質問に感じた。好きかどうかだと友達としては好きだ。しかし、これが恋かどうか別物な気がしたし、あくまで僕が恋したのはサッカーというスポーツにだ。でも、どこか胸の奥で何者かが騒いでるような騒いでいないような...
「友達としてな」
今はとりあえずこう答えた。
あれから6日。家は年越しムードだ。毎年のことだが隣近所付き合いでどちらかの家で年を越す。今年は彼女の家だった。
年越しそばをさっと食べるとるりが2階の彼女の部屋に連れてかれた。下では何らかのスポーツを酒とビールでべろべろに父がたとほどよく酔っている母がたが見ている。そう、下は大人の年越しだ。何回も入っているはずだがクリスマスパーティーの話が脳裏に浮かんで気が落ち着かなくなった。
ふたりは毎年のようにその年のことを笑いながら話している。今年ももちろんだったし、ハナボクロのことも当たり前のように出てきた。
しばらく経つと彼女は改まった顔をして、大事な話をしそうだった。僕もさすがに唾を飲み込んだ。
「私ね。中学校また別の場所に行くことになったの」
やっぱりか。あれだけ注目されているんだ。分かっていたことだ...
「女子サッカーの強豪か?」「うん」
「頑張れよ。お前なら心配0だ。」
「淋しくないの?秋くん」
僕はどうしても正直じゃない。友達...いや、それ以上だ僕にとって、でも、嘘をついた。
「全然、また会うだろうし。やっているのは同じサッカーだ」
「秋くんらしい回答だね。秋くんは初めて会った日から変わっていないよね」
どこがだろう?僕にはわからない。それでも、聞こうとは自然と思わなかった。
「1on1またやろうな。俺がお前に追い付いたら」
自然と出た正直な言葉だ。彼女は強い。目の荒々しさや、そのサッカーの神様が選んだ勝利の女神。男子にも劣らない技術力。ハナボクロに敗けた日、るりはハナボクロのヒールリフトで抜かれた。しかし、彼女のドリブルは僕は止めれないし、僕のドリブルは当たり前のように止める。悔しいが同じ場所に立てた時まで1on1をしない。僕なりの彼女への挑戦状。追いつかれるなよとは直接的に言うのは嫌だった。
「そうだね。早く追い付いてね🎵」
「もちろん」
この胸で騒いでる者が分かった気がした。しかし、言うのは駄目な気がした。これも追い付いたら...いや、一生胸に閉まっているかもしれない。僕が恋したのはサッカーなことに変わらない。変わらないのだ。
卒業式が終わり、公園の桜が7度目の満開となった日。彼女は寮に行く日だった。会うのは減るのかと思うと淋しいが自然と笑顔だった。るりは笑顔だ。あの曇り無き快晴の...いや、不安などの雨は降っている。しかし、期待や挑戦心が草木となり、育ち盛りだ。前よりも良いのかも知れない。
「あれ?今さら淋しくなったの?」
「んなわけあるかよ。ちょっと同い年の近所がいなくなるのかと思うとね」
「それを淋しいと世間で言うのでは?」
「世間?んなもんに僕はとらわれないよ。なんたってファンタジスタだ」
「ファンタグレープ?じゃなくて」
「お前もハナボクロって呼ぶぞ」
「いやーだ」
こんな馬鹿話で別れを告げた。約束の1on1をする公園のサッカーゴールが買い直される前に追い付いてやる。
春の訪れが残したのはあの頃と同じ桜の香りだ。しかし、あの日、初めてボール蹴った日からふたりは背丈だけが伸びて変わらない何かがある。公園のブランコのように、青い空のように。
毎日のように公園で1on1をしていたふたりもチームの一員になり、時間の都合上でする回数が減っていたが今になっては姿すら無い。
「冬休みに彰の家でクリスマスパーティーしね?」
「勝手に決めんなよ!家の都合もあるんだ。まぁいいけど」
「秋は?」
「んーどうしよう」
サッカーチーム引退後も一緒だった。太一と彰と引退後に仲良くなった魁聖が冬休みの予定を決めている。まだ学校は3週間ほどあるというのに。
「家の場所を知らないしな」
家が遠いため遊ぶこともなかったので場所なんて知るよしもない。
「じゃあ、この学校で待ち合わせしてそこから行こうか!」
「それいいな!なら、良いだろ!秋」
るりとしか放課後遊ぶことは無かったから良いかなと思えた。少しクールぶっていたが本当はすごく楽しみだった。
「よし、決まり!」
帰り道だった。いつも通り友達とバイバイして自宅に帰ろうとした。サッカーをしていた頃は体力があったのか家までの帰り道ぐらい走って帰っていたがそれも出来なくなっていた。だからか、小学校低学年ぐらいの子が帰って行くのを見守りながら帰っていた。
しかし、今日は目のいくところが違っていた。るりだ。引退してから一度もまともに話していない。珍しく帰りが彼女も早かった。
話はしていないが元気が無いのは目に見えて分かる。
しばらく微妙な距離感を保ちながら歩いていた。すると、彼女は急に後ろを向いた。
「何こそこそついてきてんのよ」
「はぁ?ただ歩いてただけだよ」
「ストーカーならもっと目立たないようにしてよ」
「だから、違うって!」
久しぶりの会話だった。あまりに急だったので口調が強くなってしまった。そう考えているうちに彼女は公園に入っていた。僕も磁石のような磁力で引き寄せられた。
「やっぱ、ついてきてるじゃん」
「急に公園にはいっていったんだ。そりゃ気になるさ」
「あら?そう?」
と言って彼女は僕に背中を向け、しゃがみこんだ。女の子には女の子にしかわからないこともある。月経とかなんかは男が知るよしもないし、できれば僕は知りたくない。
そう思い、僕は家に帰ろうとした。そのときだった。
顔に何か冷たいものが付いた。パッと上を向いた。
「雪だ...」
るりもこの言葉で上を向いた。子どもたちがいつ降るか楽しみにしていた初雪。街灯のぼわっとおぼつかない光に照らされ、雪が舞っている。
「...きれい」
るりの表情が晴れた。あの曇り無き快晴の笑顔だ。少しだけ低学年時代を思い出した。
それからしばらく僕とるりは黙り込んだまま、じっと、空から舞ってくる雪を何も考えずにただひたすら眺めていた。
初雪が降り、それから3週間、長い長い校長の話で始まり、担任とのさよならで終わる長い二学期が終わった。冬休みだ。
24日。待ちに待った彰の家でのクリスマスパーティーの日だった。気持ちが高ぶった僕は30分も早くに家を出た。行き道の途中の公園、子どもたちが作った雪だるまがあり、それを眺めていたるりの姿があった。しかし、僕はそれどころじゃなかった。
予定よりも早く着き、長時間、寒い銀世界の中をひとりで待つのは辛いはずだったが自然と高ぶった心が寒さを忘れていた。
「おーい!秋!」
3人の声だ。僕は走って彼らの方に向かっていく途中、氷に足を滑らせ転んでしまい、4人に笑いが生まれた。
「お邪魔しまーす」
学校から15分ほど、自宅の半分ぐらいの距離しかなかった。にしても彰の家は広いのに暖かい。この日、彰が金持ちだってことを僕は初めて知った。
ゲームだの馬鹿話、外で雪合戦もした。みんな、彰の家に泊まるそうなので僕も彰の服を借りて泊まることにした。
「うわっ!また敗けた‼」
「ハハハ、秋はサッカー上手いのにゲームは下手くそだな」
「てか、彰が強すぎなんだよ!太一も敗けすぎて、絵本も読まないのに攻略本読んでっぞ」
「俺も本ぐらい読むわ」
「何を何分?」
「教科書を授業中に...」
「ギャハハ!それはカウントしねーよ。俺もそれだけだけど」
北海道は学力が日本で下から数えた方が速いがこんなのばっかだからだろう。時計を見ると12時を過ぎている。僕にとってこの針の位置は昼と正月にしか見ないので新鮮だった。
「そろそろ、布団に就きなさいよ」
彰の母親の声だ。僕らはゲームをやめ、歯磨きをし、布団に就いた。
ここからの夜は長そうだ。みんなが布団に入り、電気が消える。修学旅行も部屋で友達と夜遅くまで馬鹿話をする。恋ばなもいずれそうなってしまうのが男子という者。この頃なんて美人かブスかはあまりはっきりできない。
「秋 起きとるか?」
太一が邪魔者が行ったのを確認し、みんなに話題をひとつ提示した。
「みんなはどこ中に通うの?」
「俺、とある中だよ。」
「俺も俺も」
みんな、とある中らしい。まぁこの近辺ならそこしか無い。
「みんなはサッカー部だよな?」
「もちろん!まだ、秋と彰とサッカーしたいし、次こそ全道...いや、全日本だ!」
「そうだな!魁聖も一緒にやらないか?」
「すまない。でも、俺は本気で野球が好きなんだよ」
魁聖は多分、日本中探しても片手ほどしかいないほど野球好きだ。
「秋こそ、お前が言ったんだし入るよな」
「あっそれともるりが入らなかったら...」
「るりって誰だよ」
彰が冷やかしてきた。サッカーチーム内では僕とるりがとても仲が良いと見えているらしい。それだけで...僕は少し彼らに子どもっぽさを覚えた。
「んなわけねぇだろ?入るよ!」
少しだけ腹が立った。こんなことに腹を立てるとは自分もまだまだ子どもだとも脳の片隅ぐらいで思った。
「るりとはどうなのよ?」太一が責めてくる。
「どうなのよって、ただの友達だよ」
「そっかー。意外に可愛いよなあいつ」
「胸はあるやつか?」
彰が彼女を誉めると魁聖が会ったこと無いからか真面目な顔でふざけたことを聞いてきた。彼は少し見る場所が少し大人になった子ども中学生のようだ。
「なんだよ!それ、愛にボディなんていらない。中身だよ中身」
「良いこと言うな!太一!でも、お前、クラス1優しいけどブスな高橋さん...断ったよな」
太一の格好つけは失敗に終わったようだ。口と脳でやりたいことと言いたいことは別のようだ。その減らず口が黙り込んだのは久しぶりだ。
「中身ってしめ...」「黙れよ...魁聖」
さすがにこいつは黙ってほしい。この爆弾発言だけは。
「ごめん 秋。でその子のこと好きなの?」
答えにくい質問に感じた。好きかどうかだと友達としては好きだ。しかし、これが恋かどうか別物な気がしたし、あくまで僕が恋したのはサッカーというスポーツにだ。でも、どこか胸の奥で何者かが騒いでるような騒いでいないような...
「友達としてな」
今はとりあえずこう答えた。
あれから6日。家は年越しムードだ。毎年のことだが隣近所付き合いでどちらかの家で年を越す。今年は彼女の家だった。
年越しそばをさっと食べるとるりが2階の彼女の部屋に連れてかれた。下では何らかのスポーツを酒とビールでべろべろに父がたとほどよく酔っている母がたが見ている。そう、下は大人の年越しだ。何回も入っているはずだがクリスマスパーティーの話が脳裏に浮かんで気が落ち着かなくなった。
ふたりは毎年のようにその年のことを笑いながら話している。今年ももちろんだったし、ハナボクロのことも当たり前のように出てきた。
しばらく経つと彼女は改まった顔をして、大事な話をしそうだった。僕もさすがに唾を飲み込んだ。
「私ね。中学校また別の場所に行くことになったの」
やっぱりか。あれだけ注目されているんだ。分かっていたことだ...
「女子サッカーの強豪か?」「うん」
「頑張れよ。お前なら心配0だ。」
「淋しくないの?秋くん」
僕はどうしても正直じゃない。友達...いや、それ以上だ僕にとって、でも、嘘をついた。
「全然、また会うだろうし。やっているのは同じサッカーだ」
「秋くんらしい回答だね。秋くんは初めて会った日から変わっていないよね」
どこがだろう?僕にはわからない。それでも、聞こうとは自然と思わなかった。
「1on1またやろうな。俺がお前に追い付いたら」
自然と出た正直な言葉だ。彼女は強い。目の荒々しさや、そのサッカーの神様が選んだ勝利の女神。男子にも劣らない技術力。ハナボクロに敗けた日、るりはハナボクロのヒールリフトで抜かれた。しかし、彼女のドリブルは僕は止めれないし、僕のドリブルは当たり前のように止める。悔しいが同じ場所に立てた時まで1on1をしない。僕なりの彼女への挑戦状。追いつかれるなよとは直接的に言うのは嫌だった。
「そうだね。早く追い付いてね🎵」
「もちろん」
この胸で騒いでる者が分かった気がした。しかし、言うのは駄目な気がした。これも追い付いたら...いや、一生胸に閉まっているかもしれない。僕が恋したのはサッカーなことに変わらない。変わらないのだ。
卒業式が終わり、公園の桜が7度目の満開となった日。彼女は寮に行く日だった。会うのは減るのかと思うと淋しいが自然と笑顔だった。るりは笑顔だ。あの曇り無き快晴の...いや、不安などの雨は降っている。しかし、期待や挑戦心が草木となり、育ち盛りだ。前よりも良いのかも知れない。
「あれ?今さら淋しくなったの?」
「んなわけあるかよ。ちょっと同い年の近所がいなくなるのかと思うとね」
「それを淋しいと世間で言うのでは?」
「世間?んなもんに僕はとらわれないよ。なんたってファンタジスタだ」
「ファンタグレープ?じゃなくて」
「お前もハナボクロって呼ぶぞ」
「いやーだ」
こんな馬鹿話で別れを告げた。約束の1on1をする公園のサッカーゴールが買い直される前に追い付いてやる。
春の訪れが残したのはあの頃と同じ桜の香りだ。しかし、あの日、初めてボール蹴った日からふたりは背丈だけが伸びて変わらない何かがある。公園のブランコのように、青い空のように。
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