短編集 そうでないひとの短編集

白木 黒

文字の大きさ
7 / 38

食う黒

しおりを挟む



耳をつんざくような、気が狂うような高音が聞こえたら、直ちにその場から、あらゆる手段を用いて最速で離れる必要がある。

はそこに

それは単純な造形を持つ。
多くの場合は巨大な–––高層ビルの間をすれすれで進むほどの–––球体である。
音と光を吸い込みつくし、耳が痛くなるほどの静寂の中を、ゆっくりと、滑るように進む闇色の球体。
それは実体を持たず、路上の物体を飲み込み、また吐き出しながら無機質に進む。
それは、物体には影響を及ぼさない。


それは、生物のみを殺すのだ。

それに飲まれた生物は、


それは生物の気配を感じ取る。

出現から目覚めまでの間、じっと、1番大きな、1番活発な、1番近い生物の気配を探り、行先を定めているのだ。
そしてまっすぐ、ゆっくりとそこへ向かう。

逃げられると、思うだろう。
動きは遅いのだ。はしれ、はしれと思うだろう。
しかし町はそう簡単に人々を逃しはしない。
壁が、道が、建造物が思わぬところで行く手を阻み、追い詰める。
追い詰められたら最後だ。
どんな障害も意に介さぬ死神は、圧倒的に、緩慢な動きで、静かに静かに…



窓の外を伺う。
近かったはずだ。あの高音を聞いた。
テレビの近くにいる妹に、目線で合図する。
妹は落ち着いた動作でテレビをつけ、音量をゼロまで下げた。

テレビに映る無人偵察機からの映像。

近い。ランドマークビルとミレニアムタワーの根元、大通りを緩やかに滑るようにたどる黒い姿が映っていた。
方向的には、こちらよりだ。
携帯端末に地図を表示させ、方向をたどる。
延長線上にこの場所はない。だが、途中で少しでも進路を変えたなら、通る可能性が劇的に高まりうる。この場所の北西約2キロほどの地点を、ほぼ丁度南東に向かって進んでいる。
今いるこの場所はその進路の南だ。うごくなら西か南西方向だろう。

今この場には家族六人。多すぎはしないが、大きな動きをすると最悪の場合–––される可能性は無視できない

祖父母はそんな長距離を歩けない。
この団体に機動力は期待できない。
方針次第では命取りになる。

考えろ。
想像しろ想定しろ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

意味が分かると怖い話【短編集】

本田 壱好
ホラー
意味が分かると怖い話。 つまり、意味がわからなければ怖くない。 解釈は読者に委ねられる。 あなたはこの短編集をどのように読みますか?

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

意味がわかると怖い話

邪神 白猫
ホラー
【意味がわかると怖い話】解説付き 基本的には読めば誰でも分かるお話になっていますが、たまに激ムズが混ざっています。 ※完結としますが、追加次第随時更新※ YouTubeにて、朗読始めました(*'ω'*) お休み前や何かの作業のお供に、耳から読書はいかがですか?📕 https://youtube.com/@yuachanRio

盗み聞き

凛子
恋愛
あ、そういうこと。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...