冬の一陽

聿竹年萬

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少年期 大学生活編

(24)自慢の弟子

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 レオンの放つ弾幕は、人間が扱い得る魔力量を明らかに凌駕している。エルフである師ドロシーをも凌ぐものと見えた。俄には信じがたい光景であるが、それを現実と受け止めれば、レオンの魔力だけで起こしているものではない、と確信に値する推測が立つ。

 特殊視をすると、足の裏から、地面に流れる魔力を吸収し、それを両手からぶっ放しているのがようやく見えた。魔力補給と放出を同時に行うことで、高威力の弾幕を展開している。大量の魔力が濁流となって体内を通過していくことに耐えられる訳がない。人間業ではないが、現にそれが起きているのだ。認めざるをえない。
 だから、まずはそれを止める。フィンは歯を食いしばり、猛スピードで動かした足に風魔術を重ねながらブレーキを掛ける。

 土煙が舞い上がり、弾幕が一瞬だけ静まり返る。レオンが視界に魔力を回すよりも早く、手を打つ。
 携えていた模擬槍を、今一度構える。残った魔力のすべてをぶち込み、距離を置き相対するレオンに投擲する。

 煙を引き裂いて飛んでいく槍は、しかし命中には至らず、足元に突き立つのみであった。

「どうした、やけくそか――っ!?」

 誰よりも先に、レオンが異変に気付く。煙の晴れた瞬間を狙って撃ち出そうとした最大威力の光球が、出せなくなってしまっていた。

「てめえ、本当にむかつくよなぁ!!」

 魔力を吸い上げるのも、ある程度の道筋は必要なのである。足の裏から、植物の根のように伸ばしていたサーキットが、放たれた槍によって断線させられた。
 魔術の補給を絶ったわけじゃない。少しの時間で復旧してしまう傷でしかない。
 だからもう一発、この一握りの魔力が逆転のカギになる。


「だぁあああああっ!」


 フィンが一喝すると空気を震わせ、破裂音が響いた。手を鳴らすような、先の打ち合いのときに聞こえた音と同じものであった。

 レオンの足元に刺さった槍の中から魔力が解き放たれる。フィンが槍に込めた魔術は地面を伝ってレオンの脚部に流れ込み、地面との回路接続を妨害する。

「くそっ! くそがっ!」
 
 レオンが吠えつつ、槍を引き抜く。フィンのかけた付与魔術を無理矢理剥がして、再度槍を構える。

「エンチャントやり方は、打ち合いの時に、お前が、僕に教えたんでしょう」


 ハリボテの嘲り。余裕を見せる。まだ、仕掛けは終わっていない。まだ、口角を上げなくては。まだ、挑発しなくては。


 遠目に彼らの戦いを観察しつつオリヴァントは感嘆する。
「しかし、フィン君も器用なことをしますね」
「自慢の弟子ですから」
「あのレオンを直接相手にしながら、繊細なことをしてのけるとは」
「自慢の弟子ですから」
「……話、聞いてますか?」
 オリヴァントの苦笑に、ドロシーの返答は決まっていた。
「自慢の弟子ですから」
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