ユートピア〜選ばれた少女達〜

美界

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1、集められた少女達

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    目を覚ました私相川 柚希(あいかわ ゆずき)は、言葉にならない程の衝撃を受けた。

    眠りにつくまでは、いつもと変わらず自分の部屋のベッドにいたのに、目を覚ました今私がいるのは全く知らない部屋。
   ぬいぐるみや可愛い小物が飾られた女子力高めの自分の部屋ではなく、ベッドと机、簡易的なお風呂とトイレがあるだけの白壁の殺風景な部屋だった。

  (ここは・・・どこ?一体・・・何がどうなっているんだ・・・?)


   寝起きの頭では全く思考が働かず、混乱していた私は左手首に違和感を感じた。そこには、身に覚えのない銀色のバングルがつけらていた。 外してみようとするが、ものすごく頑丈で外れない。
   ますます混乱していると、机に置かれた1枚の封筒に目が止まった。その隣りにいつも着ている学校の制服が綺麗に畳まれて置いてあった。
   真っ白な封筒に紙が入っていて、開くと、

    『目が覚めたら、集合。』

    と紙の中心に大きく書かれ、裏面に集合場所を示す地図が書いてあった。

    何が何だかさっぱりわからないままだが、とりあえず行動しないと始まらないと思い、パジャマから制服に着替え、ボサボサな短い髪を整え、準備万端で紙を持って部屋を出た。

    扉を開けると、部屋と同じ白壁の廊下が奥までずっと続いている。白ばかりの景色に目が痛くなりそうだった。

   私は地図を頼りに、集合場所へと向かった。




    長い廊下をしばらく歩いていると、正面に大きな両開きの扉がそびえ立っていた。
    私は扉を思いっきり開くと、部屋の灯りの強さに目を瞑る。再び開くと、ホール会場のような広い部屋に、自分と同い年くらいの男女が大勢いた。皆私と同じで、何が行っているのかわからない状態でおどおどしていた。


       「柚希!」

    部屋に入ってすぐ、私の名前を呼ぶ声が。私は声がした方を見ると、そこにいたのは瀬川 麻友(せがわ まゆ)。小学校から一緒で、10年来の親友だ。
    栗色の長めのツインテール、私と同じ紺色の制服、そして左手首には謎の銀色のバングルだ。

   「柚希、一体何がどうなってるの?ここは一体どこなの?」

  「落ち着いて麻友。私にも、何が何だかわからないんだよ」


    私はパニックになりそうな麻友を落ち着かせると、辺りを見回した。私と麻友の周りの中には、見覚えのある人も何人かいた。

    例えば、私の右斜めにいる眼鏡男子は、IQ190の天才とテレビで取り上げられた及川グループの御曹司、及川 圭佑(おいかわ けいすけ)。
    スラッとした長身で名門私立高校の制服を身に纏った及川は、腕を組んで何やら考えこんでいた。

    次に部屋の中心で大勢の男子に囲まれているのが、桜島 かりん(さくらじま かりん)。女子高生アイドルグループのセンターを務める程の人気アイドルだ。
   ピンクの長い髪を上部分を左右で纏め、赤いブレザーやチェックのスカートは所々フリルで飾られ、彼女の可愛いらしさを更に際立たせる。こんな状況にも関わらず、熱狂的なファンは彼女の周りで握手を求めている。

    その他にも、オリンピック候補のスポーツ選手や人気YouTuber、モデルなど。一般の高校生に加え、名の知れた人物も大勢いた。
    ざっと見渡しただけでも、私を含め、ここには1000人くらいの高校生達が集められていた。


    しばらくすると、部屋の奥から黒ずくめの男達が行進するように横一例で並び、天井に穴が開き、中から大きなモニターが降りてきた。

    モニターの画面がつくと、皆モニターが見える場所に自然と集まる。



  『ようこそ、君達は選ばれた人間だ。これから君達にはゲームを行ってもらう』

   変成器を使ったようなダミ声のアナウンスが響き、モニターにはそのアナウンスの字幕が画面下から上に向かって流れる。

   (ゲーム・・・?選ばれた人間・・・?)

   私の頭は?マークだらけ。おそらく周りの人達もそうだ。皆がざわざわする音が部屋中に響く。

   『ルールは簡単。皆さんはこの施設で生活してもらいます。そして私からいくつか課題を出しますので、皆さんはその課題をひたすらこなしてもらいます』

    部屋の中は相変わらずざわざわしたまま。

   『そして、1週間ごとに皆さんの課題成果をランキング順に発表します。成績上位の方には、それ相応の報酬を与えます。そして、最下位になった方には・・・死んでもらいます』


   『死』という言葉に、皆のどよめきは増した。中にはショックで顔が青ざめる人もいた。

   『また、この施設から出ようとしたり、暴力行為を行った方にも死んでもらいます。それ以外でしたら、お友達を作ろうが、恋人を作ろうが一向に構いません。皆さんの自由に生活していただいて結構です』


    さっぱり内容がついていけない状況。もはや考えるのも疲れそうだった。

   
  「あの、質問いいですか?」


    ざわついた空気を断ち切ったのは、モニターの真正面にいた三つ編みの優等生風の女子高生だ。


   『何でしょうか、長谷川 歩美(はせがわ あゆみ)さん』

    歩美という女子高生は、銀縁眼鏡をくいっと上げると、質問を始めた。

  「この施設で生活ということは、それなりの設備は揃っているのですか?衣食住が不十分な状態で、あなたの言う課題というのをこなすというのは、ほぼ不可能だと思います」

   『心配はありません。この施設には皆さん全員が生活に不自由することのない程の食料や備品は揃えてありますし、万が一必要なものが発生した場合もすぐ用意できる予算も豊富に準備してありますので、どうぞご安心下さい』

    この冷静な質疑応答に、皆唖然と聞いているしかなかった。

  「あともう1つ、この左手首に取り付けてあるバングルは何ですか?」

   彼女は左手首のバングルを指差しながら、もう1つ質問した。
 
   『あぁ、肝心なことを忘れていました。このバングルはですね・・・』

   「ふざけんじゃねぇよ!!」


    モニターの人物が質問に答える前に、誰かの怒号が響いた。私のすぐ隣りにいたヤンキー風のチャラチャラした男子だった。
 
 「さっきから黙って聞いてりゃ、ゲームだの課題だのわけわかんねぇこと言いやがって!こんなの監禁じゃねぇか!俺の親父、矢崎不動産の社長だぞ!親父に言いつけるからな!」

   矢崎不動産と言えば、全国の不動産業界でもトップの業績を誇る一流企業だ。彼の見た目や態度から、とてもそうとは思えなかった。

  『・・・矢崎 博也(やざき ひろや)君。君のご両親は人の話は最後まで聞くということを教育なさらなかったのでしょうか。一流企業社長のご子息が、こんな野蛮な性格ですと、さぞかしご両親が不憫でならない』

   その言葉に、矢崎というはぶちギレたのか、顔を真っ赤にして震えていた。

  「・・・もういい!!俺はそのゲームとやらはやらないからな!今すぐここから出て、親父に言いつけてやるよ!そしたらお前ら全員刑務所だから覚悟してろよ!!」

    矢崎はそう吐き捨てると、扉の方に向かって歩き出した。


   『・・・そうですか、仕方ありません。217番、矢崎博也君、失格です』

   モニターの人物はそう言うと、黒ずくめの男達の1人が、何やらスイッチのようなものを押した。
   すると突然、矢崎の足が止まり、その場に疼くまった。そして、急に苦しみもがき始めた。
   突然の出来事に、皆ただ黙って見ているしかなかった。

   しばらくもがいていた矢崎は、口から泡を吹き、ぴたりと動かなくなった。
   皆その場から動けずにいたが、真っ先に動いたのは、歩美だった。
    歩美は動かなくなった矢崎の首や手首に手を当てて、自分の首を横に振った。

   「・・・駄目・・・死んでる」

    歩美は真っ青な顔になっていた。歩美の言葉に、周りにいた人達の悲鳴や叫び声が響き、パニック状態になっていた。

   『はいはい、静かにして下さい。説明の続きをしますよ』

    この状況で、誰もモニターの言葉を聞く者はいなかった。私もパニックになって泣いている麻友を落ち着かせるのが精一杯だった。

   すると別の黒ずくめの男が、懐から拳銃を取り出し、天井に向かって一発打った。
   突然鳴り響く銃声音に、さっきまでの騒ぎが一瞬で収まった。私も含め、皆ビデオの停止ボタンを押したかのようにピタリと止まる。

  『さて・・・静かになった所で、皆さんがつけているバングルについて説明をします。このバングルの内側には毒針が仕込んであります。皆さんがランキングで最下位になったり、ルールを破ると、私の判断で毒針のスイッチを押す合図を出します。なお、この毒は即効性で超強力です。解毒剤のようなものはありませんので、つまらない理由でスイッチを押すようなことがないように』


     もう何も考える気も起きない。この数分で、膨大な情報を詰め込んだら、思考が追いつかない。

   『では、これよりゲームを始めます』





    平穏な日々がずっと続くものだと思っていた。しかし、そんな私の願いは一瞬で打ち砕かれた。


   こうして、私達は正体不明の人物によって仕掛けられた命掛けのゲームが幕を開けたのだった・・・。
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