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王が秘書や護衛と屋敷を後にする時、短剣を抱えたままイージニアは見送りに庭まで出ていた。
イージニアには、そこから出るな、と言われている門を王が通った時の事だ。
「陛下は何かお願いがあるんですか?」
「?」
先ほどとは違いひどく落ち着いた様子のイージニアに王が思わず振り向いた。
宰相や護衛も、非力ではあるが短剣を持っている女だという認識だ。王を庇うように体制を整えた。
「何かお困り事ですか?」
「何の事だ」
「これをいただいたので」
今まで、こんなことはなかった。
思えば子供のような状態のイージニアには執事長やカタリットが面会させなかったし、そうでない時は儀礼的な会話しかしていなかった。
子どものようなイージニアと王がこれだけ長く話したのは初めての事だろう。
「子どものような癖に妙な所は律儀だな」
「それに皆さんよく眠れていないようですし、何か困っていることがあるのではないですか?」
イージニアのおかげで仕事が増えたのだが、そんな事は言わずに王はイージニアに近づいた。
護衛や宰相は必死に止めようとしたものの、王がそれを制止しイージニアに内緒話をするように耳元で小さく語りかけた。
「実は国境付近の西の街道にはぐれのワイバーンが出たのだよ」
「すぐに討伐すれば良いのでは?」
「ワイバーンとなると騎士団を一つ動かさなければならなくなる。さすがに隣国近くに大勢の冒険者や騎士を派遣するわけにはいかない。戦争になるからな」
それだけ言い終わると王はイージニアに背を向け歩き始めた。
「それが陛下のお困りごとですか?」
「ああ」
それだけで寝不足になるはずはないが、食い下がるイージニアに納得できるように言い訳をした。
「それでは、私におまかせください」
イージニアは冗談か本気なのか分からない様子で王の背中に声をかけた。
虚言なのか何なのか、そんなイージニアを見ることもなく王は「楽しみにしている」と言った。
その後はまたカタリットのスパルタ授業でイージニアはポンコツを発揮していた。
翌日の事だ。王城の庭にワイバーンの死体が置かれていた。
出血もなく打撲の痕跡もない。
墜落した様子もない。
パタリと自然に死んだワイバーンを誰かが丁寧に置いたようにしか見えない。
王城は一時パニックとなった。
侵入者か魔術かと慌てふためく城の者をよそに王座で一人ほくそ笑む者がいた。
一晩、また一晩と王の書斎や玉座などに欲してはいたが手に入れるのに苦労していたものが現れ始めた。
貴族の横領の証拠。奴隷密売の組織図。果ては失われた国宝まで。
城の者は不思議に思いながらもこれで膠着していた仕事が一気に進むと、喜ぶものが大半だった。
イージニアには、そこから出るな、と言われている門を王が通った時の事だ。
「陛下は何かお願いがあるんですか?」
「?」
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「何の事だ」
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護衛や宰相は必死に止めようとしたものの、王がそれを制止しイージニアに内緒話をするように耳元で小さく語りかけた。
「実は国境付近の西の街道にはぐれのワイバーンが出たのだよ」
「すぐに討伐すれば良いのでは?」
「ワイバーンとなると騎士団を一つ動かさなければならなくなる。さすがに隣国近くに大勢の冒険者や騎士を派遣するわけにはいかない。戦争になるからな」
それだけ言い終わると王はイージニアに背を向け歩き始めた。
「それが陛下のお困りごとですか?」
「ああ」
それだけで寝不足になるはずはないが、食い下がるイージニアに納得できるように言い訳をした。
「それでは、私におまかせください」
イージニアは冗談か本気なのか分からない様子で王の背中に声をかけた。
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その後はまたカタリットのスパルタ授業でイージニアはポンコツを発揮していた。
翌日の事だ。王城の庭にワイバーンの死体が置かれていた。
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