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時々軋む望遠鏡を覗くと一面の草原が広がっている。
この辺りでは一番空に近い小さな塔で空を眺める。
そよそよと風が流れている。
いつもの事だ。
「……」
雲の合間に魚影が映った、気がした。
目を凝らしても何もいなかった。
私が住んでいるこの塔はところどころボロくなっている。出来る所は補修していっているがそれでも修理が追い付かない。
いつも同じ時間に塔の上に上り空を眺める。
部屋は余っているが、私一人しか住んでいないのでどうしても手が届かない所があるのだ。
私は屋上に設置している『せんなし』のスイッチを入れる。
これは雨に濡れてはいけない上に手荒に扱うと壊れてしまう代物だ。
自分では修理できないため、丁寧に扱っている。周辺だけは念入りに掃除したりピカピカに磨いている。
『ジ ジ ジジ……』
『せんなし』からノイズが出てくる。
色々調整しているとどこかの話し声が流れてくる。
「あー、こちら空クジラ観測所、ロクの魚番です」
昔の技術を今も守っている人たちに聞いて仲間が『せんなし』を開発した。『無線』と書かれていたらしいが誰も読めなかった。
解読した結果、そのまま『せんなし』と呼ぶことになった。
『せんなし』に話しかけるとすぐに女性が応答した。
『ロクちゃん今日もご苦労様~』
「どうも、シーさん」
『今日はどんな感じ~?』
「いつも通りだったんですけど、ちょっと雲の影を魚影と見間違えちゃいました」
『あー……。もしかしたらなんだけど。もしかしたらお客さんが来るかもしれないよ!』
「客?」
客なんて五百年ほど前に女性が一人泊まったくらいだった。
その時は壊れた塔を一緒に補修してもらったな、と思い出す。
『何ていうか、お客が来る前にそういう見間違いをする奴って結構いるのよ』
「そうなんですか」
『うんうん。あ! イチちゃんから連絡! また明日』
「はい。また」
それから私は塔の周りにある畑の世話をし、飼っている動物の様子をみる。
鶏やヤギなんかを飼っている。
塔には様々な機能があり『エレキ』などの昔の遺物とそれを管理する機械たちがいるが食べ物だけは一定種類しか作り出せない。
何より全て缶詰になっていて味気ない。
私の塔がそんな感じなだけで医療に特化している塔や大量の資料を保存している塔なんかもある。一か月に一度、私たちはシーさんを通して各々の塔でできたものを交換する。
シーさんの塔は昔の技術や乗り物なんかがたくさんあるらしい。
それに生き残った人間がたくさん住んでいて、さながら国のようになっているらしい。
その人間たちが配達係となって私たちを繋いでいる。
私は塔の周辺を見回りながら生き物の世話をしていく。
この辺りでは一番空に近い小さな塔で空を眺める。
そよそよと風が流れている。
いつもの事だ。
「……」
雲の合間に魚影が映った、気がした。
目を凝らしても何もいなかった。
私が住んでいるこの塔はところどころボロくなっている。出来る所は補修していっているがそれでも修理が追い付かない。
いつも同じ時間に塔の上に上り空を眺める。
部屋は余っているが、私一人しか住んでいないのでどうしても手が届かない所があるのだ。
私は屋上に設置している『せんなし』のスイッチを入れる。
これは雨に濡れてはいけない上に手荒に扱うと壊れてしまう代物だ。
自分では修理できないため、丁寧に扱っている。周辺だけは念入りに掃除したりピカピカに磨いている。
『ジ ジ ジジ……』
『せんなし』からノイズが出てくる。
色々調整しているとどこかの話し声が流れてくる。
「あー、こちら空クジラ観測所、ロクの魚番です」
昔の技術を今も守っている人たちに聞いて仲間が『せんなし』を開発した。『無線』と書かれていたらしいが誰も読めなかった。
解読した結果、そのまま『せんなし』と呼ぶことになった。
『せんなし』に話しかけるとすぐに女性が応答した。
『ロクちゃん今日もご苦労様~』
「どうも、シーさん」
『今日はどんな感じ~?』
「いつも通りだったんですけど、ちょっと雲の影を魚影と見間違えちゃいました」
『あー……。もしかしたらなんだけど。もしかしたらお客さんが来るかもしれないよ!』
「客?」
客なんて五百年ほど前に女性が一人泊まったくらいだった。
その時は壊れた塔を一緒に補修してもらったな、と思い出す。
『何ていうか、お客が来る前にそういう見間違いをする奴って結構いるのよ』
「そうなんですか」
『うんうん。あ! イチちゃんから連絡! また明日』
「はい。また」
それから私は塔の周りにある畑の世話をし、飼っている動物の様子をみる。
鶏やヤギなんかを飼っている。
塔には様々な機能があり『エレキ』などの昔の遺物とそれを管理する機械たちがいるが食べ物だけは一定種類しか作り出せない。
何より全て缶詰になっていて味気ない。
私の塔がそんな感じなだけで医療に特化している塔や大量の資料を保存している塔なんかもある。一か月に一度、私たちはシーさんを通して各々の塔でできたものを交換する。
シーさんの塔は昔の技術や乗り物なんかがたくさんあるらしい。
それに生き残った人間がたくさん住んでいて、さながら国のようになっているらしい。
その人間たちが配達係となって私たちを繋いでいる。
私は塔の周辺を見回りながら生き物の世話をしていく。
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