[完結]さよなら地球人

夏伐

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3 転入生

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 転入初日。

 私はとくに問題なく。空野さんは保護者としてついてきていましたが、ガチガチに緊張しておりました。

 問題は弟と妹。弟は中学三年生の微妙な時期に転入するということもあって、イジメなどがとても心配なのです。アオは勉学はそこそこ、体育はバリバリできますし、処世術に長けているのでまあ何とかなるでしょう。問題は妹なのです。

 私は高校二年。アオは中学三年。妹は小学五年生。

 校長室で挨拶をして、これからお世話になるそれぞれの担任の教師に挨拶して。忙しいさなか、自己紹介の時に起こりました。

 高そうな机にどこで買ったのか、少しヒールの入ったシューズをダンッとのせ、腕を組んで顔を上げて、

「わたくし、空野ヒカリコと申します。『星』と書いてヒカリ、そして子供の『子』でヒカリコですわ。以後お見知りおきを」

 そして服の端をつまみ、何ともお姫様らしいポーズでお辞儀をしたのです。

 彼女、まるで童話のお姫様のような容姿をしていますし可愛らしいは可愛らしいのですが、態度がなんとも可愛くありません!!

 それに、名前はギリギリまで教えてはくれなかったのですが、まさか一発変換できない漢字で当ててくるとは。これからの報告書には彼女は中々出てこないかもしれません。書いている私が面倒なのです。

 転入手続きや諸々、彼女独断でねじ込みましたね!!

 本当はアオと私と保護者で三人家族という設定だったのに。彼女一人のせいで計画が狂いまくりです!

「ヒ、ヒカリコちゃん。机に足乗っけちゃだめよ」

「そ、そうだぞ……。ヒ……ヒカリコォ」

 私とアオがそれぞれ窘めるとヒカリコは「ふん」と鼻を鳴らして

「えらっそうにしないでよね、お・ば・さ・ん!!」

 私にそう吐き捨てると、校長室から出て行ってしまいました。担任の教師がハッとしてヒカリコを追いかけていきました。

「ヒカリコは少し気難しい子で……、すいません」

 微妙な空気になったところで空野さんが大人な対応をしてくださいました。
 とてもありがたい。


 放課後。

 私とアオはそれぞれ一週間以内に部活に入部することを勧められ、ヒカリコは授業に組み込まれているクラブ活動の選択を。

 私たちはそれぞれ体験入部をすることにしました。

 ヒカリコはなんと料理クラブに入るそうです。

 私とアオはそれぞれヒカリコに「意外ね」「ギャップだな」と感想を述べました。
 みぞおちにボディブローをかまされました。

「あんたには何にも食べさせないわよ!! アオには、ちょっとだけしかあげないっ……ですわっ!!」

 まさか殴られるとは……。
 繊細な女心とは難しいものなのですね……。


 アオは運動部を中心に回るそうです。今日は陸上部やサッカー部を見て周るのだとか。

 私は少し変な部活を中心に見学していこうかと思います。

 高等部ともなると何かはっちゃけるのか面白い名称のものが多いようです。ほとんどは同好会ですが、まあ良いでしょう。

『オカルト同好会』『宇宙倶楽部』『漫画同好会』『目安箱委員会』etc……。
 委員会なのに同好会なのですか!!

 宇宙倶楽部は天体観測部があるのに同好会で活動しているなんて、よほど星が好きなんでしょう。少し覗いてみました。

「宇宙における私たちの存在意義とは!! 神が私たちにメッセージを伝えようと今日日UFOを遣わせているのだ!!」

「「「うぉぉぉおおおおおおおおおお!!」」

 しゅ、宗教でしょうか……。
 祈りとは大切なものですから……。

 オカルト同好会、これはアオが好きそうですね! 話のネタにするのに少し寄ってみますか!

「し、失礼しまぁす……」

 私は黒いカーテンがしてある少し怪しげな扉を開きました。
 中から少し音が聞こえますが、高校生くらいの年齢だと少しくらいはっちゃけたくなるものですものね!!

「キウェエエエエエエエエエエエ!!!!?」

「部長ーーー!!! 狐ぇぇ!! 部長から離れろぉぉぉ!」
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