[完結]予言のおわり

夏伐

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5 おわり

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 薄暗く湿った地下牢に一人の女がつながれていた。
 厳重な警備の元、自由だった頃の面影がないほどやつれていた。艶めく髪はボサボサに、人を魅了した強気なカリスマ性を宿した瞳は落ちくぼんでいる。

 私がその女を見ると、彼女は目を見開いた。

「お前は……、確かに死体を確認したはずなのに、どうして……」

 彼女は、確かに死体を確認したのだろう。
 そして女の言っている『私』も死体も女だった。驚愕に見開かれる瞳を見据えて、私は吐き捨てるように言った。

「お前は予言を恐れた。でも、お前は予言者じゃない、未来を見たわけじゃない。他人の言葉に支配され、虚言に操られそのせいで死ぬ、これがお前の運命だ」

 彼女はとある国の王妃だった。
 後宮を支配し、王を操る毒婦。それが目の前にいるこの女だった。

 ある時、女の抱えている占星術師が告げたという。


――星詠みの一族から生まれた王子が、あなたの首を刎ねるでしょう。


 それをきっかけに、くすんだ金糸のような髪に褐色の肌、薄いはちみつ色の瞳を持つ人々は王国から狩られていった。

 それらは星詠みを生業とする流浪の民の特徴だったからだ。

 ある時、追ってから逃げた星詠みの一族の姫は、大悪の化身であるその王と導かれるように出会った。

 彼女も何か惹かれるものがあったのだろうか。

 出会い、後宮で守られ、彼女は子を生んだ。

 それが私だった。

 もちろん、彼女の子はいくら王に守られていたとしても、男であれば殺される運命であった。
 その証拠に、王妃が生んだ、ただ一人の王子以外の男児は幼い時分に衰弱死していた。

 私が明日、占星術師の予言の通りに王妃の首を刎ねることが出来るのは、ひとえに予言者である母の執念であった。
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