[完結]予言のおわり

夏伐

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4 英雄

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 燻る火薬の香り、常に両陣営から響き渡る大砲の轟音。
 命の価値の無くなった戦場で私は馬を駆り、剣を振るった。

 流線状になった風景に、ふらりと知人が映ることがあった。
 誰も彼も、好きでこの場に立っているわけではない。向かい合い、一瞬のやり取りをすることになったのは、彼らのせいでも、もちろん私のせいでもなかった。

 戦場を走り抜けるにつれ、私が国を追われることになった時、助けてくれた人の顔がポツリポツリと現われるようになった。

 それらを必死で切り裂いて、何日も何週間も耐え抜いて、私は全ての元凶である女の身柄を捕えた。

 取り押さえた女は、権力を振りかざし隣国にまでその手を伸ばし始めていた。いくつもの村が焼かれ、無抵抗の市民がなぶり殺された。

 全てを業火で焼かれる前に、人々が決起するのは当然の流れであった。

 指揮していた人間を捕え、バラバラに逃げ出す兵士が捕縛されていく。勇敢に立ち向かう者もいたが、既に成り行きは決まっていた。

 私は功労をあげた英雄の一人として称えられることとなった。

 戦が終わり、私に初めに下された命は、捕えた王妃の処刑だった。

 それを命じた教皇さまは、穏やかな笑みを浮かべていた。

 私がその国の出身で、王妃の魔の手から逃げ出した過去を知っている彼は、「信仰の正しさを示しなさい」と告げるだけだった。

 その時になって、ようやく私は母の言っていた予言を思い出したのだ。

 私は、国を追われ、母も片割れをも失うことも全ては必然である事と突きつけられたようで不安になった。

 明日、私が運命に従い首を刎ねることになる女は地下牢につながれている。

 そしてそれは仇でもある。
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