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2 パワースポット
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教会に行くと感じる神の残滓、その力の破片と地図をたよりにここまでやってきた。それなのに、ただのパワースポットの可能性が出てきてしまったのだ。
傭兵たちは、俗物である。
神の力がたっぷり浴びれたところで、まったく嬉しくなかった。魔法使いは、己のおごりにショックを受け、その場にひざをつきそのまま地面に突っ伏した。
「いやあああああああ!!!!!」
お肌の保湿もままならぬクソ遠路のクソ旅路、全ての徒労が泡と消える絶望に、魔法使いの理性は吹き飛んでしまった。
彼女の望んだ報酬は『教会が所蔵する薬草の定期購入権』だった。彼らが作る薬草で回復薬を作ると通常のものよりもずっと効果が高くなるのだ。
「もおおおおおおお家に帰りたいよおおおおおおおおお!!!!」
その回復薬を化粧水にするとお肌がぷるっぷるになるのである! ただ数が少なく、有名天才魔法使いである彼女でも入手には苦労していた。
天才魔法使いが地面でゴロゴロ転がる姿を見て、ヨーナは怯えた。
大人とはもっと立派なものではないのか……!? ダメ大人の姿を見て、漠然とした将来の不安がヨーナに襲いかかる!
「坊主、地図はここあたりを指してるんだろ?」
あっけなくバカな結論を叩きだした弓使い、そしてこの旅路で何度目か知れぬ魔法使いの痴態。
呆れた戦士がヨーナの横にしゃがむ。しゃがんでようやく目線が合った。
ヨーナは首をぶんぶんと縦に振った。
「地図もあっていて、こいつの魔法もここを指しているとなると、やっぱりあれが聖剣なんじゃないか?」
「やっぱり、そうですよね!」
戦士の言葉にヨーナは笑顔で頷いた。
場所はあっているはずだ。何か秘密が隠されているに違いない。
恐れ多いとは思いつつもヨーナたちは、神像を押したり引いたりと仕掛けを探した。
何も起きない。何も動かない。
そして弓使いが、はたと気付いた。
「これ、もしかして継ぎ目じゃね?」
神像の首にわずかにだが、継ぎ目があった。
「ヨーナ、」
「――はい!」
戦士の言葉にヨーナはうなづいた。
「高さが足りないわね!」
魔法使いが浮遊魔法を使い、ヨーナの体をふわりと浮かせた。
ヨーナが神像の首を空へ持ち上げると、首がするすると引き抜かれていった。
なんて美しい刀身だろう!
「「「おお!」」」
傭兵たちの感嘆の声に、ヨーナも誇らしい気持ちになった。
一息に引き抜くと、神像が光り輝いた。
そこには持ち手と刀身が生え、少し小顔になった神像の頭の姿が!!!
ヨーナが聖剣を掴む。徐々に光がおさまっていくのを見守った四人は、あ然とした。
「え、終わり?」
魔法使いが拍子抜けして、浮遊魔法がうっかり解除されてしまった。
「うわっ」
「わ、ごめん!!」
ヨーナの体は数メートル下へ落下していく。瞬発力のない魔法使いは、焦って謝るのみ。
戦士がその場から飛んだ! ドサリ、とヨーナの体を受け止める!
「お前なぁ……」
魔法使いの『うっかり』に戦士は呆れていた。
「で、さぁ。聖剣ってこれで合ってるの?」
「見た目はあれですけど、重みはほとんど感じないですよ!」
弓使いと、その場の空気から聖剣をかばうヨーナは、ぶんぶんと剣が生えた神像の頭を振った。
「ちょっと鑑定させてね」
なんでもできる天才魔法使いが、鑑定魔法を使う。
「『聖剣 神像ブレード』。間違いない、これが聖剣よ」
神像は聖剣を封印していたものだったようだ。
四人の長いようで短い旅はここで終わる。――だが!
「聖剣はまぁ……うん。これでいいとして、さ」
物事の真実を見抜く弓使いですら言葉を選びながら、元の神像を指さした。
「この首なし像はこれでいいわけ?」
聖剣の回収は任務だ。
だが、神像の破壊は教会もブチ切れ案件だ。
「……大丈夫だ。いざとなったら俺が砕く」
不穏な空気が流れた中で、戦士が覚悟を決めたようにそう言った。
来た時とは違う――観光感あふれる旅。四人の仲はさらに深まった。
彼らが国へ帰ると、(神像ブレードの姿に引いていたが)おとがめなし、歓迎のパレードが開かれることとなった。
☆
勇者ご一行のゆかりの地、魔法使いの温泉地は首なし像にも負けるとも劣らぬ観光地になった。
彼らは定期的に魔法使いの温泉領地に集まっては、旅をなつかしむのだった。
最新の勇者の歴史はとても平和なものだった。
教会の名誉騎士となった少年は、のちに聖剣のヨーナと呼ばれることになる。
彼のそばにあった神像ブレードは、歴史書に『聖剣のようなもの』と記載された。
長らくそこそこな平和な時代が続くことによって神像ブレードの真価が発揮されることは、ついぞなかったからである。
首なし像と温泉は、今日もパワースポットとして人々に愛されている。
傭兵たちは、俗物である。
神の力がたっぷり浴びれたところで、まったく嬉しくなかった。魔法使いは、己のおごりにショックを受け、その場にひざをつきそのまま地面に突っ伏した。
「いやあああああああ!!!!!」
お肌の保湿もままならぬクソ遠路のクソ旅路、全ての徒労が泡と消える絶望に、魔法使いの理性は吹き飛んでしまった。
彼女の望んだ報酬は『教会が所蔵する薬草の定期購入権』だった。彼らが作る薬草で回復薬を作ると通常のものよりもずっと効果が高くなるのだ。
「もおおおおおおお家に帰りたいよおおおおおおおおお!!!!」
その回復薬を化粧水にするとお肌がぷるっぷるになるのである! ただ数が少なく、有名天才魔法使いである彼女でも入手には苦労していた。
天才魔法使いが地面でゴロゴロ転がる姿を見て、ヨーナは怯えた。
大人とはもっと立派なものではないのか……!? ダメ大人の姿を見て、漠然とした将来の不安がヨーナに襲いかかる!
「坊主、地図はここあたりを指してるんだろ?」
あっけなくバカな結論を叩きだした弓使い、そしてこの旅路で何度目か知れぬ魔法使いの痴態。
呆れた戦士がヨーナの横にしゃがむ。しゃがんでようやく目線が合った。
ヨーナは首をぶんぶんと縦に振った。
「地図もあっていて、こいつの魔法もここを指しているとなると、やっぱりあれが聖剣なんじゃないか?」
「やっぱり、そうですよね!」
戦士の言葉にヨーナは笑顔で頷いた。
場所はあっているはずだ。何か秘密が隠されているに違いない。
恐れ多いとは思いつつもヨーナたちは、神像を押したり引いたりと仕掛けを探した。
何も起きない。何も動かない。
そして弓使いが、はたと気付いた。
「これ、もしかして継ぎ目じゃね?」
神像の首にわずかにだが、継ぎ目があった。
「ヨーナ、」
「――はい!」
戦士の言葉にヨーナはうなづいた。
「高さが足りないわね!」
魔法使いが浮遊魔法を使い、ヨーナの体をふわりと浮かせた。
ヨーナが神像の首を空へ持ち上げると、首がするすると引き抜かれていった。
なんて美しい刀身だろう!
「「「おお!」」」
傭兵たちの感嘆の声に、ヨーナも誇らしい気持ちになった。
一息に引き抜くと、神像が光り輝いた。
そこには持ち手と刀身が生え、少し小顔になった神像の頭の姿が!!!
ヨーナが聖剣を掴む。徐々に光がおさまっていくのを見守った四人は、あ然とした。
「え、終わり?」
魔法使いが拍子抜けして、浮遊魔法がうっかり解除されてしまった。
「うわっ」
「わ、ごめん!!」
ヨーナの体は数メートル下へ落下していく。瞬発力のない魔法使いは、焦って謝るのみ。
戦士がその場から飛んだ! ドサリ、とヨーナの体を受け止める!
「お前なぁ……」
魔法使いの『うっかり』に戦士は呆れていた。
「で、さぁ。聖剣ってこれで合ってるの?」
「見た目はあれですけど、重みはほとんど感じないですよ!」
弓使いと、その場の空気から聖剣をかばうヨーナは、ぶんぶんと剣が生えた神像の頭を振った。
「ちょっと鑑定させてね」
なんでもできる天才魔法使いが、鑑定魔法を使う。
「『聖剣 神像ブレード』。間違いない、これが聖剣よ」
神像は聖剣を封印していたものだったようだ。
四人の長いようで短い旅はここで終わる。――だが!
「聖剣はまぁ……うん。これでいいとして、さ」
物事の真実を見抜く弓使いですら言葉を選びながら、元の神像を指さした。
「この首なし像はこれでいいわけ?」
聖剣の回収は任務だ。
だが、神像の破壊は教会もブチ切れ案件だ。
「……大丈夫だ。いざとなったら俺が砕く」
不穏な空気が流れた中で、戦士が覚悟を決めたようにそう言った。
来た時とは違う――観光感あふれる旅。四人の仲はさらに深まった。
彼らが国へ帰ると、(神像ブレードの姿に引いていたが)おとがめなし、歓迎のパレードが開かれることとなった。
☆
勇者ご一行のゆかりの地、魔法使いの温泉地は首なし像にも負けるとも劣らぬ観光地になった。
彼らは定期的に魔法使いの温泉領地に集まっては、旅をなつかしむのだった。
最新の勇者の歴史はとても平和なものだった。
教会の名誉騎士となった少年は、のちに聖剣のヨーナと呼ばれることになる。
彼のそばにあった神像ブレードは、歴史書に『聖剣のようなもの』と記載された。
長らくそこそこな平和な時代が続くことによって神像ブレードの真価が発揮されることは、ついぞなかったからである。
首なし像と温泉は、今日もパワースポットとして人々に愛されている。
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