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転生、失敗!
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まず生まれるにあたってした事は――、ちやほやしてくれる優しい家族を特定。
権力争いのギスギス感がない家で、先祖代々の洗練された美形遺伝子に加え『神の力』に耐えうる体を選んだ。
事前にいろいろと選定した俺は、年の離れた兄が爵位を継ぎ、優しい姉がいて、両親もチート能力をただ「天才だ」とほめそやかしてくれるとんでもない金持ちの家に転生した!
権力争いは嫌だが、権力は欲しい。そこもぬかりはない!
貴族の中では最高位、数代前に王女が嫁いだという名誉と権力マシマシな家だ。
俺のスローライフは勝ち確!
そんでこの世界の人間どもは種族間で争いや優劣を決めたがる。そんな差別意識バリバリな貴族の中で、差別や偏見がなくてイケメンな俺…。迫害されてる美女を救ってハーレムを築いてウハウハーー、
――な、はずだった。
「おかしいだろーーーがよーーーーーーー!!!!!」
自分探しの旅!的なやつでハーレムを作りながら遊んで暮らす予定だったのに……!
なぜ、書類に埋もれて必死に仕事をしなければならないんだ!
豪奢な装飾をほどこされた机をバシン、と叩くと書類が宙を舞う。
ジロリと正面にいる女をにらむ。
それもこれも全部この女のせいだ!
「おかしいのは、あなたの方です」
目の前には地味でありながらも、確かな存在感を放つ女がいた。俺の婚約者だ。
彼女は女神ディアナの加護を受け、神をその身に降ろしている。あまたの神が休暇としてこの世界へ干渉する。
ディアナを信仰する教会の聖騎士が俺をジロリとにらむ。
睨み合う俺たちの横で、メイドが散った書類を拾っている。
この婚約者に加護が与えられてから俺のスローライフ計画は、お仕事ライフになってしまった。
民の暮らし向きを向上させるように努力しなければいけない、くそったれ!
「ゼノン、私から逃げられるとでも思っているの?」
彼女から後光が射している。神が降臨している時、特有の現象だ。
まぶしい。
怒っているのは光の色でよく分かった。
「ディ、ディアナ……、悪かったって言ってるだろ……!」
「人間になって何をしているのかと思えば…、これで許してやってる私に感謝してほしいわ。あなたも神らしく、少しは仕事をなさい」
後光がすっと消えた。俺はほっと胸をなでおろす。
聖騎士が部屋の外に控えていた使用人に、このふざけた『神託』を伝えるのだろう。
「ちょっと浮気しただけで、なんでこんな目に合わないといけないんだよ……」
俺のぼやきに、ジロリと婚約者と騎士の視線が刺さる。
なんでこんなことになったんだ?
『創造神の加護』。俺がこの世界で好き勝手に遊ぶためにこの体に宿した能力だ。
おかげで人間でありながらも神の異能を使うことができる。
そもそもは俺がそこらにいた女神に手を出しまくったのが原因だ。
そこから数千年に一度レベルのとんでもない夫婦喧嘩になってしまった。
妻であるディアナの怒りが静まるまで、人間として遊んで暮らそう!そう思ったのだ。
『創造神』という二つ名で一番力があるみたいな言い方されているけれど、これは普通に色んな神に手を出しまくって子供がたくさん生まれたからってだけなんだよな。
で、人間に生まれ変わり、加護パワーでちやほやされる。
そんな計画はすぐに終わりを迎える。
婚約者である彼女に、妻ディアナの『加護』が与えられてしまったことから崩壊を迎える。
優秀な人間は登用すべき、そんなことを言いながら俺のために働いてくれる人間を身分・種族問わず集めていた幼少期、すでに妻に居場所がバレていたらしい。
この世界では、神の名にあやかって子供に名づけをすることはよくある事だ。
俺の名前も『神』の名前からつけられている。髪の色が同じ、瞳の色が同じ、全部同じなら完璧だ。神に愛されるように神の名前をつける。
そして彼女もディアナと瓜二つだ、というか本神だ。
「ちょっと浮気しただけ?」
俺のぼやきにディアナが暗い声音でつぶやいた。
まずい、と思い「いや、言葉のあやというかなんというか」と書類に集中し始めるが、神の力があふれだした光がピカピカとまぶしい。
彼女としてはチート能力でバカンスを楽しむ予定ではないらしく、余った力が外に放出されて後光になっている。
ディアナは『正義とバランス』を司っている。。
ゼノンは『安産』や『恋愛』にもご利益があると言われるほどだ。
お似合いの二人だと、子供の頃にあっという間に婚約することになった。
こうして早々に俺のチート計画は頓挫してしまった。
「ちゃんと仕事するのか見てますからね!」
「はい……」
くそ、俺が楽して遊ぶために選んだ高い地位が足かせになっている……!
ディアナに見つかったのも「神童アピール」のせいだったし。
ディアナが部屋を出たとしても、彼女に命じられた騎士や使用人の視線から逃げられはしない。
逃げてもすぐにばれるため、真面目に仕事をするしかないのだ。
☆
神の愛し子である領主夫婦を迎え入れてから、寂れた領地が徐々に復興していった。
領民たちは息抜きに街へ出る領主に気づかないフリをするのが暗黙のルールになっている。
彼は、酔っぱらうとほんのりと光るのだ。
その感情はとても分かりやすい。感情に呼応して光の色が変わる。
ディアナと話している時、ぼやきながらも黄色やオレンジの明るい色になっている。
「領主さまは、川にいる虫みたいなところありますよね」
屋敷の者はそんな風に例える。
「まあ最近はご機嫌なのかお二人ともカラフルに光りますね」
二人が一緒いる時、仕事中でもほんのり光る。
ディアナもそれに気づいていて、少し嬉しそうにしている。本人だけがあふれる色に気づいていない。
権力争いのギスギス感がない家で、先祖代々の洗練された美形遺伝子に加え『神の力』に耐えうる体を選んだ。
事前にいろいろと選定した俺は、年の離れた兄が爵位を継ぎ、優しい姉がいて、両親もチート能力をただ「天才だ」とほめそやかしてくれるとんでもない金持ちの家に転生した!
権力争いは嫌だが、権力は欲しい。そこもぬかりはない!
貴族の中では最高位、数代前に王女が嫁いだという名誉と権力マシマシな家だ。
俺のスローライフは勝ち確!
そんでこの世界の人間どもは種族間で争いや優劣を決めたがる。そんな差別意識バリバリな貴族の中で、差別や偏見がなくてイケメンな俺…。迫害されてる美女を救ってハーレムを築いてウハウハーー、
――な、はずだった。
「おかしいだろーーーがよーーーーーーー!!!!!」
自分探しの旅!的なやつでハーレムを作りながら遊んで暮らす予定だったのに……!
なぜ、書類に埋もれて必死に仕事をしなければならないんだ!
豪奢な装飾をほどこされた机をバシン、と叩くと書類が宙を舞う。
ジロリと正面にいる女をにらむ。
それもこれも全部この女のせいだ!
「おかしいのは、あなたの方です」
目の前には地味でありながらも、確かな存在感を放つ女がいた。俺の婚約者だ。
彼女は女神ディアナの加護を受け、神をその身に降ろしている。あまたの神が休暇としてこの世界へ干渉する。
ディアナを信仰する教会の聖騎士が俺をジロリとにらむ。
睨み合う俺たちの横で、メイドが散った書類を拾っている。
この婚約者に加護が与えられてから俺のスローライフ計画は、お仕事ライフになってしまった。
民の暮らし向きを向上させるように努力しなければいけない、くそったれ!
「ゼノン、私から逃げられるとでも思っているの?」
彼女から後光が射している。神が降臨している時、特有の現象だ。
まぶしい。
怒っているのは光の色でよく分かった。
「ディ、ディアナ……、悪かったって言ってるだろ……!」
「人間になって何をしているのかと思えば…、これで許してやってる私に感謝してほしいわ。あなたも神らしく、少しは仕事をなさい」
後光がすっと消えた。俺はほっと胸をなでおろす。
聖騎士が部屋の外に控えていた使用人に、このふざけた『神託』を伝えるのだろう。
「ちょっと浮気しただけで、なんでこんな目に合わないといけないんだよ……」
俺のぼやきに、ジロリと婚約者と騎士の視線が刺さる。
なんでこんなことになったんだ?
『創造神の加護』。俺がこの世界で好き勝手に遊ぶためにこの体に宿した能力だ。
おかげで人間でありながらも神の異能を使うことができる。
そもそもは俺がそこらにいた女神に手を出しまくったのが原因だ。
そこから数千年に一度レベルのとんでもない夫婦喧嘩になってしまった。
妻であるディアナの怒りが静まるまで、人間として遊んで暮らそう!そう思ったのだ。
『創造神』という二つ名で一番力があるみたいな言い方されているけれど、これは普通に色んな神に手を出しまくって子供がたくさん生まれたからってだけなんだよな。
で、人間に生まれ変わり、加護パワーでちやほやされる。
そんな計画はすぐに終わりを迎える。
婚約者である彼女に、妻ディアナの『加護』が与えられてしまったことから崩壊を迎える。
優秀な人間は登用すべき、そんなことを言いながら俺のために働いてくれる人間を身分・種族問わず集めていた幼少期、すでに妻に居場所がバレていたらしい。
この世界では、神の名にあやかって子供に名づけをすることはよくある事だ。
俺の名前も『神』の名前からつけられている。髪の色が同じ、瞳の色が同じ、全部同じなら完璧だ。神に愛されるように神の名前をつける。
そして彼女もディアナと瓜二つだ、というか本神だ。
「ちょっと浮気しただけ?」
俺のぼやきにディアナが暗い声音でつぶやいた。
まずい、と思い「いや、言葉のあやというかなんというか」と書類に集中し始めるが、神の力があふれだした光がピカピカとまぶしい。
彼女としてはチート能力でバカンスを楽しむ予定ではないらしく、余った力が外に放出されて後光になっている。
ディアナは『正義とバランス』を司っている。。
ゼノンは『安産』や『恋愛』にもご利益があると言われるほどだ。
お似合いの二人だと、子供の頃にあっという間に婚約することになった。
こうして早々に俺のチート計画は頓挫してしまった。
「ちゃんと仕事するのか見てますからね!」
「はい……」
くそ、俺が楽して遊ぶために選んだ高い地位が足かせになっている……!
ディアナに見つかったのも「神童アピール」のせいだったし。
ディアナが部屋を出たとしても、彼女に命じられた騎士や使用人の視線から逃げられはしない。
逃げてもすぐにばれるため、真面目に仕事をするしかないのだ。
☆
神の愛し子である領主夫婦を迎え入れてから、寂れた領地が徐々に復興していった。
領民たちは息抜きに街へ出る領主に気づかないフリをするのが暗黙のルールになっている。
彼は、酔っぱらうとほんのりと光るのだ。
その感情はとても分かりやすい。感情に呼応して光の色が変わる。
ディアナと話している時、ぼやきながらも黄色やオレンジの明るい色になっている。
「領主さまは、川にいる虫みたいなところありますよね」
屋敷の者はそんな風に例える。
「まあ最近はご機嫌なのかお二人ともカラフルに光りますね」
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